New Year 1 ダルスネ
新年といっても犯罪が無くなる訳ではなく、むしろ多くなるのであり、警察なんて仕事をしている人間にとっては休みどころか台風のただ中の様な忙しさなのだが。
それでも無理を押し通して家に帰ったのは、新年早々荒んだ心を癒してくれる無表情を見たくなったからだ。
だが、帰った俺が見たものは少し困った様な彼の顔と、
「どうしたんだ、これ」
ビルの様に立ち並んだ重箱だった。
「……ヴィナスが来た」
「珍しいな。てか、何で家知ってんだ」
「置いていった」
「何で!?」
「『新年なんだから少しはいいもの食べなさいよ』と」
「……それは有難いが」
「『あぁ、旦那の給料じゃ美味しいものなんて食べれないわね。じゃ、これ置いてくから食べなさい』と」
「薄給で悪かったな! 自分もパートだろうが!」
「あいつ程の腕があれば、出来る事も多い」
ちくりと刺さる慰めの視線を無視し、俺は重箱に向き直る。
一つ一つが高く、連立した重箱はちょっとしたビル街の様になっていた。
黒く光る蓋を恐る恐る開くと、中には色とりどりの料理が納まっている。
意外な普通さにホッと息を付くも、明らかに二人で食べきれる量ではない。
俺がどうする?と尋ねる前に、彼は外出の準備を始めていた。
「お裾分けしてくる」
妥当な選択だろう。
面倒ではあるが、料理自体は上等な物の様だ。
捨ててしまうには忍びない。
俺が頷いて重箱を抱えると、彼は不思議そうな顔をした。
「お前の顔が見たくて帰って来たのに、家で待ってろなんて言わないよな?」
可笑しかったのは帰って来た下らない理由か、それとも重箱を抱えて格好をつけた俺の姿か。
どちらにしろ、彼は微かに笑って優しく言った。
「別に気にしてないぞ、薄給なんて」
――――
おせち配り蛇廻り。
勢いだけで書いてます。
※ヴィナス……酸2のヒロイン的クールガール。最終的にスーパーマーケット勤務。
090101
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