〜 Remember my heart 〜
第3話 集結
いよいよ機動六課の正式運営日の日がやってきた。
ここからが本当の始まりなんだな―――――。
運営初日、六課全員食堂に集められ八神部隊長の就任の挨拶を聞いていた。
「……とまぁ、長い挨拶は嫌われるんで以上ここまで。機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした」
就任式が終わった後、俺たち五人はなのは隊長と共に廊下を歩いていた。
エリオやキャロとは二度目になるが、自己紹介とコールサインの確認をし会った。
なのは隊長がそのことを確認し終わった後、午後の訓練の説明をし始めた。
八神部隊長とフェイト隊長は首都クラナガンにレリックのことを説明に行ったとのことだった。
* * *
「なのはさ〜ん」
「シャーリー」
わたしが訓練場で新人たちを待っていると、シャーリーがやってきた。
今日来てもらったのは新人たちのデータを取る為だ。
しばらくしてフォワード五人がこっちにやってきて、事前に預かっていたデバイスを渡した。
「今返したデバイスには、データ記録用のチップが入っているから、ちょっとだけ大事にしてね。それと、メカニックのシャーリーとフィルから一言ずつ……」
「え〜、メカニックデザイナー兼機動六課通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です。みんなはシャーリーと呼ぶのでよかったらそう呼んでね。みんなのデバイスを改良したり、調整したりもするので時々訓練を見せてもらったりします。デバイスについての相談があったら遠慮無く言ってね」
「「「「はい」」」」
「今更自己紹介をするのもおかしいが、スターズ5、兼、機動六課デバイスアドバイザーのフィル・グリードです。本来はスターズのフォワードなんだけど、諸事情でデバイスのアドバイザーもやっている。いずれ事情は話すが、シャーリーさんと一緒にお前らのデータを取ったりもするので、改めてよろしくな」
「「「「ええっ!!」」」」
新人のみんなは、フィルのことは知らされていなかったから驚きも倍増だよね。
わたしだって、正直フィルにはかなりの負担を掛けちゃってるって思ってるし―――――。
「フィル、あんた本当にデバイスマイスターになっちゃたの………」
「フィル、すごいね。前から器用だったけど、本当にデバイス関係の仕事をやるなんて……」
「ティア、言っておくがデバイスマイスターじゃない、アドバイザーだ。本業はお前らと同じフォワードだ」
「そんなことありませんよ。フィルさんは……」
「シャーリーさん、それ以上は……」
「あっと、そうでした……」
シャーリーがあの事までしゃべってしまいそうなので、この辺でこの話は終わりにしないと―――――。
「それでもすごいですよ、フィルさん」
「はい、わたしはそんな器用じゃないのでうらやましいです」
「エリオ、キャロ、器用貧乏って言葉を知ってるか?中途半端に出来ることがあると……こういう目に遭うぞ。お前らも……気をつけろよ」
「……まぁまぁ、無理を言ってるのはこっちとしても申し訳ないから、基本的にはフォワードがメインになるからね。訓練も進まなくなっちゃうからね」
本来の目的は、フィルはフォワードでその力を引き出してあげることだから、その辺は安心してねフィル。
「まぁ、シャーリーさんがあまり無茶な注文をしなければ、アドバイザーの仕事はないんですけどね……」
「……にゃ、にゃははは、シャーリー、極力フィルには頼らないでね。一応フォワードなんだから……」
「すみません、フィルに聞くと、デバイスの大概の問題が解決するので、つい聞いてしまうんです……」
シャーリーがフィルにデバイスのことで色々聞いてよりよくしてくれるのは助かるけど、あんまりフィルに負担を掛けさせないように一言は言っておかなきゃね。
更に今回は、フォワード陣のデバイスをフィルが設計してしまったから、どうしてもフィルが中心となららきゃいけないところもある。
* * *
「それじゃ早速訓練に入ろうか……」
「はい……」
「でも、ここでですか……」
「ふふ、シャーリー」
「は〜い」
シャーリーさんは端末を展開すると、何らかの準備をし始めた。久しく忘れていたが、ここって六課の訓練スペースだったな。
「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦用空間シミュレーター……。ステージセット」
俺たちの目の前に小さな街が現れた。この訓練スペースは色々な状況に対応する為に作られたんだったな。ティア達も驚いていたが、正直俺もびっくりだ。
「よしっと。みんな聞こえる……」
「「「「「はい」」」」」
『じゃ、早速ターゲットを出していこうか。まずは軽く8体から』
『動作レベルC、攻撃制度はDってとこですかね』
『うん』
シャーリーさんが端末でターゲットの設定をし、8体の訓練用のターゲットを出現させた。
『わたし達の仕事は、捜索指定ロストロギアの保守管理、その目的の為にわたし達が戦うことになる相手は………これ!! 自立行動型の魔導機械。これは近づくと攻撃してくるタイプね』
実は、訓練前なのはさんにしばらくの間、訓練でプリムを使うのは禁止されたのだ。したがって今使ってるのは、俺が作ったカートリッジ式簡易ストレージデバイスのガンタイプだった。
なのはさんは俺がプリムに頼っていることに気づき、自力を上げないとこれ以上成長しないということに気づいていた。
確かにこれでは今後の為にならないし、自分の魔力の封印を解き、それと使いこなせるように身体を作らないといけない。
『では、第1回模擬戦訓練。ミッション目的:行動するターゲットの破壊、又は捕獲。15分以内!!』
「「「「「はい!!」」」」」
『それでは、ミッション……スタート!!』
なのはさんの開始の合図と同時に、スバルとエリオは前衛として、ティアとキャロがペアとなり、後方支援として左側のビルへ、俺も後方支援として右側のビルの屋上に向かった。
「……くっ!! 何これ動き、早っ!!」
スバルがローラーを全開にしてターゲットを追いかけ、攻撃を仕掛けるがなかなか当たらず、同様にエリオの攻撃も避けられてしまう。
「だめだ、ふわふわ避けられて当たらない……」
「前衛二人、分散しすぎ!! ちょっとは後のことを考えて!!」
「エリオ、スバル!! 闇雲に攻撃するな。お前らがターゲットを分散させてどうするんだ!! 敵を引きつけるのも前衛の役目だぞ!!」
「あっ、はい!!」
「ごめん、ティア、フィル!!」
ティアがアンカーガンに魔力を込め、シュートバレットの準備をし、そしてキャロに魔力強化をかけてもらいターゲットに放つ。
「シュート!!」
ティアの放ったシュートバレットは確実にとらえたかと思ったが―――――。
「バリア!?」
バレットはターゲットの前でかき消されてしまった。
「違います……フィールド系!!」
「……AMFか」
『そう、ガジェットドローンにはちょっとやっかいな性質があるの。攻撃魔力をかき消すアンチ・マギリングフィールド。通称AMF。普通の射撃は通用しないし……。それに……』
「くっ、くそ!!」
スバルが焦りでウイングロードを作り出して追いかけようとした。
「待てスバル、冷静に行動しろ!!」
俺の制止も聞かず追いかけてしまったが、次の瞬間……。
「え、あっ、き、きゃぁぁぁぁぁ!!」
ウイングロードをガジェットドローンにかき消られてしまい、バランスを崩してビルにつっこんでしまった。
『飛翔や足場作りの、移動系魔法の発動も困難になる……。スバル、大丈夫?』
「な、何とか……」
スバルは多少のダメージはあるみたいが、なのはさんの通信に返事をしていたから大したことはないだろう。
とにかくあのガジェットを何とかして破壊しなきゃならない。俺たちは今持ちうる手札でどうするか、必死で考えた。
そして……。
「チビっ子。名前なんと言ったっけ……」
「キャロであります」
「キャロ、手持ちも魔法とそのチビ竜の技で、何とか出来そうなのある?」
「試してみたいのが、いくつか……」
「……あたしもある。フィル!!」
「……ああ、あのフィールドを貫通させるには、あれしかないな!!」
AMFのフィールドを貫通させるには、並の魔法弾じゃ貫けない。
ならば、それ以上の貫通力を持たせれば!!
「やっぱり、あんたも同じ事を考えてたのね。………スバル!!」
「オッケー、エリオ。あいつら逃がさないように先行して足止めできる!!」
「あ、えっと……」
「ティア達が何か考えてるから時間稼ぎ!!」
「やってみます!!」
* * *
「……へえ、みんなよく走りますね」
「危なかっしくてドキドキだけどね………。シャーリー、デバイスのデータは採れそう」
「いいのが採れてます。四機とも良い子に仕上げますよ」
「それにしても、フィルの持ってきたデバイスの設計図……」
「ええ、フォワード陣の新デバイスのプラン。ハッキリ言って凄いの一言です。あそこまで性格に合わせたものを作ってるなんて……。本当に彼ってデバイスマスターじゃないんですか。自信なくしますよ、本当に………」
わたしも最初に見た時は本当に驚いた。
これほど、みんなの特性に合わせたものを考えられてるんだから……。
「フィルが言うには、ティアナのについては実用可能のレベルらしいけど、残り三人のについてはデータが足りなくて未完成のところが多いんだって………。特に一番難しいのはスバルのだって言ってたよ」
「確かにスバルの魔法、ウイングロードは先天性のものだから、術式も普通のと違うんですね。今回のデータ収集でしっかり取ります」
「お願いね。フィルもフォワードとデバイスの事と両立させるのは大変だからね。シャーリーが中心となって完成させて欲しいって言ってたよ」
「本当はフィルが中心になってくれる方が助かるんですけどね。でも基礎設計がしっかりしていますからね。絶対完成させますよ!! レイジングハートさんも協力してくださいね」
《All、light》
* * *
俺たちはガジェットを撃滅する為に作戦を開始した。
この作戦は前衛の二人が、ちゃんと引きつけてくれるかにかかっている。
「いくよ、ストラーダ。カートリッジロード!!」
《Explosion》
エリオはストラーダのカートリッジを一発ロードさせ、今自分が立っている橋を破壊してガジェットの進路を止め、上空に上げさせた。
「潰れてろ!!」
スバルは上空に上がったガジェットに魔力を込めた拳でで力一杯殴りつける。
でも、魔力が消されちゃうといまいち威力が出ない。
「そんなら、うりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
マウントポジションになり、リボリバーナックルの回転力を使って1体破壊した。
こいつら、物理的破壊なら通用する。
「連続行きます。フリード、ブラストフレア……ファイア!!」
フリードから放たれたブラストフレアはガジェット達をショートさせ、動きを止めることに成功した。
そしてキャロも錬鉄召喚の詠唱を唱え―――――。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖………錬鉄召喚、アルケミックチェーン!!」
アルケミックチェーンは3体のガジェット達の動きをとらえ、活動を完全に停止させた。
「こっちだって射撃型。無効化されて、はいそうですかって下がってたんじゃ、生き残れないのよ!!」
アンカーガンに、二発カートリッジをロードさせ、ティアは発射準備をした。
だけど、こいつにはシュートバレットじゃ通用しない。
「スバル、あたしとフィルが、上からしとめるからそのまま追ってて!!」
「おう!!」
「攻撃用の媒体を無効化されないよう膜状バリアでくるむ。フィールドを突き抜けるまで外殻のバリアが保てば……本命の弾はターゲットに届く!!」
* * *
「……くっ、やっぱつらいな。プリムがないと……」
元々デバイスを強化して戦っていた俺だ。ある程度の能力はあっても、こうして自力で戦うのは得意ではない。こうして模擬戦をしてみて、改めてプリムに頼ってたんだなって感じた。
それしてもティアの奴、よくアンカーガンでヴァリアブルシュートを成功させやがったな。
この頃のティアはまだまだ半人前なのにな―――――。
「やってやるさ……。このくらいであきらめてたんじゃ、これからのことなんか出来やしない!!」
* * *
二人が攻撃しようとしていた頃、ビルの屋上でその様子を見ていたわたしとシャーリーは……。
「魔力弾。AMFがあるのに……」
《いいえ、通用する方法があります》
「うん……フィールド系の防御を突き抜ける多重弾殻射撃。AAランクのスキルなんだけどね………」
「AAランク!?」
あのスキルは、射撃系では必修になってくるスキル。
フィルは出来るかなって思っていたけど、まさかティアナまで出来るとは思ってなかったな。
* * *
「「固まれ……固まれ……」」
ティアも俺も外殻を固まらせるのに全神経を使っていた。今の俺たちじゃこれが精一杯の攻撃だ。
特に俺はプリムの補助がないので制御が難しい。それに自力だけで発射するのは、これが初めてだ。
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
外殻が固まり俺たちは引き金を引いた。
「「ヴァリアブルシュート!!」」
オレンジと白の魔力弾はガジェット達のAMFを貫き、残っていた4体を完全破壊した。
「ティア、フィル!!」
「「……はぁ……はぁ……」」
「ティア、フィル。ナイスだよ!! やったね、さすが!!」
「……スバル……うるさい……このくらい……当然よ……」
「……はぁ……はぁ……何とか……なったな……」
ティアも俺も疲れ果ててその場に仰向けで倒れ込んだ。
しかし、ティアはやっぱ才能あるよ。
俺は未来での経験があったから何とかなったが、ティアは自分の努力でやったんだからな。
以前は一緒にBランクは採ったけど、俺はAA+になるまで、ティアよりも相当時間がかかったんだよな。
あんな悲惨な経験じゃなかったら、あそこまで強くならなかったかもな―――――。
その後、15分の小休憩の後、訓練が再開し夕方まで続いた。初日にここまでやるか普通……
俺たちは宿舎に戻る体力もなく、体力が戻ったのは夜になってからだった。
やばい、完全にスペック負けしてるよ。これじゃ元のスペックに戻すのも時間がかかりそうだ。
こうして俺たちの機動六課での初日が終わった。
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