anniversary ダルスネ




 半休を取って、同僚の恨みがましい視線を受け流しながら仕事場を出た。
 休みを取るなんてあまり望めない職場だが、今日だけは特別。
 半ば無理矢理に手に入れた時間は有限だ。
 頭の中にある計画通りに、俺は行動を開始した。


 まずは花屋に寄る。
 普段は近寄りもしない店は少し居心地が悪い。
 予算を告げて、適当に見繕ってもらう事にした。


「奥様へですか?」
「ま、似た様なモンかな」


 青と黄の目立つ小さな花束を受け取り、スーパーに向かう。
 これは単純に夕飯の買い物のためだ。
 いつもは意地でも足を止めないような、高価な食材の棚をじっくりと眺める。
 その中のいくつかをカゴに放り込み、レジへと向かった。


「よぉ」
「あら、珍しいわね。買い物?」
「いつもあいつに任せ切りだから、たまにはな」
「……あまり甘やかさない方が良いわ」
「何でだ?」
「甘やかされた分、頑張ろうとするから」


 それは言えてるかもと笑って、会話を切り上げる。
 大きな袋と花束を抱えてスーパーを出た。
 腕には結構な負担がかかっている。
 限界ではないが、余裕も無さそうだ。

 俺は足早に帰路に着く。
 待っている人の顔を思い浮べながら。




 きっと喜んでくれる。
 笑うだろうか、泣くだろうか。
 下らないと一蹴されても構わない。
 愛してると伝えられれば。
 記念すべき今日という日に。





「ただいま。愛してる」





――――

初めて会った日、みたいな。
ダルスネっていうか、ダル。
スーパーの店員さんは某巨乳の女神。


080723


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