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〜 Remember my heart 〜
if ending ティアナ

「あははは!! もう観念しなさい」

「……くっ」



フェイトさんのおかげで、クアットロの居場所を見つけた俺は、一人乗り込んだが、クアットロの聖王の鎧の前に、手も足も出ないでいた。

砲撃を撃っても、全てはじかれてしまうし、最後の手段で、ブラスターを使って、ザンバーで斬りつけたが、通用せずはじかれてしまい、床に倒れてしまった。

ヴィータ副隊長が駆動炉を破壊して、パワーが落ちるはずなのに全く落ちる気配がない。
ヴィヴィオもなのはさんが元に戻したから、ゆりかごは停止しても良いはずなのに……。



「なぜ、ゆりかごが停止しないのか、分からないみたいですね」

「……ああ、ゆりかごのキーは二つとも失ったはずだ。だが……」

「簡単なことですわ。それは、コアが失っていないからですわ〜」

「コア……だと……」

「そうですわ。聖王も駆動炉も、ゆりかごのほんの一部に過ぎませんの」

「だからか……お前の力が失っていないのは……」

「その通りですわ〜。さらに、教えておいてあげる。私はそのコアと融合してますのよ〜」

「!!」



これで納得した。ユーノさんが教えてくれたゆりかごの情報で、二つのキーを止めても、もしかしたら駄目かもしれない、その言葉の意味がやっと分かった。

ゆりかごのエネルギー源は、コアと融合したクアットロそのものだったんだ。



「これで分かったでしょう。あなたがしてきたことは全て無駄だったのよ……。そして……」



クアットロは魔力を刃にし、倒れている俺に突きつけ……。



「これで……お終いですわ!!」


――――これまでか。
ごめん……ティア……。



『待ちなさい!!』



突如、入口の扉が、凄まじい衝撃を受け、内側に向かってひしゃげ、次の瞬間には、オレンジの奔流がぶち抜く。

そこにいたのは……。




*     *    *




「ティアナ・ランスター!? あなた、いつの間に!!」

「機動六課フォワードを舐めんじゃないわよ!! あんな竜くらい、あたし達で仕留めたわよ!!」

「ティ……ア……」


扉をぶち抜き、あたしが目にしたのはクアットロにボロボロにされたフィルの姿。


「フィル!! しっかりして!!」

「……ティア、無事だったんだな。みんなは……」

「キャロ達も全員無事よ。なのはさん達はスバルが助けに行ったわ。もう、全員脱出してるわ……」

「そっか……。それを聞いて、安心したぜ……」



フィルは、最後の力を振り絞って、何とか立ち上がる。
その傷じゃ、立つのだってつらいはずなのに……。



「……ティア。お前、どのくらい魔力残ってる?」

「正直言って、殆ど残って無いわ……。幻術1回が限度よ……」



ここに来る間に、フレイム・グロウを倒すのに、スターライトブレイカーを撃ってしまい、切り札のスーパーサンダーの増幅装置も、もう使えない。


―――――強力な攻撃魔法は、もう撃てない。



「……俺に考えがある。俺に、命を預けてくれるか?」

「……いいわ。あんたに、全てを賭ける……」

「ありがとう……。ティア……」



フィルが考えた作戦は、まずあたしが幻術でクアットロの視界を狂わせ、その間に、フィルがブラスタービットを使ってバインドをする。

そして、動きを封じたら、フィルが攻撃をする……。



「簡単にいってくれるじゃない……。あんただって、ブラスター使って、それが出来なかったんでしょう……」

「俺一人だったから駄目だったんだ。だけど、ティアが来てくれたことで、何とかなる!!」

「分かったわ。あたしは、あの馬鹿の動きを何とか止めるから。フィル……任せたわよ!!」

「任せとけ!!」

「じゃ、いくわよ……」

「「Go!!」」



*    *    *




「クアットロ!! あんたの相手はあたしよ!!」

「ティアナ・ランスター……いいですわ。まず、あなたから片付けてあげますわ!!」

「そう、上手くいくかしら!!」

「何ッッ!?」


次の瞬間、あたしの姿が何十人にも増え、クアットロを混乱させる。
残った魔力、全部使っての幻術よ。


「くっ!! 幻術!? めんどくさいですわね。こうなったら、全部排除して差し上げますわ!!」


クアットロから放たれた魔力弾は、次々と偽物に命中し……。
ついに最後の一人になってしまう。



「もう……幻術をする魔力も、ありませんのね……。終わりですわ、ティアナ・ランスター!!」



クアットロはあたしにとトドメを刺そうと、巨大な魔力弾を作るため、一瞬だが動きが止まった。
この一瞬を待っていたのよ!!



「今よ!! フィル!!」

「待ってたぜ!! この時を!!」



次の瞬間、ブラスタービットが射出され、クアットロの周りを何重にも舞った。
ビットが引いていたバインドが絡みつき、完全に動きを封じる。



「はぁ……はぁ……。やっ、たわ……」

「くっ!! ティアナ・ランスターはおとりでしたのね!! 私の動きを封じるための!!」

「気づくのが、少しだけ遅かったな……」

「喜ぶのはまだ早いですわ。あなたの砲撃の威力では、私の聖王の鎧は貫けませんわ。それは、証明済みですわ!!」



悔しいけど、あいつの言うとおり、フィルやあたしの攻撃魔法の威力じゃ、聖王の鎧を壊すことは出来ない。




*    *    *




「……クアットロ」

「何ですの。負け惜しみですか。あはははは!!」


その耳障りな高笑いもそこまでだ――――。
俺の残された最後の手段……。


「………一緒に、地獄に……付き合ってもらうぞ」

《マスター!! まさか!!》



―――――スパイラルモード。

俺の命を魔力に変換する、ブラスターのラストリミット。
もう、それしか……この女を倒す手は無い!!



「プリム……約束破って……すまない。でも、これしかないんだ!!」

《……覚悟してましたよ。この戦いが始まったときから……いいんですね……》

「……ああ」



俺の命で、ティアが助かるならそれでいい……。
大好きな人が生きてくれれば、それが俺の幸せだから――――。




《マスター……》

「……いくぜ!!」


俺はポケットから、機動キーであるスパイラルカートリッジを取り出し、プリムに装填する。


「………ブラスターシステム、コード・ファイナル……スパイラル……起動!!」

《Blaster system code final spiral mode ignition!!》



カートリッジが装填され、スパイラルを起動した瞬間――――。
魔力は爆発的に上がり、俺の周りで魔力が放電現象を起こす。




*    *    *




「な、何ですの!! この魔力は!!」

「………フィル、あんた、まさか!! やめてぇぇぇぇ!! 今すぐスパイラルを止めて!!」


ブラスターのラストリミット、スパイラルモード。
この光は、俺の命そのもの――――。



「知ってたんだな……。スパイラルのこと。ごめんな……。これしか……あいつを倒す手段がないんだ………」



スパイラルを使ったら、待っているのは確実な死。
でも、後悔はない―――。


次の瞬間ブラスタービットが、ティアの周りを取り囲み、三角錐型のシールドを作り出す。



「この中にいれば……クアットロの攻撃から、護ってくれる。ティア……」


これは俺のわがまま――――。
これから言う言葉は、すぐに忘れてくれて良いから――――。



「俺は……」



いつも俺のそばにいてくれて、心の支えになってくれたティア。



「おまえのことが……」



そして、その優しい笑顔が……。


「……大好きだった」

「!!」


だから、その笑顔は絶対に護ってみせる。



「………幸せになれよ……俺の分も……」



それが俺が願う最後のこと。



―――――たった一つの俺の願い。





*    *    *




「いやっ!! こんなのいや!! お願い、ここから出して!!」



クリスタルゲージは、完全にあたしの動きを封じてしまっている。
お願いだから、出してよ!!



「……フィル・グリード、あんた、まさか……自分の命を!?」

「そうさ……。俺の命で、魔力に変換しているんだ。これなら、お前の聖王の鎧もつらぬける!!」

「あ……ああ……あああああ!!」



クアットロは、フィルにプリムを突きつけられ、身体を震わせ、カチカチと歯を鳴らし、膝は笑い、今にも崩れ落ちそうになっていた。

さらに、フィルはバインドでクアットロの動きを完全にロックする。



「咎人に、滅びの光を。星よ集え!! 全てを撃ち抜く光となれ!!」



プリムの銃口に、辺り一帯の魔力が集まりだし、巨大な魔力球が展開され――――。



「貫け……閃光……」 



カートリッジがロードされ、魔力は、更にふた回り以上も増大する。
命の全てを魔力に変換している。



――――お願い。


誰でも良いから……。


だれかあのバカを止めてよ!!





*    *    *





「……はぁ……はぁ……全身の力が……抜け、て…いく」


身体から生命力が抜けていくのが分かる――――。
この一発を撃ったら、俺は助からないだろうな。


ティア――――。


この世界に戻ってきて、お前を助けられて本当に良かった――――。



そして、これで俺の後悔も消える――――。


あの時、ティアを助けられなかったことを――――。



「スターライト……」


この一発で全てが終わる――――。



「ブレイカーッッ――――!!」



放たれた砲撃………。



白銀のスターライトブレイカーが、クアットロに迫る。




「あああ………嫌あぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」



クアットロは必死に聖王の鎧で防ぐが――――。
ブレイカーの威力で鎧は木っ端微塵に砕かれ、クアットロに命中する。


そして……。



クアットロの存在を跡形もなく、消し去った。




「……」








*    *    *






全ての力を使い果たしてしまったフィルは、その場に倒れてしまう。
その瞬間クリスタルゲージは消え、あたしはフィルの元に駆けつけるが……。



「……う、うそ……よ、ね」



心臓が動いていない――――。


魔力反応も全くない……。



「……ねぇ……いつもの、冗談……なん、でしょう……」


こんなのって……こんなのって……ないわよ。
いくらみんなが助かったって、あんたが死んだら……。


起きてよ――――。

いつものように、あたしのことをティアって呼んでよ!!


「……フィ、ル」


涙が止まらない……。


本当に悲しいときは、涙を流さないなんて言うけど――――。


――――そんなのはうそ。


いくら抑えようとしたって、涙は収まらないじゃない……。



「うそ、つき……。みんな生きて帰ろうって、言ったじゃない……」


ふと、フィルのポケットから一つのカードが落ちた。
それは、クロスミラージュ。

未来のあたしが、フィルに託したデバイス――――。
あたしはそれを拾おうとしたその時……。


「……な、何、この光は!?」



クロスミラージュから、オレンジ色の強烈な光が発し――――。


光が収まると……。


「……うっ」

「……あっ……ああっ……」



フィルの瞳がゆっくりと開きだし……。
そして……。



「フィル!!」


あたしは、フィルのことを力一杯抱きしめる。
失いかけた大切な人。


もう、二度とあたしから離れないように……。



「……ごめんな。本当、俺はいつも……ティアのこと泣かせてばかりだよな」

「そう思うなら、二度とこんなことしないで……。お願いだから……あたしのそばから、いなくならないで……」

「……そう、だな。だけど、どうして俺は助かったんだ?」


そう、フィルの言うとおり、スパイラルを使ったら待ってるのは確実な死。
なのに、どうして……?


『それは、あたしが説明するわ』


再び、クロスミラージュから光が発し、空中に女性の姿を映し出す。


「ティア!!」

「えっ? あたし? どういうこと?」


あれ、どうみてもあたしよね?
いったい、何がどうなってるの!?



『混乱してるみたいね。簡単に言うと、あたしは未来でフィルと戦っていたティアナよ』

「つまり、未来のあたしということ?」

『そういうことね』


そっか……。
このクロスミラージュは、未来のあたしから託された物。

その思いが、これに宿っていたという訳ね。



「それより、なんで俺は生きてるんだ?」

『………そこにある、クロスミラージュを見て』



未来のあたしに言われて、クロスミラージュをみると、フレームはヒビだらけで、今にも砕けそうだった。



「これは!?」

『クロスミラージュに託した、あたしの魔力を、あんたの命に変換したの……。最後の力でね……』

「そういうことだったのね……」


本当に、フィルのことが好きだったのね。
自分の命を託せるほどに――――。



「だけど、それじゃお前は!!」

『心配しないで……。あんた達がクアットロを倒してくれたおかげで、未来は変わったわ。だから、あたしも、いなかったことになる。というより、無かった未来になるんだから、最初からいないのと同じね』

「そんな……」

『フィル、悲しまないで……。あたしは、むしろ感謝してるんだから。あんな未来にならないことにね。それと……』

『こっちのあたし、しっかりしなさい!! フィルはちゃんと告白したのよ。返事をするのが礼儀でしょう!!』

「ま、待て!! あれは俺が一方的に言ったことで……。あくまで、俺の片思いなんだし……」


まったく……。
この鈍感、こんなにあんたのことを思ってるのに、全く気づかないの――――。



「……片思いなんか……じゃないわよ……」

「ティア?」

「あたしも……あんたのことが、大好きなんだから……誰よりも大好きなんだから!!」

「だから、お願い……。さっきも言ったけど、あんな真似、二度としないで!!」



アグスタの時も……。


地上本部襲撃の時、フィルはたった一人で、ノーヴェ達を止めて戻ってきたときも……。


クアットロの策略で、瀕死の重傷を負ったときも――――。



そして――――。


スパイラルを使って……。


フィルがいなくなってしまった。




「もう……あんたがいなくなるのはいや。こんな悲しい思いをするのは……もう……いやなの」


さっきのことを思い出したら、また涙がポロポロと出てくる。
そんなあたしをフィルがそっと抱きしめてくれて……。



「さっきから……本当に泣かせてばかりだな、俺は……」

「いいの……。こうして、フィルがそばにいてくれれば……それだけで良いの……」


こうして、あたしを抱きしめてくれるだけで安心する。
あんたがあたしのそばにいてくれるって、そう思えるから――――。



「ティア……」

「フィル……」




あたしとフィルは、お互いに瞳を閉じ……。


そして……。


静かに………やさしいキスを交わした。




「何か……照れるわね……」

「そうだな……」



あたしもフィルも、少し落ち着きを取り戻し、今度はお互いに照れくさくなっていた。
でも、決して嫌な気持ちじゃない――――。


フィルもそれは同じで、表情を見れば分かる。

元から何となく表情で分かることがあったが、こうしてお互いの気持ちが両想いになり、さらに分かるようになっている。



『あの……あんた達、何、自分たちの世界に入ってるのよ!!』

《そうですよ!! まったく!!》

「「あっ……」」

『……ったく、こっちのあたし、フィルのこと頼んだからね!! 浮気しないように、ちゃんとあんたの魅力で繋ぎ止めておきなさい!!』

「分かってるわよ!! あたしだって、フィルをなのはさん達に渡す気は、更々無いわ!!」



あたしが知る限りで、フィルのことを好きなのは、なのはさんにフェイトさん、フォワードだってスバルにキャロ、そしてルーテシア。

八神部隊長は、一歩引いてる感じはするが、それでも好意は持っている。



「えっ? なんでなのはさん達が、そこで出てくるんだ?」

「『《はぁ……》』」


この鈍感、朴念仁は――――。
他人の心の痛みには敏感なのに、自分に向けられる好意には全く気づかない。



『あ、相変わらずなのね……あいつは』

《はい……だからティアさんも苦労したんです》

「そうね……。よく、両思いになれたって思うわ……」


きっと、こんな事がなかったら、このまま良い親友で終わっていたわね。
あたしが好きだったって事に、全く気づかなかったくらいだし――――。



『そのおかげで、誰にも取られなかったんだから、結果オーライということにしましょう』

「……そうね」

《そうですね……》




*    *    *




『そろそろ……時間ね……』



そう言うと、未来のあたしの身体が段々透けて、今にも消えかけていた。



「ティア……」

「未来のあたし……湿っぽいのは無しよ」

『ふふっ、そうね。あんたがちゃんと、女に磨きをかければ、あたしなんてすぐに抜けるわよ』


悔しいけど、今のあたしはまだまだ未来のあたしには追いついていない。


「そう出来るように頑張るわよ。あたしには、大好きな人が……フィルがいるんだからね!!」

「ティア……」

『じゃあね……。フィル、あたし……』



そして――――。

未来のあたしは、完全に消えてしまった。




*     *    *




「それにしても……いろいろあったな……」

「どうしたの? 何考えてるの?」

「事件が終わってからのこと……思い出してたのさ……」



二人でベッドに座っていた俺たちは、事件が終わってからのことを思い出していた。



JS事件が終結し、俺はブラスターとスパイラルの影響で入院をしていたが、退院したその日、ティアがとんでもない爆弾発言を、みんなの前でしてくれた。


『あたしとフィルは恋人同士ですので、誰も取らないでくださいね!!』


普段のティアじゃ、絶対あり得ない行動だ。

言い終わった後、相当恥ずかしかったみたいだけどな。

最初はかなり驚いていたけど、みんな祝福してくれて、六課を上げて盛大なパーティーまでしてくれた。
おまけに、はやてさんが変に気を利かせて、次の日から俺とティアを同じ部屋に変更していた。
荷物も俺とティアが訓練中に、ロングアーチのみんなで引っ越しをしていたし。

あの時は、さすがに驚いたぞ。

そのおかげで、俺たちは一緒の部屋で過ごしている。



「あれは、さすがに驚いたわよ。部屋に戻ったら、あたしの荷物が全くないし……」

「確かにな……。俺の場合は、なんでティアの荷物が、ここにあるんだって思ったからな……おまけに、下着まで落ちていたし………」

「……フィルのえっち。でも、どうだった? あたしも、ああいうのも、ちゃんと付けるんだよ……」



あの時落ちていた下着は、かなり過激な物もあった。
通常の下着だけじゃなく、黒のブラやパンツまであったし――――。



「うーん、下着も良いんだけど、やっぱり……」

「あっ……」



俺は、ティアを押し倒し……。



「ティア自身のほうがいいな……。こうして、ぬくもりを感じられるしな……」

「うん……。あたしも……そうだよ……」



そう言って、ティアはギュッとしがみついてきた。



「ティア……いいか……」

「………いいよ。いっぱい、フィルを感じさせてね……」



俺はティアに、そっと唇を重ねる。



「んっ……。フィルとのキス、やっぱり落ち着くね」

「だったら……もっとしないとな」

「もう……。ばか……」



ティアは少し怒ったように言ったが、拒むことはしなかった。
再び唇を重ね、今度は貪るようにキスをする。


息継ぎを繰り返し、互いが満足するまでキスを繰り返していた。
同時に、俺は、シャツの中に手を入れブラを外し、ティアの胸をまさぐる。



「あっ……んっ……」


ティアの喘ぎ声が、女性特有の甘い匂いが、俺の理性を溶かしていく。
俺は、ティアの身体全てを愛し――――。


そして――――。



「きて……フィル……」



――――月明かりの下。


二人の身体は重なり、気持ちも一つになった。


その後も、互いを幾度も求め合い――――。


その夜は……。


ベッドのスプリングが軋む音が、止むことはなかった――――。




*    *    *




翌日、俺とティアは、なのはさんから休暇をもらうことが出来た。
ロードサンダーも修理が終わり、試運転も兼ねてツーリングする事にした。

目的地はとりあえず、クラナガンで良いかな。



「それにしても、気持ちいいわね」

「そうだな……。あのな、ティア」

「んっ、何?」

「その……なんだ。そんなに密着するとだな……」

「胸が当たってるって、言いたいんでしょう……」

「………ああ」

「別に良いじゃない。あたしの胸なんて、何度も触れてるんだから……」

「そ、そう言う問題じゃなくてだな……」



ティアの胸が俺の背中に当たる度、理性がガリガリ削られているんだ。
正直蛇の生殺しだぞ……。



「……よかった」

「えっ?」

「ちゃんと、あたしのこと、女の子として意識してくれてるんだ」

「当たり前だろ……。ティアは俺の大切な……彼女なんだから……」

「ありがとう……フィル……すごく嬉しい……」

《相棒、ティアナさん、ラブコメってる所悪いんですけど、ちゃんと運転してください!!》

「す、すまん!! サンダー」

「ご、ごめん!!」


そんなこんなで色々あったが、何とかクラナガンに着くことが出来た。
サンダーは道中、散々俺たちのことをからかっていたがな……。


クラナガンに着いた俺たちは、ウインドショッピングをしたり、アイスを食べたり、出店でたこ焼きが売っていたので、それを買って食べたりした。

ティアが俺に、たこ焼きを食べさせてくれるとき、顔を真っ赤にしていた。
普段、部屋でやるのは大分慣れたけど、やっぱり外だと照れてしまう。


そして、時間も経ち、夜になると、俺たちはクラナガンの近くにある海岸に来ていた。




*    *    *




「相変わらず……。ここは、海が綺麗ね………」

「ああ……」



この場所は、あたし達しか知らない秘密の場所。
海が見たくなったとき、よくフィルと一緒にここに来ていたわね。




「……ティア」

「何?」

「俺たちは六課が解散すれば、それぞれの道に進んでいく」

「うん……」

「俺もティアも、執務官志望だけど、ティアはフェイトさんの所で、俺はクロノ提督の所でやっていくことになる」

「そう……なのよね……」


執務官補佐は、二人までなので、フェイトさんはシャーリーさんとあたしで精一杯。
そこで、ハラオウン提督が、フィルの事を世話してくれることになり、六課解散後はクラウディア所属になる。

あたしもフィルも所属が違うので、執務官試験に合格し、コンビを組めるようになるまでは、一緒にいる時間はとれない。



「だから……」


フィルが取り出したのは、一つの小さな箱。
フタを開けると、そこにあったのは……。


銀色に輝く指輪―――。



「これ……もしかして……」

「執務官になり、コンビ組めるようになったら……俺と……」



そして、あたしの左薬指に――――。



「結婚して欲しい……」



銀色に輝く指輪を嵌めてくれた――――。



「あっ……」



あたしは嬉しさで、涙をこらえることが出来なかった。
初恋はかなわないって言うけど、それは違った。



「これ……。もう……返さないからね……」



あたし、絶対執務官試験一発で合格するから、一緒に頑張って合格しよう――――。


そして……。


――――ずっと、一緒にいようね。




*    *    *



二年後


「どうしたんだ? 昔の写真なんか見て」

「……ちょっとね。結婚式の時のやつが出てきたから……」



ティアが見ていたのは、俺たちの結婚式の写真だった。
一年前、俺とティアは猛勉強の末、執務官試験に一発で合格した。

正直、あの難関試験を一回で受かるとは思っていなかった。
クロノ提督もフェイトさんも喜んでくれたのだが、優秀な補佐がいなくなるって言って、引き止められそうになった。

俺たちはすぐにコンビを組み、地上の事件を解決していった。
白と黒の銃使いコンビなんて言われるようになって、仕事も増えてしまったけど……。

そして半年前、ようやく旧六課メンバーと、元ナンバーズメンバーと、レジアスの親父さん達のスケジュールの合う日が出来て、結婚式をすることになった。



結婚式は、かなり内容の濃い物になった。



レジアスの親父さんがスピーチをしてくれたんだけど、緊張していて、普段の威厳が全くなかったり……。

はやてさんが俺たちの結婚式のために、料理とウェディングケーキを作ってくれたり……。

ウェンディとノーヴェが、相変わらずのどつき漫才を始めてしまったり……。

スバルが俺たちに泣きついてしまって、それをギンガさんとチンクに止められたり……。

エリオとルーテシアとキャロが、三人で一生懸命、歌を歌ってくれたり……。

なのはさんとフェイトさんが、一言ずつお祝いの言葉をくれて、ティアと俺が泣きそうになってしまったり……。



そして――――。



俺とティアはみんなが見守る中で、誓いの言葉を交わし、キスをしたんだ。




この一枚の集合写真………。



これには、みんなの笑顔が写っていた。


素直じゃないが、似たもの同士の二人……。


そんな、二人が結ばれ……。


幸せを手に入れた――――。



「これからもよろしくね……。あたしの素敵な旦那さん……」


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あきゅろす。
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