bed ソリリキ




 ベッドの軋む音と、安定が失われる感覚で目が覚めた。
 重い目蓋を薄く開くと、隣のベッドで眠っていたリキッドが、こちらのベッドへ移ろうとしている所だった。


「……」


 理由を尋ねたいが、声が出ない。
 考えようとしても、頭が働かない。
 意識の半分以上を生温い睡魔に浸されている状態では、彼を見つめる事しか出来ない。

 リキッドは俺の視線に気付くと、ばつが悪そうに唇を尖らせた。


「……雨の音が煩くて眠れない」


 意識してみれば、激しい雨音がしている。
 闇に降る雨は空気を冷やし、睡魔を散らす。
 彼はそれで夢から覚め、雨音で覚醒したのだろう。

 リキッドはぽんと枕を置き、それに軽く頭を乗せた。


「安眠出来る温度を寄越せ」


 俺は布団を持ち上げ、招き入れる。
 腕を回して引き寄せても、彼は無抵抗のままだった。



 再び意識が闇に戻る前に囁かれた言葉は、彼の物とは思えない位甘い台詞だった。




――――

あらしのよるに。
夜の雨は何だか辛気臭い。
昼の雨は、うざい。

080531


あきゅろす。
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