name ライ雷



 ソレは、俺を見てにゃあと鳴いた。




 それは数日前、ライコフが拾ってきたものだった。

 白く美しい毛並みをした、青い眼の猫。
 大きさ的にはまだ子供の様だ。
 捨てられていたらしいが、もしかしたら血統書付きの高価な猫なのかもしれない。

 ライコフが名前を付けていた気がする。
 確か……


「オセロットー! 餌だぞ!」


 ばん、と勢い良くドアを開け、ライコフが飛び込んでくる。
 両手一杯に猫用の缶詰を抱え、にこにこと笑いながら。
 猫も意外とライコフに懐いているらしく、とことこと彼の方に歩み寄っていく。


「あんな世話してくれない人より、俺の方が好きだよなー?」
「自分で拾ってきたんだから当たり前だろ。貰い手探すんなら手伝うがな」


 ライコフは猫を抱き、俺に向かって舌を出した。
 猫はにゃあと苦しそうに鳴く。

 彼は猫を放し、缶詰を一つ開けて浅い皿に移した。


「たんと食べろよー、ヴォルギン」
「……オセロットじゃないのか?」
「名前は一つだけ、なんて決まりは無い!」


 ふふん、とライコフは胸を張る。
 確かにそんな決まりは無いが、それだと呼ぶ時に不便では無いだろうか。
 尋ねる前に、彼は弾かれた様に立ち上がった。


「ミルク出すの忘れてた。ちょっとライデンを見ててくれ」


 勿論、俺の事ではなく猫の事だろう。
 返事も聞かずにかけていく彼を眼で追いながら、ため息を吐いた。


「あんまり趣味の良い名付け法じゃないな……」


 本人はそ知らぬ顔で餌をがっついている。
 名前に無関心だからか、自分の事だと認識していないのか。
 恐らく、気に入らないのだ。

 猫と言葉が交わせる訳ではないが、そう感じる。


 こいつはオセロットでも、ヴォルギンでも、ましてやライデンでもない。



「お前、ライコフだろう」



 返事を期待していたわけではない。
 独り言のつもりで、呟いた。




 なのにそいつは俺を見てにゃあと鳴いた。







――――

まとまらなかったらしい。
猫ネタは王道ですよねー。

080610


あきゅろす。
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