whistle ネイソリ



 鼓膜を震わせる音に、意識は浮上した。
 声ではない、と認識する。
 言葉を紡ぐ為の音ではない。
 高、低、低。
 高さを変え、音は何かを形作る。
 それは旋律と呼ばれるもの。

 音符をなぞり知らない音楽を奏でるそれを、何故か不快には感じなかった。

 音の発生源はすぐ近く。
 珍しく雑誌を開き、つまらなそうに眺めている男の唇。


 明瞭に、擦れて。


「口笛」


 呟きに、それは消え。
 返って来たのは謝罪。


「あ、悪い」
「音量上げろ」


 戸惑いに、苦笑。


「この曲、知ってるか?」
「知らないから聴きたいんだ」


 柔らかな曲調に素朴な音。
 再開された旋律に、ふと気付く。
 この曲が子守歌である事に。




――――

音楽をテーマに書こうと思ってて、なんとなく浮かんだ口笛って感じで書いてみた。
口笛吹けないと萌えるよね。

080910


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