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〜 Remember my heart 〜
SPECIAL PROGRAM vol.3 if ending ノア
《マスター……本当に良いんですね。クロスさんを助けるためには……》

「分かってるさ……でも、俺はもう、後悔したくないんだ。ノアさんのあの悲しい目を見たくないんだ……」

《それでは……行きますよ。暴走しているクロスさんは無敵ですよ》

「ああ……」


それでも、行かなくてはならない。
そのために俺は、この時代に来たんだ。


ノアさんの相棒だったクロスさんを助け

そして……。

あの人の心に笑顔を取り戻すために……。



*    *    *



「ううう……」

「くっ……」

「マスター……!!」



私となのは達は何とかして、マスターを止めようとしたが、ゼストさん達もクロノ達もやられてしまい、今動けるのは、なのはと私だけになってしまった。

はやてと守護騎士達も、なのは達のおかげで復活して、一緒に止めようとしてくれたんだけど、今のマスターの前に全員倒されてしまった。



「ノアちゃん……何とか動けそう?」

「正直……厳しいですね」

「そっか……」


それでも、なのははレイジングハートを杖代わりにして、何とか立ち上がろうとする。


「こうなったら……私がマスターの中に入って、直接意識に呼びかけるしかないです!!」

「で、でも、そんなことをしたら、ノアちゃんが!!」

「……大丈夫ですよ。マスターは、絶対助けますから……」


私はマスターに強制ユニゾンをしようと、術式を展開しようとしたとき……。


「それは、ちょっと待ってくれないか」


突然、私の前に黒髪の男性が現れ、男性が右手から魔力を放つと、魔法陣が消滅してしまい、術式を中止させた。


「う、嘘……私の術を、どうやって?」

「その術では、彼は助からないよ」

「何で、そんなことを言えるんですか!!」

「……知っているからさ」

「えっ……?」



どういう事ですか?
知っているって、この人は何を知っていると言うんですか?



「あなたは……何者なんですか?」

「……俺は、フィル・グリード。通りすがりの魔導師さ」

「フィル? 聞いたことありませんね。管理局の局員ではないみたいですけど?」

「……それも、後で話すよ。この戦いが……無事終わったらね」


確かにこの人の言うとおりだ。
今はマスターを助けることが先決だ。


「さっき、ユニゾンじゃマスターを助けられないって言いましたけど、どうしてそんなことを言うんですか?」



ユニゾンのことを知っていたのもそうだけど、あの術を強制解除したことも知りたい。
あの術は、私のオリジナルだ。
見たこともない魔法を、ああも簡単に解除はできない。



「……あのまま、ユニゾンをしたとしても、君の方が意識を持って行かれ、消滅してしまう。それくらい今の彼の力は強いんだ」

「……そうかもしれません。だけど、これしか方法がないんです!! だったら、あなたには他の方法があると言うんですか!!」

「……あるから、君を止めたんだ」

「えっ……?」

「……ノア、クロス君ではなく、俺とユニゾンしてくれないか」

「何ですって!!」


この人は一体何を言ってるんだ。
普通の人がユニゾンのことを知っていたのも驚いたけど、私とユニゾンをしてくれなんて……。



「そんなこと……出来るわけ無いじゃないですか!! 私はマスターのデバイスなんですよ。見ず知らずのあなたになんて出来るわけ無いじゃないですか!!」

「それは百も分かってる。だけど、彼女たちは動けないし、今の君がクロス君に向かっていっても、やられるのが目に見えている」

「でも……」

「信じられないのは分かる。だけど、時間がないんだ。頼む、俺の心を覗いても良い……だから、俺を信じてくれ!!」


この人は、ユニゾンで自分の心に触れられるのを覚悟している。
ごくたまにだけど、相手の心理が流れてきてしまうことがある。

それを知って、なお私とのユニゾンを……。


「……分かりました。あなたの言葉を……信じます」

「……ありがとう」


私とフィルと名乗る男性は、ユニゾンをするべく魔力の同調をし……。


「「ユニゾン・イン!!」」


そして、私達は一つとなる。



*    *    *



「……ここは? 確か、私はユニゾンをして彼の中に入ったはずなのに……」



目の前には、なぜかミッドチルダの街が見えている。
私達は、海鳴の街にいたはず……。



「そっか、ここは彼の心の中……本当に心の中に入ってしまったんですね」


と言うことは、彼はミッドの人間。
でも、街がより発展している気がします。


「……ミッドなんですけど、どこかが違うんですよね。まるで、未来?」



そんなことを考えていると、また場面が切り替わり、今度は一人の男女が海岸で座っていた。



『フィル……』


一人の女性が男性のことをフィルと言っている。
どうやら、本人の記憶らしい。



『……やっぱりここにいたんですね……ノアさん』

「えっ……?」


この女性が私?
少なく見ても10年以上は経っている。

もう、分からないことが多すぎます。



『……うん、こんな日はどうしても思い出してしまうんだ。かつてのマスター……クロスロードのことを……。あれから、10年が経ってしまったんだね』

『……クロスさんが亡くなってから……ですね』



う、嘘でしょう……。
マスターが……マスターが死んだだなんて……。



『うん……ごめんね。こんな顔、本当はフィル達には見せてはいけない立場なのにね……』

『人には……誰にだって、泣きたいときがありますよ。俺だってそうでしたから……』

『ティアナのことだよね……』

『……はい』

『……私とフィルは似たもの同士かもしれないです。フィルは未来でティアナ達を、そして私はクロスを……』



私はマスターをこの時に失っていたんだ。
でも、どうして……?



『あの時、マスターの意識を取り戻そうとして、ユニゾンで内部に入ったのは良かったんだけど、逆に取り込まれそうになって、そしてそんな私を助けようとして、マスターは私を強制ユニゾンアウトし、その後闇の意志と共に自爆をした』

『……クロスさんの優しさ故の……悲劇ですね』

『本当に……優しいマスターでしたよ……。クロスロードは』

『……ノアさん』



そんな……そんな……。
マスターだけでなく、みんなまで死んでしまったなんて……。

でも、おかしいです。
みんなが死んだと言ってるのは、未来でと言ってます。

これではまるで。

タイムトラベラー……。



「また、場面が変わるんですね……」



再び景色が変わると、今度は真っ白い空間にフィルと金髪の女性がいた。



*    *    *




『フィル……その決心変わりませんか』

『ああ、未来でみんなが殺され、それを変えることはできた。だけど、肝心なことを変えることが出来なかった』

『………自分が好きになった女性の心を……救えなかった』


そうさ、自分の好きになった人を救えなくて、なにがみんなを助けるだ。
これじゃ意味がないんだ。



『ノアさんの……ことですね』

『……俺の片思いだけどな』


あの人は今でもクロスさんのことを思っている。


『例え、もう一度過去に戻って変えたとしても、あなたは報われないのですよ。そして、今度タイムワープをしてしまったら……』

『……絆がない限り、魔力を使い果たしてしまったら消滅してしまうんだろ……』

『それが分かっていてどうして!?』

『……それが、俺なりのノアさんへの気持ち……だから。自分が好きになった人が、心から笑ってくれたら、それでいいから……』



そうさ、自分が好きになった人が、笑顔を取り戻してくれたら、それでいい……。
そのために俺の命があるんだ。



『……ばかですよ……フィルは』

『……かもな』

『そこまで、覚悟してるなら私は止めません。これを、持って行ってください』


女神が取り出したのは、金色のカートリッジと、マイクロチップ。


『これは……?』

『ノアさんとのユニゾンを一時的に可能にする、プリム用のマイクロチップと……クロスフォードさんの暴走を止める事が出来るエネルギーを込めたカートリッジです』

『……アルテミス』

『本当はあなたを止めたかった。自身の幸せを掴んで欲しかった。でも、その覚悟を決めた瞳をみて、せめてあなたが好きになった人を助けるために手を貸します……。それくらいしか、私には出来ませんから……』

『ありがとう、アルテミス……』



俺はマイクロチップとカートリッジを受け取る。
そして、アルテミスはさらに……。



『そのカートリッジは、あなた一人では使うことは出来ません。ノアさんと融合して初めて発動することが出来ます。そして、マスター以外がユニゾンをすることは、その人の心の中を見られることになるんですよ。それでも……使いますか』

『……使うさ。それしかクロスさんを助けられないというなら』

『……フィル』

『アルテミス?』


アルテミスは俺を自分の方へ抱き寄せ、さらにギュッと抱きしめた。


『……ごめんなさい……ごめんなさい。私にもっと力があれば、あなたにこんな悲しみを背負わせなくて済んだのに……』

『それは、違うよ。アルテミスが力を貸してくれたから、俺は後悔しないで済むんだ。自分の好きな人を助けられるんだ。だから、そんな風に思わないで……』

『はい……はい……』


アルテミスの泣く声が聞こえてくる。
今は、泣いてる顔を見ないでおこう。

俺も自分の泣き顔を見られたくないから……。



『……本当にありがとうな。アルテミス』



俺はアルテミスが作った魔法陣に飛び込み……。


ノアさんが、そしてクロスさんがいる時代に向かった。



*    *    *



「ヒック……ヒック……ぐす……」



なんで……なんで、ここまで私のためにしてくれるんですか。
未来でティアナ達が死んでしまい、それを元に戻すだけでなく、今度は私のために……。

しかも、今度のタイムワープは自身の消滅を覚悟して……。



「……マスター以外に、こんなに私のことを思ってくれる人がいたなんて……」



私は、マスター以外の男性には、正直言って興味がなかった。
だから、マスターの幸せが全てだった。


「フィル……あなたは……あなたは、そこまで私のことを……好きになってくれたんですか」



ここまでしてくれたフィルに、私が今してあげられるのはただ一つ。
この人と一緒に、マスターのことを助ける。

それが、この人のためにしてあげられるたった一つのことです。




*    *    *



「ノア、ノア!!」

「あっ……」

「意識を取り戻したみたいだな。ユニゾンしてから、意識が飛んでいたみたいだからな……」

「フィル……」


どうやら、私は戻ってきたみたいですね。
一体どのくらいの時間が経ってしまったのだろう?


「どのくらい、意識を失っていたんですか?」

「大体、3分くらいだよ。そんなに時間は経っていない」

「そう……ですか」


あの空間にいた時間と、現実の時間は違うと言うことですね。
でも、おかげで全てが分かった。

私のこと、ユニゾンのこと、そしてマスターのこと。

フィルは全部知っていた。


そして……。


自分の存在を犠牲にしてまで、助けに来てくれた……。



「どうしたんだ? ノア?」

「……何でもないですよ」

「……そっか」



フィルはおそらく感づいている。
自分の記憶を見られ、全てを知られていることに。

それでも、この人は……。



「じゃ、始めるとしようか。ノア、これから俺たちはクロス君に、これを撃ち込む。そのためにはまず、動きを封じなければならない」

「今のマスターは、そう簡単には動きを封じられませんよ」

「分かってる。だけど、クロス君は力に任せている状態だ。ああいうのは搦め手に……弱い!!」

「でも、どうやってするんですか?」

「それにはな……」


フィルが立てた作戦はこうだ。
まず、真正面に私達が立ち、マスターの意識をこちらに向ける。

同時に幻術で隠した、設置型のバインドを発動し、動きを封じる。
だけど、このバインドはもって数分だから、その間にカートリッジを使い、全力の融合魔力砲撃を放ち、マスターを目覚めさせる。



「……かなり、危険な賭ですよ」

「でも、これしか方法がないんだ。アルテミスから受け取ったカートリッジは一つだけだから。……見たんだろ、俺の記憶を……」

「分かっていたんですね……」

「言われていたからな。この事は……」

「フィル……私は……」

「今は……その話は無しだ。クロス君を救うことに全力を尽くそう」



フィルの決意に、私はこれ以上は言えなかった。
覚悟を決めてしまっている。

悲しい……覚悟を……。


「いくぞ!!」


私達はワープでマスターの正面に出て、マスターの意識をこちらに向ける。
あっちも暴走状態だけど、それに気づき私達の方にいくつものスフィアを飛ばしてくる。



「くっ……」

「きゃあああ!!」


融合しているとはいえ、今のマスターの攻撃に耐えるのはきつい。
ラウンドシールドも段々ひび割れを起こしてきている。


「……コ、コロス……ミンナコロス……」


今のマスターは破壊衝動に飲み込まれてしまい、本来の性格が眠ってしまっている。
破壊衝動の意志を消滅させられれば、マスターは……助かる!!



「クロスさん……目を覚ませ!! 自分の手で、大切な人を殺す気か!!」

「ダマレ……ミンナシンダンダ……オマエモコロス!!」

「なんだと……」

「コンナセカイニ……ナンノカチモ……ナイ」

「マスター……マスターァァァァ!!」


もうマスターには私達の声は届かないの。
あの優しかったマスターは、もう……。



「……ふざけるな」

「!!」

「価値が無いだと……自分を心配してくれる人がいる世界を……否定するな!! お前にはこうやって心底心配してくれる人がいるんだぞ!!」

「フィル……」

「もう、言葉で説得するのはやめだ。そんな分からず屋には……」


そう言ってフィルは、デバイスをモードチェンジし、マスターに銃口を構える。


「この俺が、きつい一発をぶち込んでやる!!」



*    *    *



《ですが、マスター。クロスさんは完全に闇に飲み込まれてしまってますよ》

「ああ……このままじゃ、完全にクロス君は化け物になってしまう。一か八か!!」



俺は、クロス君にストラグルバインドをかけようとした。
クロス君は、あっさりとバインドは打ち砕いてしまう。


だけど、そのバインドは本命じゃない。

本命は……。


「グ……ガガガ……ウゴケナイ」


本命は、フェイクシルエットで隠していた、設置型のブラスタービットだ。
これでやるストラグルバインドが俺の本命だ!!



「よし、やったぞ!!」

「フィル、今ですよ!!」

《マスター、これが最初で最後のチャンスです!!》


これが最後のチャンスだ。
このバインドを解かれたら、もう俺たちに打つ手はない。



「いくぞ、二人とも」

「《はい!!》」



俺はアルテミスから受け取ったカートリッジをセットし……。


《行きますよ、ノアさん、マスター。エクセリオンカートリッジ・リリース!!》


次の瞬間、俺たちに多大な魔力が注ぎ込まれてきた。


「こ、これは……すごい魔力の奔流だ!!」

「一人では制御できません!!」



何とか二人で魔力を制御し、俺はその魔力をプリムの銃口に集中した。
集中した魔力は、巨大な魔力球を形成し、その大きさはなのはさんが使うスターライトブレイカーよりも遙かに大きな物になっていた。



「す、すごいです……これが……」

「アルテミスがくれた聖なる力……」


この力は俺たちの魔力だけではない、時の女神アルテミスの力も加わっていた。


「この力なら……闇の意志を完全に消滅させることが出来る」

「フィル、お願いです。これでマスターを目覚めさせてください!!」

「ああ……これで、これで決める!!」


魔力はさらに集まり、そして……。


「「スターライト……」」


俺たちの声が重なり……。


「「ブレイカァァァーーーー!!」」



白銀の奔流は、クロス君に向かい……。


「ギ、ギイヤアアアアアアア………」


クロス君の身体から黒い霧のような物が抜け出し……。


黒い霧は、断末魔とともに爆散し、完全に消滅した。
そして、クロス君の姿も、もとの人間に戻ることが出来た。


意識を失っていたため、地面に落下していったが、何とかワープで受け止めることが出来、無事救出することが出来た。

こうして、クロス君の暴走は止めることが出来、俺の役目も……終わった。



*    *    *




「マスター……マスター!!」

「心配しなくても良いですよ。クロス君は気を失っているだけです。闇の力も身体から無くなっていますので、もう、暴走の心配もないです」

「よかった……本当に良かったです……」



私はマスターの無事を心から嬉しかった。
フィルがいなかったら、私はマスターを失っていた。



「……これで、俺の役目も……終わりです」


次の瞬間、フィルの身体が光に包まれて、足下から消えていた。


「そんな……どうして、どうして!!」

「記憶……見たんですよね。これが俺の定めだったんです」

「いやです……いやです!! どうしてあなたが消えなきゃいけないんですか!!」

「……これで良いんですよ。これで、本当にみんなの心を救えたんですから……」


フィルの身体は、足首から膝元まで完全に消えてしまってる。
消滅がどんどん進行しているんだ!!



「こんなの……こんなの酷いですよ……。フィル、私のことが好きだってのは嘘なんですか!! 自分の好きな人に悲しみを背負わせて平気なんですか!!」

「……大丈夫ですよ。クロスさんも助かったんです。これからは、クロスさんと……楽しいことが待ってますから……」



さらにフィルの身体は消えて言っている。
もう、腰元まで肉体が消えてしまっている。



「最後だから、自分の口で言いますね。ノアさん、俺はあなたのことが……大好きでした」

「!!」



嫌です……こんな悲しい告白なんて嫌です。
私だって、フィルのことが好きになったのに……。

私のために命まで投げ出してくれる人なのに……。
フィルのために、私は何も出来ないんですか。

これじゃ、マスターが助かっても、私は大切な人を失ってしまいます。

どうしたら……どうしたら良いんですか!!


『絆がない限り、俺は消滅してしまう』


あの言葉がもし、本当なら……。


「さよなら……ノアさん……」


フィルの身体が完全に消えてしまう。
もう、これしかないです!!


「フィル!!」

「ノアさん……んんっ!!」


私は、フィルの唇にキスをした。
私の気持ち……どうか伝わって!!

次の瞬間、フィルの身体が光り出し、フィルの身体が再生され、完全に元の身体に戻っていた。



「絆……出来ましたね。私との間に……」

「どうして……ノアさんはクロスさんのことを……」

「フィル……私のために自分の存在をかけてまで、やってくれる人を好きにならないわけ……ないです」


今まで、私は恋を本当の意味でしらなかった。
こうして、私のために自分の存在をかけてしてくれる人なんて、いままで現れなかった。

だけど、こうして自分の存在を失ってまでしてくれた。
そんなフィルに私はいつの間にか、心が惹かれてしまった。

フィルのことを思うと、どこか胸が苦しくなる。
そして、同時に温かい気持ちになれる。



「ノアさん……」

「さっきの告白の返事です。私も……フィルのことが大好きですよ」

「本当に……良いんですか。俺で?」

「フィル、私は嫌いな人にキスをする女の子じゃありませんよ。大好きだからこそ、自分との間に絆を作ったんですから……」

「……まさか!!」

「……私とフィルとの間に、ユニゾンのラインをつなげたんです」


もう、マスターとのユニゾンは出来なくなってしまいましたが、でも、後悔はしていない。
自分の大切な人を助けられたから……。



「……ごめんなさい。結局俺は……大切な物を奪ってしまった……」

「そんな風に思わないでください。私は後悔なんかしてないですから。フィルが……大好きな人が消えなかったんですから」

「ノアさん……」

「今の私は9歳です。正直、向こうの私みたいに、スタイルとか良くないですけど……」

「関係ないですよ。ノアさんはノアさんですから。俺は、年齢とかで人を好きにはなりませんから……」

「……ありがとうです。フィル……」


フィルの気持ちが嬉しくて、私はフィルの胸に飛び込んでいた。


「ノアさん……」

「お願いです……ノアって、呼び捨てで呼んでください。今はフィルの方が年上なんですから……」

「ノア……」

「うん……」


私とフィルは、お互いに瞳を閉じ……。


そして吸い込まれるように……。


優しい……そして温かいキスをした。



*    *    *




1年後


次元漂流者という形になってしまった俺は、管理局で保護を受けることになり、その後見人にクイントさんとゲンヤさんが引き受けてくれることになった。

そして二人の強いすすめで、俺は嘱託魔導師になり、今は管理局の寮に住んでいる。
今日もナカジマ家にお邪魔して、ノアとこうして過ごしていた。



「はい、フィル。あーんしてください♪」

「ノア、ここでしなきゃ……駄目か?」

「駄目ですよ。みんなの前でしてほしいんです」


ここはナカジマ家で、クイントさんもスバルもギンガも見てるんだぞ。
ゲンヤさんはニヤニヤしていて、助ける気は全く0。



「それとも……やっぱり、私なんかじゃ嫌ですよね」

「だー!! 分かった。分かったよ。こっぱずかしいけど、大好きなノアのためだ。……いいよ」

「えへへ♪ それじゃあーんですよ」


俺はポテトサラダをノアに食べさせてもらう。


「どうですか」

「美味しいよ。ちょっと……照れくさいけどね」

「良かったです。これ、私が作ったんですよ」

「ノアが?」

「はい、フィルに喜んで欲しくて、母さんに教わったんです」


なんかすごく嬉しい。
自分のために、手料理を作ってくれたことが……。


「ノア……ありがとう。すごく…美味しかった」

「フィル……」


俺とノアがキスをしようとしたとき……。


「あのね。ここ、一応私の家なのよ。二人でいちゃつくなら、フィル君の家に行ってくれるかな」

「「あっ……」」

「まったく……でも、ノア、本当に良い子をゲットしたわね。こんな子滅多に見つからないわよ。自分のために命をかけてくれるなんてね」

「はい♪」


半年前の事件のことは、クイントさんにも全部話している。
そこで俺が未来から来たことも話している。



「ノア、フィル君が浮気しないように、ちゃんと繋ぎ止めておきなさいね」

「クイントさん、そんなことしなくても俺はノアのことが……好きですから」

「フィル……」

「あらら、これはご馳走様。これだったら心配ないかな」



そんな感じで今日もノアと一緒に楽しく過ごした。
考えてみれば、この世界に来て俺は変わったと思う。

今までは自分を犠牲にしてもと言う考えだったけど、好きな人が出来たら、その考えはしなくなった。
今はノアと……大好きな人と一緒に生きていきたい。

それが今の俺の気持ちだ。



*    *    *


6年後


俺とノアはあれからもずっと一緒にいた。
俺は嘱託魔導師から執務官になり、今ではフェイトさんと一緒に難事件を解決している。

かつて、自分の上司だった人と同期なるなんて、ちょっと不思議な気もするが、こういうのもありだろう。


そしてノアは俺の大切なパートナーとして、公私ともにいてくれる。
ノアも俺をサポートしてくれるため、捜査官から執務官に転向してくれた。

クロス君はノアとユニゾン出来なくなってしまったため、俺がインテリジェントデバイスを作って、それを使っている。

本当はノアを返してあげたかったけど……。
それを言ったら……。


「フィル、そんなに私と一緒なのが嫌なんですか!!」



ノアに泣かれてしまい、この話題は二度としないことにした。
考えてみれば、ノアは俺を生かすために自分とのラインを繋いでくれたんだ。

こんなことを言うのは、ノアに対する侮辱以外の何者でもないからな。



*    *    *



「フィル……気持ちいいです」

「ノアはこうして髪をすくのが好きなんだな……」

「だって、好きな人に触れられると、気持ちいいんですよ……」

「俺も……こうやってノアに触れていると、気持ちが安らぐ」

「えへへ♪」



俺たちはベッドに座って、まったりと過ごしていた。
こうして、ノアの髪に触れると、目を細めて甘えてくる。

俺もそんなノアの顔を見るのが好きで、ついいっぱい触れてしまう。



「フィル……もうすぐ、0時ですね」

「そうだな……」



そう、今日はノアの16歳の誕生日だ。
俺たちが付き合ってから、あることを決めた。

それは、お互いを求めるのはノアが16歳になってからにしようということだった。
最もそれ以外のことは、全部しているんだけどね。



ボーンボーンボーン


柱時計が0時を知らせる。


「これで……これで私は16歳になりましたね」

「ああ、おめでとうノア」

「ありがとうです。フィル」

「これ、受け取ってくれるかな」


フィルが私にくれたのは、小さな箱。


「これは……?」

「開けてみてくれるかな」


フィルに言われて、箱を開けてみると、そこには……。


「……綺麗な指輪です」


ブリリアンカットを施されたダイヤの指輪だった。


「これ……もしかして」

「ああ、16歳になったから正式に……プロポーズをさせてもらう。ノア、俺と……一緒になって欲しい」

「やっと……やっと言ってくれましたね。この6年の間、ずっと不安だったんですよ。フィルってすごくもてるから、他の女の子と一緒になるんじゃないかって……」

「俺が愛してるのは、ノアだけだから……不安にさせて……ごめん」


俺は泣いているノアをギュッと抱きしめ、ノアが泣きやむまでずっとこうしていた。


「フィル……これからはずっと一緒なんですね」

「ああ、ノアが俺を嫌いにならない限りはな……」

「それだったら、ずっと一緒です。だって……」



ノアは俺にキスをし、それは息が続く限り何度も繰り返して……。


「……私はフィルのこと……愛してますから……」

「ノア……」


ノアの言葉に俺は、今度は俺からノアにキスをし、さっきよりも激しく求め、そのキスが終わった後は、お互いの間に銀色の糸でつながっているほどだった。




「抱いてください……この不安を消してください……」



ノアは全ての衣類を脱ぎ去る。
月明かりに照らされたノアの身体は、神秘的な美しさがあった。

この数年でノアは女性らしい体つきになり、正直理性を保つのがきつくなっていたのだ。
はっきり言って、シグナムさんやフェイトさんよりもスタイルは……いい。



「ノア……もう、止められないからな」

「止めないでください……ここで止められる方が……悲しいです」


俺も衣類を全て脱ぎ去り、ノアをベッドに押し倒し……


「あ……ん……」


ノアの形の良い胸を何度も揉みし抱く。



「フィル……私、初めてですから……その……やさしく……して欲しいです」

「ああ、俺も愛する人に嫌な想いをさせたくないよ。優しく……するよ」


俺は何度もノアの身体に触れ、ノアの身体の準備を整えた。



「もう……いいですよ。きてください……」

「ああ……ノア、愛してるよ」

「私も……愛してます。フィル……」




月明かりが照らす中……。


俺とノアは、一つになり……。


その度にベッドは何度もきしみ……。


それは、一度ではなく、何度も繰り返され……。


俺たちの愛の行為は、夜中過ぎまで何度も繰り返された。



*    *    *



「……う……ん……朝ですね」

「おはよう……ノア。目が覚めたんだな……」



私が目を覚ますと、横にはフィルが座っている。
そっか……。

昨日、あれからずっと何度もフィルと求め合って……。



「ノア、本当に……可愛かった。何度も求めたくなるくらいに……」

「ば、ばかぁ……でも、そう言われると嬉しいです」


きっと、今の私の顔は真っ赤になっているに違いない。
でも、嬉しい気持ちでいっぱいです。

愛する人と一つになれたんですから……。



「フィル、私にはいっぱいしても良いですけど、浮気……しないでくださいね」

「その気はないよ。だって、こんなに素敵な彼女がいるんだからな」

「だったら、もう一回してくれますか……」

「望むなら……何度でもな」



また、私はフィルと一つになるため、ベッドでお互いの身体を求め合う。
フィルがこうして私のことを愛してくれるのが、すごく嬉しい。

きっと、もう私達は離れられないと思う。

最も、私はそんな気は更々無いです。

フィル、私って自分が思ったより、嫉妬深いですからね。
覚悟してくださいね♪




*    *    *




4年後


「フィル、今日は何しましょうか?」

「そうだな、今日はサンダーでクラナガンに買い物でも行ってみるか」

「良いですね。丁度私も買いたい服とかがありますし」

「服だけなら……良いんだけどな。クラナガンにいくと、その……色っぽい下着とかも買うし……」



俺とノアは、この世界でもはやてさんが造った機動六課に参加し、一緒にJS事件を解決した。
その後俺たちは、またフリーの執務官になり、一緒に働いていた。

そして、六課が解散した後、正式に籍を入れ、今は俺のマンションに二人で過ごしていた。
本当は16歳のあの時に結婚したかったんだけど、クアットロのことがあったから、それが終わってからと言うことにしたのだ。



「でも、フィルも私のランジェリー姿を見て、興奮したいでしょう♪」

「ば、馬鹿!! 何言ってるんだよ」

「えへへ♪ でも、フィルは理性を解放すると、本当けだものです。だから、そんなけだものさんを、さらに興奮させちゃうんです♪」



こうやって、ノアは俺を良くからかう。
だけど、俺もノアのそんな姿は見てると、うれしくなる。

未来では決して見られなかったノアの本当の姿だから……。



「……覚悟しろよ。今日は絶対寝かさないからな」

「望むところですよ。いっぱい……いっぱい、してくださいね」




クロスさんを失い、心からの笑顔を失ったノア。


だけど、クロスさんが助かり、それを回避することが出来た。


そして、俺もノアに自分の気持ちを伝えることが出来、ノアもそれを受け入れてくれた。


そんなノアの優しさは、俺にとってかけがえのない物になっていた。


ノアがいてくれる限り、俺も強くなれるし、優しくもなれる。


人は一人では、生きていけないから……。


だから、俺たちは二人でいる。


愛する人と……共に……。




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