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〜 Remember my heart 〜
Memory;13 MAXIMUM
「いやあ、みんな元気にやっとるねえ」

「ほんとうにねえ」

「ですね。CG(センターガード)同士も足止めてますし、陣形も崩れてませんね」

「うん、綺麗な戦闘だわ。でも、エリオ君本当にごめんなさい。本当なら参加できていたのに……」

「いいえ、これは僕が自分で決めたことですから……」


こうしてみんなの戦いを見ているのも、充分に勉強になる。
欲を言えば、フィルさんと戦ってみたいという気持ちがあるけど、今はそれよりも復帰したフィルさんの力がどのくらいなのか、その方が興味あるから。


現在のライフポイントは―――――。



§TEAM RED                  

CG:ティアナ・ランスター:2500
GW:フェイト・T・グリード:2800
FA:ノーヴェ・ナカジマ:2900(-100)
FA:アインハルト・ストラトス:2600(-400)
FB:キャロ・ル・ルシエ:2200
WB:コロナ・ティミル:2500



§TEAM BLUE

CG:高町なのは:2500
CG:フィル・グリード:2500
FA:スバル・ナカジマ:2900(-100)
FA:高町ヴィヴィオ:2600(-400)
FB:ルーテシア・アルピーノ:2200
GW:リオ・ウェズリー:2800



「FB(フルバック)の二人も支援のセッティングがそろそろ済む頃だし、アタッカー達のバランスも崩れ始めるここからが見物よ」



*    *    *


「ソニックシューター、ファイアッ!!」


虹色の魔力弾が、アインハルトさんに向かって放たれる。
数も威力も充分。当たれば間違いなくライフを削ることが出来る。


(良し!! アインハルトさんが受けには入る!!)


足を止めてくれれば、着弾の隙に回り込んで攻撃することが出来る。
あたしは全速でダッシュし、攻撃態勢に入る。

だけど―――――。


「いっ!?」


アインハルトさんに。全部のバレットを受け止められてしまう。
しかも、弾殻(バレットシェル)を壊さないで、しかもそれだけで終わらず―――――。


「覇王流……」


わたしのバレットを受け止めたまま、そのまま野球ボールを投げるように、わたしのバレットを使い―――――。


(これってまさか!? まずい!!)


つかさず防御態勢にはいるが―――――。


「旋衝破」


わたしのバレットは、全てアインハルトさんに投げ返されてしまった。


(反射技(リフレクト)―――――!?)


ヴィヴィオ DAMAGE 1100 →LIFE 700


何とかとっさに受け身を取って、最悪のダメージは逃れたけど、それでもかなりのライフを持って行かれてしまった。



*    *    *



「すっげー!! 何今の!? 弾丸反射!?」

「いえ、違います。おそらくあれは……」

「エリオ君の想像通りよ。あれは反射(リフレクト)でも弾丸反射でもないわね。あれは、受け止めて投げ返したの」

「そんな事できんの?」

「真正古代(エンシェント)ベルカの術者なら、理論上はね」


それにしても、あの年齢であの技術――――。
一体どれだけ苛烈な修練を積んだというの――――?


「あれ? 覇王っ子、なんか様子が……」


スクリーンに映し出されたアインハルトを見ると、右肩の所から魔力爆発が起こり、アインハルトにもダメージ計算がされる。


アインハルト DAMAGE 300 →LIFE 2300



「うおお!! なになに?」

「ヴィヴィオの反撃ですよ。あの一瞬、カウンターで右肩に当ててたんですよ」

「ちょっとズレてたら、結果は逆だったかもね」


これでフロントアタッカーが崩れ、おそらく赤組は攻撃を仕掛けるわね。
さてさて、フィルになのはちゃん。

この状況、どう切り抜けるかしら――――。



*    *    *


「アインハルト、ストップ!!」


あたしは、ヴィヴィオに追撃をかけようとしたアインハルトをストップさせる。


「今のダメージなら、ヴィヴィオは一旦下げられる。この隙に戦陣突破で斬り込んで!! 目標は……」

「青組のCG(センターガード)なのはさんのところ!!」

「―――――はいっ!!」


フィルは、フェイトさんが足止めしてくれてるから、そっちはフェイトさんに任せればいい。
向こうは、フィルとなのはさん、指揮が出来る人間が二人いる。

どっちかを早めに叩いておかないと、間違いなくこっちが危ない!!



*    *    *




「凄い、凄い―――――!! あんな技があるんだ!! でも、わたしだって!!」

「うん、ヴィヴィオに火がつき始めた。とはいえ……」


さっきのアインハルトからの反撃は、無視できるものじゃない。
ライフ3桁で、これ以上追撃させるのは得策じゃない。


「ヴィヴィオ、治療するから一旦戻って」

「ええ――――ッ?」


スクリーンに映し出されたヴィヴィオは、明らかに不満な顔をしている。
確かにアインハルトと早く戦いたいのは分かるけど――――。


「ヴィヴィオ、そんな状態で戦っても、フィルさんの足手まといになるだけ。こんな序盤で落ちる方がまずいのよ」

「……うん」

「私ね……。今回は絶対に勝ちたい。フィルさんに勝利をプレゼントするためなら、どんな手だって考える。例え手段が汚いって言われても!!」

「ルールー……」


フィルさんって、普段は勝負事でも、あまり率先して勝ちたいという気持ちは出さない。
そんなフィルさんが今回の紅白戦、勝ちたいってはっきりと言った。

だからこそ勝ちたい。勝ってフィルさんと一緒に喜びたい!!


「だから、お願い。ここは一旦戻ってライフを万全にして!!」

「うん!!」


フィルさん、サポートは私に任せて、フィルさんは全力で戦ってください。
全力全開、おもいっきりやっちゃってください!!



*    *    *



「「はあああああああ!!」」


プリムとバルディッシュの激突。
プリムの白銀の魔力刃をバルディッシュの柄で受け止め、その激突で火花がほとばしる。

激突の衝撃を利用し、私とフィルは、互いに距離を取り構えを取り直す。


(フィル、本当に強くなった。さっきから全力で撃ち込んでるのに、クリーンヒットが取れない)


今までのフィルだったら、これだけの打撃を放ったら、もっとダメージを受けている。
だけど、今のフィルは本当に強い――――。

それだけ、この半年間苛烈な修練をしてきたって事だ。

フィル LIFE 2300(-200)
フェイト LIFE 2500(-300)


《フィルさん、こちらルーテシア。ヴィヴィオの復帰まであと少し。それまでフェイトさんの足止めをお願いします》

「了解だ。こっちは任せろ」


まずいな――――。
正直言って、今のフィルを相手にするのはかなり厳しい。

しかも、フィルはまだ切り札を出していない。



「……そろそろ頃合いだな。プリム、いよいよ『アレ』を使うぞ」

《アレですね……。良いですよ、いつでもオッケーです!!》


そう言った直後、フィルが六つのビットを展開させる。
そのビットは、今までのブラスタービットとは違い、青く細長い銃口のような形をしている。


「……な、何、あれ? ブラスタービットとは違う?」

「驚くのはまだ早いよ。この新モード『マキシマムモード』の力、存分に見せてあげるよ」

「マキシマムモード……? これがフィルの新しい力……」

「散開しろ!! 『マキシマムビット』!!」

《maximum bit Spread out!!》


私がそのビットの動きを注意してるが、その瞬間――――――。

全てのビットが消え―――――――。


「……き、消えた!? ま、まさか!? きゃああああっっっ!!」


気づいたときは、すでに目の前に六つの白銀の砲撃が迫っていた。
何とかシールドで防いだけど、勢いを殺しきれないで吹っ飛ばされ、ダメージもかなり負ってしまった。

フェイト DAMAGE 1500 →LIFE 1000


何とか迎撃しようと、プラズマランサーでビットを撃ち落とそうと狙いを定める。


しかし―――――――。


「……なっ!?」


フィルのビットがさらに動きを増した。

その動きは、まるで神速の領域。
目で捉えることはできず――――――それ故、狙いなんて定められることなど無理だ。

かろうじて、ビットが放つ白銀の光や、残像が残って見えるほどだ。
ビットに向けてプラズマランサーを放つが、ランサーは残像を貫くのみで、ビット本体を捉えることは出来ない。

そして、再びビットから白銀の砲撃が放たれる――――――。


「……くっ!!」


間一髪、オーバル・プロテクションで攻撃を防ぎ、はじき飛ばす。


「……なるほどね。やっと……わかった。まさかビットに、ソニックムーヴをかけて飛ばすなんて……」


今までの動きを見て、やっとビットの特性をつかむことが出来た。
あのビットから放たれていた白銀の光――――――。

あの光は、私やフィルが加速魔法のソニックムーヴを使うときに僅かに発する物。

あの光のおかげで、やっとマキシマムビットの高速移動の秘密が分かった。
それにしても、ビットにソニックムーヴをかけるなんて、本当にフィルは戦いの天才だよ。


「……なんとか、打開策を見つけないと……あれ?」



息を整えながら考えてた私の目に映ったのは、その場から殆ど動かないフィルの姿。
さっきから、いくらだって私に決定打を与えるチャンスがあったはず。

だけど、さっきからビットを使っての攻撃以外、殆ど動いていない――――――。


「……そっか!!」


私の予想が当たっているなら、あのビットの弱点は――――――!!



「それじゃ、そろそろとどめを刺させてもらう。マキシマムビット・フルバースト!!」


フィルはビットの動きを、さらに速くし、ビットの残像もさらに増す。
残像と本体からの砲撃――――――。

その数は20を超える。


「一か八か!! バルディッシュ、ライオット!!」

《Riot Zamber》



バルディッシュのカートリッジをロードし、ライオットブレードが二本に分裂させる。
激しく帯電した、金色に輝く、二振りの刃――――――ライオットザンバー・スティンガー。


「ライオット……か。でも、それでどうするんだ!?」

「フィル、あなたのマキシマムビットの弱点、それは……」

《Protection release sonic move.》


砲撃を防いでいたシールドを解除し、直後に一瞬にして急加速する。
それに認識が遅れたビットの放った砲撃が、先程まで私がいた空間を貫いていく。



「はぁああああっっ!!」


それと同時にソニックムーヴで、フィルの懐に一直線で突撃する。
それに気づいたフィルが、ビットで迎撃をするが、ビットの高速移動のスピードよりも速く動き、その攻撃を全てかわす。


「マジかよ……。真ソニックを使ってないのに、あの動き……」

「……そうだよ。防御力が犠牲になってしまう真ソニック。それを解消するために、私も鍛え直したんだからね!!」


真ソニックの弱点。
それは、防御力の低下――――――。

ジャケットを極限までなくすことで、高速移動に魔力を回せるが、反面、一撃を食らってしまうと、大ダメージになってしまう。

最初は新しいフォームを考えていたんだけど、根本的な問題、私の体力の無さを克服しない限り、どんなフォームを考えたって使いこなすことは出来ない。

だから、私はこの半年、ひたすら身体強化をし、インパルスフォームでも真ソニック並のスピードで動けるようになった。

その結果、防御力を落とすことなく、パワーアップすることが出来た。


「切り裂け!! ライオットブレード!!」

「ちいぃいい!!」


上段から振り下ろされたライオットブレードは、フィルのバリアジャケットを切り裂き、胸元の一部があらわになる。



フィル DAMAGE 1500 →LIFE 800


「……よくわかったな。マキシマムの弱点……」

「……高速移動で仕留めるのがフィルのスタイルなのに、全然動かなかったからね」


マキシマムビットの弱点――――――。
おそらく、ビットを操ることにかなりの演算領域を使用しているため、自身の行動にまで、それを振り分ける余地がない。
ソニック・ムーヴまで取り入れる荒業を使っているんだ。有り得ないことではない。


「だけど、勝負はまだこれからだ。マキシマムの能力は、これだけじゃない!!」

「うん、フィルの全力全開。私が全部受け止めてあげる!!」


互いにライフを削られたが、勝負はこれからが本番。
フィル、この勝負絶対に負けないからね!!



*    *    *


「まずいわね……。フィルさんが予想以上にダメージを受けてしまってる」


本来なら、フィルさんがあのマキシマムビット・フルバーストで圧倒する予定だったのに……。
だけど、フェイトさんが弱点に気づき、一気に互角に持ち込んできた。

本当ならフィルさんを戻して、回復させたい。
だけど、ここでフィルさんを戻したら、間違いなくフェイトさんがなのはさんの所に行ってしまう。

ここはフィルさんを信じるしかない。


「青組一同、ヴィヴィオが復帰したら例の作戦に移ります。いつでも動けるようにお願いします!!」

『了解ッ!!』


この作戦がうまくいけば、フィルさんの負担も軽くすることが出来る。
フィルさん、もう少しだけ持ちこたえてください。



*    *    *


『ティアさん、ルーちゃんが何か企んでいます!!』

「あの子の悪巧みは洒落にならないのよね」


ルーテシアの悪巧みは、本当に洒落にならない。
あの子が考えることは、どちらかというとフィルに近い。

あっちにフィルがいるだけで頭が痛いのに、ルーテシアまでいるから本当に質が悪い。


「アインハルト!! 向こうの作戦の要は、まず間違いなくフィルかなのはさんよ。今のところフェイトさんがフィルを押さえてるから、全力でなのはさんを止めて!!」

「承りました!!」


フィル、あんたには悪いけど、この勝負負けられない!!

あんたも自分の強さを証明したいのと同じで、あたしも証明したいの――――――。


あんたのパートナーとして、一緒にいるためにもね!!

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