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〜 Remember my heart 〜
if ending キャロ

あたし達は、ゆりかごに残されたフィル達を助けに行くため、JF705に乗ってゆりかご制空権まで来たが、突入出来るメンバーはあたしと、後一人が限界だった。

救出して連れてくるスペースの関係上、これでもきついくらいだった。



「ティアさん、わたしを一緒につれてってくれませんか……」

「なにいってんの!! キャロだってかなりのダメージなんだよ!! だったらあたしが行く!!」

「スバルさん、ここでスバルさんが抜けてしまったら、誰がルーちゃん達の守りをするんですか。ヴァイス陸曹だって、いつまでも遠隔操作でやるわけにはいかないんですよ」


キャロの言うとおり、ここでスバルまで抜けたらヘリの守りが薄くなってしまう。
ギンガさんの怪我も大きいし、ルーテシアだって魔力が殆ど残っていない。



「だけど……」

「それに、エリオ君達のおかげで、戦えないほどダメージは受けてません。だからお願いです!! 一緒に連れてってください!!」



キャロの目は真剣そのものだった。
今のキャロは、誰にも止められない――――。



「……分かったわ。行きましょう。キャロ」

「ティアさん!!」

「スバル、ギンガさん達のこと、頼んだわよ」

「任せてよ、ティア!!」

「……キャロ、フィルのことお願いね……」

「ギンガさん……はい!!」

「みんな……。キャロに自分の残った魔力を渡して。少しでも力にして……」



ヘリに残るメンバーは、キャロに残った魔力を託した。
自分たちが行けない分まで、彼女に託した。

そのおかげで、キャロはフルパワー状態になる。



「みなさん、ありがとうございます。絶対フィルさん達を連れて戻ってきます!!」

「キャロ、行くわよ!!」

「はい!!」



あたしは、ヴァイス陸曹の合図でスーパーサンダーのバーニアを全開にし、ゆりかご内に突入した。




*    *    *




「くそったれ……」



クアットロを倒し、ヴィヴィオを救出に成功したが、聖王が失われたことにより、防衛システムが起動してしまい、AMFの濃度がさらに高くなってしまった。

何とか残っていたメンバーは、隔壁が閉じる前に、外に出すことが出来た。


俺が一人残ってやろうとしてるのは、玉座の間にあるゆりかごのコアの破壊。

このコアを破壊しないと、バリアが完全に解けず、アルカンシェルが通らない……。


なのはさんはブラスターのせいで戦闘不能。

はやてさん達も、ユニゾンが解けてしまい、戦うことは出来ない。




「砲撃も、斬撃も今のままじゃ通じない……。ブラスターもファイナル・リミットまで解放しているってのに……」



ブラスターも3までを解放して、もてる技を全てぶつけてみたが、コアには傷一つ付かない。



《マスター……》

「もう……これしかないか……」



ポケットから取り出したのは、銀色のカートリッジ。



《まさか……スパイラルを!! 駄目です!! 死ぬ気ですか!!》

「……元々、ゆりかごを止めるのが、俺の役目だったんだ。それに……」


ティアもスバルも、そしてキャロもみんな助けることが出来た。
俺の役割は、あと一つだけ――――。



「俺がしてやれることは……これくらいだから……」


そして、俺は――――。
スパイラルを起動させるためのカートリッジを挿入する。


「ブラスターシステム・コードファイナル……スパイラル。起動!!」



起動と同時に、俺の魔力は爆発的に跳ね上がる。
だが、それは生命力を変換しての一回限りの魔法――――。



「……うっ、くっ……。生命力がどんどん……吸い取られるのが分かる」

《もう、止めてください!! このままじゃ本当に死んでしまいます!!》

「……死んだっていいさ」


俺の役割はこれで終わる――――。
そうすれば、みんなのいる所へいける。

俺は、最後の魔法を撃つためトリガーに指をかけ――――。



「スターライト……」


トリガーを引こうとしたとき――――。


「だめですッッ――――!!」



突然誰かが、俺にしがみつき、プリムに手をかけ――――。
その人物は……。



*    *    *



「はぁ……はぁ……。間に合いました……」



何とかここに突入したとき、わたしが目にしたのは――――。
あのシステムを使おうとしているフィルさんの姿。

わたしは、フィルさんに必死にしがみつき何とか止めることが出来た。



「キ、キャロ!? どうしてここに!?」

《転送魔法ですね。それだったら壁とかは関係ありませんから!!》

「はい……。ティアさんと一緒に壁の外まで来て、そこから転送魔法の応用でここに来たんです」

「そうだったのか……。なのはさん達は無事なのか?」

「ティアさんが、みんなを連れて脱出してるはずです。フェイトさんも一緒です……」

「そっか……。よかった……」


こっちをみて、フィルさんがフッとした笑顔で――――。
でも、その笑顔はとても悲しい笑み。


「お前も早く脱出しろ。転送魔法でみんなの所に帰るんだ……」

「いやです!! 一人にしたら、またあのシステムを……スパイラルを使おうとします!! そんなのぜったいにいやです!!」

「なんでスパイラルのことを……。まさかプリム……。お前!!」

《……話しました……。彼女だけに全てを……》


この決戦前、プリムから聞いていたスパイラルのこと。
それを聞いて、わたしはプリムだけには話した。


わたしの気持ちを――――。



「何でキャロに話したんだ!! 答えろ!!」

《マスター……分からないんですか!! 彼女の気持ちが!!》

「キャロの……気持ち?」

《そうです!! 彼女はマスターのことを……》

「待って、プリム!!」

《キャロ……》


プリム、ありがとう。
でも、これだけは、ちゃんと自分の口から言うよ。

たとえ、どんな結果になっても――――。



「…………本当は、こんな形で伝えたくはありませんでした。だけど、今伝えなくちゃ、永遠に言えないから……」


後悔だけはしたくないから――――。


「フィルさん……わたし……フィルさんのことが大好きです……。誰よりも……誰よりも大好きなんです!!」


だから……。


死んでも良いなんて……。


いなくなっても良いなんて、言わないでください――――。




「………ありがとうな、キャロ」


フィルさんはわたしを、ぎゅっと抱きしめてくれ――――。



「……俺は、今まで自分のことを愛してくれる人なんて、死んでしまったティア以外いないと思っていた」


それは違います――――。
フィルさんが、どれだけみんなに思われてるか……。



「だから、俺は仲間のためなら、命を捨てるつもりでいた。でも、俺にもこうして思ってくれる人が……いたんだな……」

「フィルさん……」

「キャロ……」



わたしはフィルさんの瞳を見つめる――――。


そして……。


わたし達はどちらからともなくキスをする。




「これが……俺の気持ちだから……いい加減な気持ちで、こんなことはしないから……」


もう、わたしは涙を抑えることが出来なかった。
こんな……こんなに嬉しいことはないから……。


「……泣かないで。キャロが泣いてると……俺も悲しいから」

「だって……フィルさんと両思いになれるなんて……思ってませんでしたから……。わたしとフィルさんは年も離れてますし……。それにわたし……フェイトさん達に勝てる物なんて無いですから……」



わたしは、フェイトさんやティアさんみたいに綺麗じゃないし、料理だって出来ない。
何も取り柄がないわたしじゃ、フィルさんとは釣り合いがとれないから――――。



「キャロ、恋愛に年齢は関係ないよ。大人だって、相手のことを思いやれなければ、すぐに裏切るし、キャロの年齢くらいの人だって、本当に相手のことを思えれば、俺は良いと思う」

「それと、フェイトさん達に勝てるとか思わないこと。キャロには、キャロにしか無い魅力があるんだから……」

「はい♪」



フィルさんにそう言ってもらえて本当に嬉しい。
わたし、フィルさんを好きになって本当に良かったです!!



《あの……ラブコメ全開の所、申し訳ないんですけど、今どういう状況か分かっていますか》

「あっ……」

「あぅぅ……」

《まったく……。いちゃつくのは、これが終わってからにしてくださいね》




*    *    *



「フェイトさん!!」

「ティアナ!! どうしてここに?」

「何とかあの黒竜を片付けて、フェイトさん達の救援に来たんですよ。なのはさん達は先に脱出してますよ」

「そう、よかった……。フィルは、フィルはどうしたの!?」

「フィルの方は、キャロが行ってます。後は、キャロを信じましょう……」

「キャロ……」



キャロ……フィルのことをお願いね。
二人とも、絶対一緒に帰ってくるんだよ。



*    *    *




「フィルさん、わたしに考えがあるんですけど」

「考えって?」

「ヴォルテールの力を……使うんです」

「ヴォルテールの? だけど、ここに召喚は無理だろう」



確かに、ヴォルテールの力ならコアの破壊は可能だろう。
だけど、ここにあの巨体は召喚は無理だ。



「ヴォルテールそのものを召喚するんじゃないんです。ヴォルテールの力を借りるんです」

《キャロ、もしかして……》

「はい……わたしがヴォルテールの力をここに召喚します。だけど、わたしには砲撃のスキルはありません……。そこで………」

「俺が、プリムを使ってその力を解放する……か」

「その通りです。だけど、この方法ですと、フィルさんにかなりの負担が……」


キャロが目に涙をためて、俺に言う。


「何を今更、ブラスター3だって使ってるんだ。それに……」


――――約束したしな。

ずっと一緒にいるって……。




コアを破壊するため、俺はブラスター3を解放し、キャロは自己ブーストをかけ、両手にはめられたケリュケイオンの水晶が、強い光を放つ。



そして、その膨れ上がる魔力は、以前とは比べ物にならないほど強大なものだった。



「天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手。我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者……竜騎招来、天地轟鳴!!」



ケリュケイオンの放つ光がよりいっそう強くなり、キャロの頭上数メートルに、巨大な魔法陣が描かれ――――。


そして……。



「その偉大なる力を我に!! ヴォルテール!!」



ヴォルテールの力が召喚され、俺は、その力を集束する。
だが、あまりの力に俺は立っていられなくなる。




「なんて魔力だ……制御するのが精一杯だ……」


ちょっとでも気を抜いたら、暴発させてしまう。
俺は、歯を食いしばって制御に集中するが――――。



《頑張ってください!! キャロだって苦しいんですよ。これだけの力を召喚して、負担だって大きいんですからね!!》

「……キャロ」



キャロの方を見ると、苦悶の表情を浮かべている。


あの小さな身体でこれだけの力を召喚したんだ。


その負担度は、俺がブラスターを使っているのと、そう大差ない。



「ここで俺がやらなかったら……大バカ野郎だ!! やるぞ、プリム!!」



プリムをブレイズモードし、ブラスタービットを展開させて、再びヴォルテールの魔力を集束する。
ブラスタービットもひび割れを起こし、限界寸前だが何とか制御に成功する。



《やりますよ、マスター!!》

「いくぜ……」



集められた魔力は、銃口とビットに集まり、砲撃の発射準備は完了した。


人と竜の魔力の融合――――。


そして――――。


俺とキャロの二人の願い……。


この一発に全てをかける!!



「スターライト!!」

「「ギオ・エルガ!!」」




俺が集束した魔力と、ヴォルテールの魔力。

二つの魔力は融合し、炎熱効果を伴う大威力砲撃となり、コアに放たれた。


そして……。


コアを守っていたバリアは、砲撃の炎熱で完全に溶かされ、コアは跡形もなく消え去り、ゆりかごも完全に機能をストップした。



「はぁ……はぁ……やった……」

「やり……ました……ね……」

「《キャロ!!》」



キャロは全ての力を使い果たし、その場に倒れてしまう。



「大丈夫か!! キャロ!!」

「大丈夫です……ちょっと……疲れただけですから……」

「そっか……」


見たところ、魔力は空っぽだけど、その他は大丈夫だった。
これなら休めば大丈夫だ。



「心配したんだぞ……」

「えへへ……。普段、無茶しているフィルさんに言われてしまいましたね」

「ったく……」



俺はキャロのおでこを、人差し指でツンとつつく。
まったく、心配かけさせやがって……。

でも、ありがとう――――。


お前のおかげで、俺はスパイラルを使わないですんだんだからな。


「もうここには用はない……脱出だ!!」


俺は最後の力を使い、みんなのいるアースラにワープをする。



*    *    *



「キャロ、フィル!!」



ワープアウトしたところは、アースラのブリッジだった。
そこには、アルカンシェル・ノヴァの発射準備をしていたはやてさんがいた。



「二人とも無事か!! もうゆりかごには誰もいないんやな!?」

「俺たちが最後です。遠慮無く発射してください!!」

「よっしゃ!! アルカンシェル・ノヴァ……発射や!!」



アースラから放たれたアルカンシェル・ノヴァは、命中するとゆりかごを中心に、ブラックホールが発生し、爆発するのではなく、そこを中心に飲み込まれていった。


そしてブラックホールが消えると、ゆりかごも完全に消滅する。



こうして、機動六課は誰も死者を出すこともなく、無事JS事件を終結させることが出来た。
だけど、フィルはブラスターの反動で、入院することになった。




*    *    *




聖王医療院



「フィルさん、あーん」

「あ、あーん」


最初の頃は、フィルさんは恥ずかしがって、自分で食べるからと言ってたのですが、わたしはあきらめずに、何度もあーんをして、やっと口を開けてくれるようになりました。


「どうですか?」

「うん、おいしいよ。キャロ」

「よかった!!」


わたしは、料理がそんなに得意ではありません。
だから、事件が終わった後、フェイトさんに何度も教えてもらって、やっとフィルさんに出せるくらいのお弁当が作れるようになりました。



「えへへ〜♪」

「どうしたんだ? そんな、ふにゃとした顔になって……」

「幸せなんですよ。こうして大好きな人と一緒にいられるんですから……」


こうして、フィルさんと一緒にいられるこの一時は、本当に大切な時間なんですよ。


「お、お前、よくそんなこっぱずかしいこと、平気で言えるな……」

「言えますよ。だって、わたしフィルさんのこと、愛してますから……」



一度言ったら何度だっていえます。
フィルさんのことを、世界の誰よりも愛してますって――――。



「俺も……一人の女の子として、愛してるのは……キャロだけだから……」

「フィルさん……」


その言葉にわたしは嬉しくなり、わたしの方からフィルさんにキスをしていた。
最初は、ただ唇が触れあうだけのキス。


でも、それだけじゃいやなんです――――。


わたしはもっと深く愛したくて、フィルさんと大人のキスをする。


このキスの仕方は、アルトさんが持っていたティーン誌で覚えた物。
このキスを覚えてからは、わたしは何度もしてしてもらってる。


このキスの方が、二人の心がつながっているっていっぱい感じられますから――――。




*    *    *




「ティア……どうしよう。これじゃ、中に入れないよ」

「ったく、あの二人は……」



フィルのお見舞いに来たあたし達は、中に入ろうとしたが、キャロとフィルのキスシーンに遭遇してしまい、中にはいることが出来なかった。



「あーあ、キャロに先を越されるなんてね……」

「ティア……」

「結局、フィルに告白出来なかったあたしの負けよ。キャロは勇気を出してあいつに告白した。だから二人は、つきあってるんだしね」


もし、あたしがほんの少し勇気を出していれば、結果は変わっていたかもしれない。
でも、それはifの物語だから――――。



「ねぇ、ティア」

「何よ」

「今日は飲まない。朝まで……」

「そうね……酒は無理でも、やけ食いは出来るわね」

「うん!!」



フィル、キャロのこと大切にしなさいよ。
キャロ、フィルのこと支えてあげてね……。



*    *    *




「フィルさん、起きてください………」

「う……ん……」

「起きませんね……。こうなったら……」


わたしはフィルさんの頬にそっと近づき、キスをする。



「………おはよう……キャロ……」

「おはようございます……フィルさん」



わたしとフィルさんは六課解散後、フェイトさんに正式に交際を話して、一緒に住んでいます。

フィルさんは、フェイトさんの元で執務官補佐をして、2年前に執務官になって、忙しい毎日を過ごしています。
そしてわたしは休職という形で、今は専業主婦をしています。


もう少し落ち着いたら、わたしも復帰をして、一緒にパートナーとしてやっていけたらと思ってます。



あと、結婚は、わたしの年齢が結婚出来る年齢になっていないので、同棲という形になっていますが、わたしが16歳になったら籍を入れる予定です。



「今日はせっかくの休みだな。キャロ、どっかに行くか?」

「それでしたら、ここに行きたいです」

「なるほど、クラナガンのケーキショップか。そうだな、俺も興味あるし、サンダーで行くか」

「はい!!」


わたしはフィルさんの後ろに乗り、しっかりとしがみつく。
その時に、自分の胸をしっかりと密着させて、フィルさんにわたしを意識してもらう。



「……わたしの胸で、ちゃんと……感じますか?」

「バ、バカッ!! 何言ってるんだよ!?」

「だって……わたし、フェイトさんみたいに、おっぱい大きくないから……」


こうでもしないと、フィルさん、わたしのこと女の子って思ってくれないから――――。
せめてルーちゃんみたいに、胸が成長してほしいな……。



「そんなことしなくとも、充分ドキドキしてるっての………」

「えへへ〜♪」


もっと、求めてくれて良いんですからね♪
女の子って、フィルさんが考えてるより、ずっと大人なんですよ。



「とにかく今は勘弁してくれ。ケーキ食べに行きたいだろう」

「はい!!」



それでもわたしは、さらにギュッと抱きつく。
だって、こうしてるとフィルさんの思いがいっぱい伝わってくるから――――。




「フィルさん……」

「ん? 何だ?」

「わたし……すっごく幸せです!!」



フィルさん、わたしはあなたが一緒にいてくれるだけで幸せなんです。


わたしはまだ、フィルさんにふさわしい女の子になれてませんが……。


いっぱい頑張って、可愛い恋人になりますから――――。



そして――――。



女の子は愛する人にいっぱい求めてもらえれば、もっと求めてもらえるように、頑張って綺麗になります――――。



だからフィルさんも、わたしのことをいっぱい可愛がってくださいね♪



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