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〜 Remember my heart 〜
if ending リンネ


「舐めんなよ!!」

「ヒック……ヒック」

「てめえら舐めんなよ!!」

「親なしのくせに逆らってんじゃねえぞ!!」

「聞いてんのか、ええ!!」

「良いから通せ。わしらは院の手伝いをせにゃ飯が食えんのじゃ」



いつもそうだ。
わしらが孤児だからと言っていつもこうして馬鹿にしてくる。


「ごめんなさい……。謝るから、もう……」



わしのかけがえのない親友、リンネがわしの背中で震えている。
わしはどうなってもええが、リンネだけは絶対に守らなきゃならん!!



「おごってやんよ貧乏人」


男の一人がわしらに飲んでいたジュースを頭にかけてきた。


「ひっ……」


もう、我慢の限界じゃ……。
わしは正面のやつに思いっきり蹴りをぶちかまし……。


「て、てめえよくもやりやがったな!!」

「もう、許さねえ!!」

「二人とも痛い目に合わせてやる!!」

「い、いやあっ!!」

「り、リンネッ!!」


三人のうち二人が、リンネを押し倒し、両腕を押さえつけ動けなくする。


「このやろう!! 素っ裸にしてやるからな!!」

「や、やめろ!! リンネに手をだすな!!」

「親なしで服もボロボロにしてやれば、おとなしくなるだろうよ!!」


男の一人が、リンネの服に手をかけ引きちぎろうとする。
いつもそうだ……。


この世に信じられる人なんていない。
わしらばっかりどうして……。


――――――もう、だめじゃ。



*     *     *



こわい……。
私、男の子たちに乱暴される。

両腕を押さえつけられて、自由を奪われて、もう何も抵抗できない……。


「少しはきれいな裸を見せてくれよな、貧乏人!!」

「ヒッヒッヒッ。こんな子汚い奴なら何しても構わないよな」


二人して舌をなめずりまわすように私を見ている。
そして、私の服を引きちぎろうとしたとき……。



「あいたたたたたたたっ!!」


その男の子が、黒い髪の人に髪を思いっきり引っ張られていた。


「……何やってやがるんだ」

「な、何ってお前なんかには関係ないだろ」

「そうだそうだ!!」

「……そうか」


男の人は、いじめっ子のお腹を思いっきり蹴り飛ばし……。


「う、あ、が、あ……」


それに耐えきれずその場でうずくまってしまった。
間髪入れず、もう一人の子も同じようにお腹を蹴り飛ばされていた。

 

「……一つだけ言っといてやる。子供だからと言って何でも許されると思うな。ここまでやったんだ……。やられる覚悟はできてるんだろうな!!」


男の人が、とても低い声で残ったいじめっ子の胸ぐらをつかみ、思いっきり睨みつけると……。


「ひ、ひいぃぃ……。た、助けてくれ……」

「ちょっとこうされただけで怖いのか? だったら人にこんなことするなッ!!」

「は、はい、ご、ごめん、な、さい!!」


男の子たちは恐怖のあまり腰が抜けてしまい、逃げることもできなくなっていた。


「……とっとと消えるんだな。そして、二度とこんな真似してみろ。こんなもんで済むと思うな!!」

「「「は、はい! す、すみません、でし、た」」」


男の子達は、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げだしてしまった。


「……ふぅ。ったく、どこにでもいるな。ああいう屑は」

《マスター、少しやりすぎです。相手は子供なんですよ》

「プリム、子供だからといって優しくすればいいってもんじゃない。ああいう馬鹿は痛い目に合わせたほうがいい」

《まぁ、私も内心女の子にあんなことする馬鹿はあれでも足りないくらいですけど……》

「ほらみろ。おまえも同じこと思ってるじゃないか」

《あら、言われてみれば確かにそうですね。それよりも今はこの子たちを》

「そうだったな。二人とも大丈夫だったか?」


そう言って、男の人は、私を優しく起こしてくれた。
さっきとは違って、とても優しい瞳をして……。


「は、はい!! あ、ありがとう、ご、ございます」

「す、すみません。わしらを助けてくれてもらい……」

「礼なんかいらないよ。たまたま通りかかって、あんな馬鹿を見たからちょっと話をしただけだから……」



――――――そんなことない。
いつも周りの人たちは、孤児だからって私たちのことなんか見てみないふりをするから。



「それよりもすまなかった。もう少し早く助けられてたら、あんな怖い思いをさせないで済んだのに……」

「い、いえ!! そんなことありません」

「そ、そうです!! 助けてもらえただけでも……」

「そうか……。本当、君たちが無事でよかった」


この人は、本当に優しい瞳で私たちのことを見てくれる。
こんな優しい目で見てくれる人なんて、いなかったから……。


「そういえば、まだ名前すら言ってなかったな、俺はフィル・グリード」

「リ、リンネです」

「わ、わしはフーカと言います」


お互いに自己紹介をし終わった後、私たちはフィルさんといっぱいお話をした。
私達が孤児なこと、いままであの男の子たちにたくさん嫌がらせをされたこと。

それを全部話した。

それを聞いたフィルさんが、怖い目をして立ち上がって……。


「……あいつら、もう少しやっておくか」

《マスター、気持ちはわかりますが、あのくらいにしておきましょう。それよりも今はリンネちゃん達のことをしっかり見ましょう》

「……確かにプリムの言う通り、今はこの子たちの方だな」



……よかった。
これ以上フィルさんに迷惑はかけられないから。



「でも、今日は何とかなったけど、俺もいつもいるわけじゃないからな……」

「そ、そうなんですよね。わしも相手が一人なら頑張るんじゃが、あんな風に何人も来たら……」



いつもフーちゃんが私のことを必死で守ってくれる。
でも、私は何もできなくて、申し訳なくて……。


「……それだったら、二人にこれを渡しておくか」


そう言ってフィルさんは胸ポケットから、二つのきれいなブローチを取り出した。



「これは、お守りのかわり。君たちにプレゼントするよ」


私には水色に光る星形のブローチを、フーちゃんには赤色に光る星形のブローチをそれぞれに渡してくれた。

中心には小さな透明な石が埋め込まれているし……。


「あ、ありがとうございます!! こんなきれいなブローチを……」

「それは、きっといつか君たちを助けてくれるものになると思う。大切にしてくれたら嬉しい……」

「はい!! ずっと大切にします!!」


数年後、私は、ベルリネッタ家が養子として迎えてくれることになり、そこで私は新しい幸せを手に入れることになる。


新しい家族、優しいおじいちゃん。
これも、ブローチが幸運をもたらしてくれたのかな。


――――――でも、それは長くは続かなかった。




*      *      *


「なにこれ古いタイピンとダサいブローチ」

「ダッサ!!」

「とてもお嬢様がするものとは思えないよね」



三人組の女子が、私から大切なタイピンとブローチを無理やりむしり取った。
その二つのものは、私の大切な人たちがくれた大切なもの。


それをそんな風に扱わないで!!


「……返してください。それらは大切なものなんです」


何とか取り返し、私は逃げるようにその場から離れた。
その後も、幾度となく私に嫌がらせをしてきてきた。


ある時は、教科書をめちゃくちゃにされたり……。

ある時は、机をめちゃくちゃにされたり……。



――――――それだけでは済まなかった。



私の大切なタイピンとブローチを壊されて、トイレに……捨てられていた。


そして……。


私の大切なおじいちゃんが死んでしまった。


私が弱かったから、おじいちゃんが死んじゃったんだ。


もう、私にはなにもない。


そう思った私は、あの女子三人を……。


力の限り、殴り倒していた。



*      *      *



「少女暴行事件か……」

《はい、この子が三人の女の子に対して暴行をし、重傷を負わせた、とニュースでは騒がれていますが、おかしい点があるんです》

「確かにおかしな点があるよな」


被害者の三人はベルリネッタ家に対して多額の慰謝料を請求して来てる。
だが、加害者のこの子がなぜ、このようなことになったのかが問題だ。



《あと、マスター思い出したのですが、このリンネという子、私達以前あったことありますよ。ほら、あの胸糞悪い子たちにいじめられていた時の……》

「あのときの子か。どっかで見たことがあると思ったが……」



だったら猶更だ。
あの子は決して自分から暴力をふるう子じゃない。

もしかしたら、この事件の裏には根深いいじめとかがあったのでは?



「……調べてみる必要があるな」

《はい、マスター。私はこの事件をもう一度見直してみますね》

「頼む、俺は、事件現場をもう一度調べてみる」




*      *      *



「うっ……くっ……」


街中を歩いていた私は、男の人たちにさらわれ、この廃墟のゲームセンターに来ていた。
そこで私は複数の人たちに何度も蹴られていた。



「先週お前がぶん殴って病院送りにしたサラはな……。あいつは、頬と顎が折れている。痛がって怖がって、毎日泣いてるんだ!!」

「うっ……」

「示談なんて絶対許せねえ!! 金持ちなんだ。多額の賠償金をふんだくってやるからな!! そして、おめえもサラと同じかそれ以上の痛い目にあわなきゃおかしいよな……」


そして、男の人が私のブラウスを無理やり引きちぎって、私の上にのしかかると……。


「……最後に、もう一度、フーちゃんとフィルさんに……会いたかった」


もう、私はこの人たちに犯されるだけなんだ。

あきらめていたその時……。


ガラスの扉が、ガシャンと思いっきり音を立てて見張りの男の人が飛ばされていた。



「……久しぶりだな。屑野郎ども」

「な、なんだてめえは!?」

「どうやら覚えていないようだな、お前らは……」



そこには、黒髪の男性、フィル・グリードさんが立っていた。




*      *      *



たまたま、事件のことを調べていて、ちょうどリンネを見つけることができたが、車で連れ去られてしまい、急いで追いかけたが、サンダーがなかったから、走って追いかけるしかなかった。

飛行許可もとっていなかったから、探すのに時間がかかってしまったが、なんとかぎりぎり間に合った。


「またてめえらの面をみることになるとはな……」


調べていくうちにわかったが、被害者の肉親には、以前リンネ達をいじめていた奴らの1人がいて、その妹がリンネをいじめていたことも分かった。


「そ、そのツンツン髪、まさかてめえは……」

「ようやく思いだしたか……」


以前は見逃したが、それが大きな間違いだった。
結果的にリンネは陰湿ないじめに晒され、今もこうして婦女暴行未遂に晒されてしまっている。


「……ま、待ってくれ!! お、俺はまだこいつになんにもしてねえ!! だ、だから……許してくれ!!」

「……女の子に何度も殴ったり蹴ったりしていて、許されると思うのか」


リンネの体には、パッと見ただけで殴られた跡がいくつもある。
それだけでも十分有罪だ。


「こ、こいつは犯罪者なんだぞ!! 俺の妹も、友達も、悪いことなんてなんもしてねえんだぞ!! ただの友達同士の軽口に、こいつが切れて……」

「……ほう」

「だから、多額の賠償金をせしめて、こいつを痛い目に合わせなきゃ気が済まねえんだ!!」

「そう、お前の妹から聞いたのか?」

「そうだ!! だから、俺は……。ぐ、あ、ががが……」

「……いい加減に黙れ。証拠は挙がってるんだよ」


こいつの妹が言ったことは嘘だった。
実際は、リンネに陰湿ないじめを繰り返し、大切なものを壊したりし、リンネの心を傷つけていた。

リンネの暴力を肯定するのは、本来まずいが、加害者のリンネは情状酌量は十分ある。


*      *      *



「覚悟しておけよ。婦女暴行未遂、いじめ、慰謝料の不当請求、これだけでも十分逮捕案件だ……」

「て、てめえに何ができるっていうんだよ!! 管理局でもないくせに!!」


するとフィルさんは無言でスクリーンをだし……。


「管理局執務官、フィル・グリードだ。今までのことすべて記録に取ってるからな。そして、俺はお前らみたいなやつは絶対に許さない……」


逃げようとした人たちを、フィルさんは拘束魔法で全員縛り上げて、そのあと、私を犯そうとした人は別にして、何度も平手打ちをしていた。


「……痛いか。だがな、この子はな、お前の妹に何度もこういういじめをされていたんだよ。因果応報って言葉、知ってるか?」

「……ぜ、絶対、ゆ、許さねえ! てめえを訴えてやるからな!!」

「やってみろ……。その時は、全力で叩き潰してやる。犯罪者に……人権なんてあると……おもうな」

「ひ、ひぃ……」


男の人は、フィルさんが睨みつけると、失禁してしまい、その場で気絶してしまった。

数十分後、管理局の人がやってきて、縛られた人を全員逮捕していき、フィルさんもオレンジ色の髪をした女性にとても怒られていました。


「あんたね……。あたしたちが到着するまで待てなかったの!? ったく、こいつらが最低な奴らだってのは聞いてたけど……」

「ティア、すまない。あの馬鹿の面を見たら、抑えが利かなかった……」

「まったく……。とりあえず、帰ったらあんたは始末書と、たぶん謹慎喰らうでしょうから、といっても、謹慎といっても形だけでしょうけどね」

「……レジアスの親父さんとオーリス姉には、とても迷惑をかけるがな」

「まぁ、あたしが担当したとしても、この事件は、間違いなくリンネちゃんの方が被害者ね。まぁ、後のことはあたしたちに任せなさい」


そう言って、オレンジの髪の女性は管理局の人と一緒に行ってしまった。


「大丈夫か、リンネ。もう、大丈夫、だから……」


もう、我慢の限界だった。
私は、フィルさんの胸に飛び込んで、思いっきりその場で泣いた。




*      *      *



「あの時は、本当にご迷惑をおかけしました……」


あれから数年がたち、私はフーちゃんとも仲直りをし、さらにナカジマジムの人たちとも仲良くなることができました。

私は力の意味を間違えてしまい、いろんな人を傷つけてしまっていた。

でも、フーちゃんといっぱいぶつかり合って、それが間違っていたことを教えてくれた。


そして、フィルさんは、あの時の事件で私をたくさん助けてくれた。


「俺は大したことしてないよ。ほんの少し背中を押しただけだよ……」


本来なら加害者の私だったんだけど、学校内のいじめの記録がフィルさんがくれたブローチに全部残されていて、それが決定的な証拠となり、逆にあの子たちの親から多額の慰謝料をもらうことになりました。

フィルさんの相棒のデバイス、プリム曰く……。


《あれは、なるべくしてなったことですから、あなたがちゃんと力の意味を理解してるのでしたら、もう大丈夫ですよ》


「フィルさんには、本当にいっぱい助けてもらってます。あのときから、ずっと……」

「そのあとは、フーカやヴィヴィオたちがしてくれたんだからな。俺と再会するまで……」


あの後、結局フィルさんとは会えなくて、通信ではお話をたくさんしてくれたんですけど、まさか、ナカジマジムの人たちとお知り合いだったなんて、こないだまで知らなかったんですよ!!


「それでもです……。フィルさんがいなかったら、フーちゃんの言葉、聞いてなかったかもしれないから……」


まだ、小さかった私達、あの時助けてもらってから、私の中でずっと気持ちが膨らんでいった。


――――――大好きって気持ちが。


「……わ、私、フィルさんに……伝えたい、ことが、あります」


この気持ちは、フィルさんにとって迷惑なのはわかってる。
振られても良いから、精一杯伝えよう。


「私は……。リンネ・ベルリネッタは……」


私の精一杯の想いを込めて……。


「あなたのことを……誰よりも……大好きです」



*      *      *



――――――本当に素敵な女の子になった。


あの時は、ただ、フーカに頼りっきりの女の子だったのに。
今は、ヴィヴィオやフーカのおかげで、自分の意思をしっかりと持ち、素敵な女の子になっている。

だからこそ、俺なんかを好きになっちゃいけない。
この子にはもっと素敵な男性が現れるはずだから……。


「悪いけど……」


リンネに返事をしようとしたとき……。


《はい、マスター、そこまでです》

「どういうつもりだプリム……」

《……はぁ、マスター。また、悪い癖が出ましたね。どうせ、リンネさんみたいな素敵な子には自分はふさわしくない。だから、断ろう。そう思ってましたね……》

「だったら……何だっていうんだ」

《あなた、本当に女の子のことわかってないです!! リンネさんがどんな思いで伝えたかわかりますか!! リンネさんもマスターと同じで自己評価が低いのに、それでも、必死に自分の想いを伝えたんですよ!!》



*       *       *



「……プリムに言われちゃいましたが、この気持ちは、私の精一杯の気持ちです。決して……うわついた心で言って、ないですから」

「……ここまで言われて、逃げる言葉は、卑怯だな。俺で、良いのか?」

「……フィルさんじゃなきゃ、いや、です」



いじめで傷ついていた時、フーちゃんと違えていた時、それでも、フィルさんは私の味方になってくれてた。


――――――たった一人、私の味方に。
 

「……だったら、ずっとそばにいる。リンネが俺のこと、嫌いにならない限り、な……」

「だったら、永遠に離れません。だって、私はフィルさんのこと、愛してますから……」

「さっきより、大胆になってるな。大好きから愛してるって……」

「そうですよ……。女の子は、好きな人と想いが一緒になったら、どこまでも強くなれますから」


星空が照らす空の下――――――。



私達は、どちらからとなく――――――。



気が付いたら―――――。



口づけを交わしていました。




*      *      *



あれから数年がたち、私は16歳になり、フィルさんともずっと恋人同士です。
でも、年相応のキスとかはしてくれますが、私のことを求めたりはしてくれません。魅力がないのかなって思い、フィルさんにそのことを聞いてみましたところ……。


『手を出さないんじゃなくて、自制してるだけだ。頼むから察してくれ……』


その言葉を聞いて、だったら16歳になったら私のことフィルさんの『女』にしてくださいと言い、今日がその約束の日。

今、私はフィルさんのマンションに泊まり、ベッドに一緒に座っています。
いざとなったらやっぱり緊張してしまいます。



「……今更だけど、怖いなら、無理はするな」

「それ、覚悟決めた女の子に言う言葉じゃないです。私のこと好きだって思ってくれてるんでしたら、私のこと……抱きしめてください」

「そう、だな……。リンネ」

「あっ……」



私はフィルさんに押し倒され、そのまま、舌を絡めたキスを交わす。
何度も求めあい、息継ぎの時は唾液で銀色の糸が出来、またキスをする。


ブラウスを脱がされ、スカートもおろされて、下着姿になると……。



「……恥ずかしい、です」

「そんなことないさ。綺麗だよ、リンネ」



純白のブラジャーとパンツを穿いてきたんだけど、やっぱりもっと大人っぽい色にすればよかった。


「……うれしい、です。好きな人に綺麗って言ってもらえて……」

「ごめんな。俺は、その……」


フィルさんが言葉に詰まったのは、傷だらけのフィルさんの身体。
でも、それはフィルさんがたくさんの人を守ってきた証。


「私は、フィルさんの身体を醜いなんて絶対に思いません。それは、貴方が今までいろんな人を助けた証、なんですから……」

「……ありがとう、リンネ」

「だから、私のこといっぱい愛してください。その……多少でしたら乱暴にされても、大丈夫、ですから……」


フィルさんは、私の胸に触れ……。


「やわらかい、な……。女の子の温かさを感じる」

「胸、小さいですけど、魅力感じますか?」

「いっぱい感じるよ。前も言っただろ……」

「それでも、言ってほしいんです。こういう時は特に言葉にしてほしいんです……」



心で思ってくれてるのはわかっていても、やっぱりこういうシチュエーションの時は言葉にしてほしい。

――――――女の子は、好きな人に言ってもらえるとそれだけで嬉しいんですよ。



「……もう、遠慮する必要はないな」

「遠慮なんか、しないで……ください」


私の言葉がきっかけとなり、フィルさんは私の胸だけでなく、身体中のあらゆるところにキスをし、その度に私の身体に電気が走るような快感が襲う。


「……おねがい、もう、きて、ください」


そして、私たちは身も心も一つになり……。


それは幾度もなく続き……。


その度に私たちは快楽の海に身をゆだねた……。



*      *      *



「……まさか、俺の方がダウンするとはな」

「ふふっ、格闘家の体力舐めないでくださいね♪」

「まいった……。俺のギブアップだ」


まさか、初体験で何度も求められるとは思わなかった。
最初だから、大切にしたかったし。

でも、リンネの方から幾度もなく求められると、俺もつい期待に応えたくなってしまう。

そのせいで、逆に俺の方がグロッキーになるとはな。 


「あの……一つお願いがあるんですけど、良いですか?」

「お願い?」


特に断る理由なんかないし、自分の彼女のお願いだったら、極力聞いてあげたい。
普段あんまり自分からお願いするリンネじゃないし。



「……明日、私と、その……デートしてください」

「それでいいのか? ほかにはないのか?」

「今はそれでいいです。フィルさんとはあんまり、こうして会えませんから……」



確かに執務官の仕事が多くて、リンネとあんまり会うことができない。
いつもさみしい思いをさせてしまってるしな……。


「わかった。じゃ、明日はクラナガンでデートをしよう」

「はい♪」


次の日、俺たちは、サンダーに乗ってクラナガンに向かうことになった。



*     *     *



「〜♪」

「あ、あのな……。確かにしっかりつかまってろとは言ったが……」


普通ならこんなに密着する必要はないんだけど、私はわざとフィルさんに胸を押し付けるように密着した。

だって、こうでもしないと、フィルさんに私の胸は小さいから感じてもらえないし……。



「……色々きついぞ、これは」


フィルさんがぼそっと言ったのが聞こえ、作戦成功と密かに心の中でピースをしてしまいました。

プリム、教えてくれてありがとう。効果抜群だったよ!!


クラナガンについた私たちは、そこでお買い物をしたり、ゲームセンターでプリクラをとったりして記念写真を作ったりしていっぱい思い出を作りました。


「この写真は、結構恥ずかしいぞ……」

「良いじゃないですか。誰も見ないんですから♪」


フィルさんが恥ずかしいといった写真は、私がプリクラをとる瞬間にフィルさんの唇にキスをした瞬間の写真。

実は、ここに来る前にフィルさんの手帳を見せてもらい、フーちゃんをはじめ、私のことを知ってる人たちほぼ全員とプリクラをとってるし。

さすがに焼きもちをやいてしまい、せっかくとるのだから、恋人同士でしかできない写真を撮ろうと思って、思いっ切って行動しましたが、私だって恥ずかしかったんですからね!!

夕方になり、食材を買い、フィルさんのマンションに戻った後、私は頑張って手料理を振舞いました。

メニューはプリムに事前に聞いていたのを用意。

そのメニューとは……。



「筑前煮に鮭のおにぎり、そして、ネギと豆腐の味噌汁か……」


そう、これはフィルさんが孤児時代に大好きだったメニュー。
孤児院でフィルさんが姉のように慕っていた人がフィルさんのために作ってくれたもの。

それをプリムから聞いていたのだ。



「……懐かしい、な。あのころを……思い出すよ」


ふと、フィルさんが寂しい笑みを浮かべる。
時折見せる、悲しい瞳……。

それは、いまでも決して拭えないもの。



「……聞いても、良いですか? フィルさんの孤児時代のこと」

「……聞いてもつまらないと思うぞ」

「それでも……聞きたいです。大好きな人のことだから」

「そっか……」



フィルさんが語ってくれたのは、フィルさんの孤児時代。
前にさわりだけは聞いたんだけど、こんな風にちゃんと聞くのは初めてだった。


フィルさんは、親の顔も知らなく、クラナガンの廃墟に捨てられていた子供だった。そこで、フィルさんは生きるためなら法に触れるぎりぎりのこともしたらしい。

――――――そうでもしなければ、生きられなかったから。

フィルさんの言葉は、とてもわかる。
私も孤児だったから、フィルさんのことは絶対に責めないし、それが当たり前の世界だってことも理解してる。


数年がたって、ある孤児院に拾われて、そこで、フィルさんは人の温かさを教えてもらった。
その経験がなかったら、今のフィルさんはいなかったとのこと。


でも、決して幸せにはなれなかった。

犯罪者が、フィルさんの孤児院に強盗に入り、そこでフィルさんの大切な人が、目の前で強姦され殺されてしまう。

フィルさんは、目の前で大切な人が乱暴されるのに、バインドで身動きが取れなくなってただ目の前で見てるしかなかった。

そのことはフィルさんのトラウマになってしまった。


「……そのあとは、レジアスの親父さんに助けられて、今ではあの人の世話になってるって話さ」

「だからなんですね……。私のことを、あんなに助けてくれたのは……」

「……かもな」


語ってくれたフィルさんの表情はとても寂しいものだった。
私は、そっとフィルさんを抱きしめて……。


「……リンネ?」

「これくらいしか私にはできませんけど……」

「十分だよ……」


せめて、フィルさんの悲しみが少しでも癒せれば……それでいい。


フィルさん、私は今はこれくらいしかしてあげれませんが、いつかはフィルさんの心を本当の意味で癒してあげたいです。


私は決して、フィルさんのそばから離れないから……。


だから、フィルさん……。


私のことをもっと頼ってください。


私も精一杯、あなたのことを愛しますから……。


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