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〜 Remember my heart 〜
第23話 ファイナル・リミット


「はぁ……はぁ……大丈夫か、アイゼン」

《問題ありません》



いくら致命的なダメージを負わなかったとはいえ、あれだけのガジェットをたった一人で片付けた代償は大きかった。
グラーフアイゼンも傷だらけになり、自身もかなり魔力と体力が消耗してしまった。



「なのはも玉座の間に着いてるだろうな……。フェイトもスカリエッティと戦っているし……」

《Ja》

「はやてもアースラで、あたし達がゆりかごを止めるのを信じて待っている……」

「そしてフィルの奴も、自分の因縁と……クアットロと戦っているんだ。あたしがこんなところで、休んでなんかいられないんだ!!」



あたしはアイゼンを杖代わりにして、ゆりかご動力室に踏み込んだ。


動力室に入り見たものは、巨大なエネルギー結晶体のようなものだった。
遺失技術で製造されていて、現在使用されている魔力炉とは、何もかもがまるで違っている。



「こいつをぶっ壊して、この船を止めるんだ!!」

「リミットブレイク……やれるよな」

《Jawohl》



グラーフアイゼンのシャフトがスライドし、カートリッジがロードされた。
上がる魔力と共に、グラーフアイゼンのハンマーヘッドがドリルに変形した。
巨大なハンマードリルは、振りかぶると更に巨大さを増した。



《Zerstörungsform》

「ツェアシュテールングス……ハンマー!!」



カートリッジがロードされ、ドリルと反対側のブースターに火が入ると、ジェット噴射の加速を載せて、おもいっきりアイゼンを打ち下ろす。


しかし……。


爆発による爆風が晴れると、傷ひとつ付かず、駆動炉の姿が現れたのだ。



《危険な魔力反応を感知しました。防衛モードに入ります。これより駆動炉に接近するものは無条件で攻撃されます》



さっきの爆発的な攻性魔力に反応して、駆動炉の防衛システムが起動してしまった。
動力室内にはキューブ状のスフィアが幾つも発生し、駆動炉に接近するものに対して無条件に攻撃を行うとの警告が発せられ、照準が合わせられた。



「……上等だよ」


アイゼンを構え直し、もう一度駆動炉に突っ込んでいった。





*      *      *





アースラ ブリッジ




「巨大船の軌道ポイント到達まで、あと38分。このままではアースラだけでは、どうしようもなくなってしまいます!!」

「主砲の照準は、ミッド首都に向けられています……このままポイントに到達すれば……」

「ミッドは消滅やろうな……」

「……私は、このままここで、手をこまねいてみているしかないんか!!」

「八神部隊長……」



本当なら今すぐに、フィル達の応援に行きたい。
でも、私が離れると言うことは、アースラを放棄すると言うこと。

それは、アルカンシェルを撃つことが出来る人間がいなくなってしまういうことだ。



「………フィル、お願いや。無事に帰ってきてや……」



手に握られているアルカンシェルの封印を解くキーを握りしめながら、己の無力を呪っていた。





*      *      *





「うっ……くっ……」



ヴィヴィオの攻撃で壁にたたきつけられたわたしは、本気を出せないでいた。
本気を出せば何とかなるが、それでヴィヴィオを殺してしまうんじゃないかと躊躇っていた。



「ヴィヴィオ……」

「気安く呼ばないで!!」



ヴィヴィオは、虹色の魔法弾を放った。
形は違うが、クロスファイアである。

アクセルフィンによる加速で移動し、一瞬前にいた空間に複数の魔法弾が着弾し、爆発を起こした。



《Chain Bind》



ヴィヴィオの背後に回りこみ、レイジングハートの自動詠唱によるチェーンバインドで、ヴィヴィオの動きを封じようと試みるが……。



「こんなの……効かない!!」



あっさりとバインドは破られてしまった。
今のヴィヴィオは、わたしの捕縛魔法程度では動きを抑えられない。

両手に四個の魔法弾を発生させ、わたしに向かって射出した。
虹色の魔法弾は、着弾直前に弾けて無数に分裂し、それがわたしを取り囲む。

さっきと同じと思っていたわたしは、避けることが出来ず、まともに攻撃を受けてしまった。
さらに吹っ飛んでいったわたしに対し、追撃をかけるべく大きな魔法弾を発生させ、それを拳で撃ち抜いて射出した。



《Round Shield》



間一髪レイジングハートが自動防御で対応したが、そう何度も耐えられるものではない。



「ブラスター2!!」

《Blaster 2nd》



やむをえず、再度ブラスターシステムを開放した。
膨れ上がったの魔力の余波が、衝撃波となってヴィヴィオの身体を押し返した。
同時に、周辺に、レイジングハートの穂先を模したビットが現れた。

ブラスターモード時に使える、ブラスタービットだ。



「ブラスタービット、クリスタルケージ……ロック!!」



ビットが射出され、ヴィヴィオの周りを舞った。
ビットが引いていたバインドが、ヴィヴィオに絡みつき、更にビットはピラミッド型の結界を構築し、ヴィヴィオをその中に閉じ込めた。



「これは、もう覚えた!!」



だが、さっきと同じくチューンバインドは破られ、クリスタルゲージも拳で打ち砕こうとしていた。
術者のわたしも、ゲージを維持することがだんだん厳しくなってきた。






*      *      *






「くそったれが……」



最深部にいるクアットロの所に行った俺だったが、魔力の差と『聖王の鎧』のレプリカのせいで、俺の攻撃はことごとく通用しなかった。

魔力を振り絞って、プラズマザンバーで斬りつけたが、クアットロには届かず、クロスファイアもシューターも、そしてブラストブレイザーも全部はじかれてしまい、クアットロはノーダメージだった。

魔力の差を補うため、ブラスターモードをブラスター2まで引き上げたが、それでも、クアットロのスピードについて行くのがやっとだ。

ワープで背後に回っても、聖王の鎧がある限り攻撃は通じない。



「いいざまですわね……フィル・グリード。あなたといい、高町なのはといい、本当にお馬鹿ですわね。ブラスターは自己ブースト。撃てば撃つほど、守れば守るほど術者とデバイスは命を削っていく。優秀なサポートがいて、後先考えず一撃必殺を撃てる状況なら、怖いスキルですけど、一人で戦うんじゃ役に立たないですわ」



――――確かにそうだ。


ティアがこいつを倒したときは、俺がサポートしていたからティアはスターライトブレイカーに集中できた。
でも、今はだれもサポートがいない。


「そんなおバカなあなたに一ついいことを教えてあげますわ。なぜ、この時代に私がやってこれたかですけれど……。その答えは、ゆりかごのシステムの一つ、時間移動システムにあるんですわ」

「じ、時間……移動システム、だと?」

「そう、あなたたちに瀕死の傷を負わされた私は、あなたにとどめの一撃を加えた後、このシステムを起動させたのですわ。このシステムは、未完成のもので、残念ながら一回こっきりの片道切符で、しかも精神しか飛ばすことができない。それでも、この時代の私と融合して、ごらんのとおりですわ〜」



俺は、女神の力でこの時代にやってきたが、あの女はそんなふざけたものを使ってこの時代に来ていたのか……。



「おかげで、あの時代でできなかったことをまたやり直しすることができるんですから、最高の気分ですわ!! おっほほほほほほほほほほほほッッ!!」



さらに、クアットロは手をかざし、スクリーンを映し出すと……。



「どうやら、あっちも苦戦してますわね」



展開しているウィンドウには、ヴィヴィオがクリスタルゲージを破り、なのはさんと激突しているシーンだった。



「なのはさん!!」

「あはははは。何度見ても快感ですわ。親娘で殺し合う光景は!! そう思いません、フィル・グリード」

「………貴様……どこまで腐っていやがる!!」

「いくら足掻いても無駄ですわ。私にこの聖王の鎧がある限りね。あはははは!!」

「くっ!!」



あの聖王の鎧がある限り、どうしようもない。
なのはさんクラスの砲撃ならともかく、俺じゃ単体じゃどうしようもない……。



「諦めなさい。何をしても無駄なんですのよ……。ん? これは……駆動炉のチビ騎士?」



ゆりかごに揺れが感じ、クアットロが調べると駆動炉での様子が映し出された。






*      *      *





「はぁ……はぁ……ちくしょう……なんでこわれねぇ……」



これまで何発とぶっ叩きまくったが、一向に壊れる気配はない。
叩くそばから修復されてしまうから、ダメージが蓄積しない。
そして駆動炉自体がエネルギーを生み出しているから、修復に必要なエネルギーのガス欠はあり得ない。



「こいつをぶっ壊さなきゃ……みんなが困るんだ……はやてのことも……なのはのことも……フェイトのことも……フィルのことも……守れねんだ!!」

「こいつをぶち抜けなきゃ意味ねえんだ!!………だから……」

「アイゼン!!」

《Jawohl》



あたしの残り魔力とアイゼンの状態から考えて、撃てるのは後一発。
この一発に全てを込める!!



「うおあぁぁぁぁ!!」



ボロボロになってヒビ割れだらけのグラーフアイゼンに、カートリッジをロードさせ、最後の一撃を放とうとしていた。



「ぶち抜け!!」



グラーフアイゼンは初撃と比べても遜色の無い一撃で、駆動炉に刺さった自らのドリルの先端を、強烈に撃ち抜いた。そして、そこを中心に、小規模な爆発が起こった。

今の一撃による衝撃で、ドリルの部分を完全に失ってしまった。
次の瞬間、アイゼンの全身に入っていたヒビが更に広がり……光と共にその全てが砕け散った。

そして自身も全ての力を使い果たしてしまい、地面に落下していった。



「駄目だ……守れなかった……はやて……みんな……ごめん……」



力尽き、もはや、地面に激突するしかなかったが……。
次の瞬間、白き光が落下を防いだ。

その声の人物は、ヴィータを慈しむように抱えた。



「謝る事なんて……あらへん……」

「えっ?」

「鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼンが、こんなになるまで頑張って……」



駆動炉がグラーフアイゼンのドリルの先端からひび割れを起こし、そのひびはだんだん大きく広がり――――。



「それでも壊せへんもんなんて……この世のどこにも……」

「あるわけないやんか……」



ついに駆動炉は大爆発を起こし、木っ端みじんに砕け散った。



「は……はやて……」



アースラで指揮をしているはずのはやてがここにいた。
どうして……。


「リイン……も……」

「はいです……」

「どうして……ここに……」

「家族が必死で戦ってるのに、助けに行かないわけないやろ……」





*      *      *






「でも……アースラは、フィルから託されたのに………」

「リンディさんや……。クラウディアのポーターが何とか動いてくれて、本局にいたリンディさんが来てくれたんや……だから私もここに来ることが出来た……」



あの時――――。


本局のポーターが復活し、リンディさんが助っ人にきてくれた。
そして、私の思いを酌み取ってくれて――――。



『はやてさん、自分の思いに素直になりなさい。ここは隠居者の私で十分ですから……』


隠居者なんてとんでもない―――。
リンディさんのおかげで、劣勢だった状況を立て直すことができたんや。

ほんまに最強の助っ人やで!!



「あとは私に任せて、ヴィータはここで休んでいてや……」

「うん……」



ヴィータは、私の声で安心したのか、その場で眠ってしまった。
回復すれば、自力で起き上がれるだろう。

本当は一緒に付いていてあげたいが、そうもいかない。



「いくよリイン……。なんか嫌な予感がするんや……」

「リインもです……なんかこう……胸が苦しくなるんです……」


ここに来る前、ユーノ君が言っていたことが本当なら、フィルは死ぬ気や!!


お願いやから、フィル――――。


私が着くまで早まったことはせんでや!!





*      *      *





「駆動炉が……」

「終わりだ、クアットロ……」

「ほざきなさい!! 防御機構フル稼働、予備エンジン駆動、自動修復開始……まだまだゆりかごは堕ちませんわ」

「さっきも言ったが、お前はもう、お終いなんだよ!!」



ブラスタービットが射出され、クアットロの周りを何重にも舞った。
ビットが引いていたバインドが絡みつき、完全に動きを封じた。


聖王の鎧の弱点――――。


それは砲撃や斬撃に対しては無敵を誇るが、こういったバインド系は反応は示さない。
前回の戦いでも、聖王の鎧があったにもかかわらず、バインドが出来たのを覚えていたのだ。



「くっ……相変わらず堅いバインドですわね。でも、あなたの砲撃の威力じゃ、どうしようもありませんわ!!」

「俺の砲撃だったら……な……」

「ま、まさか!!」

《なのはさん!! レイジングハート!! 今です!!》



プリムが通信していたのは、なのはさんだった。



そう――――。



このときを待っていた――――。



ヴィータ副隊長が駆動炉を破壊してくれるのを!!



「……待ってたよ、この時を!!」



プリムの通信と同時にヴィヴィオは、バインドに絡め取られていた。
これまでのように、容易には抜け出せない。

今度はブラスタービット4基によるチェーンバインドで、床に縫い付けられたのだ。



「ま、まさか……。あなたはずっとこの時を待っていたというの。あのチビ騎士が、駆動炉を破壊するのを……」

「駆動炉を破壊してしまえば、お前の聖王の鎧はフルに発揮しない。本物じゃない、お前の聖王の鎧の動力源はあの駆動炉だからな」





*      *      *





まさか……。


そのことを見破られていたなんて……。


――――しまった!! 


スクライアだ。あいつがこの事を調べたんだ!!


そして私は、フィルが何をしようとしているのかが分かった。


高町なのはだ。あいつの砲撃で私を倒そうとしているんだ……。
あの砲撃の恐ろしさは、私も知っていた。


だからこそ、ヴィヴィオを高町なのはにぶつけていたのに……。



そして、高町なのはは、私がいる方向へ的確にレイジングハートを向けた。



「壁抜き!? そんな馬鹿げたことが……はっ!!」



脳裏に浮かんでいたのは、四年前に起きたの空港火災のビジョン。
空港内から、行く手を全て薙ぎ払って天を衝いた、桜色の砲撃――――。



「あ……あっ……あああああ……」





*      *      *





《通路の安全確認。ファイアリングロック解除》

「ブラスター……3ッ!!」



ブラスターシステムの最終リミッターを、全く躊躇せず解放した。
レイジングハートの穂先から、眩い桜色の巨大な魔力翼が展開され、同時に魔力も膨れ上がる。



「ディバイィン……」



詠唱に入るが、魔力ブーストはブラスター3だけに留まらず、その状態から、レイジングハートが大口径カートリッジを5連ロード。
魔力は、更にふた回り以上も増大する。



ヴィヴィオを傷つけたこと――――。



未来でみんなを殺したこと……。



そして――――。



フィルを殺したこと――――。



わたしは、決して許さない!!



「バスターーーーー!!」



放たれた砲撃………。



桜色の奔流が、ゆりかごの強固な壁と床をブチ抜きながら、クアットロに迫った。



「あああ………嫌あぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」



クアットロの頭上に桜色の砲撃が降り注ぎ、辺り一面破壊する――――。



しかし――――。



煙が消え、そこにいたのは――――。



「なぁんてね〜♪ おーほっほっほっ!! 束の間の勝利の美酒はいかがでした?」

「そ……そんな!!」



フルパワーのディバインバスターが、完全に防がれるなんて――――。
あの聖王の鎧は、もうエネルギー源を断ったはずなのに!!



「動力炉が破壊されても、少しの間なら作動できますわ。あなたの砲撃くらいなら、ほらこの通り〜♪」



だめなの――――。


もう、わたし達には打つ手はないの。
ヴィヴィオのバインドも、もうすぐ解けちゃう……。




「おっほほほほほほほ!! 最高の気分ですわッッ!!」



その時――――。



「……その耳障りな高笑いも、そこまでだ」



いつの間にかフィルが、あたりの魔力を集めて……。



「フィル・グリード!! あ、あなた……その巨大な魔力は!?」



クアットロにプリムの銃口を向けていた。





*      *      *






「おまえは……俺の策にまんまと嵌ったんだ。最後の……策に……な」

「ど、どういう事ですの!? あなたの作戦は、高町なのはに私を倒させる物のはず!!」



クアットロが信じられないといった顔で、俺のことを睨んだ。



「おまえが、なのはさんのディバインバスターを防ぐのは分かってたさ……」



あの女のことだ。絶対に予備みたいのは考えてる。
だからこそ、俺はその上を考える必要があった。



「そんな……私はあなたに……嵌められたのですの!! この私が……ドクターの最高作品のこの私が!!」

「……終わりだ。これで……すべて終わらせる!!」



俺は、自分の魔力を込め、さらにもう一度、このあたりの残留魔力をかき集め、最後の一撃の詠唱に入る。



「咎人に、滅びの光を。星よ集え!! 全てを撃ち抜く光となれ!!」



滅びの光のキーワードは、殺傷設定で放つための解除キー。



「あ……ああああ……そ……そんな……そんなぁぁぁぁぁぁああああ!!」



先ほどとは違い、クアットロは本気で恐怖を感じている。
聖王の鎧を保つためのエネルギー源は、ヴィータ副隊長が壊し――――。


残ったエネルギーも、さっき使い果たした。



「……貫け……閃光!!」


集められた魔力は、聖王の鎧の力、なのはさんのディバインバスターの魔力、そしてさっきから俺が放っていた魔力が集まり、魔力球は、さっきのディバインバスターを上回る大きさになっていた。


さらに俺は、ストラグルバインドでクアットロの四肢を完全にロックする。
このバインドは、能力封じの力を持っている。

これで完全にチェックメイトだ!!



「いや……いや……いやぁああぁぁぁぁああぁぁぁああああっっ!!」


クアットロは身体を震わせ、カチカチと歯を鳴らし、膝は笑い、今にも崩れ落ちそうになっていた。
だが、俺は一片たりとも許す気はない――――。



「そうやって怯える人々を……貴様は何人殺してきた……」



ミッドの人々をゆりかごで蹂躙し――――。



俺の仲間を――――。



親友を――――。



大切な女性を――――貴様を殺した!!




「この一撃は……この一撃は……貴様に殺されたティア達の怒りだぁぁぁああああ!!」



俺はプリムのトリガーに指をかけ――――。



「スターライト……」



最後の一撃を――――。



「ブレイカーッッッッ!!」



クアットロに放った――――。



「あああ………嫌あぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」




白銀の奔流は、クアットロを完全に呑み込み……。



そして……。



クアットロの存在を――――。



この世から、跡形もなく消し去った。




《終わりましたね……》

「ああ……終わったよ……。何もかも……な……」



これで、死んでいったみんなも救われる――――。


ティア……みんな……。


みんなの敵は取ったよ……。


だけど――――。



「いや……まだだ。ヴィヴィオを……俺たちの娘を助けなきゃな……」

《そうでしたね。行きますよ、マスター!!》



ヴィヴィオを救うため、ワープでなのはさんの元に向かった。
待ってろよヴィヴィオ。今助けてやるからな!!





*      *      *




第七廃棄都市区画、最終防衛ライン


バリケードを張ってラインを死守していた魔導師や戦士たち。その動きが止まった。
クアットロが消滅したことで、制御が完全に失われた。



「ガジェット完全停止!! 他の地点も同様です!!」

「六課の連中が、上手い事やったか」



ひとまず肩の荷が下りたが、まだゆりかごは健在だ。
八神、スバル、フィル、みんな死ぬんじゃねえぞ……。





*      *      *





「なのはさん!!」

「フィル!? 無事だったんだね!!」

「はい、今はそれよりヴィヴィオを!!」

「ううっ……」



強引にバインドを解いたヴィヴィオが頭を抱え、俺たちの方を向き……。



「なのはママ……フィルパパ……」

「「ヴィヴィオ!!」」



俺たちは、ヴィヴィオの元に駆け寄ろうとしたが……。



「駄目、逃げて!!」



近づいた俺たちに拳を振りぬいた。



「ヴィヴィオ……もう……帰れないの……」

「ヴィヴィオ!! 今助けるから!!」

「駄目なの!! 止められない!!」



ゆりかごの自動防衛モードが発動し、揺れが出始めている。
このままじゃ本当にやばい!!

なのはさんと俺は、最後の力を振り絞って何とか立ち上がった。



「もう……こないで……」

「何……だと……」

「分かったの……。私……ずっと昔の人のコピーで……。もう、ママは死んじゃってて……。なのはマ……なのはさんも、フェイトさんも、フィルさんも………。本当のママやパパじゃないんだよね」

「私は……この船を飛ばすための只の鍵で………玉座を守る只の兵器……」


違う――――。


「守ってくれて……魔法のデータ収集が出来る人を探してただけ………」

「それは違う!!」

「違わないよ!! 悲しいのも、痛いのも、全部偽物の作り物……。私は、この世界に居ちゃ行けない子なんだよ!!」



悲しそうに、色違いの瞳から涙を流し、少女の姿のヴィヴィオは告げていく……。



「それは違う……。生まれ方は違っても、今のヴィヴィオは……そうやって泣いているヴィヴィオは、偽物でも作り物でもないんだ!!」

「そうだよ……。甘えん坊で、すぐ泣くのも、転んでも一人で起きられないのも、ピーマン嫌いなのも……わたしが寂しいときにいい子ってしてくれるのも……わたしの大事なヴィヴィオだよ……」

「そうだ……。俺はヴィヴィオの本当のパパじゃない……。だけど、これから本当のパパになれるように努力する。だからいちゃいけない子なんていうな!! 本当の気持ちを俺たちに聞かせてくれ……」



いちゃいけない命なんて絶対にない!!
どんな生まれ方をしたって、そんなのは関係ない!!

ヴィヴィオはヴィヴィオだ!!

俺たちの大切な娘なんだ!!



「私は……私は……なのはママとフィルパパのことが……大好き。ママ達とずっと一緒にいたい……」

「ママ……パパ……。助けて……」



ヴィヴィオの悲痛な叫びに、俺もなのはさんも涙が止まらなかった。



《マスター、ここでやらなかったら男じゃないですよ!!》

「……助けるさ」

「………いつだって」

「「どんなときだって!!」」



足下に白色の魔法陣が展開され、俺はヴィヴィオに向かっていった。
繰り出されたヴィヴィオの拳を何とか受け止め……。



《Restrict Lock》

「やりますよ、なのはさん!!」

「うん!!」

「プリム、ブラスター3を起動する!!」



―――――ファイナル・リミット。


これを俺が使えば、もしかしたら二度と魔法が使えなくなるかもしれない。

だけど、ここで使わなくて、いつやるんだ!!



《……やりましょう、マスター。悲劇は……ここですべて終わらせましょう!!》

「ありがとな、プリム……」




ヴィヴィオの動きを封じた後、俺はファイナル・リミットのブラスター3を起動し、さらに上空へ飛び上がり、俺たちは、共にスターライトブレイカーの発射態勢に入る。

身体がバラバラになりそうな痛みが、全身に駆けめぐる……。
少しでも気を抜けば、意識を持って行かれてしまう。


だけど……。


こんなもの、ヴィヴィオの悲しみに比べたらなんてことはない!!



「ヴィヴィオ……。少しだけ痛いの、我慢できるか……」

「……うん」

「いい子だ……」

「防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン……いけるね、レイジングハート」

《いけます!!》

「頼むぞプリム……絶対、ヴィヴィオを助ける!!」

《当たり前です!! 命に代えても絶対に成功させます!!》

「いきますよ、なのはさん!!」



眩い桜色の巨大な魔力翼が展開され、ブラスタービットからも魔力が展開されていた。
そして反対方向でも、白銀の魔力が展開され、同じくブラスタービットが展開され魔力が集まっていた。



「全力……全開 !!」

「スターライト……」

「「ブレイカーーー!!」」



桜色と白銀の魔力が合計7方向から発射され、ヴィヴィオに放たれた。
ヴィヴィオは苦痛に耐えているが、まだレリックは現れない。



「まだか……。このままじゃヴィヴィオは耐えられないぞ!!」

《もう少しです……。見てください!!》



すると、ヴィヴィオの胸元にレリックが出現した。
ようやく出てきたか……。

しかし、レイジングハートがヒビだらけになり、もう限界が近づいていた。
プリムはフレームは強化してるが、レイジングハートは複雑な機構のため、フレームの強化が難しく、プリムほど強化が出来なかった。

さらにブラスター3で強化された、なのはさんの魔力が強力なため、それに耐えきれなくなってるんだ。



「レイジングハート!!」

《マスター、私にかまわず、このまま撃ってください》

「けど!!」

《レイジングハートのいうとおりですよ。ここで止めたら、レイジングハートはきっと後悔します!! 肝心なときに力になれなかったって……。そんな思いは私だけで充分です!!》

「……プリム」



プリムは、未来でティアを助けられなかったとずっと後悔し続けてきた。
そんな思いを、なのはさん達にさせたくない!!



《なのはさん、レイジングハートを信じるなら、自分の相棒を信じて全力で撃ってください!!》

「……わかったよプリム。レイジングハートお願い、わたしに力を貸して!!」

《もちろんです!! いっしょにヴィヴィオを助けましょう!!》

「ありがとう……。レイジングハート……」



もう、なのはさんにもう迷いはなかった。
最高の相棒達の思いに応えるためには、ヴィヴィオを救うことだ!!



「「ブレイク……」」


「「シューーート!!」」


「あああああっっっっ!!」



レリックが砕けると同時に、大爆発がおこり、ヴィヴィオが居たところに巨大なクレーターが出来ていた。
煙がまだはれないので、クレーターの中の様子はまだ分からない。

なのはさんはレイジングハートを杖代わりにして何とか歩いている。
俺も何とか歩くことは出来るが、さすがにもう限界だ。



「ヴィヴィオ……」

「来ないで……二人とも……」



俺たちの目に映ったのは、ヴィヴィオが自分の力で立とうとしている姿だった。
何度も転んでいたが、それでも諦めようとせず、何度も立ち上がろうとしている。



「ひとりで……たてるよ……」

「あ……ああ………」

「強くなるって……約束したから……」



なのはさんも、俺も涙が止まらなかった。



「ヴィヴィオ!!」



なのはさんは、自分の力で立ち上がったヴィヴィオを抱きしめていた。
俺もそばに行ってやりたいが、今はそっとしておこう。



やっと……絆を取り戻したんだから……。




*      *      *




対ゆりかご前線指揮所となっているアースラブリッジでは、ゆりかごの異変が観測されていた。
詳細データを計測していた、操舵室のルキノが、報告を上げてくる。



『ゆりかご船速低下、上層速度激減!!』

『周りに張られていたバリアも弱まってきています!!』

「このまま……終わってくれれば良いんだけど……」




何か嫌な予感が頭から離れなかった。
そしてそれは、現実のものになろうとしていた。 





*      *      *





「なのはちゃん、フィル!!」

「二人とも無事ですか!?」

「はやてちゃん、リイン。大丈夫だよ……。みんな無事だよ……」



俺たちを心配して、はやてさんとリイン曹長がここに駆けつけてくれた。
俺は、はやてさんから少し魔力をもらい、リイン曹長から回復魔法をかけてもらい、何とか動けるようになった。

リイン曹長が、なのはさんにも、回復魔法をかけようとしたその時――――。



『聖王陛下、反応ロスト、システムダウン』



艦内に警告音が鳴り響いた。
俺たちは、何とかヴィヴィオを抱え、クレーターからは出ることは出来たが――――。



「なのはちゃん、フィル!!」

「「はやてちゃん (さん)!!」」

『艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします』



次の瞬間AMF濃度がさらに高くなり、なのはさんはフィンが維持できなくなり、はやてさんもリイン曹長とのユニゾンが解けてしまった。



『艦内の乗員は休眠モードに入ってください』





*      *      *





フレイム・グロウを消滅させ、少しの休憩を取った後、全員集合した。
フレイム・グロウを何とか消滅させたが、こっちも大きなダメージを負ってしまった。

ギンガさんは前線でスバルやエリオのフォローをしながら戦っていたため、ダメージもかなり負ってしまい、ルーテシアも戦えないほどじゃないけど、かなりの疲労があった。

そこにアルトさんがヴァイス陸曹と一緒にヘリでやってきた。



「ヴァイス陸曹!! 怪我は大丈夫なんですか!!」

「まあな……。今はそんなことより、どうやら船の上昇は抑えられたみてえだが、あの中じゃまだ、戦いが続いてんだ。突入した隊長たちと、連絡がつかなくなったらしい」

「「「「「ええ!!」」」」」

「インドアでの脱出支援と救助任務。陸戦屋の仕事場だぜ!!」

「「「「「はい!!」」」」」

「でも……ゆりかごって、もう、かなり浮上しちゃってるんですよね。ヘリでそこまで行くの無理なんじゃ?」

「なあに心配するな、このJF705型は、ちょいとスペシャルチューンしてあってだな。ゆりかごが軌道ポイントに到達していなかったら何とかなる」



このJF705型はフィルがスペシャルチューンをしてある機体だ。
こんな事もあろうかと思ってではないが、かなりの悪条件でも飛べる優れものなのだ。


あたし達を乗せたヘリは、フィル達を助けるべくゆりかごへ全速力で向かった。




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あきゅろす。
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