selfish ダス雷




 その日に予定を入れてしまったのは完全に私のミスであり、彼がそれに怒って拗ねてしまうのも良く解る。



「ジャック、本当にすまない」


 何度目かの謝罪の言葉に返ってくるのは彼の冷たい視線。
 それは『所詮俺との約束なんてそんなもんなんだな』と、雄弁に語る。
 我ながら情けない。
 よりによって彼との約束がある日に予定を入れるとは。
 確かに約束をしてから忘れるのに十分な間は空いていたが、それでも信じられない手落ちだ。
 惚けが始まっているのか、と少しだけ欝になる。


「必ず埋め合わせはする」
「……『何』で?」


 不機嫌が凝縮された様な一言のだったが、口をきいてもらえないよりはずっとマシだ。
 私は機嫌をこれ以上悪くしない様、慎重に言葉を選ぶ。


「何がいい?」
「何でもいいのか」
「勿論だ」


 どんな我儘もきいてやるつもりだった。
 しかし彼は振り向いて、ひどく簡単な願いを口にした。


「抱き締めてくれ」


 あえて疑問は挟まず、黙って腕を回す。
 彼は少しだけ不機嫌そうな顔を崩した。


「キスしてくれ」


 撫でるように軽く唇を重ねる。
 彼は口元を緩め、ほほ笑みを浮かべる。


「……ずっと傍に居てくれ」


 返事は言葉ではなく。



 深いキスで。




――――

久しぶりの親子。
相変わらず親バカ子バカ。
だってそんな感じなんだもの。

080518


あきゅろす。
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