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〜 Remember my heart 〜
if ending スバル


「フィル、今助けに行くからね……」



あたし達フォワードは、何とかフレイム・グロウを倒すことが出来、ヴァイス陸曹のヘリでゆりかごに進入することが出来た。
しかし、フレイム・グロウを倒す代償も大きく、あたしとティア以外は戦闘不能になってしまう。

戦闘不能になったメンバーは、あたし達に残った魔力を渡してくれ、ギン姉はあたしにブリッツキャリバーとリボルバーナックルを託してくれた。


突入したあたし達は、それぞれ役割を分けて行動することにした。
ティアはスーパーサンダーでなのはさん達の救出活動を、あたしは、クアットロを倒しに行ったフィルの援護に向かうことになった。


そしてついに――――。


クアットロのいる部屋に取り着くことが出来た。



「マッハキャリバー、ここにいるんだね」

《はい、フィルとクアットロの反応があります……これは!!》

「どうしたの、マッハキャリバー!?」

《相棒!! 急いでください!! フィルの生命反応が殆どありません!!》

「嘘!! キャリバーズ、ここをぶち破るよ!!」

《《了解!!》》

「いっけぇぇぇ!!」



あたしはリボルバーナックルで目の前の壁を破壊し、中に突入することが出来た。
そして、あたしが目にしたのは……。



クアットロの攻撃で、ボロボロになって倒れていたフィルの姿だった。



「フィ……フィ、ル…?」

「あら……誰かと思ったら、ゼロ・セカンドですの。せっかくここまで来たんですから、このゴミ持って帰ってまらえますぅ〜〜」



そう言って、床に倒れているフィルを、あたしの方へ蹴飛ばし……。



「……う、そ……だよね。返事してよ……」

「あ……あああ……。うわあぁぁぁぁあぁあぁ!!」



戦闘機人としての力を解放すると、エメラルドグリーンの瞳が、金色に書き換わっていた。



「な、なんですの。この力は!? ゼロ・セカンドに、ここまでの力があるなんて!!」

「……許さない」



フィルを……。


大好きなフィルを返せぇぇえぇえぇ!!




あたしは、怒りを込め、クアットロに振動破砕を放ち、聖王の鎧を完全に砕く。
間髪入れず、さらに振動破砕を使用して、クアットロをひたすら殴り続ける。

クアットロは幾度の振動破砕を受け続けて、全身は皮膚が破れ、体内の機械部品が見えるくらいボロボロになり、もはや戦闘能力は全く残っていなかった。



「はぁ……はぁ……はぁ……」

「……あ、あははは……まさか……あなたなんかに……やられ……るとは……ね……」

「……うるさい。しゃべるな……」



もうこいつの声を聞いているのも、耳障りだ……。
あたしはトドメを刺そうと、拳を振り下ろそうとしたとき……。


「……やめ…ろ、スバ…ル」



フィルの手によって、あたしの右腕が止められていた。



「フィ……フィル……」

「こんなやつを殺して……。お前の手を汚す…な……」

「だけど!!」


こいつはギン姉を……。


フィルを……。


そして、未来ではみんなを……。



「スバル……」


フィルが、あたしの手をとり――――。


「お前のその手は……こんな奴を殴るための物か……。そうじゃないだろ……」

「あっ……」

「お前のその手は、困っている人を助けるための物だろ。その優しい心を、こんな奴のために捨てないでくれ……」


そうだ――――。


フィルの言うとおりだ。


「フィル……あたし……あたし……」



*    *    *



(まったく、甘いですわね。でも、そのおかげで隙だらけですわ)


フィル・グリードの甘さのおかげで、私は何とか一撃を入れるだけの力が回復し、おまけに二人とも隙だらけになってますわ……。


この毒針を打ち込めば……。



*    *    *



「フィルの手……暖かいね……」

「お前の手も……暖かいさ……。お前の優しい心みたいな……そんな暖かさが……」

「フィル……」



俺とスバルが、気を抜いていたその時……。



(終わりですわ!!)



背後からクアットロが、毒針を打ち込もうとしたが……。



「が……あ……あ……」



突如、上空から砲撃がクアットロの胸部を貫いていた。



「「クアットロ!?」」



完全に油断していた。
クアットロが、背後から攻撃を仕掛けていたなんて……。

だけど、だれがクアットロを?



「二人とも、大丈夫か?」

「はやてさん!?」

「八神部隊長!?」



俺たちを助けてくれたのは、八神部隊長だった。
しかも、リイン曹長とユニゾンまでしている。




*    *    *




「……どうやら、無事なようやな」

「はやてさん、どうしてここに?」

「フィル達のことが気になってな。なのはちゃん達をヘリに戻した後、私だけ戻ってきたんよ」

『ちなみに、ゆりかごのコアも破壊してますから、魔法も使えるんです』

「それで、ユニゾンが可能になったんですね」

「そういうことや。後は私が引き受けるよ」


スバル、フィル。こんな奴の為に、あんた達の手を穢す必要はあらへん。
こういうのは私の仕事や――――。



「……はやてさん?」

「フィル、何とかワープは使える? 二人は先にワープで行っててくれるか?」

「八神部隊長はどうするんですか? もうすぐゆりかごは機能停止して、崩壊が始まりますよ」

「んー、大丈夫や。ちょっとだけお仕事したら、すぐ脱出するわ。リインもいるから、転移魔法で脱出するよ」

「……わかりました。アースラで待ってます」



フィルとスバルは、ワープでアースラに戻っていった。
これで、後は……。



*    *    *



「や…がみ……はや、て……」

「クアットロ……。あんたは私達の大事な物を、たくさん踏みにじった」



私はシュベルトクロイツを構え、クアットロに向け私の最大の魔法、ラグナロクの詠唱をする。



「……その罪……自分の命で償いや!!」

「ひ……ひいぃぃぃぃ……」



クアットロは、歯をガタガタ震わせ、腰を抜かしてその場を動けなくなったが、そんなのは関係ない。
この女はここで片づける……。


これ以上、フィルに手を汚させる必要はない。


これは、部隊のトップに立つ私の役目や。




「響け……終焉の笛……ラグナロク!!」



ラグナロクの詠唱が終わると、魔力球がクアットロの目前で、その凶悪なエネルギーを放たれるのを待っていた。



「………終わりや」

「あ……ああああ……」

「ラグナロク・ゼロ距離砲撃!!」

「い、いやああぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁ!!」



放たれたラグナロクは、クアットロを完全に消滅させ、クアットロのいたところは、巨大なクレーターになっていた。



*    *    *




「……これで、本当に終わったな……。リイン……」

『はいです……。フィルもスバルも、こんな奴のために、手を汚しちゃいけないんです。でも、本当は、はやてちゃんにも、して欲しくなかったです』

「リイン……これは誰かがやらなきゃいけないんや。そして、これは部隊のトップである私の役目なんよ………」


これが人の上に立つ人間の責任。
時には人を殺す覚悟も持たなければならない――――。


部下を死地へ送りだすんや。
自分も同じ覚悟がなければ指揮官として資格はないから……。



『はやてちゃん……』

「……戻ろうか……みんなの所へ……」

『はいです!!』


私とリインは転移魔法を使って、アースラに戻る。
私が戻った後、アースラのアルカンシェル・ノヴァで、ゆりかごは完全消滅した。



こうして、JS事件は幕を閉じることになった。
だが、フィルはブラスターの使いすぎで、身体のあちこちにダメージが出来てしまい、そのまま病院になってしまった。




*    *    *




10日後



「フィル、お見舞いに来たよ」



あたしはフォワードの中で比較的軽傷だったので、メンバーの中で一番早く復帰することが出来た。
今日も、フィルのお見舞いに来ていた。


「ありゃ……寝ちゃってるね」



こうしてみると、フィルの寝顔ってかわいいんだよね。
本人に言ったら、怒るけどね。



「布団はいじゃって……風邪……引いちゃうよ」



あたしはフィルの布団を直してあげると、持ってきたリンゴを剥き始めた。
リンゴをむいていると、ふとテーブルにあった一冊のノートに気づいた。



「これ……。なんだろ?」



あたしがノートを手に取ろうとしたとき、外からの風でページがめくれてしまう。



「いけない、元に戻しておかないと……」



ノートを戻そうとしたとき、そのページに書かれていた内容が目に付いてしまい、あたしは申し訳ないと思いつつ、ノートを見てしまった。



「えっ……」



そこには――――。



『スバルへ……このノートを見ていると言うことは、俺はゆりかごで、何らかの形でいなくなってしまったと言うことだな。本当は直接伝えたかったけどな。俺の思いをここに書いておきます』


『スバル、俺はお前のことが大好きだった。お前の明るい笑顔が、どれだけ俺を助けてくれたか。未来でも、そして、こっちでも……』

「………フィル」



あたしは、震えを何とか押さえ、次のページをめくってみた。



『こんなことを言われても、きっとお前にとって迷惑なだけだよな。だから、このノートは見たら即刻捨ててくれ。最後に、いつもそばにいてくれてありがとう………』


『さよなら……そして、幸せに。フィル・グリード』



読み終わったとき、あたしは涙を抑えられなかった。
フィルが、あたしのことを大好きでいてくれたのは嬉しかった。

でも、フィルはゆりかごで死ぬ気だったんだ。


どうして……。


フィルは自分の幸せを考えないの……。



「いやだよ……。こんな告白の仕方なんて……いやだよ。あたしも大好きなんだよ……。だから……」



あたしは、フィルの唇に近づき……。


そして……。


気がつくと、フィルとキスをしていた……。




*    *    *





「う……うーん」

「フィル……」

「スバル? 今日もお見舞いに来てくれたのか」

「……う、うん」

「泣いてるのか? お前、そのノート……」


俺はスバルが泣いていたことに疑問を持っていたが――――。


「ごめん、勝手に見たのは……。でも……いやだよ……。こんな告白の仕方なんて……いやだよ……」

「そっか……見られちゃったか……」

「……フィル……どうして、いつも自分のことは考えないの」

「考えてるよ。俺の幸せは、お前が笑顔でいてくれることだから……」


そのために俺の命があるんだから……。


「だったら……だったら、自分が生きる事を考えてよ!! あたしが助かって、そのためにフィルが……大好きな人がいなくなっちゃったら……」

「スバル……」



スバルは、涙を抑えることをせず、その場で泣き崩れてしまった。
俺はスバルを自分の方へ抱き寄せて……。



「ごめんな……。こんなつもりじゃなかったんだ……」


こんなノートがあったせいで、スバルを傷つけてしまった。
こんなかたちじゃなく、自分の言葉で伝えよう……。


「……スバル、俺はお前のことが……大好きだ……。誰よりも、お前のことが大好きだ……」



スバルは、俺にギュッと抱きつき、そのまま俺の胸に顔を埋めていた。



「……あたしも……あたしも……フィルのことが大好きだよ……」

「フィル、お願い……キス……して……くれるかな……」

「……えっ?」

「………ちょっと恥ずかしいけど、フィルと……ちゃんと結ばれたいから……」

「……分かった」



そう言って赤面してしまったスバルに、俺はそっとスバルの肩を抱き、そのままスバルの唇に、自分の唇を重ねた。



「……なんか……照れちゃうね……」

「……だな」

「でも、すごく嬉しいんだ。だって、フィルと……その……こ、恋人……に……なったんだよね」

「そう……だな。改めて言われると、俺も……照れるぞ……」

「えへへ♪」



スバルは屈託のない笑顔で俺を見つめていた。
この笑顔に、俺は惹かれたんだよな……。



「これから、よろしくね。あたし……ティアみたいにかわいくないかもしれないけど、でも、フィルのために頑張るから……」

「スバル……ありがとうな。だけど、俺はそのままのお前が大好きなんだからな。無理だけはするなよ」

「ありがとう。フィル……大好きだよ……」



*    *    *



一週間後、俺は身体の方も回復し、退院することが出来た。
六課に戻ってからは、完全に回復するまで、スバル達の事務手伝いということになった。



「ほら、スバル。何やってるんだ。ここは、こうやるんだろうが……」

「うぅ――――。 だって、あたし事務処理が本当に苦手なんだもん」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。いつも俺がいる訳じゃないんだから………」

「それは、分かってるよ。だから、こうやってフィルに聞いて、一生懸命頑張ってるでしょう」

「ったく……」



相変わらずだよ。スバルの奴の事務処理の苦手なのは。
だけど、訓練校ではトップで卒業してるんだから、このくらい軽いはずなんだよな……。



*    *    *



「……あの、ティアさん」

「どうしたの? キャロ」

「フィルさんとスバルさん、なんかいつもと雰囲気が、違う気がするんですけど……なんか、フィルさん、スバルさんを見ているときの目が、すごく優しい感じがするんです」

「そうかもね……」




あたしは、あの二人が付き合うとは、正直思わなかった。
あたし達はそのくらい身近にいすぎたから……。


あたしは、フィルのことが大好きだけど……。
だけど、それと同じようにスバルのことも好きなのよね。


だから、あたしは二人のことを祝福することにした。



「ほら、あんた達はスバル達のこと、気にしてる場合じゃないわよ。自分の仕事を片付けてしまいましょう」

「「「はい!!」」」



スバル、フィルと幸せになりなさいよ。
あんたのことを全て知っていて、それでも好きになってくれる人なんて、そうはいないんだからね。



*    *    *



「なんか……緊張しちゃうね……」

「……ああ……」



俺とスバルは、仕事が終わった後、俺の部屋で過ごしていた。
最初はスバルは自分の部屋に戻ろうとしたが……。



『あんた達、恋人同士なんだから、一緒にいられるときは、いっぱい二人で過ごしなさい。というわけで、今夜はあんた、フィルの部屋に泊まりなさいね』



そうティアに言われて、スバルは閉め出されてしまった。



「ティアの奴……」

「気を遣ってくれるのは……分かってるんだけど……」



露骨すぎだっての。
これじゃ、今夜二人きりでどうやって過ごせっていうんだよ。



「あ、あのね……」

「な、なんだ……」

「その……ね……あたしのこと……女の子として魅力……あるかな……」

「あたりまえだろ。今だってドキドキしてるんだから……」



正直、さっきから心臓がバクバク言ってしょうがない。
好きな女の子と一緒にいて、平然といられるかっての……。




「お願いが……あるんだ……」

「フィル……あたしを……抱いて。あたしが……フィルの彼女だって思えるように……」

「スバル……本当に良いんだな……」

「うん……でも、ちょっと怖いから……優しく……してね……」



俺とスバルはベッドに行き、そして、スバルをそっと押し倒した。



「あっ……」



俺はスバルの胸に触れ……。



「どう……かな……」

「やわらかい……。それに……女の子の甘い匂いがする……」

「……はずかしいよ……フィル……」

「いいんだな……」

「うん……あたしを……抱いてください……」



そして……。



俺とスバルは……。



身も心も一つになり……。



お互いのぬくもりを感じ合いながら、一夜を過ごした。




*    *    *




数年後



機動六課解散後、スバルは特別救助隊からスカウトされ、フォワードトップとして活躍している。
俺は、ゆりかごでブラスターを多用しすぎたため、身体のダメージが蓄積されてしまい、魔導師として働くことは不可能になってしまった。


そこで俺は、戦闘機人であるスバルのメンテナンスを出来るように、マリーさんの所でメカニックマイスターの資格を取った。


今の俺は、スバルのサポートを全力ですることだ。


スバルの夢……。


その手助けをしていくことが、俺の夢だから……。



「フィル、いつもありがとうね……」

「あんまり無理するなよ……。お前一人の身体じゃないんだからな……」

「大丈夫……ちゃんと帰ってくるよ。だってあたしはフィルの奥さんなんだから!!」





そう、俺とスバルは、俺がマイスターの資格を取ると同時に結婚したのだ。


結婚の挨拶の時、ゲンヤさんに会いに行ったときは緊張したけど……。



『スバルのこと……。おめえなら、本当の意味でスバルのこと分かってやれる。頼んだぜ……』



この言葉で……俺は、スバルを本当の意味で護ろうと、改めて決意をした。




「じゃ、行ってくるね、フィル!!」

「気をつけろよ!! ドジ踏むなよ」

「分かってるよ〜♪」




今日も、スバルは困っている人を助けるために、出動する。



そんなスバルを、俺は全力で助けていきたい。



それが、俺が出来るスバルへの愛の形だから……。


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