star vega ネイソリ



 天気予報は雨だと告げた。



「願い事を書いて竹に吊す?」
「そう聞いた」


 彼はひらひらと揺れる赤い短冊をつまらなさそうに眺めている。

 ちなみに話を聞いたのはメイ・リンからで、オタコンからではない。
 偶然に出くわした彼女から七夕の蘊蓄を聞かされ、短冊を渡されたのだ。

『スネークも書いて吊してみたら? 案外叶うかもよ』

 そう言って笑った彼女の態度がどことなく不自然に感じられてしまうのは、渡された短冊が二枚だったからだろうか。


「その願いは、一体誰が叶えるんだろうな」
「ん? あぁ……、それは聞かなかったな」


 彼はふんと鼻を鳴らして、短冊を机に放る。


「結局は紙に書くだけじゃ叶わない。努力するのは自分だ」
「正論だな」


 俺は肩をすくめて、机上の短冊を手に取った。
 後でメイ・リンに謝らなければ。
 折角貰った短冊を、使う機会が無かった事を。


「……何か書くもの貸してくれ」


 伸びてきた彼の手が、俺の手から短冊を抜き取った。
 俺は立ち上がり、電話の近くにあったペンを放ってやる。


「……なんだ、書くのか?」
「吊す竹が無いから、叶わないかも知れないがな」




 彼の願いを乗せた赤い短冊は、ベランダに吊される事になった。
 執拗な抵抗にあい、中身を読む事は叶わなかったが。



「予報は雨、だったんだが」



 生温い空気の中で呟く。



 夜空に散らばる光点が、いつもよりはっきりとして見えた。





――――

七夕なんてここ数年してないよ!
どんな話が忘れたからwiki先生に聞いたら、結構自業自得な話じゃないか。
どんだけ根気の要る遠距離恋愛だよ。

080708


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