強いて言えば俺は悪くない
夜目が利かないことを不便に感じたことは今までに1度だってなかった。
真っ暗な廊下だろうと昼間の記憶を頼りに歩くことだって出来る。
星明かりに照らされていても薄暗い廊下を手探りで歩いていると
「ぐぁっ!?」
思いっきり誰かとぶつかってしまった。
まさかこんな時間に誰も歩いてないだろうと油断して鼻歌混じりで歩いていたせいだ。
「ぅわっ!」
ぶつかってしまった相手の顔は暗闇で分からないが、発された声で正体を把握し
「大丈夫か?フォックス」
バランスを崩して倒れかけたフォックスの肩を掴んで支える。
「ん…?」
触れたフォックスの肩は少ししっとりとしていた。
「悪いファルコ」
それを不思議に思い肩から腰まで手を滑らせると手がすっかり潤ってしまった。
明らかにフォックスの身体は濡れている。
「ちょ、ファルコ!くすぐったい!」
フォックスの身じろいて逃げる腰をがっしりと捕まえて退路を塞いでやる。
「お前何か濡れてるけどシャワー浴びてたか?」
フォックスの濡れた髪に顔を埋めると、自分の使っている石けんと同じ香りがした。
「ん、あぁそうなんだけど、うっかりタオルと着替えを持ってくるのを忘れてしまってさ」
「ふぅん……ん?」
腰を掴んでいた手を少し動かすとフォックスの臀裂に直接指先が当たった。
あ…?
「ど、どこ触ってんだよ!ファルコっ!!」
「な!あ?!」
ファルコのエッチー!とかワケ分からねえこと叫ばれて思いっ切り突き飛ばされ廊下の壁にぶち当たる。
体勢を立て直した時には床にフォックスの濡れた足跡が残っているだけで、すでにフォックスは走り去った後だった。
「チィッ…」
あいつ…!下着履いてなかったぜ…!!
俺は何とも言えない気持ちで、フォックスが歩いて濡れた床に気を付けながらトイレまで向かうのだった。
…やましい理由でじゃねえからな!

夜目が利かないことを不便に感じたことは今までに一度だってなかった。
そう、この時までは。

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