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〜 Remember my heart 〜
第20話 無限の欲望


「巨大船、地上より浮上!!」

「まさか、これは!!」



聖王教会本部、カリム・グラシアの執務室。
シャッハが出払っているため、代わりに護衛の任に就いている二人の教会騎士が、驚きの声を漏らした。

私と二人の騎士が見ている画面の中では、土ぼこりを巻き上げながら、浮上する巨大要塞の様子が、映し出されている。
その現場の間近にいるシャッハから、通信が入ってきた。



『騎士カリム。これがフィルが言っていた……』

「踊る死者たち。死せる王の下、聖地より還った船。古代ベルカ、聖王時代の……究極の質量兵器。天地を統べる聖者の船」

「聖王の……ゆりかご」





*      *      *





アースラ ブリッジ


「一番なってほしくない状況に、なってもうたか……」



アースラブリッジの艦長席で目の前のウィンドウは、聖王教会のカリムと通信が繋がっている。



『教会の……ううん、私の不手際だわ。予言の解釈が不十分だった!! さらにフィルからの情報でゆりかごのことは分かっていたことなのに!!』

「未来なんて、本来わからへんのが当たり前や。カリムや教会の皆さんのせいとちゃう……さて、どないしよか」



私が頭の中に色々な考えを巡らせていると、もう一つ、通信ウィンドウが開かれた。



『はやて……クロノだ……』

「クロノ君!! 通信機能が回復したんか!!」

『ああ……何とか本局のコンピュータと通信機能は、何とかなった。だが、次元航行艦隊の方は、目処は立たない状態だ』

「そっか……やっぱ援軍は、無理か」

『残念ながら、本局の機能を回復させるのに精一杯だ。ゆりかごに対しては、君たちが中心となり、地上部隊と連携を取って、事態にあたる。多少の無理はかまわない』

「行けるか……はやて……」

「うん」




*      *      *






時空管理局 本局内某所


最高位の機密レベルに属する、闇に満ちた空間。
立ち入りの出来る人間の極めて限定されたその中で、人の話し声が響いていた。

本局内にあってこの場所は、各機関と独立しているため、今回のサイバーテロの被害には全くの無傷だった。

螺旋を描いた配管に支えられ、ぼんやりと光る三本のシリンダー。



時空管理局、最高意思決定機関  最高評議会




「……ジェイルは、少々やりすぎたな」

「我らが求めた聖王のゆりかごも、奴は自分の玩具にしようとしている」

「止めねばならんな」

「だが、ジェイルは貴重な個体だ。消去するにはまだ惜しい」

「しかし、かの人造魔導師計画のゼストは失敗し、成功には至らなかったが……聖王の器は、完全な成功のようだ。そろそろ、良いのではないか?」

「我らが求める、優れた指導者によって統べられる世界。我らがその指導者を選び、その陰で、我らが世界を導かねばならん」

「そのための生命操作技術、そのためのゆりかご」

「旧暦の時代より、世界を見守るために、我が身を捨てて永らえたが……もうさほど長くは保たぬ」

「だが次元の海と管理局は、未だ我等が見守ってゆかねばならぬ」

『……失礼します』



音声オンリーの通信ウィンドウが開き、そこから女性の声が聞こえてくる。



「ゼストが五体無事であればな。ジェイルの監視役として最適だったんだが」



新しいウィンドウが開かれ、そこにはゼストの顔写真が表示されていた。
現在、ゼストや戦闘機人が捕まったことは本局には連絡は入れてない。

とある人物の知恵で連絡をあえて入れなかったのだ。

この事を知っているのは、機動六課と極一部の人間だけである。

構わず話を続ける評議会の三人のところに、制服姿の印象の酷く薄い女性が、滑るように動く浮かぶ板に乗ってやってきた。



「皆様、ポットメンテナンスのお時間ですが」

「ああ、お前か」

「会議中だ、手早く済ませてくれ」

「……はい」

「お悩み事のようですね」



メンテナンスに来た女性局員が、ポットのパネルを操作しながら言った。



「なに、瑣末な厄介ごとよ」

「お前が、気に掛ける事でもない」

「……はい」

「レジアスや地上からは、何の連絡も無いのか?」

「ええ……未だに、どなたからも」

「そうか。しばらくは慌しくなりそうだ。お前にも苦労をかけるな」

「いいえ。私は望んで、ここにいるのですから」



女性局員は、うっすらと、そしてどこか含みのある笑みを浮かべながら、答えた。





*      *      *




アースラ 


ブリッジと会議室は通信で繋がり、恐らくこの事件において最後の大規模な出撃になる。
現在、作戦の最終確認を行っていた。

メンバーは、部隊長のはやてと、フィル、スターズ分隊、ライトニング分隊のフルメンバー、リインと、輸送部からアルトが参加している。



『今回の発端は、最高評議会がジェイル・スカリエッティを利用しようとして、逆に裏切られたことから始まった。どこからどこまでが誰の計画で、なにが誰の思惑なのか、それはわからへん』

『……そやけど今、巨大船が空を飛んで、街中に大量のガジェットと巨大な竜が現れて、市民の安全を脅かしてる……これは事実。私たちは、これを止めなあかん』

「ゆりかごには私達が向かう。地上のガジェットは、各部隊が協力して対応に当たる」

「だけど、高レベルなAMF戦をできる魔導師は多くない」



正直、地上部隊にAMF戦が出来る魔導師は少ない。
そのことを危惧してレジアス中将は、非魔導師でも戦えるように訓練や装備を考えていたのだが、結局間に合わず、戦えるのは中将の特殊部隊くらいになってしまった。



「だからわたし達は、ゆりかごと地上、2グループに分かれて、各部署に協力することになる」



ただでさえ少ない戦力を分散させるのは、賢いやり方とは言えないが、この状況ではやむをえないだろう。
アジトの方は引き続き、聖王教会が中心となって担当する。

本局の応援がない今、六課の方はこれ以上戦力は分散できない。



「フェイトさん!!」

「フィルさん!!」

「あの……」




作戦会議が終わり、会議室から出ようとしたが、キャロとルーテシアとエリオの三人に、心配そうな表情を浮かべながら、後ろから呼び止められた。



「別グループになっちゃったね。ごめんね……。私、いつも大切な時に、二人のそばに居られないね」



フェイトさんはエリオとキャロの肩を、俺はルーテシアの肩を抱き寄せた。
本当は俺もみんなと一緒に行動したかった。

ましてエリオ達は、この戦いで死んでしまったんだ。
あの時の悲劇はもう繰り返したくない。

さらに今回はあの黒竜が相手なんだ。



「そんな……」

「フェイトさん、フィルさん……たった二人で、スカリエッティのところになんて、心配で……」

「ドクターも、クアットロも、本当に危険……どんな罠を仕掛けてるか……」



作戦会議の結果、フォワードチームは地上本部へ侵攻中の黒竜に対応。
はやてさんがアースラでゆりかご周辺の制空権の確保。

シグナム副隊長は、何かあったときのため地上に待機。
なのはさんとヴィータ副隊長はゆりかごに突入して、内部から停止または破壊。


そして俺とフェイトさんは、なのはさん達とゆりかごに突入はするが、その後はスカリエッティとクアットロの討伐。


この任務で、最も危険な位置にいるのが俺とフェイトさん。



「緊急事態のために、シグナムには地上に残ってもらいたいし、フィルも一緒だよ。一人じゃない……三人とも頑張って。絶対無茶とかしないんだよ!!」

「エリオ、キャロとルーテシアのこと、しっかり守ってやれよ。いいな………」

「はい……」

「それは、フェイトさん達もですよ……」

「そうですよ。フィルさん……」




*      *      * 




『第1グループ降下ポイントまで、あと3分です』



ルキノさんのアナウンスが、艦内に響く。

ティア以下フォワードチーム六名と、俺となのはさんとヴィータ副隊長は、発進口前で出撃の準備を完了させていた。

アギトは秘密任務のため、地上に降りている。



「今回の出動は、今までで一番ハードになると思う」

「それに、あたしもなのはもフィルも、お前らがピンチでも助けにいけねぇ」

「みんな、目をつぶって今までのことを思い出してみて。ずっと繰り返してきた基礎スキル、磨きに磨いたそれぞれの得意技、痛い思いをした防御練習、全身筋肉痛になっても繰り返してきたフォーメーション練習、いつもボロボロになるまでわたし達とやった模擬戦……」



フォワード全員、今までのことを思い出して、本当にきつい思い出ばかりよぎっていた。



「目、あけて良いよ。まぁ、わたしが言うのも何だけど、きつかったよね……」

「「「「「「あ、あははは……」」」」」」



あれはきついなんてもんじゃない。
そんな言葉では片付けられない、一種の地獄だったぞ……。



「それでも、ここまでよくついてきた」

「六人とも誰よりも強くなった……とは、まだ言えないけど……」

「「「「「「うぅ……」」」」」」

「だけど、どんな相手がきても、どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた。守るべきものを守れる力、救うべきものを救える力、絶望的な状況になっても立ち向かっていける力、ここまで頑張ってきたみんなはそれがしっかり身についている。夢見てあこがれて、必死で積み重ねてきた時間、どんなに辛くても止めなかった努力の時間は、絶対自分を裏切らない!! それだけ、忘れないで……」

「キツイ状況を、ビシッとこなして見せてこその、ストライカーだからな」

「「「「「「はい!!」」」」」」

「フィル、最後にみんなに一言お願い……」

「えっ? 俺ですか?」

「うん……フォワードのみんなとは、別行動になっちゃうでしょう。だからお願い……」

「……わかりました」



今、俺がみんなに言えることはたった一つだけ――――。



「……生きて……必ず、生きて帰ってきてくれ……。死んで敵を倒そうなんて……絶対に思わないでくれ」



―――――もう、誰にも死んで欲しくない。
あんな思いをするのは、俺だけでたくさんだ!!



「「「「「「フィル(さん)……」」」」」」



そうさ、何も残りはしないんだ。
残されるのは悲しみだけ……。



「だから、みんな。絶対生きて、このアースラに戻ってくるぞ!! いいな!!」

「「「「「「おう!!」」」」」」

「うん」

「だな」

「機動六課、フォワード隊出動だ!!」

「「「「「「うん (はい)!!」」」」」」



ティア達は待機している戦闘用ヘリに向かったが、スバルだけが残っていた。



「先に……行ってるね……」



なのはさんとヴィータ副隊長は、一足先に立ち去った。



「どうした? もうみんな行ってたぞ……」

「うん……」

「ヴィヴィオのことは心配するな。必ず助けるからな……」

「違うの!! ヴィヴィオのことも心配だけど、それより、あたしは……フィルのことが心配で……」

「ありがとう……。でも大丈夫だ。一番心配だったのは、今回の戦いに参加できないことだったんだ。でも、何とか戦えるようになった。現場に出ることが出来れば、後は何とかなるからな……」



俺はスバルの頭を、多少乱暴気味になでていた。



「ちょ、ちょっとフィル!!」

「それとお前も、六課自慢のフロントアタッカーの一人なんだぞ。俺が作ったマッハキャリバーで思う存分暴れてこい!!」

「うん!!」



俺たちは互いに握り拳を作り、それをコツンとぶつけあった。




*      *      *





六課襲撃の時に破壊されてしまったJF704に代わり、この戦いのために用意された戦闘用ヘリJF705 XX 。

そのカーゴルームで、クロスミラージュを確認しながら、あたしは出撃の時を待っていた。
第三形態、長距離特化型のブレイズモード。

苦しい訓練の末、なのはさんからお墨付きをもらえ、何とか実戦投入が可能になった。


そんな時、カーゴルームに、スバルが泣きながらやってきた。



「……出動前に、何、泣いてるのよ」

「フィルに頑張ってって………ぐすっ………言おうと思ったのに……ぐすっ……」

「逆に、あいつに励まされて帰ってきた?」

「うん……」

「馬鹿ね……こうなるって事は、少し考えれば分かることでしょう。あいつの性格を考えればね……」

「うん……」



こんなときでも、自分のことより、みんなのことを考えるあいつなんだから、そのくらい分かりなさい。






*      *      *




ミッドチルダ上空



雲上を滑るように飛ぶ艦、アースラ。
フォワードチームを乗せた赤い戦闘用ヘリが出動し、アースラから離れ、雲海に突っ込んでいた。



「ほんなら、隊長陣も出動や!!」

「「うん!!」」

「おう!!」

「はい!!」

「みんな……本局艦隊がいない今、私とリインは全体の指揮をしなければならない……。そやから、一緒に戦うことができない……」



悲痛な表情で、はやてさんは俺たちに自分の思いを言う。
本当なら、自分が出て戦いたいはずなのに――――。



「その代わり……アースラは……みんなの帰ってくる場所は、私が必ず守る!! だから絶対に帰ってくるんやで!!」

「「「「はい!!」」」」



そして第二降下ポイントに到達し、隊長陣は既にスタンバイを終えていた。


これが最後の戦いだ。


いや――――。


最後にしなきゃいけないんだ!!


俺たちが倒れるか……。


クアットロが破滅するかだ!!



『降下ハッチ、開きます』



ハッチが開くと同時に、ピンク、金、赤、白、四色の光が、アースラ底部から大空に躍り出た。



『機動六課隊長、副隊長一同……能力限定、完全解除!! はやて、シグナム、ヴィータ、なのはさん、フェイトさん、そして……フィル。皆さん……どうか!!』



聖王教会でカリムさんが、機動六課隊長陣のリミッター解除プログラムを展開した。
いつか、クロノ提督の権限で行ったのとは違う完全解放だ。

フェイトさんのは、完全解除されているので必要はない。



「迅速に解決します」

「お任せください」

『リミット、リリース!!』



解除プログラムの中心を人差し指で押したのと同時に、空を流れていた四条の光が、爆発的な光量を放つ。
その閃光が収まると、四人はバリアジャケット姿に変身していた。



「エクシード……ドライブ!!」

「フリーダム……フルドライブ!!」

《《Ignition!!》》



なのはさんと俺は、それぞれフルドライブを起動させ、バリアジャケットをチェンジした。
デバイスの方も、なのはさんはエクシードモードに、俺はプリムをブレイズモードにしていた。




*     *     *



「なのは、フィル……」

「「フェイトちゃん (さん)?」」

「なのはとフィルのリミットブレイク……ブラスターモード。二人とも言っても聞かないだろうから、使っちゃ駄目とは言わないけど……。お願いだから、無理だけはしないで………」


その台詞は、そのままそっくりフェイトさんに言いたい。
フェイトさんだって、なのはさんに負けず劣らず無茶するときがある。



「わたしは、フェイトちゃんの方が心配……」

「ええ、フェイトさんとバルディッシュのリミットブレイクだって、高性能な分、危険も負担も大きい……」

「私は平気……大丈夫……」

「む……もう、フェイトちゃんは、相変わらず頑固だな……」

「まったくだ……」


フェイトさんって、真面目なんだけど、少しだけ頭が固いところがある。



「な、なのはやフィルだって、いつも危ない事ばっかり!!」

「だって、航空魔導師だよ。危ないのも仕事だよ。フィルも、それは分かってるし……」

「だからって、なのはとフィルは無茶が多すぎるの!! 私が、私たちがいつも、どれだけ心配してるか」

「知ってるさ……ずっと心配してくれてたこと、よく知ってる」



その優しさに何度も救われ――――。

その笑顔に、何度も安らぎをもらったか――――。



「だから、今日もちゃんと帰ってくる。ヴィヴィオを連れて、一緒に元気に帰ってくる」

「なのは、フィル……うん!!」

「そろそろスピードアップするぞ。フェイト隊長もフィルも無茶するなよ……」

「頑張ろうね、フェイトちゃん、フィル」

「うん、頑張ろう」

「ええ、頑張りましょう」



俺たち三人は、拳をコツンと合わせた後、ゆりかごに向けて、更なる加速に入る。




*      *      *



悲しい出来事――――。


理不尽な痛み……。


どうしようもない運命――――。



そんなのは嫌いで、認められなくて、打ち抜く力が欲しくて、わたしはこの道を選んで……。



同じ思いを持った子達に、技術と力を伝えてく仕事を選んで……。



この手の魔法は大切な物を守れる力、思いを貫き通すために必要な力……。




「見えた!!」

「あれが……」

「ゆりかご……」

「ついに捕らえたぞ……」



待ってて……ヴィヴィオ。
今、助けに行くからね!!





*      *      *






時空管理局 本局内某所



脳だけの姿になった最高評議会の三人がいる空間に、ガラスの割れるような音が二度響いた。
培養液が床一面にこぼれ落ち、シリンダーの中に浮かんでいた脳髄は、床に落ちた衝撃で、あたりに散乱していた。

ポットのメンテナンスをしていた女性局員の右手には、鋭い鈎爪が装着され、そこからも培養液が滴り落ちていた。



「な、何故!! 何故だぁぁぁぁ!!」



メンテナンスを行っていたはずの女性が、いきなり鈎爪でポットを破壊したのだ。
一つだけ残されたポット……評議会議長は、何が起きているのか理解できないかのように叫ぶ。
女性局員は、感情の乏しい声で答えた。



「……ご老体に無理をされては、良くありませんからね。そろそろ、お休みを」

「貴様は、ジェイルの!!」



やっと気付いたか、とでも言いたげな薄い笑みを浮かべる女性局員。
その身体の輪郭に、別のシルエットが重なったかと思うと……一瞬にして、その姿は別のものに書き換わっていた。

水色を基調としたボディスーツ、首のプレートに刻み込まれたUの文字。
元ナンバーズ2番、ドゥーエだった。



「正確に言えば、もうドクターのではありませんけどね。私は……」

「何だと!!」

「今は、たった一人の大切な人のために動いてるわ。私は闇、そう光を支える闇ですね……」



ユーノ司書長、独断で行動してごめんなさい。
でも、この事だけは決着を付けなくてはいけないの。

ジェイル・スカリエッティを生み出し、世界を自分たちの都合の良いようにしようとした。
こいつらだけは、私の手で始末を付けなきゃならなかった……。



「貴方が見つけ出し、生み出し育てた、異能の天才児。失われた世界の智慧と、限りなき欲望をその身に秘めた、アルハザードの遺児。開発コードネーム、アンリミテッド・デザイア……ジェイル・スカリエッティ。彼を生み出し、利用しようとした時点で、この運命は決まっていたのですよ。どんな首輪を付けようと……いかなる檻に閉じ込めようと。扱いきれるはずもない力は、必ず破滅を呼ぶものです」



そしてドゥーエは、清々しい笑みを浮かべた。



「ようやく、枷から解き放たれる時が、やってきました」

「馬鹿な!! 馬鹿なっ!!」

「おやすみなさい……永遠にね!!」



私は静かに、鈎爪を装着した右手を振り下ろした。





*      *      *




ゆりかごの周辺では、空戦魔導師とガジェットで、激しい空戦が行われていた。
ミッドに残った空戦魔導師を総力で集めて戦っていた。



「魔導師部隊、陣形展開!! 小型機の発着点を叩いて!!」



フェイトさんの指揮で、作戦を次のフェイズに移行させていた。



「でぇい!!」



ヴィータ副隊長も、ガジェットを真っ二つにしていた。



「中への突入口を探せ!! 突入部隊、位置報告!!」



桃色と白色の光が戦域を両断する。
砲撃は、その空域に集められたガジェットを爆散させた。


ストレイトバスター
密集隊形をとる敵に対して効果絶大の砲撃。
その効果は伝播し、爆発の連鎖を引き起こす、反応炸裂砲。

これを俺となのはさんはぶっ放していた。



「第七密集点撃破、次!!」

「邪魔者は全部消しとばす!! だから、指示をお願いします!!」

『は、はい!!』



タイムリミットが迫ってるんだ。
ゆりかごが軌道ポイントに到達したら、全てお終いだ!!





*      *      *




なのはちゃん達が出撃した後、それを待っていたかのように、ガジェットの大群がアースラを攻めてきた。
その数は測定不能……。

アースラの主砲と副砲のおかげで迎撃は出来ているが、これ以上先には進めない。



「ルキノ、ゆりかごが到達するまでの時間、計算できたか」

『はい、軌道ポイントの到達まで……推定、約3時間です!!』

「3時間……」


私達に残された時間は、あまりにも少ない――――。




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