because ネイソリ



 握り締めたシーツの作る陰影を、まだ覚えている。




「初めはこうじゃなかった」
「そりゃ、初めからこうだったら変だな」
「俺達は何時から変になったんだ?」
「初めからだよ」
「……言ってる事が矛盾してるぞ」

「初めから今まで『変じゃない』って事さ」




 掠める様な触れ方に、俺は彼を睨んだ。
 指は核心には決して触れず、周囲をじわじわと撫でていく。

 気持ちいい、くすぐったい、もどかしい。

 同時に表情に表す事は、難しい。
 それでも稀に触れる感覚を、確実に脳はキャッチする。
 背を駆ける快感に、腰が浮いた。


「……っ。随分、いやらしい手つきだな」
「いやらしい事、してるからな」


 皮肉の一つでも返してやりたかったが、微笑むだけにした。
 いずれは笑う余裕も無くなるのだから。

 唐突に、彼が中心に強く触れる。
 強い刺激に、快感は寒気にも似て。
 漏れそうになった声を必死で殺すと、彼は面白そうに唇を曲げた。


「別に声出しても聞いてる奴は居ないぞ?」
「……お前が聞いてるから嫌だ」




 初めから『変』ではなく、
 ずっと『変』だった。

 一本の真直ぐな紐をずっと捻っていく。
 捻っている最中は、紐は歪な線になる。
 限界まで捻ってしまえば、紐は真直ぐに戻るだろう。


 どこで捻れた?
 出会いから、
 恋から、
 抱かれてから、

 生まれてから?


 真直ぐに戻れるのは、いつ?




「……っ、ふぁ……っ」
「俺以外に聞かせるのは、勿体ない声だ」


 いつもなら笑い飛ばす様な台詞も、耳に入らない。
 中でばらばらに動く指に、感覚の全てを持っていかれている。
 何一つ、コントロール出来ない。
 指一本動かす事も。
 欲望の制止も。

 やめろ、足りない、もっと。

 何時の間にか目の端に溜まっていた涙を、彼の指がすくい上げる。
 赤い舌がそれを舐めとる所から、俺は目をそらした。




「……何か欲しいものがあるなら、力に成れると思うが?」




――――

Q.どの辺がシリアスエロなんですか?

A.尻がどうかしましたか?


080627


あきゅろす。
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