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〜 Remember my heart 〜
Memory;14 Conclusion
「プラズマランサー……ファイア!!」

「くっ!!」


金色の魔力で作られた槍型のスフィアが、幾つもの槍の大群となって俺を襲ってくる。躱せない量ではないが、こうもひっきりなしで攻撃が飛んで来るんじゃたまった物じゃない。



「……厄介極まりないな。プラズマランサーでこうも攻撃されたんじゃ、マキシマムビットを使えない」

《フェイトさん、的確に弱点を突いて来てますね。マキシマムは現段階では高速移動と一緒には使えませんからね……》


そう、マキシマムはビットの高速攻撃で汎用性も高いが、その動きをさせるためのマルチタスクをかなり使用してしまう。

しかも、マキシマムはまだ試作段階。
そんなに無理もかけられない……。



「くっ……。ランサーの連続攻撃のせいで、なのはさんとどんどん距離を離されている!!」


ランサーをかわすのが精一杯で、なのはさんとの距離をどんどん引き離されてしまっている。このまま孤立無援になってしまったら、完全にアウトだ。


「フィル、私は全力で倒しに行くよ。貴方がいなくなれば、青組の戦力は5分の1は落ちるからね」

「偉く過大評価してくれるじゃないか。たがが一人のCG相手に……」


ったく、冗談じゃないぜ。俺はそんな役割はしてないっての――――――。
だけど、こうやって俺がフェイトの相手をしてれば、主戦力の二人は動きやすくなる。


*    *    *


「まずい……。フィルさん、フェイトさんの術中に完全にはまっちゃている」


私は現状把握のため、メンバー全員の様子を映し出して見ていたが、マキシマムビットを破られてからフィルさんは、フェイトさんからの攻撃で防戦一方になっていた。これでチームの要が完全に分断されてしまった。
なのはさんがアインハルトを戦闘不能にしてくれたから、しばらくは持ちこたえられるけど――――――。


「……フィルさん、頑張って。私も戦略をフル動員して頑張るから」


今はフィルさんを信じるしかない。
だから、私は私の出来ることを精一杯やるだけ――――――。

青組の勝利のために――――――。




*    *    *




「……どうやら完全に罠にはまったらしいな」
 
《……そのようですね》


辺りを見渡すと、俺の周囲360°がプラズマランサーで囲まれてしまっていた。
一見出鱈目に放っていたように見せていて、本当の狙いはプラズマランサーで俺の周囲を囲み完全に動きを止め、確実に俺を捉えるのが狙いだったんだ。


「気づくのが少し遅かった。やるなフェイト……」


躱すにも数が多すぎるし、ラウンドシールドで伏せ切れる数じゃない。
このままじゃ確実に堕とされる――――――。


「チェックメイトだね、フィル」


次の瞬間――――――。

俺の周囲に展開されているスフィアが一斉に発射態勢に入った。
おそらくフェイトが使う技は、只のプラズマランサーじゃない。
俺の予想が正しければ――――――。


プラズマランサー・ファナンクスシフト――――――。


ブレイカー系以外だったら、フェイトが使える必殺技では最大級の技。
ソニックムーヴでは躱しきれない――――――。

使うしかないか――――――。


アレを!!


*    *    *


「撃ち……砕けッッ!!」


フィルの周囲に張り巡らしたプラズマランサーを、全てフィルにめがけてはなった。
命中した空間は爆炎に包まれ、流れ弾が被弾したレイヤー建造物は跡形もなく消し飛ぶ。

そして―――。


「はぁぁぁぁ!!」


魔力を集中させ、大きな雷の槍を作り出し、それを―――――――。


「スパーク……」


思いっきりフィルにめがけて解き放った。


「……エンド」


解き放った魔力は一度集束し、凝縮した魔力は一気に爆発を起こし周囲のレイヤー建造物共々大爆発をした。
これなら仕留められるはず。あとは……。

フィルがワープを使っていなければだけどね――――――。


「……でも、使ってるんだろうな」


案の定、攻撃が命中した所にはフィルの姿はない。
ということは……。

私は、フィルがワープをするときに僅かに発する気を探る。


「……見つけた!!」


私はバルディッシュをライオットブレードに切り替え、後ろを一閃する。


「ちぃい……」


フィルも私の攻撃に対応し、プリムの魔力刃で防ぐ。
昔だったら、これでアウトだったけど、私も成長してるんだからね……。


*    *    *


「くっ!! これでもだめか……」


俺の切り札の一つ、ワープでファナンクスシフトを交わした後、フェイトの背後を取ったんだけど、ワープアウト時に発する、ほんの僅かな気の乱れから俺の位置を感じ取り、正確に攻撃をしてきた。

――――成長している。

フェイトは、あのゆりかごの時から比べものにならないくらい成長している。
体力もFAのスバルやノーヴェと遜色ないし、何より……。


「どうしたの……。それで終わり?」


―――あのプレッシャー。

今のフェイトは、とてつもなく強い。

このままじゃ……確実に負ける。


そう思っていたとき……。


「フィル!!」

「なのはさん!?」


アインハルトを撃破したなのはさんが、こっちのサポートに来てくれた。
なのはさんも向こうで、ティアのフルバーストを喰らって、だいぶダメージを喰らってはいる。


「……助かりました。正直ダメだと思ってましたから……」

「うん。フィル、今のフェイトちゃんに一対一で戦うのはだめ。フィルが万全だったらともかく、さっきのマシキマムで限界近いんでしょ……」

「はい……」

「だったら、作戦変更だね。ルーテシア」



*    *     *


「うん、アインハルトも治療中だし、コロナのゴライアスもダウンしてる。ここしかない……」


フィルさんには、なのはさんがサポートしてくれれば、フェイトさんに対抗できる。
後は。私が勝利の作戦を考え実行するだけ!!


「青組の皆さん!! 予定よりちょっと早いですが、作戦発動します!!」

「「「「「了解ッ!!」」」」」


発動の号令と同時に、ノーヴェにはヴィヴィオとスバルさんを。
フェイトさんには、フィルさんとなのはさん。

そして、キャロには私とリオが。


「2on1――――!!」

「ルー。あたしとコロナを無視するとは、良い度胸じゃないのッ?」

「うっふふー? 度胸じゃなくて、知性の勝負♪」


前中衛は息のあったコンビ同士!!
フェイトさんには、師弟コンビで速攻でつぶす。


「そして、私とリオは、支援役のキャロを中距離から封殺!!」

これが青組の必勝の策――――。

私が知識をフル動員した策よ。
汚いって言われたって良い――――。

この一戦だけは、絶対に勝ちたい!!


*    *    *


開始12分
戦闘空域の魔力散布は充分されてる。

数の均衡も崩れて、向こうが固まってくれてる今が、逆転の一撃を撃つチャンス!!


「赤組各員へ。防戦しながら戦闘箇所をなるべく中央に集めて。集束砲で……」

「一網打尽にするから!!」


おそらくあっちも同じ考えのはず。
ましてやあっちには、ブレイカーを撃てるのが二人もいる。

タイミングをしくじったらやられるのはこっち……。

なのはさん、フィル、勝負よ!!


*    *    *


「くっ……。あの二人を相手にするのはきつい」

フェイト LIFE 1000

正直、フィルだけでもやっかいなのに、それ以上になのはが嫌な攻撃をしてくる。
フィルとなのはのコンビネーションは、味方にすれば心強いけど、敵に回ればこれ以上嫌なことこの上なしだ。


「……使うしかない……か」


封印していた真ソニック。
ソニックを使えばスピードは今以上に跳ね上がるけど、防御力は半分以下になってしまう。
だけど、フィルのスピードは私とほぼ互角。このままじゃいつか捉えられてしまう。
この二人をかわすには使うしかない!!


「ソニック――――!!」

《Sonic Form》


私はソニックフォームを使い、なのはとフィルの攻撃を全てかわしていく。
でも、おかしい……。

あのふたりだったら、こんな単調な攻撃はしないはず。
確かに数は多いけど、かわせない速さじゃない。

まるで、わざとかわさせてるみたいな……。


「!!」

しまった!!
二人の本当のねらいは――――!!


「気づくのが、少し遅かったな。フェイト」


次の瞬間……。
ワープで私の懐に入ってきたフィルが……。


プリムのブレードで、私の胸元を一閃する。


「きゃああああ!!」


フェイト DAMAGE 660 →LIFE 340


「これでワープの使用回数は使い切ったけど、ダメージは与えたぜ」


確かに大ダメージを受けちゃったけど、でも、これでフィルもワープは使えなくなった。
今回の模擬戦でのフィルのワープ使用制限は2回。

さっきのと併せてこれで使い切った。
でもね――――。


いくら相手が自分の奥さんだからって、女性の胸元をさらけ出す攻撃は酷いよ!!
もしかして、相手がティアナでも同じ事をしたの!?


――――むぅ。

なんかムカムカする。


フィル。後で、じっくりお・は・な・しするからね。


*    *    *


2on1じゃ確かに分が悪い。

現にノーヴェさんも、フェイトさんも、もう、残りライフが少ない。
どちらかを回復させても、その隙を突かれたらアウト。

だけど……。


「アルケミック・チェーン!!」


地面に召喚の魔法陣を展開し、魔力の鎖を召喚する。
わたしはルーちゃんとリオにチェーンで攻撃するが……。


「うっふふー♪ 当たらない当たらない!!」

鎖は難なく躱されてしまう。
だけど、それがねらい――――。

アルケミック・チェーンは当てるためじゃない。
撃墜のための布石だから!!


「コロナ、今だよ!!」

「ナイスです、キャロさん!!」


コロナはゴライアスの腕を高速回転させ……。


「ゴライアス、パージブラストッッ!!」


その巨大な腕を、ルーちゃん達にめがけて思いっきり放つ。


「ロケット・パ――――ンチ!!」

「へっ?」

「し、しまった!!」


ルーちゃんが何かの魔法を発動させようとしてるがもう手遅れ。
ゴライアスの腕は、周囲のレイヤー建造物もろとも二人を吹っ飛ばした。


「うそ――――っ!?」


ルーテシア Team Blue FB DAMAGE 2200→LIFE 0
リオ Team Blue GW DAMAGE 1700→LIFE 0


*    *    *


しまった!!
完全に油断してた――――。

キャロがあんな単調な攻め方をするわけ無いのに!!

でも、簡単にはやられない。
死なば諸共よ!!


「!!」


私はやられる直前に発動していた捕縛魔法で、コロナの自由を奪う。
ライフは0になったけど、この模擬戦では、前に発動していた魔法は有効。

そのためトラップ的な役割を果たせた。


「う、動けません!?」

「それはそうよ。私が仕掛けた最後の魔法よ。そう簡単に解けちゃ困るわよ」


――――フィルさんごめんなさい。
私が出来るのはここまでです。


「コロナ!!」


キャロがコロナを助けに行こうとした瞬間……。


「へう――――っ!?」


後頭部に桜色のスフィアが、思いっきり命中した。
その威力にキャロは涙目になっている。


キャロ DAMAGE 1700→LIFE 0


「はい、キャロ撃墜だよ」

「え――――!! なのはさんいつのまに!?」

「勝ったと思ったときが危ないとき!! 現場での鉄則だよ」


その通りだ――――。
油断したせいで、私は撃墜されちゃったんだから……。

なのはさん、すみません。
後はお願いします!!


*    *    *


魔力散布も充分。
タイミング的にも今だ!!

「ブラスター1ッッ!!」


わたしの残り魔力も少ないけど……。

マルチレイドで一網打尽させる!!


わたしは、集束魔法スターライトブレイカーの発射態勢に入る。
ブラスタービット6基使った必殺の魔法。

これで決着をつける!!



*    *    *


なのはさんが集束に入った――――。

「赤組生存者一同!! なのはさんを中心に広域砲を撃ち込みます!! コロナはそのまま!! 動ける人は離脱を!!」


あたしも周囲から魔力をかき集め、ブレイカーの発射態勢に入る。
あたしなりに修練を積んで、発展させたスターライトブレイカー。

今、見せてあげるわよ!!


*    *    *


「まずい!! ティアとなのはさんが集束砲の発射態勢に入った!!」


今の俺じゃブレイカーを撃つ魔力は残っていない。
しかも、離脱しようにもフェイトがマークしていて、この場からの離脱は不可能。

ワープも使い切ってしまっている以上、残された手はたった一つ――――。


「ビット展開!! ラウンドシールド・リフレクター・オーバル!!」


俺はビットを使って、自分の周囲にラウンドシールドで作った球体のシールドを展開する。
本来は、前面に展開して鏡面状のシールドで相手の攻撃を跳ね返す物だけど、広範囲型のブレイカーじゃそれは厳しい。
これでどれだけ二人の砲撃を防げるかだ――――。

そして俺は、フェイトもシールドの中に引き入れる。


「フィル!?」

「今は一時休戦だ。ソニックのままじゃあっという間に落ちるぞ!!」

「あ、ありがと……」

「礼なんか良い。俺の障壁で持ちこたえられるかだな……」


正直言って、あの二人のブレイカーを防ぎきる自信はない。
もう少し魔力が残っていたら話は別だけど……。

その時、俺の手にフェイトの手が、そっと置かれ……。


「だったら、私も手を貸すね。少しはマシになるよ」


フェイトの魔力が、俺の体内に入っていくのが分かる。
温かくて、優しいフェイトの魔力が……。


「……サンキュ、フェイト」


さて、あとは天に運を任せるとしますか!!


「「スターライトッ―――!!」」


二人のかけ声に反応して、オレンジと桜色の魔力がそれぞれに集まっていく。
ティアは『ファントムストライク』
なのはさんは『マルチレイド』

どっちも広域型の集束砲――――。

「「ブレイカ――――ッッ!!」」


着弾した中心から爆風となって、辺り一帯のレイヤー建造物を木っ端微塵にしていく。


そして……。



「……う……うぐっ……」

「気がついた、フィル」


眼を覚ますと、いつの間にか俺はフェイトに膝枕をされていた。
まだ、勝負はついてないはずだけど……?


「フェイト……。俺はいったい?」

「フィル、リフレクターで、スターライトブレイカーを防いだんだけど、私もフィルも……ね……」

フェイトに言われて、自分のライフを確認すると……。


フィル・グリード LIFE 70 行動不能
フェイト・T・グリード LIFE 30 行動不能


「……どうやら、互いにゲームオーバーのようだな」

「だね……」


まぁ、あの最終戦争状態のブレイカーの中心地にいて、ライフが0にならなかっただけでもマシだろう。


*    *    *


「でも、フィル酷いよ!! 女性の胸元をさらけ出すなんて……」

「自業自得。ソニックを使ったら、防御は紙になるって事は分かってたんでしょう」

「……まあね。だからこそ、最後まで使いたくはなかったんだけどね」


なのはとフィルの連携は、切り札のソニックを使わざるを得ない状況に追い込まれた。
インパルスのままだったら、躱しきれないし、結局はソニックを使わされた私の負けって事かな……。


「でも、フィルは役得だったかな。私の胸をみれたんだしね♪」

「……うっさい」

「ふふっ」


普段から、私の胸なんて見慣れてるのに、こうやってからかうのには弱いんだね。
でも、そんなフィルも大好きだよ。

しばらく、こうしてフィルに膝枕をしてたら……。


「……どうやら、模擬戦の終了のようだな」


終了の合図がならされた……。


「だね……。最後まで残っていたヴィヴィオとアインハルトも相打ちになったみたいだし……」

「さて、戻るとしますか……。膝枕がちょっと名残惜しいけどね」

「もう……ばか」


こんな時じゃなくたって、二人きりの時だったらいつでもしてあげるよ。
私も、こうしてフィルと一緒にいるのが大好きなんだからね……。


青組 行動不能2名 撃墜4名
赤組 行動不能2名 撃墜4名


試合時間19分35秒 全員戦闘不能につき 引き分け 

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あきゅろす。
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