〜 Remember my heart 〜
if ending リイン
「フィル……待っててください!! 今、行きます!!」
ゆりかごの非常システムが発動し、私とはやてちゃん、なのはさんとヴィヴィオは、玉座の間に閉じこめられようしていたが、フィルがウインド・ブレスで隔壁が閉じる前に、みんなを吹っ飛ばして外に脱出させた。
それだけなら良いんだけど、フィルは最初から玉座の間に残るつもりだった。
ゆりかごのコアを破壊するために……。
自分の命を……。
「みんな、頑張ってください!!」
「わかっとる!! このままフィルを死なせるわけにはいかんのや!!」
「私が通る穴が空けば……そこから中に突入できるです!!」
「みんな、どいて!! エクセリオン……バスター!!」
なのはさんが残った力で隔壁に砲撃を放ち、なんとか私が入れるほどの穴を空けることに成功した。
「「リイン!!」」
「はいです!!」
フィル……。
早まらないでくださいね……。
* * *
「はぁ……はぁ……」
《マスター……》
ブラストブレイザーもプラズマザンバーも全く通用しない。
あのコアの前に、俺の攻撃程度じゃ全部はじき返されてしまう。
せめて、ブレイカーが撃てる魔力が残っていれば……。
今の俺の残された手は……たった一つだけ。
《マスター……。まさか!?》
俺はプリムの制止を振り切り、銀色のカートリッジをセットし……。
《それだけは止めてください!! 本当に死んでしまいます!!》
「悪い……プリム。もう、これしかないんだ……」
ブレイカーを撃つ魔力が残っていない以上、もうこれしかない。
コアに銃口を向け、スパイラルを起動させようとしたとき……。
『やめてぇぇぇぇえぇぇえ!!』
銃口の前に、リイン曹長が立ちふさがっていた。
* * *
「はぁ……はぁ……。本当に間一髪です」
「リイン曹長……どうして?」
本当に間一髪です。
フィルは最後の手段を使おうとしてた。
――――ラストリミットを。
「フィル、止めてください……。スパイラルを使わないでください……」
「どうして……その事を……」
「ごめんなさい……。プリムから聞いていたんです。スパイラルのこと……」
ゆりかご決戦前、私はプリムからスパイラルのことを聞かされた。
そのシステムを使えばフィルがどうなるかも――――。
「プリム……お前……」
《すみません……でも、どうしても彼女だけには、話しておきたかったんです。マスター……彼女は……》
「プリム……その先は、私が自分の言葉で言います」
《リインさん……》
はずかしいですね……。
でも、今フィルに私の気持ちを言わないと、絶対後悔するです……。
私は、何度も躊躇ったけど、覚悟を決めて言うことにした。
「フィル……」
「は、はい……」
「私は……リインは……フィルの事が……大好きです……。LikeじゃなくLoveの方です……」
「えっ……?」
――――とうとう言っちゃったです。
人間とデバイスの恋なんて、成立するわけないのに……。
私、バカですよね――――。
「い、今言ったこと……忘れてください……。ばかですよね。デバイスが人間と結ばれるわけないのに……でも……でも……」
わかっていたのに――――。
こうなるって分かっていたのに……。
でも、涙がどんどんあふれてくるんです。
私が声を殺して泣いていると、フィルが――――。
「あっ……」
両手でそっと、私のことを包み込んでくれ――――。
「……本当に……俺で良いんですか?」
「それは……私の台詞ですよ。私で良いんですか?」
フィルだったら、好きになってくれる女の子はいっぱいいるんですよ。
それでも、私で良いんですか――――。
「こんなこと……嘘は言わないです。もう一度聞きますけど、本当に良いんですね」
「フィルじゃなきゃ……いやです……」
戦闘機人とか、デバイスとか関係なく、その人の心を見てくれるあなただから――――。
だから、私はフィルに自分の思いを伝わるように……。
「フィル……目をつぶってくれますか」
「こう……ですか?」
私も瞳を閉じて……。
フィルの唇に……。
自分の唇を重ねた――――。
「も、もしかして!?」
「えへへ〜♪ リインのファーストキスですよ♪」
私のファーストキス。
大好きなフィルだから、あげたんですからね――――。
「リイン曹長……」
「フィル、リインって呼んでください……。それと、二人きりの時は、敬語は無しですよ。その方が嬉しいです……」
「……リイン」
「はいです♪」
好きな人には遠慮なんかしてほしくないです。
だから、私も思いっきり甘えますからね♪
* * *
「……フィル、私に一つ案があります」
リインの策は、スパイラルの代わりに、俺とリインがユニゾンをし、限界まで出力をあげるという手段だ。
だけど……これには、かなりの危険が伴う。
元々、リインは、はやてさんのユニゾンデバイスだ。
それを俺がユニゾンした場合、なにが起こるか分からない。
「いいんですよ……。フィルがスパイラルを使うよりは、ずっと良いです……。大好きな人と一緒に苦しみを分かち合えるんですから……」
「……ありがとう」
「行きますよ……」
「あぁ……」
「「ユニゾン・イン!!」」
「きゃあああああ!!」
「うわあああああ!!」
ユニゾン自体は何とか成功したけれど、俺もリインもかなりの負担がかかっている。
おそらくもって、数分……。
「リイン……大丈夫か……」
「大丈夫ですよ……私のことは心配しないでください……行きますよ、フィル、プリム!!」
「《おう (はい)!!》」
俺たちは、残された魔力を全部、この一撃にかけることにした。
ブレイカーを撃つ魔力は、もう残されていない。
――――プラズマザンバー。
こいつの一撃に全てをかける。
ソニックムーヴで加速して、一気に突撃をかける。
刃がバリアで防がれるが、融合魔力の威力がバリアを貫き――――。
「一刀両断……。プラズマザンバーッッ――――!!」
上段からの一撃がコアを真っ二つに破壊した。
* * *
「はぁ……はぁ……やったぞ」
「やりましたね、フィル!!」
フィルは全魔力を使い果たして、膝をついて今にも倒れそうです。
このままユニゾンしてると、本当に命の危険があります。
急いでユニゾンアウトをしようとしたが……。
「きゃああああ」
「あいたたたた……」
通常のユニゾンアウトと違い、弾かれるように外に飛び出してしまいました。
「……い、痛いです」
お尻を打って立ち上がることが出来なかった私を見て、フィルが言った一言は――――。
「………もしかして、リイン?」
何、言ってるんですか?
私以外に、誰がいるんですか……。
「リイン……。今の姿を、何かで見てみて」
フィルに言われて私は、近くの鏡面状の壁で、自分の姿を見てみると……。
「う、うそですよね……。これが私ですか!?」
そこには、背丈が、はやてちゃんくらいになっている自分の姿が映し出されていました。
「信じられないかもしれないけど……」
「や、やったです!! これでフィルと一緒にいても、違和感がなくつきあえます!!」
最大の悩みだった、サイズの差がこれでなくなりました。
これで普通の女の子と一緒です!!
「い、いや……もう少し事の重大さを考えよう。これ、多分融合事故だから……」
「そうでしたね……。えへへ♪」
* * *
事件解決後、リインのことを詳しくメンテナンスしてみると、大変なことが判明した。
あの時の融合で、リインは俺以外と融合できなくなってしまい、はやてさんと一緒に戦うことが出来なくなってしまったのだ。
姿の方は、今までの省エネモードと大人モード(これはゆりかごでリインが名付けた)を自在になれるんだけど、今までははやてさんから魔力供給していたんだけど、今度は俺がリインの魔力供給をすることになってしまった。
「まぁ、なってしまったことはしょうがないわ。だけど、フィル……」
「リインのこと泣かせたら承知せえへんで……。ええな」
「はい……リインのことは俺が守ります……。俺の一生をかけて……」
「フィル……ありがとうです……」
「なんか……見せつけられた感じやな。でも、安心したわ。八神家の末っ子のことよろしくな」
「はい!!」
結果的に俺はリインの所有者になることが出来、リインもそれをすごく喜んでくれた。
リインに変わるデバイスを、はやてさんに作らなきゃいけないけど、それはリインがいてくれれば、なんとか作れる。
なにより……。
「えへへ♪ これで、ずっと一緒ですからね♪」
リインと一緒にいられるなら、こんなの苦労でも何でもないから……。
* * *
「はい、フィル。あーんです♪」
「こ、ここでか!?」
「そうですよ……。それとも、私がこうするのはいや、ですか……」
「そ、そんなことないよ……。ただ、みんなが見ているからな……」
しかも、今のリインは大人モードだ。
かなりドキドキしてしまう。
「むぅ―――。フィル、ちゃんとこっちを見てください」
「ちゃんと見ているって、ただ……」
「ただ……なんですか!!」
「その姿のリイン……。その……可愛いんだ。ドキドキするくらいに……」
普段のリインはマスコット的な感じだけど、こうしてると胸の高鳴りが収まらない。
一緒にいるだけで、顔が真っ赤になるのが分かるし――――。
「フィル……えへへ♪ ありがとうです♪」
『あああっ!!』
そう言ってリインは俺の頬にキスをしてきた。
食堂にいたフォワードのみんなや隊長陣はかなりびっくりしていた。
「フィル……大好きです♪」
「リイン……」
* * *
「あの……フィル。その……私……こういったこと初めてですから……」
「俺も……そうだよ……」
私とフィルは今、ベッドの中にいます。
今までは、一緒に添い寝とかはしてましたけど、こういった行為をするのは今日が初めてです。
「やさしく……して、くださいね……」
「ああ……」
フィルが私の服の中に手を入れて、胸を何度も触れ――――。
「あ……ん……だめ……ですよ……」
「やわらかいね……リインの胸……」
「えへへ♪ 私にこんなことしていいのは、フィルだけなんですからね♪」
なのはさんやシグナムみたいに大きくないですけど、はやてちゃんくらいはあるんですからね。
「大切にするよ……愛してる……リイン……」
「私も……愛してますよ……フィル……」
私たちは最初はただ、ふれあうだけのキスだったけど、段々とお互いを求め合うようになり、キスをし終わった後は、お互いの間に銀色の糸が出来ていた。
今の私は大人モードです。
だから、こういった行為も人並みに興味があります。
「きて、ください……フィル……」
「リイン……」
私たちは月夜の中……。
お互いを何度も求め合い……。
その行為を、朝まで繰り返す。
その度に、フィルと溶け合っているって感じられます。
* * *
「気持ちいいですね♪」
「リイン、しっかり捕まっていないと落ちるぞ!!」
「大丈夫ですよ。しっかりつかんでいますから」
私達は、はやてちゃんにお休みをもらい、クラナガンに遊びに行くことになりました。
フィルがサンダーを出してくれて、私は後ろに乗ってしっかりと抱きついています。
こうしてると、恥ずかしいんですけど、フィルのぬくもりを感じられますから――――。
「……いろいろ……きついな。こりゃ……」
「我慢しなくて良いです……。私も……いっぱい抱きしめてほしいです」
楽しいことだけじゃなく、フィルの辛いこと、悲しいことを全部受け止めてあげたいから……。
* * *
「うわぁ……。綺麗ですね」
「確かにな……」
私たちはクラナガンで食事をした後、とあるジュエリーショップに寄り一つの指輪を見ていた。
デザインは決して派手ではないが、中心にダイヤが輝いていてとても惹かれます。
二人でそれを見ていたら、店員さんがやってきて――――。
「よろしかったら、嵌めてみますか?」
「良いんですか?」
「はい、そちらのお嬢さんにお似合いかと思いますよ」
私は早速、指輪を嵌めてみる。
するとサイズもぴったりで、とても気に入っちゃいました。
だけど、お値段も……。
「……残念ですけど、またの機会にするです」
そう言って、私は店員さんに指輪を返しました。
お金を貯めていつか買えたらと思います。
* * *
「……ここは景色が良いですね」
「ここは、俺のとっておきの場所だからな」
夜になり、私達は六課から少し離れた海岸に来ています。
ここは、フィルが昔からのお気に入りの場所。
「ここに誰かを連れてくるのは……初めてかな」
「フィル……」
きっとこの場所は、つらいことや悲しいことがあったときに来ていたんですね。
「……何を……思い出してるんですか?」
「……いろいろ……かな」
フィルの悲しい笑顔を見れば、何を思いだしてるのかは分かります。
未来でみんなと一緒いた頃の思い出。
それを思い出していたんですね――――。
「ごめんね。こんなみっともない所を見せて……」
「良いんです!! フィルは、普段私に、こういった所を見せてくれないですから……」
「もうすこし、見栄張りたかったんだけどな。やっぱり、俺は三枚目だな」
見栄なんか張らないでいいです。
フィルはずっと、張り詰めてきたんです……。
私と一緒の時は、素顔のフィルでいてほしいです。
「私は……今のフィルの方がずっと好きです。不器用でも、本音で言ってくれる方が……うれしいです」
「……リイン」
いつの間にかフィルの瞳から、一筋の涙が流れていました。
私はそっとフィルの涙を拭う。
「こんな形でしか……リインに気持ちを伝えられないけど」
フィルがポケットから取り出したのは、クラナガンのジュエリーショップで見ていたあの指輪。
そして――――。
「……こんな俺を……好きになってくれて……ありがとう」
私の左手の薬指に指輪を嵌めてくれた。
「これ……もしかして……」
「そういう意味で……取ってもらって良いよ」
「嬉しいです……。私を選んでくれて……本当に……ありがとうです」
星空が照らす海岸で、私とフィルはキスをする。
私、フィルを好きになって本当に良かったです。
* * *
二年後
「フィル、今日は何しますか?」
「そうだな。久しぶりの休みだからな……」
「たまには……家でのんびりしましょうか。身体を休めるのも必要ですしね」
「そうだな……。そうしようか」
六課解散後、正式にはやてさんからリインのことを託され、それに変わるデバイスを作り、はやてさんは今でも現役で特別捜査官をしている。
そして俺は、一年間フェイトさんの元で執務官補佐をし、執務官試験に合格しリインと一緒に仕事をしている。
公私ともに俺たちは支え合っている、最高の関係だ。
リインがいることで俺も無茶をしなくなった。
スパイラルは正式に封印し、ブラスターも使わなくなり、力が欲しいときはユニゾンをして対応している。
それに、そうしないとリインが本気で怒るからだ。
「フィル……今日は何が食べたいですか……」
「そうだな……。今日は胃にやさしいものが良いかな……そのあとは……」
俺は背後からリインを抱きしめ……。
「リインを……かな……」
「もう……。いいですよ……。いっぱい、して……くださいね」
ユニゾンデバイスと人との恋……。
本来なら、成立はしない悲恋……。
だけど……。
本当に愛し合うことが出来るなら、そんな物は関係ない……。
だって……。
「フィル……ずっと、一緒ですからね♪」
左手の薬指に輝く指輪と――――。
リインの笑顔が、なによりの証だから……。
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