shopping ネイソリ



『デートに行かないか?』

 そう言われて、嬉しく無かったと言えば嘘になるが。



「只の荷物持ちだろ……」
「デートだよ」
「近所のスーパーでか?」
「最近の流行だ。知らんのか?」


 色鮮やかな野菜が陳列されている中、ぼやきながらカートを押す。
 彼は品物をよく見る為か、黒縁の眼鏡をかけていた。
 手際良く商品をカゴに放り込みながら、ふふんと笑う。


「どうせ食べるのはほとんどお前だ」
「食べ盛りだから仕方ないだろ?」
「……ハムが安いな」
「聞けよ」


 よそ見をしている間に黄色い箱をこっそりカゴに紛れ込ませておいたりしたが、即座に棚に戻された。

 着々とカゴは埋まる。
 着々とカゴは増える。
 それはつまり運ぶ量も着々と増えているということで。

 こっそりと顔色を伺うと、彼は意外にも楽しそうな顔をしていた。


「買い物、好きなのか?」
「まぁな。食材見ながら何作るか考えるのは楽しい」


 それに、と彼は機嫌良く笑う。


「お前とのデートが楽しく無い訳無いだろ?」


 『今日は荷物持ちが居るから思う存分買い物が出来るからだ』と聞こえない事もない。
 俺はそんな考えを無理矢理忘れ去り、ふぅとため息を吐く。


 ……こんなデートも、きっと悪く無い。



「でも次はもう少しらしい所が良いなぁ」
「訳の解らない事言ってないで荷物運べ」




――――

『デートでショッピング、ただし食材のみ』みたいなっ!

080419


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