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春を望めば
四月、ここで君を見た
内に秘めた力の強さより
春に不似合いなその頭の色に目を奪われた
「待たせたな」
急に戻った冬に一護は肩を縮めて身震いした。
「こんなに寒くなんならマフラー持ってきとけば良かった」
両手をズボンのポケットに突っ込み震えている。
一緒に帰ろうと約束していたが、一護が担任に呼び出され一人で校門近くの石段に座り、芽吹く直前の桜の木の向こう、重い空を見上げて待っていた。
「お前は寒く無いのかよ」
「別に」
「だったらそのマフラー貸してくれ」
「僕が寒くなるから断る」
マフラーが貰えないとわかった一護はピッタリと肩がくっ付く様に雨竜の横に座った。
「離れろ」
「誰も見てねえって」
寒いと言う君の体温はとても暖かい。
「ほら」
制服の上に羽織ったジャケットのポケットに手を入れろと催促する。
「寒くないから遠慮する」
「俺の手が熱いんだよ」
寒いと言ったり、熱いと言ったり、忙しい。
それでも拒めば右手を掴まれそのままジャケットに仕舞われてしまった。
重なった手は何時もより冷たい気がする。
「クラスがさ…分かれても一緒に帰ろうな」
ポツリと言った言葉は今から一ヶ月先の四月を予言する。
「たまには昼飯も食おうぜ」
「そうと決まった訳じゃないだろ」
クラスが離れる。
馴染みの仲間と友達、恋人。作り上げた関係が切れる訳ではないのだが、とてつもなく距離を感じ心が震える。
「約束な。だってお前、俺の事を忘れそうだ」
離れると言っても同じ建物の中だ。会おうと思えば会える。
ただ姿が見えないだけだ。
でも、それがひどく心を震わせる。
「その派手な頭は忘れようがない」
「ひでぇ」
そのオレンジ色の頭に桜の薄いピンク色は似合わなかった。どちらかと言えば今も花壇の奥でひっそりと咲く紅梅がその色彩にはよく似合っている。
「寒ぃ…」
「早く暖かくなればいいね」
「前に約束した通り、桜が咲いたら花見に行こうな」
その紅梅も一時に比べたら花が落ち、枝が寂しくなっていた。 もうすぐ桜が咲く。
桜の下には道は無い。でも、いつか僕等は別れるんだ自分の道に。
それまで見上げる桜の木が咲き誇るのを待ち望み、冬が留まることも望むのだ。
「あ……忘れてた」
「忘れんなよ」
出会いと別れの季節を前に心はふるりふるりと震えだす。
「あ〜〜〜!本気で寒い!!帰ろうぜ」
「そうだね」
出会って一度目の冬が終わる。
まだ二度…
あと二度…
遠いと思った別れの春は足音軽く近づいてくる。
※※※※※※※※※※※※※
学生時代のクラス替えって、人見知りな私にはかなりドキドキでした(笑)。
別れたくない友達もいたり、新しく出会う人に期待して、何となく落ち着かない季節です。
一護には紅梅が似合うな…と思ったのは今のEDのピンクが…『ん…ちと似合わないのではないかい?』と思ったからでした(笑)。
ちょっとおセンチな拍手文でした。
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