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〜 Remember my heart 〜
if ending ギンガ

「ふぅ……やっとクラナガンに帰ってきたな」

《今回も長期任務でしたからね。でも、これでしばらくの間は休みがもらえますね》

「まあな……」



あのJS事件から、4年の月日が経った。

機動六課が解散して、俺はフェイトさんの元で執務官補佐を2年ほどした。
JS事件の傷で、あまり無理が出来なかったのがあって、フェイトさんがゆっくりと研修をしてくれた。

フェイトさんの丁寧な研修のおかげで、あの難関試験も一発で受かることが出来たんだからな。


執務官になった後、俺は、最初はクラナガンを拠点にしていたんだけど、ティアとコンビを組んだり、フェイトさんの臨時パートナーをやったりしていて、ここ一年くらいは次元航行艦に乗って、長期任務をすることが増えてしまった。


そして今日、久しぶりにクラナガンに帰ってきた。



「そう言えば、ギンガさん元気でやっているかな」

《ですね。ここ一年くらい会ってませんから……》



スバルやティアとは、時々クラナガンであったりしたりするんだけど、ギンガさんだけは中々会うことが出来なくていたのだ。



《マスター……最近、気になることを聞いてるんです》

「気になること?」

《ええ……あんまりいい話ではありません。ギンガさんのことです》




プリムが耳にしたことは、ギンガさんの所属している108部隊で、最近親の七光りで成金の佐官入ってきて、その佐官がギンガさんにアプローチをかけたんだけど、結局振られてしまって、その逆恨みで、ギンガさんのことを調べて、部隊内で不穏な空気が流れているとのことだ。




《ギンガさんが……戦闘機人だって知っているのは、部隊内でもごく僅かですからね》

「ゲンヤさんがいるから、外部に漏れている可能性は低いと信じたいけど……」

《人の口は、戸を付けられませんからね……》

「……今度、スバルかノーヴェに、それとなく聞いてみるか……」



あの二人なら、ギンガさんのことをよく見ているし、ノーヴェも何だかんだ言って、世話をしてくれたギンガさんのこと心配しているはずだからな。



「あれ? フィルじゃない」

「えっ?」



突然後ろから声をかけられて、振り向いてみると……。



「スバル!? 久しぶりだな!!」

「うん、半年ぶりだよね!!」



半年ぶりに再会したスバルは、雰囲気も大人っぽくなっていた。
たった半年で、こうも雰囲気が変わるんだ。


久しぶりに俺たちは、クラナガンの街で色々遊びまくった。
ゲーセンに行ったり、アイスクリームショップでスバルが、アイス七段重ねを食べたり、その他にもスバルに引っ張られて色んな場所に行ったりした。


でも、いつものスバルとどこかが違っていた。

なんか、悩みがあるのか?

それとも……。


俺は、それとなくスバルに聞いてみることにした。



「スバル……お前、何か悩んでないか?」

「えっ……?」

「なんか普段のお前じゃないんだよ。たしかに楽しんでいたみたいだけど、どこか上の空な所があった」

「やっぱ……分かっちゃうよね」


当たり前だ。
何年、お前らと付き合っていると思っているんだ……。


「……ギンガさんのことだな」

「……うん」



やっぱりそうか……。
スバルがこんな表情しているんだ。ただ事じゃないと思っていたけど……。



「よかったら話してくれないか……。なんか、力になれるかもしれないから……」

「うん……」



スバルから聞いたことは、プリムが聞いていた話の通りのことだった。
しかも、タチが悪いことに、親が管理局の幹部ということだ。

その力で、108部隊に入ったこの男も一佐にまでなったという訳か。



「最悪だな……」

「しかも、父さんのによると、ギン姉に振られたのを逆恨みして、ギン姉のことを調べて、108部隊の中でもかなり居づらい状態なんだって、カルタスさんや父さんが何とか頑張ってくれているけど……」

「そっか……」

「お願いフィル、ギン姉を助けて!! このままじゃ本当にギン姉は!!」

「わかった。俺も出来る限り協力する。だから、そんな顔するな」

「ありがとう、フィル!!」

「とにかく、俺はその野郎の情報を片っ端から集めるから、お前も何か動きがあったら連絡してくれ」

「うん!!」



*    *    *




「しっかし、こうして調べてみると、本当に親の七光りのやつなんだな」

《まったくです……胸くそ悪くなりますね》



俺はあの日から、一週間かけて、あの男のことを調べ上げていた。
名前は、ディルギア・フォーカス。108部隊に所属の一等陸佐だ。

しかも、調べ上げていく内に、とんでもないことが分かった。
親が管理局の上層部にいることを盾に、気に入った女の子を片っ端から犯してはもみ消す、それを繰り返していた。

しかも、自分の意のままにならないときは、親族に圧力をかけたり、あることないことを周りに流して、社会的に潰す。

本当に人間の風上にも置けない野郎だ。



《どうするんですか……。マスターがいくら執務官といっても、そう簡単には逮捕できませんよ》

「……権力には権力をってね。本当は使いたくなかったんだけど……」

《そういうことですね……。大丈夫ですよ。レジアス中将も、おそらくこのことは知っているはずです。だから、協力してくれますよ》

「そうだな。このことはもう少し調べて、オーリス姉に報告しよう」

《そうですね。オーリスさんに監査として入ってもらい、そこで……》

「ああ……」


ギンガさん、もう少しの辛抱です。
何とか、あの野郎の悪事は俺が暴きますから……。

そんなことを考えていると、スバルから通信が入ってきた。



『フィル、大変だよ!!』

「どうしたんだ、そんなに慌てて?」

『ギン姉が……ギン姉が……』

『夕方、部隊隊舎から出てから、連絡が取れなくなちゃったんだよ!!』

「何だと!!」



――――嫌な予感がしやがる。
早まった事をしてなければいいが……。



「スバル、ギンガさんと連絡が取れなくなってから、どのくらいだ」

『……3時間くらい』

「分かった。俺も探しに出る。何かあったら連絡するから」

『お願い……』



スバルからの通信を切った後、俺は外に探しに出た。
こんな雨の中、傘も持たずに外にいるとしたら……。




*    *    *



「くそ……どこにいやがるんだ」



俺は思い当たる場所を片っ端から探しまくった。

クラナガンの繁華街

海が見える公園

ギンガさんとスバルがメンテナンスのために来る施設


これだけ探してもいないとなると……。


「もしかして……」



*    *    *



「あっ……フィ……ル?」

「やっぱり……ここにいたんですね……」



ここは、ギンガさんと俺が初めてあった場所。
何てことない公園だけど、ここは俺にとっても大切な場所だ。



「どう……したの? こんなところで……」

「ギンガさん……」

「あははは……私ね、もう疲れちゃった。いくら頑張っても、戦闘機人ということはどうしようもない事実だものね。カルタスさんや父さんが庇ってくれても、他の人は奇異の目で私のことを見る……」


ギンガさんは、雨が降っている空を見上げながら話している。
今のギンガさんは、心が壊れる寸前――――。



「こんな私なんて……もういないほうがいいのかもね」

「そんなこといわないでください!!」

「だって、私がいることで、父さんにもみんなにも迷惑がかかっている。それだったら……私がいなくなれば……すむから……。それに私の事なんて、誰も悲しまないしね……」

「……ふざけるな」

「えっ?」

「ギンガさんがいなくなって誰も悲しまないだと……。スバルやゲンヤさん達のことまで否定する気か!!」



もう、こんなギンガさんを見ているのは辛すぎる。
ギンガさんは、完全に生きていることを否定してしまっている。

今のギンガさんに必要なことは、優しくするだけことじゃない。
今のギンガさんを否定し、ちゃんと必要としている人がいるって事を分かってもらうことなんだ。



「フィ……ル……?」

「そんなのは間違っている!! ギンガさんのことがいらないなんて、スバルも、ゲンヤさん達もそんなことはこれっぽっちも思ってない!!」



俺はギンガさんを強引に抱き寄せ……。



「……自分の好きな人が、そんな風に思っているのを見て、何とも思わない奴なんかいないから……」

「それって……もしかして」

「ギンガさん……俺はあなたのことが好きです……」



*    *    *



「嘘じゃないよね……。本当のことだよね……」

「嘘なんかじゃないよ……。俺はずっとギンガさんのことが好きだった」

「あっ……」



嘘じゃないんだ……。


フィルが、私のことを好きでいてくれた。


私の片思いじゃなかったんだ……。



「フィル……私……私……」


もう、涙が抑えられなかった。
さっきまでの辛い涙じゃない。今度のは嬉しさからだ。

そんな私をフィルはギュッと抱きしめてくれて……。


そして……。


フィルが私の頬にそっと触れ……。


私もその意味を理解し……。


雨が降りしきる中……。


フィルと気持ちを確かめ合うようにキスをした……。






*    *    *



「ということで、ギンガさんは俺の所にいるから……」



俺は、スバルにギンガさんが見つかったことを報告していた。
スバル達も、必死でギンガさんのこと探していたしな。



『……フィル、本当にありがとう。それでギン姉は?』

「とりあえず、雨で身体冷え切ってしまったので、風呂で身体を暖まってもらっている……」

『そうなんだ……ギン姉、相当参っていたんだね』

「ああ……俺が見つけたときは、ギンガさんはかなり参っていたよ。本当はそっちに戻った方が良いんだけどな……」



あと少し遅かったら、ギンガさんの心は完全に壊れていた。
そのくらい危ない状態だった。



『ううん、フィルの話を聞く限りじゃ、そっちにいた方が良いよ。それに……』

『ギン姉は、フィルのことが好きなんだから……』

「……スバル、お前もしかして……?」

『分かるよ……。フィルのことも、ギン姉のこともね……父さんにはあたしから言っておくから、だから、ギン姉のことお願いね……』

「ああ……」



スバルは、そう言って通信を切った。
通信が終わった後、ギンガさんが風呂から出てきた。


ギンガさんは、バスタオルを身体に巻いただけの姿だった。



「フィル……」



小さな音を立てて、バスタオルが床に落ち、ギンガさんの身体が露わになった。
向き合った二人は、じっと見つめ合い、それから、ごく自然に唇を合わせる。



「フィル……大好きよ……」

「俺も……ギンガさんのこと大好きです……誰よりも……」



俺たちはベッドに移動し、ギンガさんの方からキスをされた。
最初は驚いたけど、俺もギンガさんの気持ちに応えるように、何度もギンガさんの唇をむさぼる。


そして、バスタオルをはぎ取り、ギンガさんの胸に優しく触れる。


「んっ……あんっ……。もっと……強くて良いよ。フィルに触ってもらうと、幸せって……感じられるから……」

「……ギンガさん、分かりました」


そして、ギンガさんの身体をゆっくりと愛し――――。


「……ごめんね。本当は私がリードしてあげなきゃいけないんだけど……。その……初めてだから……」

「良いですよ。俺だって初めてなんです……。だから、一緒に知っていきましょう」

「……そうだね」


そして、俺はギンガさんと一つになり――――。


その快楽に身をゆだね――――。


二人の愛を確かめ合う行為は、幾度となく繰り返された。





*    *    *




一週間後


ディルギア・フォーカスのことを調べ上げた俺は、オーリス姉に連絡を取り、108部隊を緊急査察を行うことになった。そこで、俺も同行することになった。



「ディルギア・フォーカス!! あなたのことはすでに調べてあります。観念して縛に付きなさい!!」



オーリス姉が、逮捕状をディルギアに突きつけ……。



「な、なんのことかね。証拠も無しにそんなこと……」

「証拠ならあるさ……これをみな!!」



俺はスクリーンに、今までこいつがしてきたことを全て映し出した。
そこに映し出されたのは、今まで被害にあった女性達のことと、汚い手段で一佐にはい上がった事。




「こ、こんなもの……こいつが作り上げたでっち上げだ!! お前達、こいつらをつまみ出せ!!」



ディルギアの部下達が、俺たちをたたき出そうとしたが、こいつら程度に後れを取るほど弱くはない。
逆に全員バインドで縛り上げ、プラズマランサーで眠らせた。



「くっ!!」

「観念しろ……ディルギア」

「うるさい!! 執務官風情が僕に命令するな!! 僕は一佐なんだ。お前より地位は上なんだぞ!!」

「だからって、何しても良い訳じゃない……。お前は女性を……ギンガさんの心をボロボロにしたんたぞ!!」

「うるさい!! うるさい!! うるさい!! 戦闘機人の女一人が壊れたからといって何だって言うんだ!! かわりならいくらでもいるんだ!!」

「……今、なんて言った?」

「何度でも言ってやる……。たがが女一人が壊れたくらいでギャアギャア騒ぐな。そう言ったんだ!!」


何言ってやがる――――。



貴様の身勝手で、ギンガさんがどんな思いをしたか――――。





完全に切れた俺は、ディルギアを魔力を込めた拳で、最初の一発で表に叩きだした後、襟首をつかんで、顔面を何度も繰り返し殴る。


こんなやつに、なのはさん達から教わった大切な魔法なんか使う必要はない!!




「……も、も……う、や……くれ」

「何言ってやがる!! 貴様に……大切な純潔を踏みにじられた人達の心の痛みは、こんなもんじゃないんだぞ!!」



この事件を調べているとき、被害者の中には婚約者がいた人もいた。
男性は、被害者の女性を支えていこうとしたけど、ディルギアに身も心もぼろぼろにされた彼女は……。


―――――そのまま、自分で命を絶ってしまった。


被害者の家族、そして、婚約者がどんな悲しみを負ったか……。
せめて、こいつにその万分の一でも刻み込んでやらなければ気が収まらない!!




《マスター、もう止めてください!! このままじゃディルギアを殺してしまいます!!》

「……お前は黙ってろ。こんなやつ生かしておく必要なんか……ない」



プリムの制止も振り切り、俺は、懐から護身用に持っているナイフを取り出し……。



「………死ね」



ディルギアの頭に思いっきり振り下ろそうとしたそのとき……。



『そこまでよ、フィル』



誰かにナイフを振り下ろそうとした腕を押さえられる。
振り返ってみるとそこにいたのは……。



「ティ、ア!?」



なんで、ティアがここに来ているんだ!?
いま、あいつは別世界任務中のはずなのに……。



『……あたしは“あの世界”のティアナ・ランスターよ。あんたに託したクロスミラージュを見てみなさい』



そう言われて、あのときから肌身離さず持っていた形見のクロスミラージュを見てみると……。



「クロスミラージュが……光って、る」



クロスミラージュが、ティアの魔法色と同じオレンジ色の光を放っていた。



『そう、アルテミスに無理を言って、ほんのわずかな時間だけど、実体化してもらったのよ……。あんたがバカやって、ギンガさんを泣かさないためにね』

「!?」



そうだ、俺は何をやってるんだ。
ここで、ディルギアを始末したって、それは俺の自己満足でしかない。



『……どうやら、少しは頭が冷えてみたいね。まったく、本当に世話が焼けるんだから……。あたしがしてあげられるのは、これが最後なんだから、しっかりしなさいよね!!』

「最後、って……。それはどういう……」

『そのまんまの意味よ。死者が生きている人の枷になっちゃダメだからね。これからは、ギンガさんと一緒に、幸せに……なりなさいよ』


ティアの身体は、段々消滅していき、そして……。


光とともに完全に消滅してしまった。




「……ひ、ひいぃ……」



いつの間にかディルギアのやつが、この場から逃げ出していたが……。




「……あんたみたいな女性の敵、逃がすわけないでしょう。観念しなさい、ディルギア」



オーリス姉が率いる特殊部隊に捕らえられ、ディルギアは完全に逮捕された。
そして、この場をオーリス姉に任せた後、俺は、108部隊舎の中に戻っていった。



「フィル……」



ギンガさんは、未だに切れている俺に声をかけづらいみたいだ。
俺が切れているのは、ディルギアだけじゃない。

ディルギアと一緒に、ギンガさんを追い詰めた108部隊の連中にも怒っているんだ。


俺は近くにあった机を、力の限り、思いっきりけっ飛ばす。
机は、真っ二つになり、さらに机の残骸を踏みつけた。


『なっ!!』



ゲンヤさんもカルタスさんも、みんな俺の行動に驚いているけど、正直こんなのまだやり足りない。
これだけの怒りは、クアットロの時以来だから――――。



「おい……お前ら、なに自分は関係ありませんなんて態度を取っていやがるんだ。今回のことはお前らだって責任はあるんだろうが!!」

「確かに首謀者はディルギアだ。だけどな、一緒にギンガさんを追い詰めたお前らも、充分加害者だ!!」

『……』



俺の言葉に、連中はただ黙り込んでしまった。
いまさら、そんな態度取るな――――。


人一人、あれだけ追い込んでおいてよ……。

胸糞悪いったらありゃしない――――。



「フィル、本当にすまねえ……」

「ゲンヤさんが謝る必要はないですよ。むしろディルギアに脅されていたんですから……」

「知っていたのか……?」

「ええ……この事を調べているときに。ゲンヤさん、ノーヴェ達のことでディルギアの親に圧力をかけられていましたね」

「ああ……なさけねえ話だがな……」

「ゲンヤさん。もう少し早く誰かに相談して欲しかったです。部隊を預かる身として、ギンガさんだけを見るわけにはいかないのは分かります。けど、一歩間違えれば、ギンガさんは……」

「本当にすまねえ……。これじゃ親として失格だな……」

「父さん……」



ゲンヤさんのことは、しかたがない。
ノーヴェ達のことを人質として取られている状態だったんだからな。

ゲンヤさんも、いろいろ苦悩し続けたんだから……。
 


3日後、正式に処分が下された。

ディルギアの親は、この事件でゲンヤさん達に圧力をかけてきたことと、今までディルギアがしてきた悪事をもみ消してきたことで、管理局をクビになった。

108部隊は、結果的におとがめ無しと言うことになったが、ギンガさんが、もうこの部隊に入られないだろうというオーリス姉の判断で、異動辞令を出すことになったんだけど……。


その行き先が……。



「フィル、これからよろしくね♪」



まさか、俺の執務官補佐として配属させるとは……。
ゲンヤさんも、オーリス姉もニヤニヤしているし……。



「もしかして……はめられたか、俺?」

《いいんじゃないでしょうか。これで公認で二人でいられるんですから。それに……》

《このほうが、彼女にとって良かったんですよ。あの場所にいるのは、少し辛いと思いますから……》

「そう……かもな……」



いまのギンガさんは、心から笑ってくれている。
そんなギンガさんを、俺は全力で支えていきたい……。



*    *    *



「はい、フィル。あーん♪」

「え、えっと……やっぱしなきゃ駄目?」

「だーめ♪」



そう言ってギンガさんは、肉じゃがを箸でもって、俺に食べさせてくれるんだけど、やっぱり気恥ずかしい。
でも、俺が食べるとギンガさんが、すごくニコニコしてくれるのを見て、恥ずかしいなんて言えないよな。



「あ、あーん」

「どう……かな」

「やっぱり美味しいよ。さすがクイントさん譲りの腕だね」

「よかった♪」

「あれ、ギンガさん、あんまり食べていないね?」



ギンガさんの方を見ると、いつもならもっと食べるのに、今日は俺と同じくらいしか食べていない。



「だって……あんまりがっついて食べると、良いイメージしないから。それに……」

「大好きな人の前だから……。もう、がっついて食べるのは止めたの。それでちゃんと足りているんだしね。元々、ストレスで食べていたところがあるから……」

「ギンガさん……」

「あっ、それと私のことはギンガって呼んでほしいな〜」

「ギ、ギンガ……」

「うん♪」



俺たちはずっと、こんな感じで夕食を食べていた。
ギンガさんが食べさせてくれるので、美味しさもさらに感じた気がする。

最初は……気恥ずかしかったけどね。



*    *    *



「やっぱり……まだ、恥ずかしいね」

「それは……俺もかな」



俺たちは、夕食が終わった後、ベッドでお互いのぬくもりを感じ合っていた。
さっきまで激しく求め合っていたから、二人ともかなり疲れていた。



「あのね……フィル」

「なに?」

「………これからも……私のこと、いっぱいギュッと抱きしめてね。フィルがギュッとしてくれると、私も頑張れるから……」

「俺で良かったら……いっぱいしてあげる。それに、ギンガを抱きしめていると、俺も頑張れるから……」

「ありがとう……フィル。幸せになろうね……」



俺はギンガをギュッと抱きしめて、またギンガを求める。
ギンガも、同じ気持ちで俺にキスしてきた後、最初はただ唇が触れているだけだったけど、段々と深い物になってきて、終わった後は銀色の糸がお互いの間に出来ていた。



「ふふっ、私の胸……好き?」

「……なんか、こうしてると気持ちが落ち着く」


俺は胸フェチではないが、ギンガの大きな胸の中にいると、気持ちが安らぐ。


「……そっか。私の胸だったら、いくらでもこうしてあげるからね。ティアナに浮気しちゃだめだよ……」

「あのね……。どうしてそこでティアの名前が出るの?」

「……だって、ティアナとはずっと一緒だったし……。未来でも……その……ね……」


ギンガはもじもじして、顔を真っ赤にしながら言う。
まったく、少しは自分の彼氏を信じてくれよ。



「どうしたら……信じてくれる?」

「……フィルが、ずっと、私のことを愛してくれるなら……かな」


そんなの言われるまでもない。
愛する人と一緒になれるのは、最高の幸せなんだから――――。





*    *    *



3年後


「ねぇ、何見ているの?」

「ん、ちょっと昔の写真を見ていたんだ……」


あの事件から三年が経ち、俺たちは結婚して今は二人で執務官をしている。
ギンガは俺の元で二年ほど執務官補佐をした後、昨年、執務官試験に受かり、捜査官から執務官に転向した。

といっても、基本的にギンガは俺とコンビで動くので、今でも俺の補佐として動いていることが多いけどな。

仕事面でも、プライベートでも俺たちはお互いの支えになっていた。



「フィル……あのね……」

「どうしたんだ? さっきから落ち着きがないけど……」



さっきから、そわそわしている感じで落ち着きがないけど……。



「フィル、男の子と女の子、どっちが好きかな?」

「えっ?」

「赤ちゃん……出来たかもしれないの……」

「そっか……やったな!!」


俺は本当に嬉しかった。
ギンガはずっとこの事を気にしていたのだ。

自分は戦闘機人だから、もしかしたら子供は作れないんじゃないかって……。


だけど、そんな心配はもうしなくて良いんだ――――。



「フィル……私……本当に幸せよ……。ありがとう……私にいっぱい大切な物をくれて……」

「俺の方こそありがとうだよ。ギンガ……これからもいっぱい幸せになろうな。今後は生まれてくる子供と一緒にね……」

「うん♪」



戦闘機人として、人知れず苦しんだギンガ……。



だけど、そんな彼女も、今は心から笑ってくれている……。


そして――――。


近い将来、俺とギンガの子供も生まれてくる……。


これからも、こんな暖かい日常を作っていきたい。


俺たち三人で……。


希望あふれる未来を……。



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