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〜 Remember my heart 〜
〜 Remember my heart 〜



「終わったな……」

《そうですね……やっと終わりましたね》




九月某日


ゆりかご決戦が終わり、六課復帰祝いを兼ね、パーティをさっきまでやっていたんだけど……。





「………」

《マスター……?》

「……やっぱ……ティアがいないと……な……」


こっちのティアも確かに、俺のパートナーだったティアだけど、俺が好きになった……。


本気で愛したティアは……。


もう……いない……。


《マスター……ティアさんのこと……本当に愛していたんですね……》

「ああ……後にも先にもティアだけだよ。あれだけ人を愛したのは……」



――――取り出したのは一枚の写真。


まだヴィヴィオがいた頃、みんなで取った記念写真。
そこには、笑顔が溢れるみんなの姿が映っていた。


この頃になのはさんとリオスさんがつきあい始めて、ヴィヴィオにリオスパパって言われて、普段は冷静なのにオタオタする姿を見れたんだよな。



そして……。


照れながら、俺と一緒にくっついて写真に写っているティア……。



「あのころは……本当に何もかもあったよな。なのはさん達もいて、リオスさんもいて……そして、ティアも……いたんだ……」



写真を見ていたら、その頃のことを思い出して涙が溢れてくる……。



「……大切な人を失って……改めて気づくなんて……。あの時………ティアの代わりに、スターライトブレイカーを撃てば良かったんだ。やっぱ……馬鹿だ……俺は……」

《それだったら私だってそうです!! 私があの時、同時処理を出来ていれば!! ティアさんだって……死ななくて済んだんです!!》

「それは違う……。例え同時進行できたとしても、あの時は、魔力が決定的に不足していたんだ。俺にもっと力があったら……こんなことにならなかったんだ……」



そうさ……。


俺の力不足のせいでティアが命を失ったんだ……。


後悔したって、あの時には戻れない……。


分かっている……。


だけど……。



「………もう一度……もう一度だけ……ティアの笑顔を……みたい……よ……」

《……マスター》



俺たちが未来でのことを思っていた時……。
一人の女性がこっちにやってきて……。



「……お久しぶりですね。フィル……」

「あんたは……女神……アルテミス!?」



それは、かつて俺をこの世界に送ってくれた女神、アルテミスだった。



「どうして、あんたが……?」

「迎えに……来たんですよ。あなたを……」

「どういうことなんだ……。説明してくれないか?」

「そうですね。それではお話しいたします。あなたがこの世界を、正しき流れに変えてくれてたおかげで、あなたがいた世界にも影響があったんです」

「なんだと……。いったい何が起こったんだ!?」

「あなたがいた世界では、六課メンバーは死んでしまったことになっていましたが、ゆりかご決戦の時までは全員生きているんです」

「!!」



みんなが……。


ティアが生きているだって……。


あの時、六課のみんなは死んでしまったのに……。



「そして、以前と違うのは六課メンバーの代わりに、あなたが命を落としてしまっていることです……。六課襲撃の時、あなたはみんなを逃がそうとして、たった一人で、ガジェットの大群に突撃をし、そして……消滅してしまったんです……」

「命を落としたことは変わりないけど、時期が違うという訳か……」

「……はい」

「でずが、今なら世界は、あなたを受けいれることを許してくれるはずです。正しき道に戻してくれたあなたを!!」

「フィル、私がもう一度あなたの世界に戻します。そして……今度こそ、あなた自身が幸せになってください……」



ティアに、もう一度会える……。


ティアだけじゃない……。


クアットロの策略で殺されてしまったなのはさんとヴィヴィオ、そしてリオスさん……。


戦闘機人との戦いで、自爆で果てたスバルとギンガさん……。


みんなに……。


みんなに会える!!



「……ありがとう……アルテミス……戻りたい。俺がいた……あの世界に……」

「でも、本当に良いんですね。あちらの世界に戻ったら二度と……この世界には戻れませんよ」

「この世界は、ティア達の世界だ。俺は……通りすがりの来訪者だからな……」



この世界にとって、俺は異分子みたいな物だ。
それに、ここはやっぱり俺の世界じゃないしな……。



「……フィル、戻るんだね……自分の世界に……」

「リオスさん!!」



いつの間に、ここにいたんだ。
ここには俺とアルテミスしかいなかったのに……?



「悪いと思ったけど、グラスパーの光学迷彩で姿を隠して、話は聞かせてもらったんだ……」

「そうだったんですね……」

「フィル、君が……ずっと悩んでいたのは分かっていたよ……。現にパーティの時も、表面上は笑っていたんだけど、どこか寂しさが混じっていたからね……」

「……リオスさんには……お見通しですか……」

「一応、これでも君の師匠だからね……。だから、師匠として最後のことをしてあげなきゃね……」



そう言ってリオスさんが、ポケットから取り出して俺に渡してくれたのは、一つのマイクロチップ……。



「これは……?」

「僕のグロリアスのフォームデータ……。ストライク、グラスパー、ガーディアンの3つを入れたデータチップだよ。これをプリムに組み込めば、君も同じ能力を使うことが出来るよ……」

「!!」



グロリアスのフォームデータは、リオスさんの秘密中の秘密なのに……。
それを俺なんかに……。



「そんな……そんな、大切な物を、俺に!!」

「プリムとの相性との関係で、各フォーム1回しか使えない上に、制限時間まで付いちゃうけどね。それと、これを組み込んだら、スパイラルとブラスターエクセリオンは使えなくなるから。あんな命を粗末にするシステムは、今の君にはいらないだろ……」

「リオスさん……本当に……本当にありがとうございます……。最高の贈り物です……」



このデータを作るのにリオスさんのことだ。何度も考えてくれたに違いない。
そうでなかったら、プリム用にデチューンなんて、簡単にはできない。



「……フィル、今度こそ後悔しないようにね。自分の愛する人を……護ってね……」

「はい!!」

「……フィル、それでは……時空間をつなげますね」



女神が手をかざすと、光の魔法陣が展開され、一つの入り口が出現した。



「それをくぐったら、ゆりかご決戦の時に行くはずです。あとはあなた次第ですよ」

「リオスさん……本当にありがとうございました。あなたから学んだ事、一生忘れません!!」



みんな待っていてくれ……。

必ず……必ず助ける!!





*    *    *





「はぁ……はぁ……」

『あははははは!! エースオブエースもこうなっては形無しですわね。聖王陛下との戦いで、全魔力を使ってしまったんですものねぇ』

「くっ……」



スクリーンに映っているクアットロがいやらしく笑っている……。


わたしは、ブラスター3を使い、スターライトブレイカーで何とかヴィヴィオを元の姿に戻すことが出来たんだけど、それで力を全て使い果たしてしまい、もう立つことも出来なかった……。



『これで最後ですわね。高町なのは』



次の瞬間、数え切れないほどのスフィアが私とヴィヴィオに照準を合わせ、砲撃の発射態勢に入る。


あれを受けたら間違いなく………死ぬ。


ごめんね、リオス……。


約束、守れなくなっちゃった……。



『さ・よ・う・な・ら、高町なのは。あははははは!!』


スフィアから一斉に発射される、砲撃の嵐。

それが今まさに私達を焼き尽くそうとした時……。
目の前に、黒髪の魔導師が現れた。


あれは……フィル!?



「ガーディアンフォーム……ドライブ。フリーズフィールド展開!!」



フィルの周囲に私達を包み込むように、空色の粒子の壁が出来上がった。
そしてその輝きに衝突した砲撃は、壁と接している面から凍りつき砕け散っていく。

これは……リオスのガーディアンフォーム?

どうしてフィルが……?



やがて砲撃が止み、全てを防ぎきったフリーズフィールドはその役目を終え消滅し……。



《マスター、タイムリミットです!!》

「時間切れ、か……」



ガーディアンフォームの活動限界が来てしまい、元のフリーダムモードに戻ってしまった。
だが、なのはさんとヴィヴィオを助けることができた。


本当に、よかった……。


リオスさん……。


あなたの大切な人を……。


――――今度は救えました。



「……フ、フィル……どうして、ここに……!?」



あの時……。


六課が襲撃を受けたあの時、フィルは皆を守ろうとして――――。



命を落としたのに……。



「女神の気まぐれってやつで……戻ってきましたよ。この世界にね……」

「フィル……本当に良かった……。生きていてくれたんだね……」

「話は後です。フェイトさん達も助けないと……」


女神の話の通りだったら、フェイトさんはゆりかご内のスカリエッティがいる部屋にいるはずだ……。


集中しろ……。


フェイトさんの魔力を感じるんだ……。



「………見つけた!!」



俺はなのはさんとヴィヴィオを抱え、ワープを使いフェイトさんの所に向かった。



*    *    *




「………もう、立つ気力もないや……」



私は何とかトーレとディードの二人を倒し、スカリエッティもライオットザンバーカラミティの物質消滅能力で完全に消滅させた。

でも、リミットブレイクの代償は大きく体力も魔力も使い果たしてしまい、もう立つことすら出来なくなっていた。



「……フィル……あなたは、あの時たった一人で、みんなを守ってくれたんだよね。そのおかげで、六課のみんなは死ななくて済んだんだよ……」



思い浮かぶのは、フィルとティアナの微笑ましい恋人同士の姿……。



「ねぇ、フィル……ティアナはあなたのことが本当に好きだったんだよ……。そのティアナを悲しませて……馬鹿だよ……本当に……」



でも、私も人のこと言えないかな。
エリオとキャロに同じ思いをさせてしまいそうだし……。

そして無情にも、天井が崩れてきて私の頭上に落ちてきた。



「……フィル、今……あなたの元に……行くからね……」



死を覚悟したとき……。


一条の閃光が私を抱えて……。



「あ………あれ?」



予想していた痛みも何もかも、感じなかったことを不思議に思っていると。



「……馬鹿なこと言わないでくださいね。あの世なんかには、俺はいませんよ」



私を抱えて飛んでいたのは、死んだはずのかけがえのない人だった。



「あ……ああ……ま、まさか……う、嘘じゃないよね」

「……嘘なんかじゃないですよ。正真正銘のフィル・グリードです」



生きていたんだ……。


フィルは生きていたんだ……。


でも、フィルの姿がいつもと違う。
まるでリオスのストライクフォームのような……?



「なのはさんにも言ったんですけど、話はこの事件を終わらせてからにしましょう」

「えっ……。なのは!? ヴィヴィオ!?」



フィルの横を見てみると、なのはとヴィヴィオの姿があった。
そっか……。

なのは達もフィルに助けられたんだね。



《マスター、タイムアウトです!!》



プリムの声で、フィルのバリアジャケットがいつものフリーダムになった。



「これで……使えるのはグラスパーだけか。一旦脱出して……リオスさんと合流しましょう」



リオスさんなら、絶対生きている。
未来でだって、フレイムグロウの大群を一人で壊滅させてるんだから……。



俺はリオスさんの魔力を探ると……。



「……よかった。まだ生きている。でも、魔力反応はかなり低くなっている……」



リオスさん、今なのはさんが行きます!!
だから、死なないでください!!



間に合ってくれ!!




*    *    *




「……さ、さすがに……伝説の竜族を相手にするのは………きつかったな……」



その伝説の名の通り、フレイムグロウは一体だけでもミッドを焼き尽くすほどの力を持っていた。
しかも、普通に倒したのではその身体にある毒素で、人間はみんな死んでしまうという厄介な性質を持っていた。


それが、10体。


その数のフレイムグロウからミッドを守るには、その全てを一気に消滅させる必要があった。
最後の切り札としてとっておいたフルドライブを使い、さらにフィルが残してくれた魔力集束装置を使い、外部から魔力を供給し続けることが出来たから、なんとか倒すことが出来た。


魔力量EXなんて言われてはいるけど、それも無限じゃない。

数にものを言わせる人海戦術にでもかかれば、忽ち枯渇してしまう。

しかも、ミッド全員の命が人質という状態だから、余計に無駄打ちするわけにはいかない。


確実に、そして一撃で全てを仕留める。


結局、今放てる限りの特大の砲撃を放ってやった。

それでフレイムグロウは全部倒せたんだけど……もう僕に、動く力は残されていなかった。



「フィル……約束は守ったよ……。みんなを……守りきったから……」



フィルとの約束は果たした……。


なのは……。


本当は一緒に戦いたかった……。



でも、僕はフィルとの約束を果たしたかったんだ……。



愛する人を残して、死んでしまったフィルとの約束をね……。



「……はは……死ぬ間際って……幻も見えるんだね。なのはとフィルがいるなんて……ね……」



なのははゆりかごで戦っている。それにフィルはあの時消滅してしまった。
だから、二人がここにいるわけがないんだ……。



「……幻じゃないよ。正真正銘……あなたの恋人の高町なのはだよ……」

「えっ………?」



そう言ってその女性は、倒れている僕に膝枕をしてくれ……。



「約束したでしょう……。絶対生きて、全てを終わらせて、幸せになろうって…………」



間違いない……。


その太陽のような笑顔……。


僕が愛した高町なのはだ……。


そして……。



「リオスさん……ただいま……戻りました……」

「フィル……生きていたんだね……」

「ええ……地獄の閻魔に追い出されましたよ……」

「……みんなに……ティアナに……悲しい思いをさせて。この戦いが終わったら、いっぱい言うことがあるからね……」

「はい……」



でも、本当に良かった。
フィルが生きていてくれたんだ……。



*    *    *




「リオスさん、なのはさん、ティアは今どこで戦ってるか分かりますか……?」

「ティアナは今、ゆりかごの中でクアットロと戦っているはずだよ。本当は私かフェイトちゃんが行くつもりだったんだけど、ティアナがどうしても……自分の手でフィルの仇を取りたい、って……」

「ごめんね……ティアナの思い……どうしてもかなえさせてあげたかったんだ……」


何て無茶なことを……。


たった一人でクアットロの相手をするなんて……。



「なのはさん、フェイトさん……俺……行きます。後のことはお願いします!!」

「いくら何でも無茶だよ!! 私も行くよ!!」

「私も!!」

「リミットブレイクを使い、ボロボロの状態のなのはさん達じゃ、申し訳ないないけど、足手まといになります……それに……」

「今はリオスさんのそばにいてあげてください……」

「「「フィル……」」」

「……俺も……取り返さなきゃな。大切な人を……」

「そうだよ。今度はフィルの番だよ。ティアナのこと、ちゃんと捕まえておくんだよ♪」

「はい!!」



ティア……。

今助けに行くからな……。





*    *    *





「あはははははは!! どうしたんですのぉ。それで敵討ちだなんて片腹が痛いですわねぇ」

「………くっ……ぅぅぅ……」



クアットロ……。


フィルを殺した憎っくき女……。


こいつだけはどうしても、あたしの手で殺したかった……。
そのためになのはさんから空戦の特訓を受け、さらにスターライトブレイカーも身につけたのに……。

やっぱ、付け焼き刃の力じゃどうしようもないの……?



「それにしても……フィル・グリードもそうでしたけど、貴女も大した力がないのに、私に向かってくるんですものねぇ。そうですわ!!」

「あなたもフィル・グリードと同じように、私の砲撃で消し去ってあげますわぁ。あははははは!! 好きな人と同じ死に方が出来るんですもの。感謝して欲しいですわ」



クアットロが右手をかざすと、その掌の先に巨大なエネルギーの塊が渦を巻く。



「さようなら……お・ば・か・さ・ん」



そう嘲笑うように言い、倒れているあたしにそれを放とうとした、次の瞬間……。



「ぎぃやあぁぁぁぁあああぁあ!!」



悲鳴と共に――――。


クアットロの右腕が切り落とされていた。



「ぐぁぁああぁ……いったい誰ですの……」

「忘れたのかよ……この俺を!!」



迷彩がかかっていたのか、光と共に姿が現れて……。



「……ま、まさか……お前は……」



ま、まさか……。



「引導を……渡しにきたぜ……。クアットロ」





*    *    *





「フィ……ル……本当に……フィルなの……?」



クアットロの腕を切り落とした後、フィルは倒れていたあたしの元に来て、回復魔法をかけてくれた。



「ああ……女神の気まぐれで、戻ってこれたよ」

「あっ……」



そしてフィルは、あたしをギュッと抱きしめてくれた。



「……ただいま……ティア……」

「フィル……フィル!!」



もう、あたしは涙を抑えきれなかった。


帰ってきてくれたんだ……。


フィルが帰ってきてくれたんだ!!




*    *    *





「よ、よくも……私の腕をぉぉぉぉぉおお!!」



クアットロは残った左腕をかざし、今までよりもさらに巨大なエネルギーを収束する。
その威力はおそらく、スターライトブレイカーに匹敵するだろう。



「ティア……まだやれるか?」


そう言ってフィルは挑発的な笑みを見せ……。
そしてあたしもそれに、同じように返す。



「当たり前でしょう。これくらいで参るあたしじゃないわよ」

「上等だ!! さすが俺のパートナーだ!!」



――――そうよ。



あたしは……ティアナ・ランスターは。



あんたの最高のパートナーなんだからね♪



フィルはプリムを、あたしはクロスミラージュを構え、その銃口をクアットロに向ける。



「消えなさい!! フィル・グリード!!」


クアットロの放った砲撃は、フィルを直撃し、完全に消滅したかに見えた。


――――しかし。



「ふっ……ふふふふ……」

「な、何がおかしいんですの、ティアナ・ランスター!?」



やっぱり良いわね……。


外道が罠にかかり、崩れていく様を見るのは……。


決していい趣味とは言えないのは解っているけど、それでも止められない。


悪女と罵られても結構。


だって、最初にフィルを……。


愛する人を傷つけたのは、この女なんだから!!



「……あんた……本当に馬鹿ね。クアットロ」

「何ですって!!」

「忘れたの? あたし達の……戦い方を!!」



クアットロがあたりを見渡すと、そこにはフィルの分身体が数人いる。
まだクアットロは、それらが只の幻と侮っているみたい……。


だけど……。


それが大きな間違いなのよ!!



「きゃあああああ!!」




*    *    *




俺の分身体から一斉にファナンクスシフトが放たれ、クアットロのありとあらゆる箇所に裂傷を作り、穴を開け、その身体からは火花が飛び散っていた。

リオスさんみたいに魔力があるわけじゃないから、一撃必殺とはならないけど、これだけ打ち込めば充分なダメージにはなる。

そして、打てるだけ打ち込み終えると同時にグラスパーのタイムリミットが来て、元のバリアジャケットに戻っていた。



「……き……きさ……ま……ら……」



それでも、クアットロはまだ最後の抵抗をしようと、三度(みたび)エネルギーを収束させ、魔力球を作り出す。

馬鹿正直に、何度でも。

往生際が悪いと思うだろうか。

だが、それしか奴には方法がないのも事実だ。


今追い詰められているのは………狩られるのを待つだけの獲物と化しているのは、他でもない、奴なのだから。




「だったら……」

「完全に……」

「「消滅させてやる (あげる)!!」」



俺とティアは、それぞれブラスターを起動させた。
ブラスタービットを2つずつ出現させ、クアットロを囲むように展開した。

そして、残った魔力を全て、銃口とビットに集中した。



スターライトブレイカー……。


これで……。


これで、全てを終わらせる……。


未来からの因縁を………全て!!



「「スターライト……」」



俺たちの声が重なり、それに呼応するかのように、デバイスの銃口とビットが激しい光を発し始める。

そこへきてクアットロが漸く事態に気付いたか、「ひっ!」と声を上げるが、もう遅い。

終焉の時が訪れたのだ。


そして……。




「「ブレイカァーーーーーーーーー!!」」




オレンジと白銀の光の奔流は、クアットロを飲み込み……。



「いやあああぁぁぁあああぁぁああ!!」



断末魔のような悲鳴のみを残して……。


その存在は……。


この世から完全に消え去った……。



「……終わったわね」

「ああ……終わったよ。本当に……」

《はい……これで終わりました……全てが……》



未来から続いたクアットロとの因縁……。
これで完全に終止符だ。



「フィル……」

「……ティア」



俺たちはどちらからとなくお互いを抱きしめ、その存在を確かめ合っていた。



「……暖かいね。フィルのぬくもりは……」

「俺もだよ……。こうしてティアを……大好きな人を抱きしめられるとは、思ってなかった……」

「もう、二度と離れないでね……。もう、いやだよ……フィルが消えるなんて……」

「消えないよ……。ティアが、俺のことを好きでいてくれる限り……」

「だったら……一生、あたしのそばからいなくなることは無いわ。だって……」



そう言ってティアは首をあげて、俺の方を見上げた。



「あたしは……あんたのこと、ずっと……愛してるんだから……」

「ティア……」



ティアは瞳を閉じ……。


俺もティアの頬にそっと手を添え……。


俺とティアは……。


誓いのキスをする。



「……やっと……あたし達恋人同士になれたわね」

「ああ……やっとな……」

「愛してるよ……ティア……」

「あたしも……愛してる……。フィル……」




ああ……。


ティアの体温を感じてやっと実感した……。


俺はやっと、本当の意味でティアを救うことが出来たんだ。


このぬくもり……。


二度と離すもんか……。





*     *    *





JS事件……。



色々なことがあったけど、俺がいた過去の世界との違いは、まず、ルーテシアがクアットロに操られてしまい、キャロとガチンコで戦ったんだけど、キャロとエリオが必死で説得し、何とかBCCを解除することに成功した。

それを助けたのが、ノーヴェ達、戦闘機人の助けのおかげというのがびっくりしたんだけどな。

この戦いでこちらに味方したのは、クアットロ、トーレ、セッテ、ウーノ以外のメンバーだった。
ドゥーエもこちらの世界でも、またユーノさんと一緒にいるなんて思わなかったけどな。

これも過去を変えた影響なんだろうな。

良いように変わってくれたよ。本当に……。


こちらの味方をした連中は構成プログラムを受けた後、それぞれ条件付きだけど自由になれるとのことだ。
ルーテシアはエリオ達の嘆願のおかげで、1年間の能力封印後、六課解散後にエリオ達が行く所で一緒にやっていくとのことだ。

こんな事が出来るのは、レジアスの親父さんがこっちでも生きていてくれたからだけどな。



そして俺は、リオスさんからもらったフォームを使い、さらにブラスターを使ってのスターライトブレイカーを撃ってしまい、入院することになってしまった。

ティアも1週間ほど入院していたんだけど、ダメージは軽傷だったため、先に退院して、俺の世話をしてくれていた。



「ほら、フィル、あーんしなさいよ」

「い、いいよ……。何とか自分で食べられるから……」

「なに照れているのよ。あたし達はパートナーなんでしょう。これくらい当たり前でしょう」

「それに……。あんたは今まで、色々辛いこと経験してきたんだからね……未来でのこととかね……」



あの後、俺は、今までのことをティアに全部話した。
本来ならティアやみんなは、この事件が切っ掛けで全員死んでしまうこと。

それを変えるために過去に戻って事件を解決したこと。

そして、過去を変えたことによって、この時系列が変わり、ゆりかごでなのはさんを助けたことで歴史が変わり、この世界でもみんなを助けられたこと。



「だから……フィルには、いっぱい幸せを感じて欲しいんだ。今までの分もね……」

「ティア……」

「はい、あーん……」

「あーん」

「いっぱい食べて元気になってね。退院したら、今度はあたしが手料理を食べさせてあげるからね♪」

「楽しみにしてるよ……ティア」

「……うん……楽しみにしててね。今は……」



ティアは俺の唇にキスをして……。



「これで……我慢してね……。その時は、あたしの愛を、いっぱい感じてもらうからね」

「……充分感じるよ。ティア……」

「もっと……もっと感じて欲しい。あたしの気持ちを……」

「俺もティアに、俺の気持ちを感じて欲しいな……」



俺はティアにキスをし、最初はただキスをするだけにするつもりだったけど、お互いにもっと感じたくなってしまい、結局キスが終わったときはお互いの間に銀色の糸が出来ていた。



「……ふふっ♪」

「……お前な……」

「良いでしょう……あたし達はその……恋人……なんだから……」



言い終わると、ティアは顔を真っ赤にして下に向いてしまった。
照れてまで俺に言ってくれるティアは、本当に可愛いと思う。



「そ、そうだ……なのはさんとリオスさんはどうしてた?」



リオスさんも俺と同じ病院に入院していた。
あっちにはなのはさんが毎日のように面会に来ているんだけど……。



「……あっちは、二人の世界を作っていて、あそこにいたら砂糖を吐きまくってしまうわ……」

「ま、マジか……?」

「大マジよ……あの二人に比べたら、あたし達の事なんて可愛い物よ」

「……それも、そうだな……」

「フィル……今はあたしだけをみてよ……。余計なことは考えないの……」

「それも……そうだな……」



俺たちは再びキスし、お互いの気持ちを確かめ合っていた。



「……今はこれくらいしかできないけど、退院したらいっぱい……しような……」

「……ばか」




*    *    *





「あ、あの……ティア。なんでここにお前の荷物があるんだ?」

「えっ……何言ってるの。今日からあんたと二人で、ここに住むからに決まってるでしょう」



退院後、俺は立て直しした六課隊舎に戻ってきたのだが……。



「こ、これはさすがに……まずいだろ……。はやてさんが許可出さないだろうが……」

「そのはやてさんが、率先してやったのよ……。あたしとフィルのことを知ってから、六課総出で引っ越しをしてあたしの荷物をここに全部移したのよ……」

「あ、あの人は……」



確かにあの人のことだから、こういったお祭り騒ぎは大好きだからな……。
まさか本当にするとは……。



「それに……あたしも……あんたと……一緒にいたかったから……」

「ティア……」



本音を言えば、俺もティアと一緒にいたい。
まして一度は失った大切な絆だ……。



「……いまさら無しなんて、言わせないからな……」

「……言うわけないでしょう。何度も言うけど、あたしはあんたと一緒にいたいんだからね」





*    *    *





「……なんか……やっぱり恥ずかしいわね」

「だな……俺も緊張してる」



俺とティアは、月明かりが照らす部屋でベッドに座っていた。



「フィル……」



ティアは自分の頭を、俺の肩にコトンと預けてきて……。



「……いっぱい……いっぱい……抱きしめてね。フィルがあたしの恋人だって……思えるように……」

「当たり前だろ……俺の恋人はティアなんだからな」

「でも……あんたは他の女の子にもてるから……」



ティアは、もじもじしながら口を尖らせていた。



「そっか……?」

「そうよ……だから……」



そう言ってティアは俺をベッドに押し倒し……。



「……あんたがあたしの恋人だって……ちゃんと感じさせてね……」

「ああ……いっぱい感じさせてやる……」



俺はティアの服を一つずつ脱がして、ブラのホックを外し、その形の良い胸を触ると……。



「あっ……んん……フィル……胸だけじゃ……いやだからね……」

「ティア……」



そして俺たちは全ての衣類を脱ぎ去り……。



「お願い……きて……フィル……」



俺とティアは……。


お互いの体温を感じ合いながら……。


何度もぬくもりを感じ合い……。


その行為は、朝まで途絶えることがなかった……。





*    *    *





「……んっ……朝か……」

「おはよう……フィル……」



ティアは、朝までお互いを求め合っていたから、髪も下ろしたままの状態でいた。
普段のツインテールも良いんだけど、やっぱり俺はこの髪型の方が好きかな。



「どうしたの……あたしをじっと見て?」

「いや、俺は……その髪型の方が好きかなって思ってたんだ……」

「そうなんだ……。だったら、今日からストレートにしようかな……」

「あくまでも俺の好みだからな……。それを気にしなくても……」

「女の子はね。好きな人にいつも綺麗って言って欲しいのよ。だから、フィルがストレートが好きだったら、それに合わせたいのよ」

「そっか……ありがとう。ティア……」

「だから……浮気なんかしないでよ……」



浮気なんかする気は更々無い。
ティアがいてくれたら、それだけで俺は幸せなのだから……。




「フィル……あたしのために……過去から戻ってきてくれたんだよね……」

「ああ……お前がいない世界じゃ、やっぱり寂しくてな。お前が生きているって聞いて、戻る決意をしたんだ……」

「本当に嬉しかった……。その事をプリムから聞いたとき……あたし……本当に嬉しかったんだよ」

「フィル……ずっと……忘れないでいてくれたんだね。あたしのこと……」

「当たり前だろ……。愛する人を……忘れるわけ……ないだろ……」



俺はティアをギュッと抱きしめ、ティアに自分の思いを感じて欲しかった。



「フィル……ずっと……ずっと一緒だからね……」

「離すもんかよ……もう二度と……」



かつて失った大切な人……。


だけど、過去を変えたことで再び希望が生まれた。


そして俺は、その希望を取り戻すことが出来た。


もう二度と離しはしない……。



〜Remember my heart〜



その言葉の通り、俺の心はティアを決して忘れなかった。


それはティアも同じ気持ちだった……。


これからもずっと二人は一緒にいる……。


二人の愛は永遠なのだから……。




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