儚く消えろ
伝えたい気持ちがひとつだけあった
それを伝える勇気よりも…


「ん…ぁっ!ファル…コ!」
ベッドのスプリングの軋む音が艶を含んだ声に合わせて、星明かりに照らされた部屋に静かに響く。
「あぁ…!クソっ!もう我慢出来ねえ」
部屋は淫らな音と、夜の特有な臭いで満たされていた。
「良いか…フォックス、入れるぞ」
頬から一筋の汗が伝って落ちた。
「うわああぁあああ

 あぁあああっ!!!」
ベッドから飛び起きると、嫌な汗で肌に服がべっとりとまとわりついていた。
「夢オチか…」
安堵ともとれる溜め息が自然と口からもれた。
しかし…、何て夢を見てるんだろう。
ファルコを意識し始めて、何度も見るようになったこの夢。
はっきり言って心臓に悪い。
親友をこんな風に見てるだなんてどうかしている。
「もうこんな時間」
ベッドサイドに置いてある時計に目をやると時計の短い針はあと少しで昼を指そうとしていた。
「何でアラーム鳴らなかったんだよ」
もし時計がしっかりと働いていれば、あんな夢を見なくて済んでいたかも知れない。
時計を振ってみてもカタカタと言う軽い音しかしなかった。


「お、フォックスちょうどいい。昼飯食いに行かねえか?」
シャワーを浴び終え嫌な汗も流せてすっきりしている所でファルコに捕まった。
「持ち合わせは少ないぞ?」
見た夢の内容のせいでファルコの顔がまともに見れない。
汗と一緒に夢の内容も流して忘れ去ってしまえればどんなに楽だったか。
「ラーメンなら割引券があるぜ、しかも今なら味玉が無料で付いてくるらしいぜ!」
「本当か?!ちょうど食べたかったところだ!」
「よし!決まりだな」
ファルコがふざけたように俺の肩を抱き寄せて歩き出す。
「ま、割引券1枚しか無えんだけどな」

夢は夢、夢であって夢じゃない。望んでもいない夢だった。
夢は夢で終わってしまえばいい。
今はこの関係で十分満足しているから。


だから
この気持ちを隠し通せる
強さが欲しいんだ。

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あきゅろす。
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