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〜 Remember my heart 〜
if ending ルーテシア

JS事件終了後、私達フォワードは、六課解散までの間、なのはさん達に色々なことを教わっていた。
戦い方だけでなく、人とのふれあいも、私は六課で学ぶことが出来た。

それは、ゼストやアギト達と一緒にいたときには、得られなかった大切な物……。

そして……。


「よっ……。お疲れさま、ルーテシア」

「お疲れ様です。フィルさん……」


私は、事件が終わってから、ずっとフィルさんのことを考えている。
訓練の時も、食事の時も、そして寝る前まで……。

フィルさんのことを考えると、胸が苦しくなる。


でも、決して嫌な気持ちじゃない……。


ちょっと、キャロに相談に乗ってもらおう。
一人じゃ、ちょっと苦しいから……。



*    *    *



「ルーちゃん……それ、恋だよ。ルーちゃんは、フィルさんのこと好きなの?」

「……うん」

「そっか……ルーちゃん、でも、フィルさん……競争率が高いよ」

「そう……だよね」



実際、フィルさんのことが好きだと思う人は、知っているだけでも数人いる。
ティアさんにスバルさん、なのはさんやフェイトさんだってそうだ。



「ルーちゃん、思い切ってフィルさんに告白したら?」

「でも……フィルさん、私みたいな子は……多分……駄目なんじゃないかな」


実際、私はキャロやティアナさんみたいに話がうまくない。
こんなんじゃ、きっとだめだよね……。



「それ……間違ってるよ。ルーちゃん」

「キャロ?」

「ルーちゃん、自分の気持ちを伝える前から、そんなんじゃ駄目だよ。フィルさんは歳とか、そんなんで人を見たりしないよ。あの人は、本質で見てくれるから……。だから、まず自分の気持ちを伝えなきゃ……」

「キャロ……ありがとう。私、フィルさんに自分の気持ちを……言うよ……」


キャロの言うとおり、ちゃんと言葉にしなきゃ伝わらない。
私の精一杯の思いを伝えよう――――。



「うん……それじゃ……これ、あげる」

「これは?」



キャロから渡された物は、一枚のチラシ。

内容は、こないだクラナガンに新しくできたケーキショップのチラシだった。
割引券が付いていて、二人まで半額という物だった。



「これで、フィルさんを誘ってみてね。ルーちゃん、頑張ってね」

「ありがとう……キャロ」



*    *    *



翌日、私は、フィルさんを誘うために何とか声をかけようとしたが……。
いざ、その場になると緊張してしまう。

でも、頑張らなきゃ……。

私の背中を押してくれたキャロのためにも―――。



「あ、あの……フィルさん」

「ん? どうしたんだ、ルーテシア」

「その……今度の休暇日……何か予定がありますか?」

「いや、特にないけど?」


フィルさんは、普段から忙しくて暇な日なんて滅多にない。
こんなチャンスはもう無いかもしれない―――。



「それだったら……その……私と……」


意を決し、私が誘おうとしたとき――――。


「おーい、フィル!!」


スバルさんがフィルさんに声をかけてきた。



「どうしたんだ、スバル?」

「フィル、今度の休暇、暇?」

「あっ……その……わりい、予定がある」


――――えっ?

さっき私が聞いたときは、予定はないって言っていたのに?



「そっか……。それじゃ、また今度ね」

「じゃあな!!」


そう言って、スバルさんは去っていった。
そして……。



「ルーテシア、良かったら、俺と一緒にケーキ食べに行かないか?」

「えっ?」

「いやぁ、クラナガンに新しくケーキショップが出来たんだけど、一人じゃちょっと行きづらいから、一緒に食べにいかないか」

「いいんですか………私で……?」


スバルさんやティアナさんじゃなくて、私で本当に良いんですか――――。


「ルーテシアが良ければだけどね……。いきなりだったから、予定があるかもしれないけど」

「い、いえ!! 私もフィルさんと一緒に行きたいです!!」

「それじゃ、明日が丁度休暇日だし、明日行くか?」

「はい!!」



まさか、フィルさんの方から言ってくれるとは思ってなかった。
明日が楽しみ……。

眠れるかな……私……。




*    *    *



「ルーテシア、しっかり捕まっていろよ」

「はい……」


翌日、私はフィルさんのサンダーで、クラナガンに行くことになった。
サンダーに乗るのは、今回が初めてだ。

男の人に抱きつくなんて初めてだから、なんか照れちゃうな……。

でも、フィルさんに、少しでも私を意識して欲しい……。

恥ずかしいけど、私はフィルさんの背中に、自分の胸を押しつけてみた。



*    *    *



(勘弁してくれよ……。俺だって……一応、男なんだぞ)


ルーテシアの奴、俺にしっかりしがみついているのは良いんだけど、その度にルーテシアの胸が当たるんだよ……。


ルーテシアだって、成長期に入ってきている。
だから、胸の方だって、年齢相応にはなってきている。

頼むから、もう少しだけ力を抜いてくれ!!


基本的に俺は、女性には弱いんだからな――――。



《(ルーテシア、頑張ってください!! マスターの鈍感は直球で攻めないと、攻略できません。キャロと同じで私も応援しますよ)》




*    *    *



「それじゃ、ルーテシア、何を食べる?」

「そうですね……」



私がメニューを見ていると、色んなケーキがあって迷ってしまいそうだけど、そんなとき一つのメニューに目がいった。


「あ、あの……フィルさん……これに……しませんか」


そのメニューは、恋人限定のケーキセット。
普段だったら、絶対に頼まないのに――――。



「どれどれ……。えっ……こ、これか?」

「……はい……だめ……ですか……」



言い終わった私は、もう恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまった。
今日の私、本当に大胆なことしすぎだ……。



*    *    *



ルーテシアが、恋人限定メニューのことを言った後、自分も恥ずかしくなってしまったのか、顔を真っ赤にしている。

こういっちゃ悪いが、ルーテシアも女の子なんだな。
せっかくルーテシアが、一生懸命言ったんだ。

この後は、俺がやってやらなくちゃな。


「それじゃ……。一緒に食べようか」

「えっ……?」

「すみません!! この恋人限定のメニューを一つください」


俺は店員さんを呼び、注文を取ってもらうと、しばらくするとハート型のケーキも持ってきた。
それだけでも、インパクトがあるけど、それ以上に……。



「フォーク……。一つしかないんですね」

「どうする……。もう一つ持ってきてもらう?」

「多分、これが正式ですね……。フィルさん……その……」

「あ、あーん……してください……」



ルーテシアが、顔を真っ赤にしながら、フォークにさしたケーキを差し出してきた。
これは……恋人同士がやる、あれか。



「あ、あーん……」

《マスター……いつまで惚けてるんですか。食べてあげてください!!》

「あ、ああ……あーん」



俺は、ルーテシアにケーキを食べさせてもらった。
でも、正直言って味なんか感じない!!

なんか甘酸っぱい気分だ……。



「今度は……フィルさんが……食べさせてくれませんか……」

「あ、ああ……」

「ルーテシア、あーん」

「あーん」


俺は、ルーテシアの可愛く開けている口に、ケーキを食べさせた。
食べた後、ルーテシアは恥ずかしさで下を向いてしまった。

俺も、さっき同じような状態になったけど、でも嫌な気持ちはない。
なんか可愛い妹にしてあげてるって感じかな。



*    *    *



「ここ……良い眺めですね」

「だな……」



夕方になり、私たちは海が見える公園に来ていた。
ここは、この時間になると、人は殆どいなくなる。

今日、私達は色んな所に行った。

ケーキショップで食べた後、ウインドウショッピングをしたり、私が行ったことがなかったゲームセンターにも行って遊んだりした。


色んな所に行って遊んで、本当に楽しかった。


それは、フィルさんと一緒だったから……。


だから、余計楽しかったんだと思う。


フィルさんと一緒にいるだけで、私の心は安らぐし、それに……。
私もフィルさんのことを、色々支えてあげたいと思う……。


私じゃ、フィルさんの支えになれるか分からない……。


でも――――。


後悔しないように、自分の気持ちは伝えよう……。



「フィルさん……」

「どうしたんだ?」

「聞いて欲しいことが……あるんです……」



緊張で逃げ出したい……。


伝えるのが怖い……。


だけど、何もしないのはもっと嫌だ!!



「フィルさん……。私は……あなたに助けてもらったときから、ずっとあなたのことを思っていました」


最初は……優しいお兄さんと思っていた。


でも……。


一緒に戦って……。


フィルさんと一緒に過ごしていくうちに……。


私の心は、どんどんあなたへの思いで一杯になんです……。



「私は……ルーテシア・アルピーノは……。フィル・グリードさんのことを心から……好きです……」



*    *    *



「ルーテシア……」



俺のことを、そんな風に思っていてくれたなんて……。


俺も、今日ルーテシアと一緒にいて、本当に楽しかった。
最初は、妹と一緒にいる感じだったけど、でも一緒にいるうちに、別の気持ちになっていた。


その違和感が分からなかったけど……。


今、それが分かった……。


俺も……ルーテシアのことが……好きなんだ……。


だから、ルーテシアに告白されて、驚いた以上に、それ以上に嬉しかった……。



「本当に……俺で良いのか? ルーテシアだったら、もっと良い奴が出来るだろうに……」


こんな俺なんかより、絶対に良い奴は見つかる。
たとえば、エリオなんて本当に良い奴だ。




「フィルさんじゃなきゃ……いやです。私は、フィルさんと歳が離れています……。でも、フィルさんのことが好きな気持ちは、誰にも負けないです!! 例えティアさんやなのはさんよりも……」

「歳とかで、俺は人を好きになったりはしない」


どんなに歳をとったって、精神的に成長していないやつもいる。
そんな奴らに比べたら、ルーテシアは本当に良い女の子だよ。



「ありがとう、ルーテシア……。俺のこと……好きになってくれて……」

「それは……私の台詞です。私の方こそ……ありがとうです……」




俺はルーテシアを自分の方へ抱き寄せ……。
ルーテシアも瞳を閉じ……。



俺たちはお互いに引き寄せられるように……。



夕日の中……。



キスをしていた……。




*    *    *



4年後



「ふぅ……。良い湯だ……」



毎年恒例の紅白戦が終わり、俺は、ホテルアルピーノの露天温泉でゆっくりしている。
さすがに、3連戦はきつかったぞ――――。



「それにしても、最近のルーテシアは、本当に積極的なんだよな……」



六課解散前、俺たちは正式につきあい始めて、俺はデバイスマイスターへの道を、ルーテシアはメガーヌさんとの日々を過ごすために、一時的に休職をしている。


その間も、ホテルアルピーノの建設手伝いやメガーヌさんの治療もやってきた。
ルーテシアも、メガーヌさんと一緒にいることで、本来の性格を取り戻してきた。

メガーヌさん曰く、ルーテシアは、本来明るい性格だと言う。


そこまでは良かったんだけど……。


そんなことを思い出していたら――――。



「おっじゃましま――――す♪」


バスタオル姿のルーテシアが温泉に入ってきた。
ちょっとまて!! 扉の前に男性入浴中の札はかけたはずだ!!



「いいじゃない。恋人同士なんだし。私、フィルさん以外には見せる気全くないよ♪」

「あのな……。マジでやばいんだからな……」



ここ最近、こんな感じで積極的にアピールをしてくる。
俺だって、普通の男性だ。


いつ、ルーテシアを襲ってしまわないかと戦々恐々の日々を過ごしている。
でも、今日のルーテシアは、いつもみたいに身体を密着したりする小悪魔的なことはしてこない。

表情は、どこか思い詰めた表情って感じだ。
すると、水面に一滴の雫が落ちる。




「……だったら……だったら、なんで抱きしめてくれないの!! 私、そんなに魅力ない!?」


その雫はルーテシアの涙――――。
今も、涙が止まらないでいる。


「……ルーテシア」

「あっ……」


俺は、ルーテシアを自分の方へ抱き寄せ――――。


「……ごめん。俺のいいかげんな態度のせいだな……」


俺は、本当にばかだ。
積極的なアピールは、裏を返せば不安の表れじゃないか。


そんなことにも気づかないなんて、本当にばかだ――――。



「そう思ってくれるなら、私を抱いて……」

「……本当に良いんだな? 今なら、まだ……」


すると、ルーテシアは俺の口に指を当てて……。



「それ、今更。ここで抱いてくれなかったら、もっと泣いちゃうよ……」

「分かった……。じゃ、部屋に行くか?」

「うん……」



さすがに温泉でするわけにはいかない。
俺たちは、ルーテシアの部屋に行くことにした。



*    *    *



「んっ……ふぁ……」



ベッドに行くと、俺たちは舌を絡め合うキスをする。
まるで、今までの思いをぶつけるかのように何度も繰り返す。


キスが終わると、互いの間には銀色の糸が出来上がっている。



「……もっと……もっと、私を求めて。遠慮なんか……しないで!!」



俺は、ルーテシアの胸に触れ、その感触を何度も堪能する。



「あっ……んっ……。私の胸……やわらかいかな?」

「ああ……こうしてずっと触れていたい」

「えへへ〜♪ だったら、これからいっぱいしてね。私はフィルさんの彼女なんだから……」



ルーテシアの甘い香りと喘ぎ声が、次第に俺の心を支配する。


人間としての本能――――。


好きな人を求める行為――――。


そして、ルーテシアの全身をすべて愛し――――。



「……うれしい。いっぱい私を愛してくれて……。お願い……。きて……」


この日――――。


俺たちは本当の意味で、恋人同士になった。


そして――――。



俺もルーテシアも、肉体と精神が織りなす快楽に溺れていき……。



今までの分を取り戻すかのように、何度も求め合う――――。





*    *    *




3ヶ月後



「……ふぅ」



あの日以来、ルーテシアのことを思ってしまう。
身も心も結ばれると、離れてしまうと、寂しい気持ちになる。



「こんな気持ちを……俺は、あいつに4年もさせてたんだな」



ちょっと通信でもしてみようかと思い、通信スイッチを入れようとしたとき、突然玄関のチャイムが鳴る。


「はい、どちらさ、ま……」


ドアを開けると、そこには大きな段ボール数箱と一緒にルーテシアの姿があった。



「もう、これ以上離れているのはイヤだから来ちゃった♪」

「き、来ちゃったって……。メガーヌさんはどうするんだよ!?」

「はい、これ。ママから手紙預かってるの」



俺はメガーヌさんからの手紙を受け取り、内容を読むと――――。



『フィルへ。ルーテシアのこと受け入れてくれてありがとう。ルーテシアとあなたは歳が離れてるから、あの子ずっとそれを悩み続けていたの。でも……』

『あの子のこと受け入れてくれたなら、ずっと一緒にいてあげてね。というわけで、そっちにプレゼントするから好きにしてね♪   メガーヌ・アルピーノ』


「あ、あの人は……」

「ママったら……」


手紙を読み終えた俺は、もう頭を抱えるしかなかった。
お願いですから、可愛い一人娘を、こんな形で贈らないでください。



「でも、これでママ公認で一緒にいられるね。フィルさん、いっぱい可愛がってね♪」




スカリエッティのせいで、親子共々辛い思いをしたルーテシア。



そんな彼女も、今は心から笑顔を見せてくれる……。



時には、小悪魔な面で俺を困らせることがあるけれど――――。



そんな日常が俺は大好きだ。



愛する人と一緒にいられる一時が――――。



かけがえのない宝物なのだから――――。


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