free ネイソリ



「休みなのに雨ってのは、一番つまらないパターンだな」


 昼食を取りながら呟いた彼の言葉は、俺の心情そのもので。
 ぎくりとしながらも、言葉にすると下らないなとため息を吐いた。
 まぁ心を読んだ訳では無く、単に思ったことを口に出しただけなのだろうが。


「こんな風に中途半端に降られると尚更だ」


 傘をささずに出かけるには強すぎて、
 傘をさして出かけるには弱すぎる。
 止んだかと思えばすぐに降り始めて、
 すぐに止むかと思えばずっと降り続く。


「家に引き籠もってろって事だろ」
「暇だな」
「やる事無いのか?」
「お前はあるのか?」


 なんとなく、意外な気がした。
 この陽気な男が無趣味という事が。


「読みかけの本を読むつもりだが」
「本か……」


 考え込み、眉根を寄せる。
 あまり乗り気では無い様だ。


「別にテレビを見たりでもいいんじゃないか?」
「……最近上司と同僚に映画のDVDを見せられっぱなしでな」


 画面はあんまり見たくない、と彼は遠い眼をして言った。
 少ないアイディアも出尽くし、部屋に沈黙が満ちる。
 正直俺は放置してさっさと読書に取り掛かりたい所だったが、それも薄情だ。

 そんな健気な思いやりは、彼のあくびに吹き飛ばされて消えた。


「眠くなってきた。寝るわ」
「……妥当だな」


 結局行き着くのはそこかよ、だとか。
 だったら最初から寝てろ、だとか。
 言っても聞きそうに無い文句を飲み込んで。


「……夜寝れなくなっても知らないからな」


 寝室に向かう彼の背中に精一杯の嫌味を投げてやると、彼は振り向いてにやりと笑った。



「だったら、一緒に寝るか?」




――――

本当に暇な時って、
寝るしかなくなるんだ!
まじで!

080510


あきゅろす。
無料HPエムペ!