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〜 Remember my heart 〜
if ending はやて


「ばかや……。何で一人で、やろうとしたんや……」




私はここに来る前、ユーノ君からゆりかごのことを聞かされた。

その内容の中に、この玉座の間にあるコアを破壊しないと、バリアが完全に消えず、アルカンシェルではゆりかごを破壊できない――――。


そのことを唯一知っているフィルは……。


一人で破壊しようとしていた。


だから、私はフィルがウインド・ブレスで、私達だけを脱出させようとしたとき、フィルのジャケットをつかんで何とかこの場に残ることが出来たんや。



「今、魔力が使えるのは俺だけです。なのはさんも、ブラスターを使って戦闘不能だし、フェイトさんもいない……だから……」

「……だめなんか……私じゃ……フィルの役にはたたんか……」



悔しいけど、なのはちゃんやフィルみたいに、デバイスにAMF対策を施していない私じゃ、役に立つことは出来へん。

魔力だけは、誰よりもあるのに、これじゃ無いのと一緒や……。



「そんなこと無いですよ……。はやてさんがいたからこそ、俺は……」

「えっ?」


フィルは、ふと寂しい笑みを浮かべ――――。
あの笑み……どこかで見たことがある……。


「きっと……これが最後だから……」


私の脳裏に浮かんだのは、あのクリスマスのリインフォースの最後の笑顔――――。


「……俺……はやてさんのこと……大好きでした。はやてさんがいたから、機動六課に、また入ったんです……」



フィルの告白に、私は驚きを隠せなかった。


――――嬉しかった。


フィルが私のことを好きでいてくれてたなんて……。


でも、それと同時にフィルが何をしようとしてるのかも分かってしまった。
あの時のリインフォースと同じ笑み――――。



「フィル、あんた死ぬ気やな!!」

「……」



フィルは私の質問には答えず、懐から、銀色のカートリッジを取り出した。



《止めてください!! 『スパイラル』だけは使わないって、約束したじゃないですか!!》

「なんや……そのスパイラルってのは?」

《スパイラルモード……ブラスターの最終形態。体内にある生命力を、全て力に変えるシステム。そのカートリッジは封印を解くキーなんです。そして、使えば……》


プリムが言おうとしたことは、もう分かった。
スパイラルを使ったら、フィルは!!



「………はやてさん……幸せになってくださいね……」



フィルがカートリッジを挿入しようとしたとき……。



「だめぇぇぇぇぇ!!」



私は、フィルの手を力一杯掴んでカートリッジを奪おうとするが、フィルは、それでも強引にカートリッジを挿入しようとする。



「放してください!! これしか手段がないんです!!」

「放さへん!! フィルがこれを捨てるまで絶対に放さへん!!」


こんなもん絶対に使わせへん!!
命を失うシステムなんて、私は絶対に許さへん!!


「はやてさん、あなたは六課の部隊長です。現状で何が有効なのか冷静に判断してください!! 今は……これしかないんです。それに……」

「……俺の命一つで……解決するんです。あの最悪な未来に比べたら……安い物です」

「っ!!」



――――今の言葉だけは許せへん。


自分の命を軽んじる言葉だけは!!


気づいたら私は、フィルの左頬を……。



「はやて……さん?」


おもいっきり平手打ちをしていた。



「ばかや……。ほんまに……ばかや。フィルが犠牲になって……。それで、私が喜ぶとでもおもったんか……」



これ以上誰かが犠牲なるのは、もうたくさんや!! 
まして、自分の愛する人が、死ぬのは絶対嫌や!!



「お願いやから……。お願いやから……死ぬなんて……ぐす……言わない…で……」


最後の方はもう、涙声になっている。


「……ごめんなさい。俺があんなこと言わなかったら……」


それは違うで――――。


フィルが好きって言ってくれて……嬉しかったんやからね。


だから、私はフィルに自分の気持ちを伝える。


ありったけの思いを込めて――――。



「さっきの告白の返事……しとらんかったな。私も……私も……大好きやで……」


すると、フィルの瞳から一筋の涙が……。


「……こんな、俺を……好きになってくれ、て……あり、がとう」



こんななんて言わないで……。
あなただから、私は好きになったんやから――――。



「お願い……。私のことを好きなら……はやて、って呼んでや……」

「はやて……」

「うん……」



私とフィルは、お互いに瞳を閉じ……。


そして……。


気持ちを確かめ合うように、キスをする。




*    *    *




「えへへ〜♪ これでフィルと私は、恋人同士や」

「……まさか、はやてさんと、こうなれるとは、思ってなかったんですけど……」

「……その話し方……他人行儀でいやや。それと、さっきも言ったけど、さん付けも止めてや……」


フィルの普段の話し方は丁寧なんやけど、それは他人と話すのと変わりない。
恋人同士になってまで、そんな話し方は寂しい――――。



「……分かったよ。はやて」

「うん♪」


私は、さっき引っぱたいてしまった左頬にそっと触れる。


「ごめんな……。痛かったやろ」

「……俺の方こそ……ごめん。俺が言った言葉で、はやてを傷つけて……」

「ええよ……。こうしてフィルが生きていてくれるんやから……」



フィルは、私をそっと自分の胸に抱き寄せる。


――――温かい。


こうして大好きな人に抱きしめてもらってると、ほんまに心が温かくなる。



《あの……お二人さん……盛り上がっているところ、大変申し訳ないんですが……》

「あっ!!」

「ご、ごめん!!」



私達は、プリムの声でハッとし慌てて離れる。



《まったく……でも、その様子でしたら、二度とスパイラルを使うなんて、言わないですしね……》

「ああ……」



フィルの瞳は、さっきとは違って光がある。
それは、生きようとする希望の光――――。



「あのな、フィル、プリム……」

「何か……策があるの?」

「一つだけある……。だけど、これはフィルにもプリムにも、かなりの負担がかかってしまうんや。それでも………やるか?」


正直、成功確率はかなり低い。
でも、これしか手段はないんや――――。


すると、フィルが……。


「なにを今更、スパイラルを使う覚悟があったんだ。生きて帰るためなら、どんなことだってやるさ!!」

《その通りですよ。例え、スターライトブレイカーとラグナロクを、同時に展開しろって言われても、やって見せますよ!!》

「気づいてたんか!?」

《スパイラルを使わない以上、それしか、私達に残された手段はありませんから……》



100%のラグナロクなら、破壊は可能だが、このAMFの状況下では威力は半減してしまう。
さらに、シュベルトクロイツはアームドデバイス。AMFの対策は何もしていない。

そして、フィルはヴィヴィオを助ける時に、ブラスター3の、スターライトブレイカーを使ってしまっている。
今のフィルでは、ラグナロク以上の威力は出せない。



「二つの魔法の融合……ということか……」

「そういうことや……。それしか、あのコアを破壊する手段は……ない」

「……プリム、覚悟は出来てるか?」

《当たり前ですよ。私はマスターの相棒ですよ。このくらいのこと、やって見せます。それに私は、マスター達のこれからを……未来を……見ていきたいんですから……》

「プリム……」



ほんま、妬けてしまうほどのコンビやな。
互いのことを本当に信じ合っている――――。


きっと、未来のティアナともこんな感じやったんやろうな――――。
私もティアナやプリムに負けないように、フィルのこと支えんとな。




*    *    *




俺は、プリムをブレイズモードにし、銃口をコアに向ける。
今回の方法は、二つの魔法の融合。

だから、プリムは俺とはやての魔法の術式を、同時に処理しなければならない。



《大丈夫ですよ……。絶対成功させて、みんなでアースラに帰りましょう……》

「……そう……だな……」



――――正直不安だった。


こんな事、今までやったことがないんだ。


失敗して、はやてを死なせることになったら……。



「フィル……」


はやては、プリムを握っている俺の手に、そっと自分の手を添え――――。


「大丈夫や……。一人やないんや。私も、そしてプリムもいるんや……」

「はやて……」



――――フィル。



あたしもついてるから……頑張って。



そして――――。



はやてさんのこと幸せにしなさいよ……。



気のせいじゃない――――。
確かにティアの声が聞こえた。



「………ありがとうな、ティア」



俺には大切な人達がそばにいてくれる……。
これ以上のサポートはない。



「やるぞ!! はやて、プリム」

「うん!!」

《はい!!》

「いくぞ!! ブラスター3ッッ!!」


俺は、最後の気力を振り絞って、ブラスター3を起動させる。
度重なる使用で、身体はもう限界に来ていたが、スパイラルを使うよりは遙かにマシだ!!

そして、すぐさま俺たちは魔法詠唱に入る――――。



「響け、終焉の笛……ラグナロク!!」

「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ!! 貫け……閃光!! スターライト!!」



銃口にミッドとベルカの二つの魔法陣が展開され、その魔法陣は一つに融合する。
二つの白銀の魔力が融合し、その力は計り知れない物になっていた。


だが、その力に耐えきれなくなり、プリムのフレームはひび割れを起こしていた。



「「プリム!!」」

《心配しないで……ください。私は、このくらいのことで壊れたり……しません!! だから、全力で撃ってください!!》



ここで、中止するのはプリムを侮辱することになる。
プリムは俺たちを信じて、こんな危険な賭に乗ってくれたんだ。



「フィル……」

「はやて?」

「一緒に撃とう……。トリガーを一緒に引こう……」



そういってはやては、プリムのトリガーに自分の指を入れた。



「……ありがとう……はやて」

「何言ってるんや。好きな人の苦しみは、一緒に分かち合うもんやで……」



もう、俺に迷いはない。
俺とはやては最後の魔法詠唱に入る




「「スターライト・ラグナロク……」」


「「ブレイカーッッ――――!!」」



放たれた砲撃………。



白銀の奔流が、コアの強固なシールドをブチ抜き……。



そして――――。



コアは跡形もなく消し去り、その後ろは融合魔力の力で、外にまで穴が通じていた。



「フィル、脱出するで!!」



コアが無くなったことによって、魔力結合が復活し、はやてが俺を抱え、外に飛び出した。



「脱出できたはいいが、あのゆりかごを完全に消さなきゃ……すべてが終わらない」

「そうやったな。フィル、最後の魔力で私をアースラのブリッジにワープをお願い!!」


俺は、ルキノさんの魔力反応を頼りに、アースラへワープをした。




*     *     *




「はやてさん!!」

「八神部隊長!! フィル!!」


フィルが、最後の魔力を使って、私たちをここに運んでくれた。
後は、私が六課部隊長として最後の責任を果たす!!


「話はあとや!! リンディさん、アルカンシェル・ノヴァのキーを!!」

「……わかったわ。はやてさん、現時点をもってあなたに指揮権をお返しします」



私は、リンディさんから、アルカンシェル・ノヴァのキーを手渡され、艦長席に着き、最後の指令を下す……。



「アルカンシェル・ノヴァ……発射準備ッ!!」


キーを差し込むと、私の前に、ターゲットスコープと、アルカンシェル・ノヴァを発射するためのトリガーが現れる。


その銃を握り、私は発射体制に入り……。



「発射10秒前、対ショック、対閃光防御!!」



――――――身体が震える。


この一発に、ミッドが、私たちの未来がかかっている。



私が、外してしまったら……。



もし、これが通用しなかったら……。



そう、思っていたら……。



「……フィ、ル」



銃を握る私の手に、フィルがそっと手を添えて……。



「さっきは、はやてに勇気をもらった。今度は、俺がはやてを支える番だ。一緒に、トリガーを引こう」

「……ありがとう、な」



――――――大丈夫。


愛する人が、私のことを支えてくれてるんだから……。


そして、私とフィルはカウントダウンを一緒にする……。



「「3……2、1」」

「アルカンシェル・ノヴァ……」

「「発射ッッ!!」」



トリガーを引くと、アースラの艦首から、黒き稲妻を纏った白銀の膨大なエネルギーが砲撃として放たれ……。


ゆりかごに命中すると、命中したところが中心となり、ブラックホールを作り出し、ゆりかごを飲み込んでいく……。


その巨大な船体は、みるみる崩壊していき……。



ゆりかごは、完全にこの世から消滅した。




そして、すべて飲み込んだブラックホールも、役目が終えたと同時に、消滅する。




アルカンシェル・ノヴァ……。
アルカンシェルの砲撃を利用し、さらに、消滅エネルギーを加えることにより、小規模なブラックホールを作り出し、対象物を完全に消滅させる。

あまりの威力に、船体へのダメージが激しく、打てば、もう二度と戦艦として活動できなくなってしまうが、まさに最終兵器の名にふさわしい威力を持った魔導砲。



こうして、後に史上最大の凶悪事件と言われるJS事件は、幕を閉じた。
重傷者は数人出たが、機動六課は誰も死者を出すことがなかった。

しかし、俺は、度重なるブラスター使用の影響で、入院することになってしまった。




*    *    *




「はい、フィル。あーん」

「あ、あーん……」

「どう……おいしい?」

「うん、はやては、やっぱり料理が上手だ……とってもおいしい」

「よかった……口に合わないかと思ったわ」



はやてが俺に食べさせてくれたのは、手作りのお弁当だった。
しかも、病人が食べやすいように、薄い味付けの物になっている。

こういう気配りが、はやての優しさなんだな。



「そんなことないよ……。本当においしい」

「嬉しいわ……。大好きな人に、そう言ってもらえるのは……」

「は、はやて……」

「えへへ〜♪」


俺もはやても、二人とも顔が真っ赤になってしまった。



*    *    *



お弁当を食べさせた後、私達はしばらく一緒に過ごしていた。
すると――――。



「はやて」

「な、なんや?」

「もう一つだけ……食べたいもの……あるんだけど……」

「何が食べたいんや。遠慮無く言ってや」


なんでもええよ。
ハンバーグでも、肉じゃがでも、フィルが食べたいと思う物は何でも作るで。


だが、フィルから言われた言葉は、予想を遙かに上回る物だった――――。



「……はやての……くち、びる……」

「え、ええええっっ!?」



ま、まさか……。そんな切り返しをしてくるとは思わなかった。
でも、フィルの顔が真っ赤になっているところを見ると、本気なんやな。



「………ええよ」



はずかしいけど、私もフィルとキスがしたい。


私達はどちらからともなく、キスをしていた。


最初は唇が触れているだけだったが――――。


次第に気持ちを確かめ合う様に、深い物になり……。


しばらくの間、ずっとキスをしていた。



*    *    *




退院後、俺は、八神家のみんなに、俺とはやてのことをちゃんと伝えた。
最初は驚いていたが、はやての幸せを心から祈って、俺たちのことを認めてくれた。


ただし、たった一つだけシグナム副隊長から、条件が出された。


それは……。


『命を粗末にすることはするな。お前は、もう一人じゃないんだからな……』



その言葉には、すごく重みを感じた。
今までの俺は、完全に自己犠牲の所があった。


だけど、今は大切な人がいる――――。


その人を悲しませることはしたくない。



*    *     *




新暦75年 10月


重傷者の隊員が無事復帰し、本日事件解決記念のパーティーを開くことになった。
料理は、はやてと俺で用意することになった。

最初はなのはさんやフェイトさんが、手伝ってくれるって言ってくれたのだが、はやてが、『フィルと2人でやるから、他の所頼むわ』と言って、結局2人でやることになってしまった。



「えっと……。今日は来週より六課が再出発することと、先日の事件の労いもかねて、ささやかながらパーティをすることにしました。今日は無礼講ですので、みんな楽しんでください。長い挨拶は私も嫌いなので、さっさと乾杯してしまいましょう………。というわけで、乾杯!!」

『乾杯!!』


乾杯の後、それぞれグループに分かれてパーティーを楽しんでいた。

しかし、開始早々、はやてが酔っぱらって倒れてしまい、俺ははやてを介抱することになり、そのままパーティー会場を出ることになった。


はやての部屋だと、かなり遠いので、やむなく俺の部屋に一時的に行くことにした。




「着いたよ、ほら」

「う〜。気持ち悪い〜」

「大丈夫? 今、水を持ってくるから」


はやてをベッドに座らせ、俺は水を取りに行こうとしたが――――。


「………待って。行かないで……」


はやてが、俺の服の裾をつかんで離さなかった。


「そのままじゃ辛いだろ。今、水を……」

「大丈夫……。酔っぱらってもいないし……気持ち悪くもないよ……」

「まさか……」

「ごめんな……。どうしても、フィルと二人きりになりたかったんや……」

「そっか……」



俺ははやての隣に行き、はやての肩を抱き、自分の方へ引き寄せた。
はやても俺の肩の上に、自分の頭をコトンと預ける。


そして俺は、はやての髪を撫でていた。
はやてもこうされるのが嫌いではないようで、目を細めて甘えてくる。


俺たちは、しばらく無言で寄り添っていた。



「実はな……。俺も……はやてとこうやって、二人きりになりたかった。みんなには悪いけど……」

「よかった……。私だけじゃなかったんやね……」

「……はやて」

「……なに……フィル」

「俺……はやてが……欲しい……」

「ええよ……。そのつもりで、二人きりになったんやから……。私も……フィルが欲しい。そのぬくもり感じさせて……」



俺は、はやてをそっと、ベッドに横にし……。



「あっ……」

「はやて……」

「優しく……してな……」



はやては瞳を閉じ、俺は、はやての顔に近づき……俺ははやてにキスをする。


最初は唇が触れているだけだったが、次第に気持ちを確かめ合う様に、深い物になり、しばらくの間ずっとキスをしていた。



*    *    *



「あ、あのな……」

「何?」

「………私……なのはちゃん達みたいにスタイルがよくないやろ……。だから……がっかりせんといてな……」


私の胸って、なのはちゃんやフェイトちゃんに比べて小さい。
もっとスタイルが良かったらと何度思ったか……。



「……ばか」

「ば、ばかって……」

「俺ははやてが好きなんだ。スタイルがどうこう言う気は全くない。それに……」

「きゃ……あっ……」



フィルは私の洋服の隙間から、自分の手を入れて、私の胸を直接鷲づかみにし、そのまま何度も揉んでいた。



「はやての胸、すごく柔らかい……。いつまでも、触っていたいよ」

「ば、ばかぁ……」



さらにフィルは私の服を全部脱がし、そのあと私の胸を再び触り始めた。



「ん……ふ……な、なんか……恥ずかしいわ」

「綺麗だよ、はやて……どこがスタイル悪いんだ。ボディラインなんて滅茶苦茶良いじゃないか。バランスもとれてるし……」

「ほ、ほんとう……?」

「嘘は言わない……その証拠に」

「あん!!」



その言葉通り、フィルは私の身体の隅々まで愛してくれた。


そして……。



「……きて……フィル。ひとつに……なろう」


この夜――――。


ベッドがきしむ音は、一晩中部屋に響き渡り――――。


そのたび、私はフィルと身も心も溶け合った。



*    *    *




「おはよう……フィル……」

「おはよう、はやて……」

「昨日は……ありがとうな……。優しく……してくれて……」


フィルは、本当に優しくしてくれた。
私のコンプレックスを、フィルは一晩かけて取り除いてくれた。



「俺の方こそ……ありがとう。はやて……綺麗だったよ……」

「……あほ……そんなこと……言わんといて。恥ずかしいわ……」


でも、フィルに綺麗って言われると嬉しい。
大好きな人にそう言ってもらえるだけで、女の子はもっと綺麗になろうと頑張れるんや。


「はやて……」

「ん、何や?」

「……また……はやてを抱きたい……」

「……フィルが望むなら、いつでもええよ。私も、フィルに抱きしめて欲しいから……」


私達は、深いキスをしながらまた一つになる。
結局、朝食を食べたのは、それから2時間後のことだった。





*    *    *



数年後



私とフィルは、地球にやってきていた。
この場所は、リインフォースとお別れをした場所――――。

ここに来ると、あの時のことを思い出してしまうけど、今はフィルがいる。



「リインフォース、久しぶりやな……今日はな、報告があってここにきたんや」

「私な、来月、結婚するんや。相手は、機動六課時代から付き合っていたフィルや。今日、一緒に来てるんや」

「リインフォースさん、初めまして、フィル・グリードといいます。はやてと六課の時から付き合っています。
はやてには色々助けてもらいました。仕事だけでなく、心も……。俺は、そんなはやてが好きなんです……」



六課解散後、フィルは私の捜査官補佐をして、その後特別捜査官の資格を取って、私と一緒に働いていた。

同棲もしていたんやけど、どうしても結婚だけは出来なかった。


その理由は、どうしても、リインフォースに、一言だけでも伝えたかったから……。


私は、今、幸せなんやと、伝えたかったから……。


だけど、あの時のことを思うと、どうしてもあの場所だけは、行くのが辛かった……。


だけど、やっと決心し、ようやくここに来た。




「リインフォース、私とフィルのこと、そっちの世界から見守っていてや……」



――――我が主。



「えっ?」



お幸せに……私はいつでも見守ってますよ………。



「リイン……フォース……」

「どうした? はやて」

「今、リインフォースの声が聞こえたんや………幸せに、って……」

「そっか……。俺も以前、ティアの声が聞こえたんだ。はやてのこと、幸せにしろって……」


ティアナ、リインフォース。
ほんまにありがとうな――――。



「幸せに……なろうな……。フィル……二人で一緒に……」

「ああ……二人でなら大丈夫だ。幸せになろう……はやて……」



そんな二人を祝福するかのように、優しい風が吹き抜けた。


――――祝福の風。


その優しい風は……。


二人の未来を……。


そっと見守っていた――――。





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