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〜 Remember my heart 〜
if ending シャッハ
「むぅ……」



最近、恋人であるフィルがかまってくれません。
確かに仕事ですから、騎士カリムと一緒にいるのはしょうがありませんよ。

だけど……。


「フィル、今日は何の飲み物を作ってくれたんですか?」

「今日は、アールグレイの良いのが入りましたから、紅茶と一緒にゼリーも作ってみましたよ」


こんな感じで、仕事の時だけでなく、騎士カリムと一緒に過ごしていることが多くなっている。
しかも、騎士カリムも良い感じの雰囲気を出しているし……。



「私って……こんなにヤキモチ焼きだったかしら……」



こんなんじゃ、フィルに嫌われてしまう……。
フィルならそんなの気にしないかもしれないけど、でも……。


そんなことを考えて廊下を歩いていたら、なのはさんとフェイトさん、そしてはやてが、こちらに向かって歩いてきていた。



「あれ? シャッハやないか」

「はやて……?」

「お久しぶりですね。シスター・シャッハ」

「なのはさん、それにフェイトさんまで……。今日は一体どうしたんですか?」



この3人がそろうなんて、相当珍しい。
いったい何の用があって来たのだろう?


「えっと、実はフィルにちょっと聞きたいことがありまして……」



ピク



「えっと……。どのような用件ですか……」


こらえろ……。なのはさん達は仕事でここに来たんだ。
別にフィルに、こなかけに来たんじゃないんだ……。



「実は私が担当している案件で、どうしても分からないことがありまして、それをフィルに調べて貰っていたんです。今日はそれを取りに来たんです」

「それで時間があったら、フィルとお茶でもしようかと思い……ま…し…」



*    *    *


「ほほぅ……それはそれは……」


な、なんや……。シャッハの様子がめっちゃおかしい。
特にフィルの名前が出たところから、様子がものすごくおかしかった。

そう言えば最近シャッハ、フィルと会う機会がないってぼやいていたかも……。



「お、おちついてな……シャッハ。私らは、シャッハからフィルを取ったりせえへんから!!」

「そ、そうですよ!! シスターとフィルのことは私達も知ってるんですから!!」

「ですから、落ち着いてください。シスター・シャッハ!!」



結局、シャッハが落ち着いたのは、それから10分後のことだった。
もう、生きた心地せえへんかったわ……。



「でも、本当にどうしたんですか。以前でしたら、こんな事くらいで動揺なんかしなかったのに……」

「そうやで……。フィルとシャッハが付き合ってるのなんて、もうみんな分かってるんやからな……」

「シスター……。もしかして……フィルとうまくいってないんですか……」


フェイトちゃんが言った次の瞬間、シャッハは……。


「ふぇ……ふぇえええええええん!!」


その場で大声で泣き始めてしまったのだ……。



*    *    *



「なるほどな……。最近、フィルは騎士カリムと付きっきりというわけなんやな……」



シャッハから事情を聞いてみると、最近フィルは仕事がすごく忙しくて、中々会う時間が取れない。
しかも、騎士カリムと一緒にいることが多く、その時間がここんところ多くなってきている……か……。



「あのな……。そんなに心配やったら、コスプレでもしてフィルの部屋にでも押しかけてみいや!!」

「コスプレ……って、ええええええええええ!! そ、そんなの恥ずかしくて出来ませんよ!!」

「あの……。シャッハ、こんな事言いたくないけど、このままじゃ、フィル誰かに取られちゃうよ……」


ナイスやフェイトちゃん。
今は、シャッハの心を押す手助けが少しでも欲しいんや。



「シスター……。はやてちゃんの言ってることは、ちょっと過激かもしれないけど、それでも、たまには……良いと思いますよ」

「なのはさんまで……」

「シャッハ、フィルの好みなら六課にいたときからのデータで熟知済みや。それでも、やらへんか……」


シャッハの目つきがかわり……。


「はやて……」

「な、なんや……!?」

「その話、嘘ではないんですね……」


シャッハの私の手を握る力がものすごく強い。
痛い、いたい!! リンゴを片手で潰す力で本気を出されたら、私の手なんて簡単に粉砕骨折してしまう!!


「ほ、ほんまや……。だから、その手を離してや!! 手が潰れる!!」

「あっ……。す、すみません!! つい……」


ようやく離してくれたくれたけど、物凄く痛い……。


「まったく……でも、本当にフィルのこと好きなんやね……。なんか羨ましいわ」

「はやて……」

「シャッハ、私らが責任を持ってプロデュースするから、しっかりフィルのハート掴むんやで!!」

「はい!!」



こうして、シャッハのドレスアップ作戦が始まった。
最初は修道院服で行くと言っていたシャッハだったけど、そんなんじゃあかん。

私が責任持ってやるんやから、もっと強烈なアピールをせんと!!


そんなこんなで3時間、アン○ミ○ーズ風から、Piaキャ○風、さらには巫女さんから、フリフリのドレスまで試してみた。

そして、決まったのが……。



「うわぁ……よく似合ってますよ。シスター・シャッハ」

「うん、本当にお似合いですよ」

「そうやろそうやろ♪」



メイド服と、おまけに猫耳を装着したメイドシャッハ (猫耳ver)だった。


「は、はやて……さすがにこれは恥ずかしいですよ!!」

「シャッハ、フィルの好みはこれがど真ん中や!! メイド服にはマジで萌えを感じていたんやで!!」

「そ、そうなんですか……? でも……」

「ああ!! もう!! シャッハ、恥ずかしがってないで、さっさとフィルの部屋に行く!!」


ウジウジしているシャッハを私達3人で背中を押しながら、フィルの部屋に強制連行することにした。
実は、シャッハと付き合うようになってから、フィルはこの聖王教会の領内に家を構えている。

だから、フィルの家に行くのにそんなに苦労はなかったのだ。
幸い、フィルは未だに仕事中だ。

その間にフィルの部屋に行って待機してればいい。



*    *    *




「ふぇぇ……。はやての言葉に乗せられて、こんな格好してしまったけど……」


鏡を見ていないけど、正直恥ずかしさで顔が真っ赤になっているだろう。
でも……。


「これで……フィルが少しでも興味を持ってくれれば……」


そんなことを考えていたら……。


ガチャ


玄関の扉が開く音がする。


「い、いよいよ……ね……」


ドクンドクン……。
心臓がさっきから鼓動が早い。



「ふぅ……今日も疲れたな」


来た!!
フィルが部屋にやってくる!!

そして……。

扉が開かれ……。


ガチャ


「お、お帰りなさいませ……ご主人様……」



*    *    *



正直俺の頭の中は真っ白だ。
部屋に戻ってみたら、いきなりシャッハがいて、しかも、とんでもない格好をしているではないか。

フリフリの青いメイド服を着て、さらになぜかネコ耳まで付けている始末だ。
シャッハもこの格好が恥ずかしいのか、顔だけでなく耳まで真っ赤になっていた。



「あ、あの……シャッハ。何でそんな格好をしてるの?」

「……って……」

「?」

「最近……あまりプライベートで一緒に会うことが出来ないし、しかも騎士カリムとずっと一緒にいるし……それがすごく不安になって……」

「シャッハ……」



馬鹿だ俺は……。
シャッハがこんなに寂しい思いをしていたのに、まったく気づかなかったなんて……。

これじゃ恋人として失格だ……。



「ごめんな……全く気づかなくて……」

「いいんです。これは私の我が侭ですから……」

「シャッハ……」


シャッハの瞳が潤み、その瞳を見て、今何を求めているのか分かる。


「あっ……」


俺はシャッハの頬に触れ……。


「フィル……私……」


そのまま俺たちはお互いの唇が近づき……。


10センチ……


5センチ……


2センチ……


そして……


ガチャ


「「!!」」

「フィル、こんな夜分にごめんなさい。この書類のことなんですけ……ど……?」


突然のカリムの乱入で、さっきまでの雰囲気は一気に吹っ飛んでしまう。

そして……。


「も――――っ!!」


シャッハは、邪魔されたこともあって、涙目で大声で叫んでいた。


「……なんで……なんで……こうなるんですかぁぁぁぁ!!」



*    *    *



「シャッハ……もう落ち着きなって……」

「だって……だって……なんであんなタイミングで乱入してくるんですか。あり得ませんよ!!」



騎士カリムの乱入があり、30分くらい仕事の話をしていったが、帰った後シャッハの怒りは収まることが無く、1時間必死で宥めて、ようやく大分落ち着いてくれたのだ。

正直、あのタイミングはあり得ないでしょう。
まるで狙っていないとあんなにバットタイミングにはならない。



「もう、忘れろって……今はこうして一緒にいるんだから……」


俺はシャッハを自分の方へ抱き寄せる。
シャッハの髪はショートヘアだけど、髪質がすごく柔らかくて撫でているだけで気持ちが良い。

本人はもっと長い髪にしたいらしいが、俺はこれでも充分に可愛いと思う。



「フィル……その……今日は、いっぱい……いっぱい抱いて欲しいんです」

「俺もシャッハをいっぱい抱きしめたい……」



俺たちはどちらからともなくキスをし、久しぶりにお互いを求めるのでキスも情熱的になっている。
普段ならシャッハからしてくることはないが、今日はシャッハの方から舌を絡めてくる。

キスが終わると、銀の糸がひくほど思いっきり求め合っていた。



「シャッハ……いいか……」

「はい……」


俺は、シャッハの上着を脱がし、ブラを少し乱暴にはぎ取り、その胸を両手で揉みし抱く。


「あっ……ん……はぁ……はぁ……」

「大丈夫か……シャッハ」

「大丈夫……です……むしろ、いつもよりふわふわしています……」


シャッハもどうやら気持ちよくなってくれている。
よかった……

こういう事は独りよがりは嫌だから……。

そして、胸以外の全身も求め……。



「お願い……これ以上は……切ない……です」

「ああ……いくよ……」

「きて……フィル」



こうして俺とシャッハは……。


お互いの存在を何度も求め合い……。


その度にベッドは激しくきしみ……。


その行為は数時間にわたって繰り返された。



*    *    *


一週間後


俺とシャッハは、今クラナガンのショッピングモールに来ている。
実は、先日のカリムのことを根に持っていて、それをカリムと会う度に黒いオーラを発していたのだ。

別に何かを言うわけではないが、カリムも会う度にシャッハのオーラを当てられたのではたまった物ではなかったらしく、気分転換に二人でどこかに遊びにでも行ってきなさいと言ってくれた。



「シャッハ、それじゃどこに行こうか?」

「別に、どこでも良いですよ。こうして……」


ぎゅっ


シャッハは、俺の左腕にしがみつき……


「二人でいられるのなら……良いですから……」

「そっか……それじゃ適当なところに行ってみようか」

「はい♪」



*    *    *



「あ、あの……シャッハ、マジでこれを食べるのか?」

「……たまには……してみたかったんです……」


目の前に置かれたのは、カップル限定のジャンボクリームソーダだ。
量的には1リットルくらいで、可愛い熊の頭の形をしたグラスにソーダが注がれていた。

ここまでは良いのだが……。



「ストローが……つながっているとはな……」


ストローがハートの形をしていて、それは一つのストローとして形取られていた。


「これは、さすがにびっくりしました……」


シャッハも正直これは予想していなかったようだ。


「どうする……ストローをもう一本持ってくるか?」


俺はストローを頼もうとしたとき……。



「いいです……こ、これで……一緒に飲みましょう……」

「い、いいのか……?」

「な、何度も言わせないでください!!」


結局、シャッハも俺も顔を真っ赤にしながら、ソーダを一緒に飲むことになった。
終始恥ずかしかったけど、これはこれで良い思い出かな?



*    *    *



夕方になり、私達は海が見える公園に来ている。
ここで、私達は夕日を眺めながらベンチに座っていた。


「良い風ですね……」

「そうだな……」


さっきから心地良い風が、私達のほてった身体にとても気持ちよかった。
そして、ここから見える夕日が、心を穏やかな気持ちにさせてくれる。



「フィル……」

「んっ……?」

「こんな風に、のんびり出来る時間を、大切にしたいですね……」

「そうだな……それは俺も同じだ」



私達は平和を守る仕事故、いつ命を落としかねない……。


だけど、こんな風な一時があるからこそ、戦っていられる。


そして……。


大切な人がいれば、私はいつでも帰ってくることが出来る……。


大好きなフィルの元に……。


それが私の幸せなのだから……。


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