〜 Remember my heart 〜
Memory;01 セイクリッド・ハート
次元の海の中心世界『ミッドチルダ』
都市型テロ『JS事件』の発生と解決からは―――――。
すでに4年が経過して―――――。
対処に当たった『機動六課』も既に解散―――――。
そして―――――。
未来から来た戦士フィル・グリードも―――――。
現在はその傷ついた心と体をひととき休めていた―――――。
* * *
わたし高町ヴィヴィオは、ミッドチルダ在住の魔法学院初等科の4年生。
『公務員』のママとふたり暮らしで……。
「ヴィヴィオ、今日は始業式だけでしょ?」
「そだよー。帰りにちょっと寄り道してくるけど」
「今日はママもちょっと早めに帰ってこれるから、晩ご飯は4年生進級のお祝いモードにしよっか?」
「いいねー♪」
やったね!! わたし、ママの料理大好き!!
普段からママの料理はおいしいんだけど、こういったお祝いの時は、わたしの大好きな物がたくさん並ぶんだ!!
「さて、それじゃ」
「うん」
「「いってきまーす!!」」
わたしとママはハイタッチをする。こんな感じで結構仲良し親子です。
たまに……本当にたまにけんかもするけどね……。
* * *
St.ヒルデ魔法学院 初等科・中等科棟
「ヴィヴィオ!!」
「ごきげんよう、ヴィヴィオ」
「おはよー」
「コロナ!! リオ!!」
後ろから来たのは、ふたりの女の子。 コロナ・ティミルとリオ・ウェズリー。
髪をツインテールにまとめて、おとなしめの女の子がコロナで、髪が短く元気に話しかける女の子がリオ。
ふたりとも私の大切な親友です。
「クラス分けもう見た?」
「見た見た!!」
「3人一緒のクラス!!」
「「「いえーい♪」」」
嬉しくてわたしたちはハイタッチで喜んでいたんだけど……。
「くすくす……」と言う声で我に返って……。
「あらはしたない」
「だね……」
「あらあら、まあまあ」
* * *
『選択授業で応用魔導学を選択したみなさんは、これから授業も忙しくなってくると思いますが……』
仲良しの友達と―――――。
『しっかり学んでおけば将来きっと役に立ちますからね』
結構ハイレベルだけど、楽しい授業―――――。
「はぁー、終わった終わった!!」
「ヴィヴィオ、寄り道してく?」
「もちろーん」
コロナの誘いは願ってもない。
学校帰りの寄り道が、何よりも楽しみなんだから!!
「また図書館に寄っていこーよ!! 借りたい本があるし」
リオの言うとおり、今日は図書館に行きたい気分かも……。
だけど……。
「あ、その前に教室で記念写真を撮りたいな。お世話になってるみなさんに……」
「送りたいんだ」
なのはママ、フェイトママ、スバルさんにティアナさん……。
ギンガさんにナンバーズのみんなに、ルールー、エリオにキャロ……。
八神家のみなさん、聖王協会のみなさん、高町家のみなさん……。
そして……。
フィルさん……。
みなさんのおかげで――――。
ヴィヴィオは今日も元気ですよ……って……。
* * *
「あ、メールが帰ってきた!!」
わたしの端末にメールが届き、メロディが鳴る。
「そういえばヴィヴィオって、自分専用のデバイス持っていないんだよね?」
「それ、フツーの通信端末でしょ?」
「そーなんだよ!! うち、ママとレイジングハートがけっこー厳しくって……」
そうなんです。
ママとレイジングハートは、基礎を勉強し終えるまでは、自分専用のデバイスとかいりませんということで、まだ専用のデバイスを持たせてくれないんです。
何も、フィルさんが作ってくれた最高級のデバイスじゃなくて良いから、デバイスが欲しいっていつも思ってるんだ。
「リオはいーなー。自分専用のインテリ型で」
「あははー」
《I’m sorry (すみません)》
そんなことを思っていたら、また端末にメールが届いた。
今度はママからだ。
「なにかご用事とか?」
「あーへいきへいき」
メールを開いてみてみると……。
「『早めに帰ってくると、ちょっと嬉しいコトがあるかもよ……』だって」
「そっか」
「じゃ、借りる本を決めちゃお!!」
「うん!!」
* * *
実はわたしは、その昔生まれ方関係でちょっといろいろあったりした。
なのはママとも血のつながった親子ではないし……。
今は仲良しのみんなとも……。
ほんの数年前には……。
本当にいろいろなことがあった……。
だけど、わたしを必死で助けてくれたいろんな人たち……。
わたしがわたしのまま、高町ヴィヴィオとして生きることを許してくれた人たちのおかげで……。
わたしは今……。
なんだかすごく幸せだったりします……。
「たっだいまーっ」
「おかえり!! ヴィヴィオ」
「あれ? フェイトママ!? それにバルディッシュも!?」
「うん♪」
《Hello lady》
フェイトママはなのはママの大親友。
9歳の頃からだって話だ。フェイトママもこうやって時々、家に来てくれて一緒にいたりする。
一年前、フェイトママとフィルさんは結婚して、幸せな家庭を築いている。
フィルさんは、デバイスマイスターの資格を取った後、フェイトママと一緒に執務官をしていたんだけど……。
4年前のあの時……。
わたしを助けるために、かなりの無理をしてしまって……。
そして……。
ゆりかごでフェイトママをかばって、命を失いそうになって……。
その時の傷や普段からの無茶がたたって、長期の休みが必要になってしまった。
ちゃんと休めば、また元のようになるので、今はフェイトママが一所懸命フィルさんのことをみている。
それでも、フィルさんは何も出来ないのは性に合わないと言って、休職中にデバイスマイスターのさらに上のメカニックマイスターの資格を取って、さらに少しでもサポートできるようにって、司書資格まで取ってしまった。
だから、フィルさんは無限書庫に行って、自分で調べ物をすることが出来る。
そうやってフィルさんは様々な所で、フェイトママの支えになっている。
フィルさんは、『これくらいしか凡人の俺には出来ないから……』とか言ってるけど……。
はっきり言って、どの資格もかなり難関でそんな簡単にとれる物じゃない。
どこが凡人なんだかと、いつもママ達が言っている。
「フェイトママ、船の整備で明日の午後までお休みなんだ。だからヴィヴィオのお祝いをしようかなって」
「そっか……。ありがとフェイトママ」
「お茶を入れるから着替えてくるといいよ」
「はーい」
わたしは制服から普段着に着替えて、キッチンにやってきた。
フェイトママが焼いてきてくれたマフィンを一緒に食べながら、楽しく会話をする。
そういえばちっちゃい頃、わたしがなのはママと親子になるときに、フィルさんと一緒に後見人なってくれて……。
そのときなんだかわたしは、フェイトママのこともママって思っちゃったらしくて――――。
以来ずっと、わたしにはふたりのママがいる状態。
まぁ、ちょっと変わっているけど、ふたりともわたしの大切なママです。
実は……フィルさんのこともパパって呼んでいたんだけど……。
大きくなってフィルさんのことを意識し始めてからは、パパって呼ぶのは出来なくなっちゃった。
フェイトママと結婚しちゃったから、フィルさんのことをこんな風に好きになっちゃ駄目なんだけど、でも……。
今のわたしにとって、フィルさん以上の人っていないんだよね。
だから、わたしがもっと大きくなって、フィルさん以上の人が見つかるまでは無理かな。
* * *
「ごちそうさまー」
「さて、今夜も魔法の練習しとこーっと」
立ち上がって、いつものように魔法の練習に行こうとしたとき……。
「あ、ヴィヴィオちょっと待って!!」
「?」
なのはママに呼び止められた。
いったいなんだろう?
「ヴィヴィオも、もう4年生だよね」
「そーですが」
なのはママが今更のように聞いてきた。
わたしが4年生になったのは、もう分かっていることなのに?
「魔法の基礎も大分出来てきた。だからそろそろ、自分の愛機(デバイス)を持っても良いんじゃないかって」
「ほ…ほんとっっ!?」
今までどんなにお願いしても、決していいよって言わなかったなのはママが……。
やっと……やっと認めてくれたんだ!!
「実は今日、私がフィルから受け取ってきました。本当は自分で渡してあげたかったって言ってたけど……」
「調べ物がまだ終わらないから、パーティには間に合わないから、これだけでも渡してあげてって言われてね……」
フィルさんがわたしのデバイスを……。
デバイスをもてるだけでも嬉しいのに、フィルさんがわたしのために作ってくれたなんて……。
「ヴィヴィオ、あけてみて」
「うん!!」
一体どんなデバイスなんだろ?
期待に胸をふくらませて、箱を開けてみると……。
「うさぎ……?」
そこに入っていたのはウサギのぬいぐるみ……。
「あ、そのうさぎは外装っていうかアクセサリーね」
「中の本体は、クリスタルタイプだよ」
そう言われて、もう一度見ようとしていたら……。
フヨフヨ
「とっ…!?」
うさぎが飛んで、右手を挙げて『ども』ってした。
というか……。
「ととと飛んだよっ!? 動いたよっっ!?」
「それはおまけ機能だって、フィルが……」
「フィルさんが……?」
「うん、普通に作るより、こういった可愛い機能があった方が、ヴィヴィオに馴染みやすいんじゃないかって……」
フィルさんらしい配慮だ。
ただ作るんじゃなくて、使う人のことをすごく考えてくれる。
ティアナさんのクロスミラージュも、フィルさんのプリムも本当に使う人に合わせて作られているから。
「フィルやわたし達がいろいろリサーチして、ヴィヴィオのデータに合わせた最新式ではあるんだけど……」
「中身はまだ、殆どまっさらな状態なんだ」
「名前もまだないからつけてあげてって」
暖かい……。
このデバイスは、ママ達の、そして……フィルさんの思いがいっぱい詰まっているんだ。
フィルさんはサポートに回っても、仕事量が半端じゃないから、とっても忙しいのに……。
それでもわたしのために、作ってくれたんだ……。
ありがとう……。
このデバイス、大切にします!!
「あのね……。実は名前も愛称も、もう決まっていたりして」
「そうだママ!! リサーチしてくれたってことは、アレ出来る!? アレ!!」
「もちろんできるよ!! フィルが作るデバイスだよ。その辺は抜かりはないよ。セットアップしてみて」
「……?」
* * *
「マスター認証……高町ヴィヴィオ」
わたしの足下にベルカ式の魔法陣が展開される。
「術式はベルカ主体のミッド混合ハイブリッド……」
「わたしの愛機(デバイス)に個体名称を登録。愛称(マスコットネーム)は『クリス』」
そして……
「正式名称は『セイクリッド・ハート』!!」
これはずっと前から決めていたことだ。
自分の愛機を持ったら、ママのレイジングハートから名前の一部をもらおって。
「いくよクリス」
わたしの呼びかけにクリスが、ビシッっと右手を可愛くあげて反応する。
思い描くはあのイメージ!!
「セイクリッド・ハート!!」
「セ――ット・ア――――ップ!!」
セットアップが終わると、わたしが思い描いたとおり、あの姿になることが出来た。
大人になった自分の姿に……。
「ん……!!」
「やったあ―――!! ママ、ありがとー!!」
「あ、上手くいったね!!」
《Excellent!! (お見事です)》
ママもレイジングハートも、うまくいったことに笑顔で褒めてくれた。
だけど、フェイトママの様子が……。
「フェイトママ?」
フェイトママは膝から崩れ落ちてしまった。
そしてなのはママが思い出したように……。
「……あ」
そして……。
「なのは……ヴィヴィオがヴィヴィオがぁぁ――!! なんで聖王モードに!?」
「いや、あの、落ち着いてフェイトちゃん。これはね……」
えっと……これ、明らかにフェイトママ何にも知らないって感じだよね。
まさかママ……。
「ちょ……!! なのはママ!! なんでフェイトママに説明してないの!!」
「いや、その……つい、うっかり……」
「うっかりってー!!」
うっかりじゃないよ!!
なのはママ、フェイトママに肝心なこと言って無いじゃない!!
「ごめーん、てっきりフィルがフォローしてくれたと思っていたから……」
「もーーーーーーーうーーーーーーーー!!」
いつもフィルさんに任せっぱなしだから、こうなっちゃうんだよ!! フィルさんだって、全てのことが出来るんじゃないんだからね!!
なのはママが言わなきゃいけないことは、ちゃんと自分でしてよ!!
* * *
陸士108隊隊舎 20:38
「……連続傷害事件?」
『ああ……まだ「事件」じゃないんだけど……』
「どいうこと?」
あたしとチンク姉達はナカジマ家で、ギンガからの通信を聞いていた。
でも、まだ事件じゃないってどういうことだ……?
『被害者は主に各党系の実力者。そう言う人に街頭試合を申し込んで……』
「フルボッコってわけ?」
『そう』
おいおい、中々物騒なことをしてくれるじゃないか。
街中で喧嘩とは良い度胸してるぜ!!
「あたし、そーゆーの知ってるっス!! 喧嘩師!! ストリートファイター!!」
「ウェンディうるさい」
ディエチがウェンディに一言注意してるが、ウェンディの興奮は収まりそうにない。
ったく……。もう少しおちつけっての。
『ウェンディ正解。そう言う人たちの間で話題になってるんだって。被害届が出ていないから、事件扱いじゃないんだけど、みんなも襲われたりしないように気をつけてね』
「そう……」
「気をつける」
つーか、見つけ次第、あたしが逆ボッコだ。
「ふむ……。これが容疑者の写真か」
『ええ。自称「覇王」イングヴァルト』
「それって……」
『そう……』
『古代ベルカ――聖王戦争時代の王様の名前』
この事件、どうやらやっかいなニオイがいっぱいしやがる。
フィル―――――。
出来るだけ、お前を巻き込みたくない。
この事件はあたし達できっちりカタつけるからな。
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