Forget-me-not
「あ、ファルコ!」
廊下ですれ違いざまに、ファルコを呼び止めた。
いや、呼び止めてしまった。
「何だ?」
「え?」
無意識で呼び止めてしまったものだから、もちろん用事なんてない。
「ん?」
ファルコは訝しげな表情をしているが、なかなか用件を切り出せない俺を急かさず自分から切り出すのを待ってくれている。
「あぁー…えーと…」
昼ご飯はもう食べたか?
最近調子はどうだ?
お前好きなやついるのかよー。
必死に用事を思い付いていると、いい加減痺れを切らしてしまったファルコが背を向けて歩き出してしまう。
「ファルコ!!」
今度こそ「何だよ」という、面倒くさそうな表情で振り返られる。
俺は、何がしたいんだろう。
何故ファルコを呼び止めてしまうんだ?
「…次の任務も期待しているぞ、ファルコ」
散々待たせてやっと口から出た言葉は"リーダーの俺"の言葉だった。
「お前も、気張り過ぎんなよ」
俺の前髪を毛並みに逆らってくしゃくしゃと撫でると俺の来た道を片手をひらひらと振りながら歩いていった。
そんなファルコの後ろ姿を見えなくなるまで見送りながら、"俺"がファルコを呼び止めてまで何を言いたかったのかを考えていた。

ただ、お互い無事で帰ってこれるか分からない任務を前に、
何か大切なことをファルコに伝えておかないといけない気がしたんだ。

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