overeating ネイソリ



「大丈夫か?」


 声を掛けると、ベッドに横たわる男はもぞりと体の向きを変えた。
 こちらに向ける顔には陰欝な表情と脂汗がにじむ。
 僅かに開いた唇から弱々しい声が漏れた。


「……大丈夫そうに見えるなら、お前の眼は節穴だ」
「大丈夫そうには見えないが、自業自得には見えるぞ」
「ちょっと食が進みすぎただけだろー……」
「お前の『ちょっと』の定義は狂ってる」


 ため息を吐き同じベッドの端に腰掛ける。
 二人分の荷重に、スプリングがぎしりと悲鳴を上げた。


「いい歳こいた大人が食い過ぎで腹痛なんてみっとも無いだろ」
「……お前の料理が美味すぎるから悪い」


 蛇や蛙じゃ食い過ぎて腹痛にはならないぞ、と彼は唇を尖らせる。
 蛇や蛙での腹痛は食中毒だろ、と俺は手を伸ばす。
 柔らかな前髪に触れると、苦しそうに細められていた眼が緩い弧を描いた。



「お前が嬉しそうに食べるから、作りすぎるんだ」
「お前の喜ぶ顔が見たくて、食べ過ぎる」



 出来ればお前も食べ過ぎたいんだが、と笑う彼をデコピンで黙らせ俺は立ち上がる。


「薬飲んで寝ろ。――治ったら、また『食わせてやる』から」


 背を向けて早足にベッドから離れる。
 彼が驚き、そして笑う気配を感じながら。




「……そいつは楽しみだ」





――――

テーマは腹痛だったはずなのに何時の間にか食い過ぎになりました。
ジョニーなー、アキバは顔も声もイケメンだよなー。
佐々木も好きだけど。

080817


あきゅろす。
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