claw オセネイ



 『とんとん』と肩を叩かれて振り向くと、頬に刺さるものがあった。
 それはオセロットの白く真っすぐな指であり、ナイフなんて危険物では無かった事を喜ぶべきなのだろうが。
 しかし奴が眼を細めてにやにやしているのを見ると、あまり素直には喜べない。


「単純馬鹿」
「……ガキか、お前は」
「子供騙しに引っ掛かった奴にガキと言われたくはないな。それに俺はガキじゃなく、猫だ」


 むぅと唸ると、オセロットは笑みを深くした。
 油断していた、不意打ちだ――なんて言い訳はさすがにしない。
 認めたくは無いが、認めなければこの刺さりっぱなしの指を退けてはくれないのだろう。
 意外と爪が伸びていて痛いのだが。


「……解ったよ。俺は単純馬鹿だ」
「ガキ以下だな」


 ふん、と勝ち誇った様に鼻を鳴らして、オセロットは指を退ける。
 どうやら爪は想像以上に鋭かったらしい。
 触れると嫌な感触と共に指が滑った。


「お前は爪まで猫並みか?」
「手入れは欠かさない。深いのか?」
「体した事無い。唾付けてりゃ治る」


 指に付いた赤い液体は、不愉快な鉄の味がする。
 俺が再び頬に手を伸ばすより一瞬早く、オセロットの顔は接近した。


 生暖かく湿り気のある、ざらりとした感触に鳥肌が立つ。
 人によっては、それにエロティシズムを感じる様な。
 ピンク色をした舌が、俺の頬を掠めた。


「治ったか?」
「え、あー……」


 ちっとも期待して居なかったといえば嘘になる。




「そういうのは、唇に頼む」




――――

おせねい……!
新鮮すぎて猫が別人だ。
ほっぺた舐めるのがやりたかった。
あとほっぺた指すのも。

080607


あきゅろす。
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