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〜 Remember my heart 〜
〜 Diamond Memory 〜


「これで、ようやく執務官としてやっていけるな」

「そうね。本当に辛かったわよ。この一年……あんたに会えなかったこと……」

「……ティア」

「フィル……」



あたしは、この一年、執務官試験を突破するために、フィルはクロノ提督の元で、あたしはフェイトさんの元で執務官補佐をして、執務官に必要なことを猛勉強した。

その苦労のかいがあって、あたしたちは何とか一発で合格することが出来たのよ。



「フィル、六課解散の日に約束したこと……覚えてる?」

「ああ……俺たちが執務官になったら、一緒にコンビを組むことだろ」

「それじゃない!! もっと……大切なことあったでしょう……」


ねぇ、本当に忘れちゃったの……。
あたしはあの約束だけが、心の支えだったのよ――――。



「忘れてないよ……。大切な約束だもんな」

「ばか……。本当に忘れちゃったと思ったわよ」


からかうのは止めてよね。本当、こいつって人をからかうのが好きなんだから……。


「ごめんな。ちょっとふざけすぎたな……。今度はちゃんというよ。ティア……」


フィルは、さっきとは違って真剣な瞳で……。


「……結婚……しよう」

「……うん」



六課解散の日……。
あの時二人で、約束したことは二つ……。


一つは、一緒にコンビでやっていくこと。


そして、もう一つは……。


――――結婚して、ずっと一緒になる。


それが、フィルとの大切な約束だった。




*    *    *




「それにしても、結婚式をするのも大変なのね」

「ああ、こんなに準備が大変だと思わなかったよ。特に招待客の選別……」

「そうね……」



俺たちは、半年後の六月の結婚式のための準備に、四苦八苦していた。
式場とかは、良いところが取れたので、そう問題じゃないのだけど……。



「こうして、リストを作ってみると、あたし達って、とんでもない知り合いばっかよね」

「そうだよな……。しかも、みんな絶対招待してねって、言われているからな……」



単純にあげられる人だけでも、なのはさん、フェイトさん、はやてさん、そしてフォワードのみんな。
さらに、親代わりとして色々してくれた、レジアスの親父さんとオーリス姉……。



「でも、どうしよう。このメンバーじゃ、絶対全員はそろわないわよね」

「だよな。どうしようか……」



そんなことを考えていたら、通信が入ってきた。



『ご機嫌はいかがかな。フィル、ティアナ』

「親父さん!?」

「おじさん!?」

「親父さん、いったいどうしたんだよ。いきなり通信してきて?」


親父さんの忙しさは半端じゃない。
それこそ秒単位でスケジュールが決まってるのに……。



『いきなりはなかろう。儂はお前達が執務官試験が受かったと聞いて、お祝いの言葉をかけようとしただけなんだがな……』

「あ、ありがとう。親父さん……わざわざ」

「本当にすみません。わざわざ……」

『なあに、二人とも儂にとって、子供みたいなものだ。子供のことを心配しない親なんて………いないだろ』



親父さんの言葉は、本当に嬉しかった。
俺たちの事を、本当に思ってくれたんだ――――。



『そういえば、お前達。半年後、結婚するんだったな。どうするんだ、メンバー集めは?』

「その事なんだけど……どうしようかと思って」

『と、言うと?』

「俺の知り合いって、かなり有名人が多いから、みんなの都合を合わせるのが上手くいかないんだ」



実際、今回の日取りを決めるのだって、かなり難航した。
六課解散前から、執務官試験に合格したら、その年の六月に結婚することは、みんなに言ってあったから、六課メンバーは何とかなるんだけど……。



『フィル、ティアナ、その心配はないわよ』

「オーリス姉!?」

「姉さん!?」

『あなたたちが、執務官試験を一発で受かることは信じていたから、スケジュールを調整するときに、六月のこの日は空けられるようにしてあるわよ』



そんなこと言っているけど、レジアスの親父さんは今では、地上の統括をしている重要人物だ。
その人のスケジュールに、穴を空けるのはかなり困難なはずなのに……。



『そういうことだ。だから、儂らも是非、お前達の結婚式に出させてもらうぞ』

『フィル、ティアナ、結婚式の前に、一回こちらに顔見せに来てね。色々語り合いたいしね』

「はい、フィルと二人で必ず伺います!!」

『楽しみにしてるわ。その時は事前に連絡してね。どんなことしても暇をつくるから……』



そう言って、二人からの通信は切れた。
親父さん……オーリス姉……。

本当に……ありがとう。



*    *    *




三月某日


「フィル、式の参加者リストは何とかまとまったけど、式での料理とかはどうするの?」

「そうだな……」



六月の式まであと三ヶ月。
俺たちは、殆どのことは決まっていたけど、最後の問題として、式場で出す料理とウェディングケーキのことで悩んでいた。
式場はかなり雰囲気の良い所なんだけど、料理の方が普通で、これをどうにかしたかったのだ。



「一応、式の前日に俺が、料理関係を用意しようと思っているんだけど……」

「確かにあんたの料理なら、みんなに喜んでもらえると思うけど、正直あんたの負担が、かなりかかって来ちゃうわよ……」

「でも、一生に一度だからな……。これで手抜きをしたくはないんだよな……」

「そうよね……。あれ? 通信が入ったわね」



通信を開いてみると、それは俺がお世話になったあの人からだった。



『フィル、久しぶりだね。元気にしてた?』

「「リオスさん!?」」



リオス=コーネルド執務官
俺が執務官になるために、クロノ提督の紹介でお世話になった、俺が尊敬する執務官だ。


この人には、執務官になるための学力だけでなく、その考え方も教えられた。



『執務官は決して管理局法を押しつけて、任務を行ってはいけない』



その事は基本中の基本なんだけど、執務官になると、どうもそれを忘れて横暴な行為をする輩が多い。
俺はリオスさんに、戦い方だけでなく、人として大切なことを色々教えられた。


実は、未来でも俺はこの人に助けられていた……。


未来では、リオスさんは地上で戦っていたんだけど、たった一人でガジェットを数千機叩くことが出来るリオスさんでも、クアットロに道で泣いていた少女を人質に取られ……。


その優しさ故――――。


クアットロに殴り殺しにされてしまった。


リオスさんの実力だったら、クアットロなんて足元にも及ばないのに……。


もしかしたら、リオスさんが生きていてくれたら、あんな未来はならなかったかもしれない……。


でも、それはifでしかない……。



「お久しぶりです。お元気でしたか」

『フィル、相変わらず真面目だね。でも、変わっていないようで何よりだよ。フィル、執務官はあくまで出発点なんだからね。それを忘れないでね』

「はい!! その事はずっと忘れてません!!」

『うん、君なら大丈夫だね。それとフィル、結婚おめでとう……。やっと好きな人と結ばれるんだね。未来で、かなわなかった恋、やっとかなうんだね。本当、ティアナのことになると惚気るからね。君は……』

「リ、リオスさん……勘弁してくださいよ……」

『ふふふ、ごめんね♪』



リオスさん、すごく面倒見が良いんだけど、時々こうやってからかってくるときがある。
まぁ、ティアとのことを本当に祝福してくれているから、こうやって言ってくれるんだけどね。



「えっ、リオスさんに未来のこと話していたの!?」

「まあね。クロノ提督にも許可は得ていたしね。それに……」

「この人は俺にとって、数少ない信頼できる人だから……」

「なんか、ちょっと妬けるわよ……。でも……リオスさんの所にいたときでも、あたしのことずっと思ってくれてたんだ……。ありがとう、フィル……」

『……本当に君たちは思い合っているんだね。その一途な思いは、羨ましいよ……』

「「リオスさん……」」

『あっ、そう言えばなのはに聞いたんだけど、あの式場を使うんだって?』



実は、結婚式のことで、なのはさんに相談にして、その時に式場で良いところがあると、なのはさんが見つけてきてくれたのだ。

なのはさん達とリオスさんは親友同士だから、その事を聞いていてもおかしくないしな……。



『あそこは、確かにロケーションは最高だけど、料理に関しては普通レベルなんだよね……』

「そうなんですよね……。場所は最高なんですけど……」

「そんなことを言えるのはあんたくらいよ。あそこだってかなりのレベルだと思うわよ……。リオスさん、実は……フィルが結婚式の料理を作るって言ってるんですよ。でも、そうなると、かなり負担になってしまうんです……」

『そんなことだと思ってたよ。そこで……』

『今回の結婚式の料理、僕に任せてもらえないだろうか……』

「えっ……?」

『一生に一度の大切な事だからね。自分の大切な教え子には、記念に残る結婚式を挙げて欲しいしね……』

「だけど、リオスさん、かなり忙しいのに……申し訳ないです」



リオスさんは、俺なんかよりも忙しくて、それこそ有休を取る暇もないのに……。



『そんなこと心配しなくていいの。僕の有給は余りまくっているしね。二人は余計な心配はせず、思い出に残る式を挙げて欲しいんだ……』

「「リオスさん……」」

『それじゃ、今度会うのは式前日だね。料理の方は任せてね♪』



リオスさんは、笑顔で手を振りながら通信を切った。



「フィル……あたし達って本当に、色んな人に支えられていたんだね……」

「ああ……なのはさん、オーリス姉……そしてリオスさん……。みんな俺たちの結婚式のために……」

「絶対……良い式にしようね」

「そうだな……」





*    *    *



五月 某日


俺たちはレジアスの親父さん達に、自宅に招待された。
結婚前に、どうしても俺たちと話をしたかったらしい。



「いらっしゃい、フィル、ティアナ」

「お邪魔します。姉さん」

「遠慮しなくて良いわ。さあ、上がって」



俺たちを出迎えてくれたのは、オーリス姉だった。
ティアも、オーリス姉のことは姉さんといって慕っている。

オーリス姉に案内されて、入った部屋には親父さんが待っていた。



「よく来たな。フィル坊、ティアナ嬢ちゃん」

「その呼び方……久しぶりですね。親父さん」

「まあな。もうお前達は立派な社会人だからな」

「お久しぶりです。レジアスおじさん」

「ティアナ……本当に大きくなったな……」

「はい……おじさんや姉さんが、あたしのことを陰から支えてくれたから、あたしはここまでやってくれたんです」

「そう言ってくれると嬉しい……。そうそう、オーリスがお前と話がしたいから、部屋に来てくれと言っていたぞ。儂もフィルと少し語り合いたいからな」

「分かりました。じゃ、フィル後でね」


そう言ってティアはオーリス姉の部屋に行くことにした。
俺も、親父さんと語り合いたかったからな。



*    *    *



「それにしても……お前も結婚か。しかも、ティアナ嬢ちゃんと」

「ええ……俺が結婚なんてするとは、思ってなかったですけどね」



俺と親父さんは、親父さん秘蔵のブランデーを飲みながら、小さかったときのことや六課に入ってからのこと。



そして――――。


未来で経験してきたことなどを話していた。



「フィルよ……お前は未来で、ティアナ嬢ちゃんを失ってから、自分は人を好きになってはいけない。そう思っていたな」

「はい……でも、ティアがそれを取っ払ってくれたんです。ティアの一途な思いが……」

「あの子は一度思ったら、それに全力を出すからな。スバル嬢ちゃんとまた違った一途さがある……」

「ええ……本当に……」

「フィル……あの子を幸せにしてやるのが、お前の役目だ。そして……」


親父さんが俺の肩に手を置き――――。


「儂は、お前にも、幸せになって欲しい。それが儂とオーリスの心からの願いだ。お前達は儂の自慢の息子と娘なんだからな……」

「親父さん……」



俺は親父さんの前で、涙を流していた。
小さいころの俺たちにとって、レジアスの親父さんはたった一人の理解者だった。

その親父さんに、少しでも恩返しをしたかった。


親父さん……。


本当にありがとう……。



*    *    *



「今頃、あの二人かなり飲んでいるわね」

「そうですね……。フィルも久しぶりにおじさんに会ったんですものね」

「ティアナ、あなた、そんなに飲む口だったかしら?」

「普段はそんなに飲みませんよ。でも、あたしも久しぶりに姉さんに会ったんだもの」

「そうね……」



あたしは別室で姉さんとお酒を酌み交わしている。
そこではフィルの話せないことや、オーリス姉さんの昔話をしていた。

昔姉さんは、兄さんと付き合っていた。
本当なら、兄さんと結婚するはずだったんだけど、結婚直前あの事件が起こってしまい、姉さんは今でも独身を貫いている。

本当に兄さんのことが好きだったんだな……。



「ティアナ……」

「はい」

「私は……残念ながらティーダと結ばれることがなかった……」


姉さんの悲しみに満ちた目を見れば、兄さんのことをどれだけ思っていてくれたかよく分かる。


「そんな思いはわたし達だけで良いわ。だから、必ずフィルと幸せになってね。私とティーダの分まで……」

「はい……ありがとう……姉さん……」



兄さん……姉さん……。


あたし、絶対フィルと幸せになるからね……。



*    *    *




六月 結婚式前日



「ほら、そこ!! 材料が違っているよ!! 明日の式まで時間がないんだから、急いで!!」

「そっちも違ってるで!! それはこっちに使うんや!!」



結婚式前日、はやてさんがリオスさんから料理を作ることを聞いて、式前日に駆けつけてくれて、そこで会場のスタッフとパーティー用の料理の下準備と特大のウェディングケーキを作っていた。


リオスさんもはやてさんも、普段は温厚なんだけど、こと料理に関しては妥協は全くない。
だから、ここのスタッフに檄を飛ばしまくっていたのだ。



「あれ!? フィルどうしたんや。式は明日やで?」

「ええ、どうしても気になってしまって……」

「相変わらず心配性だね。でも、無理ないかな……」

「はい……」

「ティアナはどうしてるんや? 宿泊先でしっかり休んでいるか?」

「大丈夫です。体調も万全ですよ」

「そっか……さあ、フィルも明日のために、ホテルに戻ってしっかり休んでね。ここは僕とはやての仕事だからね。当日色々サプライズするから、楽しみにしててね」

「そういうことや。フィル楽しみにしててや♪」



二人の言葉を受け、俺はホテルに戻っていった。
はやてさんとリオスさんは、俺たちのために今、一生懸命料理を作ってくれている。


俺たちは、明日の式を良いものにすることが、殺人的なスケジュールを割いて来てくれた二人に、恩返しをすることになるんだ。





*    *    *





「いよいよ……明日ね」

「ああ……なんか緊張するな」



ホテルに戻ってた俺は、ティアとベッドに座って外の景色を見ていた。
明日のことを考えると、何か眠れなかった。



「そうね……フィル、もっと肩の力を抜いて………そんなんじゃ明日大変よ。あんたはもう少し、お気楽極楽に考えた方が良いわよ」

「そうだな……ありがとう、ティア」

「だから……」



そう言って、ティアは俺をベッドに押し倒し……。



「今日は、独身最後の夜……なんだから……いっぱい抱いて欲しいな……」

「ティア、今日は明日のために止めようと思っていたけど、お前から誘ったんだからな。いまさら止めは無しだからな」

「そんなこと……言わないわよ……。いっぱい……してね」



俺たちは、キスをしながらお互いの服を脱がし合い……。



「あ……ん……」



俺は、ティアの形の良い胸を触れながら……。



「……胸だけじゃ……いや……」



そして、ティアを力一杯抱きしめ……。



お互いの体温を感じながら、身も心もとけあい……。



俺たちは眠りについた……。





*    *    *





結婚式 当日


俺とティアは、式場の入り口で受付をしていた。
朝早くから、色んなメンバーが来てくれた。

まず最初に来てくれたのは、スバルとゲンヤさんに引き取られたナンバーズの面子だった。
スバルは俺たちを見るなり、「おめでとう!! ティア、フィル!!」と大声で泣きながら、俺たちに抱きつこうとしたけど、ギンガさんとチンクがそれを止めてくれたおかげで、衣装を守ることが出来た。

次に来てくれたのは、なのはさんとフェイトさん、そしてヴィヴィオの三人だった。
相変わらず、仲の良いことで手をつないでやってきた。

俺たちも、こんな家族を作っていけたらと思う。


その後も、エリオ達やヴァイス陸曹達も来てくれて、最後にレジアスの親父さんとオーリス姉が来てくれた。



「ええ……ただいまより、フィル・グリードとティアナ・ランスター、両名の結婚式を始めたいと思います。まず最初に、レジアス・ゲイズ様よりご挨拶をお願いいたします」



実は今回の結婚式の司会は、ヴァイス陸曹がしてくれることになった。
本当は式場の人に頼むつもりだったけど、ヴァイス陸曹が俺がやってやると言ってくれたので、遠慮なくお願いすることにしたのだ。

司会の声で親父さんが、壇上に上がり俺たちのためのスピーチをしてくれた。
でも、いつもと違ってすごく緊張していて、マスコミに会見するときと全く違っていた。



「えっと……フィル・グリード君、ティアナ・ランスターさん、ご結婚おめでとうございます。二人には色々話したいことがいっぱいあるのですが、どうにも上手く言えなく……申し訳ない」

「だから、儂からは一言だけ言わせてもらいます。二人とも、お互いのことを信じ、幸せな家庭を作ってください……儂からは以上とさせてもらいます……」



親父さんのスピーチが終わり、会場のみんなから拍手がおこり、俺たちも嬉しさで涙が出そうになっていた。
言葉は短いものだったけど、本当に親父さんが自分の言葉で話してくれたのはよく分かった。



「レジアス・ゲイズ様、ありがとうございました。続きまして……」



親父さんのスピーチの後、ウェンディとノーヴェが壇上に立った。



「二人とも、今日は本当におめでとっす!! ティアナ、本当に綺麗っすよ!! フィル、この幸せ者♪」

「おい!! もうちょっと真面目に話せ!! ったく……フィル、ティアナ、今日は本当におめでとう」

「ノーヴェ堅いこと言いっこなしっすよ。こういうときは明るくするのが良いんすから♪」

「あほか!! だからといってこんな挨拶の仕方があるか!!」

「はは〜ん、ノーヴェ、あたしに言いたいこと言われて、妬いてるんすね」

「んなわけあるか!!」

「あはははは!!」



この二人がそろって、堅い雰囲気になるとは思っていなかったけど、本当に予想通りとはな。
でも、こういう方が俺たちの結婚式らしいしな……。

その後、収拾が付かなくなりそうだったので、ギンガさんとチンクに止められて、スピーチという名のどき漫才は終了した。

これ、ビデオに撮っているから、後で見たら、俺たち絶対腹抱えてそうだな……。



「……あ、相変わらずだよな……えっと、仕切り直しまして……」



ヴァイス陸曹が、仕切り直しで次のプログラムに進めたのは、エリオとキャロ、そしてルーテシアのお祝いの歌だった。



「フィルさん、ティアさん、ご結婚おめでとうございます。僕たちは皆さんみたいに、上手く言葉に出来ないと思い、キャロとルーと三人で歌を送ることにしました」

「わたし達も、そんなに上手い訳じゃありませんが……」

「一所懸命……練習しましたので、聞いてください」

「曲は……『まぶしくてみえない』です」



曲が流れ始めると、三人は一生懸命歌ってくれた。
それは、三人がこの日のためにいっぱい練習して、覚えて、俺たちのためにしてくれてたというのがすごく伝わった。

曲も友情をテーマにしているもので、エリオ達らしい選曲だと思った。



歌が終わった後は、今日来られなかった人たちの祝電をヴァイス陸曹が読んでくれた。
その中にユーノさんとクロノさんのがあったときはびっくりしたけどな……



「残すところ、誓いの言葉と口づけをするのみとなりましたが、その前に……」

「二人の師匠でもある、高町なのはさんとフェイト・T・ハラオウンさんから、それぞれ一言ずつお願いします」

「「ええっ!!」」



これは、ヴァイス陸曹のサプライズだった。
なのはさんもフェイトさんも急だったので、焦っているけど、でも、二人とも壇上に来てくれた。



「ったく……ヴァイス君、こういう事は先に言っておいてね」

「そうだよ……いきなりでびっくりしたんだからね」

「へへ、すみません。でも、こいつらにお祝いの言葉をかけてやってください。きっと二人とも喜びますから……」

「そうだね……えっと、フィル、ティアナ、結婚おめでとう。いきなりだったから、ちゃんとしたコメントは用意してないから、わたしとフェイトちゃんがそれぞれに一言ずつ贈るね」

「まず、わたしからね。わたしはティアナに贈らせてもらうね。ティアナ、六課の時からみんなのまとめ役として、そしてフィルの支えとして頑張ってきたね。これから二人は色んな困難にぶつかると思います。でも、一人でなく、二人でなら必ず乗り越えられると信じてます」

「二人で駄目なときは、わたしやみんなに頼ってください。決して抱え込まないでくださいね。そしてティアナ、あなたはわたしの大事な一番弟子なんだから、これからも頑張ってね♪」

「なのはさん……はい……」



なのはさんの言葉に、ティアは涙をポロポロ流していた。
嬉しさから来ていたので、押さえることはしなかった。



「じゃ、私からはフィルに贈らせてもらうね。フィル、今日は本当におめでとう。ここにいるメンバーはフィルのことを知っているから、未来のこと言わせてもらうね。フィルは未来であんな辛いことがあって、自分の幸せは二の次にしていた」

「でも、ティアナのおかげで、やっと自分の幸せを考えてくれた。フィル、自分が幸せになってはいけないなんて、二度と考えないでね。フィルにはティアナという、大切なパートナーがいるんだからね。なのはも言ったけど、二人には私達が付いているんだから、困ったときは遠慮なく相談してね」

「フィル……幸せにね……」

「フェイトさん……」



俺もティアと同様、フェイトさんの言葉で嬉しくなってしまい、声を殺しながらだけど、涙があふれてきた。
俺たちは、本当にいい人達に恵まれているんだな……。



「なのはさん、フェイトさん、ありがとうございました。そして、今日のメインイベント、二人の誓いの儀式です」

「それ、もう少しだけ……待ってもらって良いかな」

「「リオスさん!!」」



突然扉が開くと、リオスさんが布を掛けた物体を台車で運んできた。
いったいあれは何なのだろうか?



「フィル、ティアナ、式の途中でごめんね。でも、これをどうしても二人に贈りたかったから……」



そう言ってリオスさんが、布を取り去るとそこには……。



「氷の……銅像?」


そこには、氷で作られた二人の人物の銅像があった。
もしかしてこれは……。



「もしかして……あたしとフィル……?」

「うん、僕の魔法で氷を作って、今日、急いで作り上げたんだ。何とか間に合ったみたいだね」



リオスさんは氷結系魔法のスペシャリストだ。
氷を作るくらい訳ない。

でも、料理を作って、さらにこんな見事な氷の像まで作ってくれたなんて……。



「フィル、ティアナ、僕からはこれくらいしかできないけど、君たちの式に、少しでも花を添えられればと思って作ったんだ」



リオスさんの方を見ると、手も凍傷になっていて、昨日から全く寝ていないから、目の下にクマもできてしまっている。



「リオスさん……俺……なんと言ってお礼を言ったら……」

「お礼なんか良いよ。これは僕の気持ちだから、君たちに幸せになって欲しいから、やっただけだよ……」



リオスさんは俺とティアの手を取り、俺たちの手を握らせる形にして、その後、自分の手も添えて……。



「フィル、ティアナと幸せな家庭を築きあげていってね。それが、君のこれからの大切な役目であるんだからね。決して自分から命を捨てる行動はしないこと。そして、ティアナ……」

「はい……」

「フィルのこと、しっかりと支えてあげてね。ティアナの愛が、いつもフィルを救っているんだからね。そしていつか、二人の元気な赤ちゃんを産んで、未来を……幸せな物にしてね。あんな悲しい未来は……もう無いんだからね」

「「リオスさん……」」




やっと涙も止まったと思っていたのに、また溢れてきている。
本当に、最高の贈り物だよ……。


みんな……。



俺たちのためにここまでしてくれて……。



本当にありがとう……。



俺……一生忘れないから……。



「じゃ、神父がいないから、僕が代わりにするよ」



そして……。



俺とティアは、神父になったリオスさんの前に来て、誓いの言葉をたて……。



「汝、フィル・グリード、汝はいかなる時もティアナ・ランスターの事を愛し続けることを誓いますか?」

「もちろん、誓います」

「汝、ティアナ・ランスター、汝はいかなる時もフィル・グリードの事を愛し続けることを誓いますか?」

「はい……誓います」

「では、誓いの口づけを……」




俺とティアは、みんなの見守る中……。


誓いの口づけをした……。



その後、みんなで記念撮影をしたんだけど、カメラのタイマーをセットしに行ったウェンディが、お約束のボケをしてしまい、結局二回取り直してしまった。



そして……。



「それ!!」



ブーケトスをするティアは、幸せにあふれた表情をしていた。
そんな、ティアを見て、みんな笑顔で祝福してくれていた。





これから俺たちは、様々な困難にあうと思う。


でも、なのはさん達の言葉にあったように、一人で駄目でも、二人でなら乗り越えられる……。


なのはさん達だけでない……。



リオスさんも俺とティアのために、本当に心からしてくれた……。



リオスさんの言葉にあるように、ティアと一緒に未来を歩んでいくことが、大切なんだ……。



これからもよろしくな……。



俺の愛するティア……。







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あきゅろす。
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