[携帯モード] [URL送信]

拍手ログ
初雪(イチウリ+コン)
「やっぱ寒いと思ったら雪が降ったな」
 部屋の窓の外では大粒の雪が景色を遮る程に降っている。
「これ雨じゃないのか?」
 何時もは外に出ていくのだが、こんなに寒けりゃ薄着のお姉さんは居ないと珍しくコンは部屋に居た。
「お前見たこと無いのか?」
「ずっと箱の中だったしよ」
 ぬいぐるみの表情も声も変わらないが告げられた事実は重い。
「あ……」
「ごめんとか言うなよ。これから知っていけばいいんだしよ」
「雪ってな結晶なんだよ」
「??」
「しかもな一つ一つ形が違うんだ。肉眼じゃ全く見えないけどな」
「それってキレイなのか?」
「そうだな…教科書に載ってたかも」

 一護は本棚から理科の教科書を探し出しページを捲ると、見開きカラーの2ページの端にに小さく載っていた雪の結晶の写真を見付けた。
「あったぜコン」
 コンが一護の肩に登り本を覗くと、小さなガラス細工の様な8角形の銀色に輝く写真を指差した。
「へ〜キレイだな」
「しかもな一緒の形をしたやつはないんだって」
「この形はコイツだけって事か?」
「面白いよな」
「そうか?」
 一護の肩をひょいと乗り越え開かれたページの上に着地する。
「オレが街をウロウロしても同じ顔した別人に会ったことねぇしさ。違って当たり前なんじゃねぇ?それにさ、全く同じものに興味はわかねぇし」 そう言われれば全く同じ人に会ったことはない。それに双子の妹達でさえ全く違う。
「これも綺麗だけどさ、なんていうか綺麗に整っただけの物も人間も何か臭くって怖いよな」
「お前…たまには良いこと言うな」
「コン様だからな!」
「それ位で調子にのんな」
 少し誉めれば腰に手を当て敬えと言わんばかりの態度をとるお調子者は、見た物を見たままに吸収し噛み砕いて飲み込み自分の色にして急成長をしている。そんな彼を見ているのは楽しいが・・・・
「お前さ昼間からそんな本開けるなよ」
 こっちの興味はどうにかならないかと思う。ベッドの下にはコンがどこからか持ってきた、通称ビニ本と言われる本がこれでもかと積まれている。
 お気に入りだろう、最近良く見る表紙の雑誌を捲り感嘆を上げているが、そういう気分でもないのに見せられるのは酷く不快だ。
「男のロマンがわかんねぇ奴だな!」
 興味が無いわけでは無い。
「遊子や夏梨に見つかったらどうすんだよ」
 特に親父などはややこしい事になる。一緒に見ようとかどの娘が好みだとか色々言い出しかねない。考えただけで鬱屈する。
「メガネミシンは良いのかよ」
 いきなり出された恋人の名前に眉を寄せる。
「あいつはコレがお前がのだって知ってるから見られてもどうってことねぇよ」
「こういうの興味なさそうだもんな〜」
 メガネミシンこと雨竜の部屋でこういう雑誌を見た事は無い。金銭的に買う余裕も無いだろうが、興味も無いのだろう、部屋に増えるのは布切ればかりだ。
 体を重ねる行為もあまり積極的ではないが、時に言葉や仕草で煽ってくるので表にはでないが雨竜の中にも快楽を求める欲がある事は知っている。たた人より淡白なのだろう。

「俺の知る限りHに興味の無い男は居ねぇよ、そうなると・・・メガネミシンはむっつりかもな」
 外に出て一年も経たない奴に断言されたくはないだろうが、言われて見ればそうかも知れない。深いキスをすれば舌を追いかけても来るし、口を開け誘い込まれる事もある。
「お前、それ石田に言うなよ」
「でもさ一護もむっつりだよな。興味なさそうに見えてやる事やってんだもんな」
「うっせぇ!!」
 そうだそうだと自分の考えに一人納得しているコンの頭を鷲掴みにすると、窓を開け雪雲に届けとばかりにフルスイングで放り投げた。
「いやーーーー!!冷っ寒いっーー」
「その腐った頭を冷やしやがれ!!」
 ちょっと良い事を言ったと思えばこれだ。
 ベッドに並べられたコンの本を家族に見つかる前にベッド下へ直していく。捨ててやりたい気分だが捨てようにも家族に見付からないようにするには至難の技でそこまでやる気力も湧かず、手荒く何冊も積まれた本をどかせば一番最後に教科書が出てきた。
「最初これの話してたんだよな」
 よく見れば左右対象に見えた結晶も歪みやズレがあり、それが光を乱反射させ宝石の様に光っていた。
『これも綺麗だけどさ、なんていうか綺麗で整っただけの物も人間も何か臭くって怖いよな』
 あの一瞬でこの結晶の僅かな歪みやズレを見抜いたのだろうか。
 現世の物には無知に久しかったコンはいつの間にか色んな物を見聞きし彼なりの解釈を入れながら知識を蓄えていっている。
 いつも部屋に帰って来れば今日見た事やあった出来事を口うるさく話されるのを適当にあしらってはいるが、実を言えば嫌いではない。自分と全く違う視点で語られる街や物事が面白かった。
 今日は多分初めて見た雪の話をするだろう。街がどうだった、女の子はあれだったと。
 

「ったく…」 
 一護はどんなに高く空に投げても帰ってくる賑やかな生き物の為に、一度閉めた窓の鍵を開けた。




※※※※※※※※※※※※

イチウリ前提の一護とコンの話でしたがどうだったでしょうか?

雨竜はむっつりだと良いなという設定が根強くありまして…はい、(;^_^A アセアセ…。頭の中では一護とあんなことやこんなことしたいけど、いざとなると恥ずかしくてできないツンデレだったら良いなと思ってます。

061230

[前へ][次へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!