絡まった赤い糸
自分の短い前髪を鏡と睨めっこしながら、三つ編みに挑戦してみたけれど
「意外と難しいな…」
上手くできない。
そもそもやり方がいまいち分からないのだ。
「なぁファルコ、三つ編みのやり方知ってるか?」
「んな女々しいもん知るわけねえだろ」
人の尻尾を無断で枕にしてテレビを見ていたファルコに面倒くさそうに答えられた。
「冷たいなファルコ」
「……」
ファルコとのコミュニケーションが早くも終了してしまった。
それではいけない。何か会話を続けないと!
俺は懲りずにファルコに話しかける。
「アカデミーで習ったんだけどなー」
習ったような記憶はあっても普段使わないものだから、すっかり忘れてしまっていた。
「…んなこと教えんのかよ」
テレビに飽きたファルコがようやく起き上がって枕にしていた俺の尻尾で遊び始める。
今日初めてファルコの顔をまともに見た気がする。
いきなり現れて気が付いたら尻尾を占領して雑誌を読んだりテレビを観たり
ファルコはずっと俺の尻尾の上でフリーダムにゴロゴロしていた。
そんなんだから、俺からファルコの顔は横顔位しか見えていなかった。
「ペッピーなら分かるかな」
どうしても三つ編みをしたい理由は、自分でも女々しいとは思うけれど
「そう言えば…」
さっきのテレビの占いで三つ編みをすると恋愛運がアップすると言っていたからだ。
「今日の狐顔は三つ編みをすると恋愛運が上がるらしいな。フォックス…」
どうやらファルコも占いをしっかりと観ていたらしい…!
気まずさにファルコの顔をまともに見れなくなった。
「何だ、誰か好きなヤツ居るのか?」
ファルコが離して自由になった尻尾を目線の逃げ場にすると
「っ!?」
自分の想像を超えるありさまに声にならない悲鳴をあげてしまった。
「フ、ファルコ…何だよこれ気持ち悪い!」
俺の尻尾がファルコによって大量に三つ編みされていたのだった。
「いや、お前の恋の応援をしてやろうと思って」
「明らかに悪ふざけだろっ!!あー!絡まって解けないじゃないか!!」
「絡まったのはお前が手入れしてないからだろ」
俺は悪くねえし。とファルコがしれっと答える。

絡まってしまった尻尾と格闘しながら、俺がファルコに抱いている想いの答えは
もっと複雑に絡んで、とうに答えなど見つからないところまで行っているんだろうなと自嘲してしまった。
こんなに絡まってしまっては、自分のためにも諦めて断ち切ってしまうしかないんだ。
「ばーか。そっちを引っ張るから絡まるんだよ」
ファルコが大きい手を尻尾を撫でるように滑らせると三つ編みが綺麗に解けていった。
「あ…」
何だ、簡単じゃないか。
「ほら、全部解けたぜ」
俺の想いも、絡まった三つ編みも、全てファルコによって解けたのだ。
解けた先にあるのは、ただひとつの答え。
「ありがとう、ファルコ」
ファルコのことが誰よりも好きだってことを
「なぁ、ファルコ」
今なら、この想いを上手く伝えられそうな気がするんだ。

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