dust ソリ雷



 閉じないで。



「んっ」


 短い呻き声を上げ、雷電は動きを止める。
 顔を覗き込むとしきりに眼を瞬かせ、不快そうに口を曲げた。


「どうした?」
「眼にゴミが……」
「擦らない方が良いぞ。ずっと眼を開けとけ」
「解ってるよ」


 でも、擦りたい。
 気持ちは良く解る。
 眼というのは鍛えられない人間の弱点の一つだ。
 そこがちくちくと痛めば、誰だって落ち着かない。
 一番良いのは瞬きをせず、擦らずに涙で異物を洗い流す事だが、これが意外と難しい。
 雷電は拳を握り、その欲求に絶えている様だった。


「んー」


 神妙な顔で何処かを凝視している姿は、結構面白い。
 瞬きを求め、目蓋が震える。
 俺はそっと彼の顔に手を回し、角度をがっちりと固定した。

 涙で潤み、何時もより輝きを増した眼が驚きで揺れる。


「っ!?」
「どうせ眺めるなら俺の顔でも眺めてろ」
「アンタの顔は見てると瞬きしたくなる」
「……微妙に傷つくな、それ」



 すっと一筋水の跡。
 わずかに充血した右目から、感情の無い涙が零れる。
 彼はぱちぱちと瞬きを繰り返した。


「取れたか?」


 彼は涙を拭いながら頷く。
 俺は少し名残惜しさを感じながら、彼の顔から手を離そうとした。



 それは意外にも彼の手によって阻まれる。
 赤い右目の笑顔と共に。



「俺の頬が熱くなったのはどう責任とってくれるんだ?」




――――

眼にゴミが入ったくらいでいちゃいちゃ出来る程度の能力。

タイトル悩んだ。


080530


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