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〜 Remember my heart 〜
SPECIAL PROGRAM vol.2 if ending エミリア


機動六課が解散してから、1年。
俺は、リオスさんの元で執務官補佐をしていた。

執務官になるため学ぶことは多いが、リオスさんと一緒にやっていると、毎日が勉強だ。
リオスさんが担当するのは、主に違法施設の摘発だ。


「……それにしても、本当に違法施設が多いよな」

《この一年、リオスさんと一緒にかなり叩きつぶしたんですけどね……》

「こればっかりは、虱潰しにやっていくしかないな……んっ? あれは、リオスさんと……」



俺が窓の外を見ると、リオスさんが一人の少女と一緒に歩いている。
少女の外見は、黒く長い髪をしていて、背は少し低めだ。



「……一体誰なんだろ?」

《ちょっと、行ってみましょうか?》



俺は、少女のことが気になり、リオスさんの所に行くことにした。



*    *    *


僕は今、ある任務で保護した少女と一緒に散歩をしている。
彼女は先日の任務で、違法施設から救出したのだが、そこで彼女の両親が彼女の目の前で殺されてしまい、そのショックで人に心を開かなくなってしまった。


そのせいで、僕以外の人間には誰にも心を開かない状態が続いていた。
そのことを考えてると……。


「リオスさん!!」

「あっ……フィル。どうしたんだい?」


フィルが、こちらにやってきた。


「あっ……いえ、外を見ていましたら、丁度リオスさんが通りかかったので、あと……」

「……一緒にいる彼女が気になったんだね」

「はい……彼女は?」

「ああ、彼女はエミリア。実はね……」


僕がエミリアのことを話そうとしたとき……。


ギュッ……。


「えっ……?」


エミリアが、フィルの服の裾を掴んでいた。



「え、えっと……君は?」

「……エミリア」

「エミリア……良い名前だね」

「……ありがとう」



信じられない。今までどんなに他人に心を開こうとしなかったのに。
フィルには、自分から話しかけている。



「俺は、フィル・グリード。今、君が一緒にいたリオスさんと一緒に働いてるんだ」

「そう……」

「もし、よかったら、俺とも友達になってくれると嬉しいな」



そう言ってフィルが右手をエミリアに差し出す。
そして……。


「……うん」


エミリアもフィルの右手を取り、握手をした。


「グロリアス……これ、もしかしたら」

《ええ……もしかしたら、フィルなら、彼女の心を開けてくれるかもしれないですね》



可能性は低い。
だけど、今僕以外の人間で、心を開こうとしているのはフィルだけだ。

今はフィルに託すしかない。

フィル、彼女のこと頼んだよ。



*    *    *


エミリアと初めてあった日から、三ヶ月がたった。
最初は、話しかけても一言二言しか返してくれなかったけど、段々と返してくれる言葉も増えてきて、エミリアも笑顔を見せてくれることが増えてきている。



「エミリア、そう言えば最近リオスさんと一緒に、行動しないね?」

「リオスじゃなくても、フィルがいるから……だから良いの」

「そう言う物か?」

「うん、そういうもの。……ごめんね。一緒にいてもおもしろくないでしょう」

「そんなこと無いよ。エミリアと一緒にいるの、楽しいよ」

「……嘘」

「嘘じゃないよ……」


嘘じゃなく、エミリアと一緒にいるのは、本当に楽しかった。
確かに会話は少ないけど、何て言ったらいいのかな。

エミリアと一緒にいると、落ち着くんだよな。
一緒にいるだけで、心が休まるっていうか……。


「エミリアといるとね、何か心が休まるんだ。会話は少ないかもしれないけど、それ以上にエミリアと一緒にいることが楽しいし、嬉しいんだ」

「フィル……あ、ありがとう。……わ、私もだよ」

「んっ? 何か言ったか?」

「……何でもない」


エミリアは、突然顔を真っ赤にしてぷいっと反対の方へ向いてしまった。
一体どうしたんだろう?


《マスター……本当に分からないんですか》

「プリム、お前には分かるのか?」

《はぁ……もう良いです》

《(マスターの鈍感には、本当に困った物です。誰が見たってエミリアが、マスターのことを好きになっていることに気づきますよ)》



*    *    *



数日後


「おーい、エミリア」

「!!」


俺が話しかけるが、エミリアは顔を真っ赤にして逃げていってしまう。
この数日、この行動がずっと繰り返されている。

俺がいくら話しかけようとしても、こんな風に逃げていってしまう。
俺、何かしたかな……?



「……というわけなんですよ」


理由が分からず、俺はリオスさんにこの事を相談した。
丁度なのはさんがリオスさんのお弁当を届けに来ていたところで、女性の意見も聞きたかったので、なのはさんにも相談することにした。



「「はぁ……」」


二人がいきなりため息をつく。


「えっ……、俺、何かおかしいこと言いました?」

「フィル、それ、本気で言ってる」

「なのはさん?」

「……フィル、この事はもう少し自分で考えてね。丁度良い機会だから、女の子の事を勉強してね」


リオスさんもなのはさんの意見の同意らしく、今回のことは自分で考えろとのことだ。
もう、こうなったら、エミリア本人に聞くしかない。




*    *    *




「エミリア!!」

「!!」


また、エミリアは逃げだそうとしたが……。


「待ってくれ!!」


俺は、エミリアの右手を取ると、また逃げだそうとするが……。


「エミリア、俺が嫌いになったなら、それでも良い。だけど、せめてその事を言ってくれないか!!」

「……そうじゃない」

「えっ……?」

「そうじゃない!! 私、フィルのこと嫌ってなんかいない!!」



エミリアの声に、俺は驚きを隠せなかった。
嫌いじゃないって事もそうだけど、エミリアがこんな大声で話すなんて事、今まで無かったから……。



「だったら……どうして、この数日俺から逃げていたんだい?」

「……」


エミリアは、黙ってしまった。
だけど、ここで問い詰めても駄目だ。

今は、エミリアが自分で言ってくれるのを待とう。

そして……。



「聞いて……くれる……?」


俺は、エミリアの真剣な瞳に、黙って首を縦に頷いた。




*    *    *



このままフィルに誤解させたままは嫌!!
私は話すのが下手だ。

だけど、これだけはちゃんと伝えなきゃ駄目。
例え、どんな結果になったとしても……。



「……好き……なの」

「エミリア?」

「フィルの事が……好き。誰よりも大好きなの!!」



とうとう言ってしまった。
いきなり言っても、フィル、迷惑なだけだよね。

私みたいな無口な女の子といても、面白くないよね。



「ごめんね……こんな事言われても……迷惑なだけだよね……」



*    *    *



「エミリア……」


エミリアは、俺に告白してくれた後、その場で泣き崩れてしまった。



――――胸が痛い。


エミリアが泣いているのを見ていると、とても悲しくなる。



彼女が笑顔でいるときは、自分も心が温かくなるのに、泣いている姿を見ると、本当に悲しくなってくる。



まるで……。



ティアと一緒にいた時みたいに……。


「!!」


あの時、リオスさんとなのはさんが言っていたことがやっと分かった。


俺も……。


俺も、エミリアのことが好きだったんだ。
エミリアと一緒にいると、優しい気持ちになれる。

なんでそんな風に思うのか分からなかった。

いや……。

分からないように思いこんでいたんだ。


ティアを失ってから、自分を好きになってくれる人はいないだろう。
そう、思いこんでいた。

だけど……。


エミリアは、俺を好きになってくれた。
必死で想いを伝えてくれた。


だから……。



「エミリア……」

「フィル……?」


俺は、言葉でなく自分の気持ちを身体で伝えることにした。
エミリアに俺の気持ちが伝わるように……。


「……分かるか。俺の胸がドキドキしてるの」

「……うん。フィルの心臓、ドキドキしてる」

「俺も……俺も、エミリアのことが好きだ。大好きだ!!」

「本当……本当……なの?」

「嘘じゃないよ。その証拠に、こんなにドキドキしてるんだ。大好きな人を抱きしめていて、こんなにドキドキしてる」

「……フィル……私も……私もドキドキしてる」



そう言って、エミリアは俺にギュッと抱きついた。



「フィル……」


エミリアは俺の方を見上げ……。


「お願い……フィルの気持ち、もっと感じさせて……」


エミリアは、その赤き瞳を潤ませ……。


「……キス……して」


瞳を閉じ……。


「エミリア……」


俺も、エミリアに引き込まれるように……。


やがて、どちらからともなく……。


俺たちは、キスをした。



「……キス……しちゃったね」

「嫌だった。こういうの」

「……ううん、私ね。ずっとこうしたかった」

「エミリア……ありがとう。俺を好きになってくれて……」

「それ……私の台詞。私こそ……ありがとう」



こうしてエミリアを抱きしめてると、本当に優しい気持ちになれる。
言葉は確かに大切だ。

だけど、こうやって行動で示すことも、大事なことだ。
エミリアは、あの事件以来、心を閉ざしてしまっていた。

だから、言葉でなく、こうやって温もりを感じてもらい、エミリアへの愛を伝える。

嘘偽りない、俺の想いを……。



「フィル……」

「……なんだい。エミリア」

「……もっと、フィルを感じたい」

「それって……」

「……うん」



いくら鈍感朴念仁と言われていても、今のエミリアの気持ちは分かる。
俺も同じ気持ちだから……。



「……いいのか、本当に。もっと、落ち着いてからでも」

「……いや。今日が良い。だって……フィルと恋人になれた、大切な日だから……」

「わかった。もう、止められないからな……」

「うん……」


俺とエミリアは、俺が住んでいるマンションに行くことにした。




*    *    *



「……なんか、ドキドキする」

「俺も……そうだよ」



部屋に付いた俺たちは、俺のベッドでこうやって二人寄り添って、色々なことを話した。
お互いに会話はスムーズじゃないけど、でも、エミリアが本当に一生懸命俺に自分の気持ちを伝えようとしてくれる。


俺はそれだけで十分だった。
そんなエミリアが愛おしくて、エミリアの綺麗な黒髪を何度も撫でている。


「……ふみゅ……気持ち……いい」


エミリアも髪を撫でられるのが、嫌ではなく、目を細めて俺に甘えてくる。
そんなエミリアを見て、さらにエミリアを自分の方へ抱き寄せた。



「エミリア……」

「フィル……」



俺たちは、キスをすると、最初はただ唇が触れあうキスをし、エミリアもキスの仕方が分かってきて、自分の舌を積極的に絡めてきて、段々情熱的なキスになって、それは息が続く限り求め合い、息継ぎを繰り返し、何度も求め合った。

唇が離れる度に、お互いの間に銀色の糸が出来、俺とエミリアの求め合う証になっていた。



「あっ……」


俺は、エミリアの上着を脱がし、ブラを取り、エミリアの形の良い胸に触れ……。


「……柔らかい……それに温かい……」

「……ふみゅぅぅぅぅ……恥ずかしい……」



普段のエミリアでは『ふみゅうう』なんて言わない。
恋人になって、色んなエミリアがみられて、本当に嬉しい。



「これから、もっとエミリアのこと求めるけど……」

「うん……私、あんまり女の子として……魅力無いけど」


どの身体がそんなこと言うんですか。
エミリアの身体は、少なくてもなのはさんくらいスタイルが良い。

胸も大きいし、全体のバランスだって良い。


「あのな……俺は、エミリアをもっと抱きたくて我慢してるんだぞ。そんなこと言っているお前には……」

「あっ……んんっ……だめ……だめぇぇぇ!!」


俺はエミリアにどれだけ自分が魅力あるかってことを感じて欲しくて、いっぱいエミリアの身体を求めた。



「……はぁ……はぁ……フィル、私……わたし……」

「うん……エミリア。俺、エミリアのことが……欲しい」

「……フィル。私……初めてだから……」

「優しくするよ。エミリア」

「……うん。いっぱい……いっぱい抱きしめてね」



俺は、エミリアを優しく抱き……。

その度に、ベッドはきしんだ。

その後、エミリアは俺のことを何度も求めてきて、それに俺も応え……。

俺とエミリアは身も心もとけあった。




*    *    *




「……おはよう、エミリア」

「……おはよう」


結局俺たちは、その後何度も求めてしまい、眠りについたのは朝3時を過ぎてからだった。
実質3時間も寝ていない。



「夢じゃ……ないんだな」

「……フィル……その……激しかった」

「……すまん。エミリアがすごく綺麗だったから……」

「……いいの。私もフィルをいっぱい感じられたから……」

「エミリア……」


エミリアは、ぎゅっと俺に抱きついてきた。
エミリアも俺も、今何も纏っていない状態だ。

そんなにされたら、また……。


「あっ……」

「すまん……節操がないな」

「くすっ……いいよ。今日の夜も……いっぱい抱きしめてね♪」

「エミリア……」


エミリアの笑顔は、本当にあたたかい。
あの笑顔を見ているだけで、優しい気持ちになれるから……。



*    *    *



「しっかり、捕まっていろよ」

「……うん」


俺とエミリアは、サンダーでクラナガンにある遊園地に向かっている。
実は、あの朝出勤したとき、リオスさんとなのはさんがいて、俺たちのことを見るなり、いきなり俺たちのことを言い当てたのだ。

そして、なのはさんから、プレゼントと言うことで、クラナガンにある遊園地のフリーパスをくれたのだ。

リオスさんも俺たちにお祝いと言うことで、今日から3日間休暇をくれた。



「それにしても、申し訳ないことしたな」

「……リオスとなのは。私達のこと心から祝ってくれたね」

「だな。あの二人に感謝しなきゃな。休暇までくれたし……」

「うん……」

《マスター、エミリアさん、せっかくリオスさんが休暇をくれたんですから、いっぱい楽しんでくださいね。せっかく恋人同士になっての初めてのデートなんですから♪》

「「ぷ、プリム!!」」


ったく、プリムの奴、俺たちの反応を楽しみやがって……。
でも、プリムも心から祝福してくれてる。

本当に良い相棒だよ……。




*    *    *



「……いっぱい、いるね」

「ああ……どこもカップルだらけだな」


でも、俺たちだってそんなカップルの一組なんだよな。
エミリアも同じ事を思ったのか、頬を赤らめてしまった。


「じゃ、じゃぁ……どこから回ろうか?」


照れてしまうのをこらえながら、俺は近くのアトラクションに移動することにしたが……。


ギュッ


「エミリア……?」


エミリアが、俺の服の裾を掴み……。


「手……繋いでくれる」


そっと自分の右手を差し出す。
俺は、エミリアの手を握ると、エミリアもギュッと握り替えしてくれた。


改めてすると、恥ずかしいけど、エミリアが喜んでくれれば良い。


俺たちは、まず、メリーゴーランドに乗り、あの白馬に一緒に乗った。
エミリア自身、あまり絶叫系が得意でないので、こういったおとなしめの乗り物を中心に攻めていった。


お昼になり、俺たちはパーク内のレストランで食事を取ることになった。
そこで、エミリアはとんでもない物を頼んだ。



「……カップル限定の、ジャンボパフェかよ……」

「……フィル、あーん……して」



そう言って、エミリアはアイスをスプーンですくって、俺の口元に持ってきた。
顔を真っ赤にしながらしてくれたんだ。

俺もそれに応えなきゃな……。


「あ、あーん……モグモグ……」

「どう……?」

「甘い……なんか色んな意味で……」

「今度は……フィルが……して」



今度は俺がエミリアに食べさせてあげると、またエミリアがといった感じで、この繰り返しで俺たちは昼食を楽しんだ。


*    *    *



夜になり、俺たちは観覧車に乗ってクラナガンの夜景を楽しんでいた。
ここから見るクラナガンの街は、どこか幻想的な輝きを放っていた。


でも、正直俺は夜景よりもエミリアに見とれていた。



「ふみゅ? どうしたの……?」

「いや……エミリアに見とれていたんだ」

「……その……あの……ありがとう」



エミリアは頬を赤らめて、下に向いてしまった。
でも、本当に可愛いよな、エミリア。



「フィル……今日は、本当に楽しかった」

「俺も……楽しかった。エミリアとこうやって一緒にいられたから……」

「……フィル」


向かい合わせで座っていたが、俺はエミリアの隣に移動し、その肩をそっと抱いて……。


「……ずっと……ずっと一緒にいてね」

「ああ……ずっと一緒だ。愛してるよ、エミリア」

「私も……愛してるよ。フィル」



星が照らすゴンドラの中……。


俺とエミリアは……。


誓いのキスをした。




*    *    *



3年後


「フィル!! 早く!!」

「ちょっと待ってくれよ。もう少しゆっくりと行こうぜ」

「だーめ。もったいないでしょう。せっかくこうやってフィルとデートに来てるんだから♪」



あれから3年の月日がたった。
エミリアもリオスさんや俺、そして、俺の親友と交流を持つことで、本来の快活な性格が戻ってきて、今では人と話すことに抵抗を持つことが無くなってきている。



「そうだな、だったら今日も思いっきり楽しもうか」

「うん!! フィル……」

「何だ……んんっ!!」



エミリアは、いきなり俺にキスをし……。



「……大好きだよ。いつまでも、私のそばにいてね……」

「ああ……これからもずっと一緒だよ。エミリア……」



両親を目の前で失い、心を閉ざしてしまったエミリア。


その少女も今は幸せを掴み、大切な人を得た……。


これからも二人の人生には、色々なことがあるだろう……。


だけど、二人ならきっと乗り越えられる。


愛するエミリアと共に……。


それが二人の幸せなのだから……。



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