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ナァォと鳴く猫



「クロ!」
真っ黒な体に背中に3つ、大、中、小の形の崩れた白い丸模様が肩、背、横腹に散っている。首には青い首輪がされていて、どうやら雨竜のマンションの前の塀の上が散歩道らしく、夕方によく幅10センチ程のそこを黒く長い尻尾を左右に揺らしながら悠々と歩いている。
人の気配にツンと上を向いた鼻、
見た目そのままの名前に振り返り『ナァ……』と鳴いてから、一護はクロと名付け見つけると必ず呼びかける。
「久しぶりだな、元気にしてたか?」
クロは尻尾を横に優雅に揺らす。一護が手を伸ばせば鼻先をそっと近づけ臭いを嗅いでザラりとした舌でチロリと指先を舐めると、そこに耳裏をこすりつけた。
「俺の事覚えてんのか?」
一護がクロに似た瞳をして耳裏から眉間の辺り、喉をこそばしてやると透明に近いブルーの瞳を細めて、『ナー…』と甘えた声で鳴く。
「俺に会えなくて寂しかったんだろ」
『ナァー…』
「そうだよな」
ゆらゆらと揺れる尻尾。
「最初は近寄っただけで逃げたのに、よく懐いたよね」
名前を呼ばれて鳴いたのに、近づけば逃げる。そんなクロを一護は時間をかけて懐かせた。
しかし、懐いたのは一護にだけで雨竜が近づけば逃げてしまう。
だから、一護がクロを構う時は少し離れてそんな様子を見ていた。
クロと同じ顔をして、嬉しそうにあやす一護の邪魔をしたくなかったからだ。
「猫の扱いには慣れてるからな」
「飼った事があるのか?」
聞いた事の無い話に雨竜は少し驚き、問い返す。
「まぁ、な。クロ、こっちおいで」
口を濁すと一護はクロを腕に抱き上げると、真っ黒なふわふわとした毛にを撫でる。
「どんな猫を飼ってたんだ?」
一護は意味有り気にニヤリと笑う。
「コイツと同じ黒い毛並みでプライドだけは馬鹿高いやつ」
「…………」
「結構大変だったんだぜ、クロ」
『ナァー』
名を言われずとも誰の事なのか直ぐにわかる。
そして、嫌みなタイミングで鳴く猫だ。
「名前を呼んでも餌でつっても、何をしても振り向かねえの。近寄ったら逃げるし触ろうもんなら引っかかれるし、この苦労をわかるかクロ」
クロは一護の腕の中で喉を鳴らして目を細めている。
「お前、腹空いてんだろ。石田、冷蔵庫の中にある俺の牛乳とってきてくれないか?」
どうして僕が…と口にしかけて止める。
距離をとっていた一護に近づくと逃げる筈のクロが逃げない。が、緊張した瞳孔が様子を伺う様に見ている。顔を更に近付けると耳がピンと上を向く。
「石田?」
「……ナァォ」
雨竜の声にビクッと体を震わせると、クロは一護の腕から飛び出し、道の方へと逃げて行った。
「あっ!逃げちまったじゃねぇか」
雨竜は何も言わず、自分の家へ足を向ける。
「石田?」
一護に名を呼ばれても振り返りもせず、玄関を開けると部屋に入った。
懐いた、というのは勘違いだったのか。
扱いになれてるって?どこが?
と背中が言っていた気がした。出会った頃と変わらない態度に肩を落とす。
「まだまだって訳ですか…」
どうやってそっぽを向いた雨竜を振り向かせるか、あれこれと考える。
そして、一護が雨竜の、振り返りもしない冷たい態度のその意味が、出会った頃とは違う事に気付くのにそう時間はかからなかった。








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出会ったときは本当に気に食わない相手ししたくない奴だったのが、今や猫にまで嫉妬する雨竜さん(笑)。
雨竜に猫の鳴きマネをさせたかったんです。
猫耳とか、猫化とか好きなんですが、物真似なんてしないだろう雨竜が一護をいじめたい(?)だけだけに猫の鳴き声をする…という、そんなに黒崎が好きかよ石田!という主張をしたかったんです(笑)。




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