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快楽本能(白崎×雨竜)



『快楽本能』



カチカチと奥歯を鳴らす。腹の底から襲う空腹感に『食べる』という動作を繰り返す。
色のない死人の口から見えるのは人外の蒼。
空腹に飢えた目は金色の光を弾かせて空を見る。
肉を噛む感触を思いながら下顎に力を込めて噛む。だが、食らう物など無く、空を切る犬歯は獲物の居ない虚しさにカチリと音を立てた。
空腹に呻く腹に何か入れたい。
柔らかな肉に犬歯を喰らわせて、溢れた汁を舌で味わい、喉を鳴らして啜りたい。
口周りについた脂を意地汚く手で拭い貪り尽くし、骨は奥歯で擦り潰して、口に残ったその欠片を舌で舐る。
想像するだけで口腔内に唾が溜まる。それをゴクリと飲み込んだ。

誰も居ない自分だけの世界。
脳天気に晴れた空は高く蒼く澄んでいる。
ふわりと何かの芳香が鼻先を撫でた。
思わずその柔らかに匂いを鼻で追う。
『良い匂い』
という言葉が頭に浮かんだ。
自分を取り囲む世界がふと熱くなり、交感神経を刺激される。
刀を握っても居ないのに、心拍数を上げるそれは『興奮』だ。
そして、ゾクリと背中の神経細胞を撫でる『快楽』。
もっと欲しい、とそれらに呼応する。
耳をそばだてれば、外の息遣いが聞こえてくる。
獣のそれに似た荒い呼吸に目を細め、いやらしく口端を釣り上げる。

お前が喰らう、そいつを俺にも喰わせろ。
その肉を噛み、千切り、咀嚼し空いたと呻く腹を満たさせろ。

目を閉じ『一護』の意識を掴む。完全に他に捕らわれていたそれはいとも簡単に手に落ちて、暗転し浮上する感覚に目を閉じ、浮遊感が止むのを待つ。
浮遊感が止み、意識が明瞭になったとたん、肌に触れる体温。
鼻を掠める汗の匂い。
閉じた瞼に月明かりさえも感じない。
目を開ければ、恐怖と混乱で顔を歪めた愛しい獲物の顔。
「…………っ」
「なぁ、腹が空いてんだよ」
恐怖はすぐに嫌悪に変わる。
目の前のその肉が醸す甘い匂いに涎が後から後から溢れてくる。
「お前を喰わせろよ、雨竜」
肌けた胸に残る赤い跡。
一護が捕食した跡だ。
そこに人差し指を当て、思いっきり爪を立てその跡を抉る。
「っ!!」
間髪入れずに繋がる腰を揺らせば、音の外れた悲鳴が雨竜の喉で鳴った。
「お前のココが一護の肉を喰ってるみたいに、俺にもお前を喰わせろよ」
「どう…して、…なんかにっ……」
「じゃぁ、コイツを喰っちまおうか」
左腕を持ち上げ歯をたてる。ベッドの上で髪を見出してどう目する雨竜をねめつけながら、力任せに噛み付こうと顎に力を入れた時、左腕を掴まれ、空腹を満たす捕食の機会を失った。
「本気かっ!」
「左腕の一本を失った所で刀を握れる右腕がありゃあ困りはしねぇよ。お前には、痛くも無いだろ…何で止めんだよ」
「っ…」
口外にある意図を含めば、雨竜は唇を震わせながら嫌悪を如実に現し、意図も容易く陥落した。
「頭の良い奴は嫌いじゃないぜ」
「…っ」
体内を巡る熱は『欲しい』と空いた腹を満たせとと欲を訴える。
覚悟を決めた白く仰け反る首筋の匂いを嗅ぎ、唇を当て感触を確かめ、舌をねっとりと這わせれば、震えた身体に嗜虐心を煽られた。
激しく上下を繰り返す喉仏に軽く歯をたてると、それが大きく一度上下し、掠れた悲鳴で鳴く。
途端、締め付けられる肉塊。
邪魔をするなとズルリと腰を引けば現れた、熱した頭と同様に興奮したそれ。
それを雨竜の膝が追いかけ、擦りあげた。
「っ…!てめぇは…」
頭に弾けた衝動をそのまま、雨竜の頬を打つ。
赤く腫れた頬を雨竜は手の甲で抑えながら、怒りで光を増す金色の眼を真っ直ぐに見返した。
「……僕を喰らえば満足か。だけど、それは一度限りだ。一度で君の欲深いそれは満足するのか?」
「何が言いたい」
「腹に穴が空いた君のそれは只の快楽本能だ。なら、もっと良いやり方がある」
雨竜は手を伸ばし、先程までその身に喰らっていた肉塊に触れ、形を辿り先を挫く。
本能を擽る、甘い刺激に喉を鳴らして息を呑む。
「…ハッ!そんなにコイツは旨いのか?」
「食わず嫌いは良くないね。気に入らなければ…その時は、僕を喰らえばいい」
その言葉に満足気に唇を舐める。


「望み通り頭の先から爪先まで皮から骨まで、しゃぶりつくして喰ってやるよ」






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