wintry ネイソリ



 肌寒さに、無意識に布団を手繰り寄せた。
 掴んだ柔らかな感触に、ふと思う。
 もうそんな時期になっていたのかと。

 共に暮らし初めた暖かな季節は去り、冷えた季節がやってくる。


 薄く目を開け隣のベッドに視線を向けると、そこでは彼が案の定布団を刎ね除けて眠っていた。
 俺はもそりと緩慢な動作で起き上がり、のろのろとベッドから降りる。
 彼の足元でくしゃくしゃに丸まっていた布団を広げ、肩まで隠す様に掛けた。


 長い間、極寒の地で暮らした。
 一人きりの寒さには慣れている。
 少しの間、二人で暮らした。
 二人での暮らしは、本当に暖かかった。
 また一人に戻る事を考えた。
 温もりを知ってしまった俺は、寒さに耐える事は出来ないだろう。


 間抜けな寝顔を眺め、ベッドに戻ろうとすると不意にバランスを崩した。
 ぎしりとスプリングが鳴き、深くベッドが沈む。
 布団からはみ出た手に手首が捕まれているのを目の端で確認する。
 そのまま後ろから抱き込まれ、布団の中に引きずり込まれた。


「……寒い」
「布団が有るだろ」
「冷えてる」
「……変な事するなよ」
「それは無理だ」


 腕から伝わる温度に、再び睡魔が訪れる。
 俺は諦めて目を閉じた。


「何かしたら蹴り落とす」



 もう一人には戻れないから、ずっとずっと二人でいよう。




――――

寒かったから書いてみた。
秋は素敵な季節です。
涼しいと幸せ。

081006


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