meddling ダスリキ



 屈辱的な不注意で。



 ベッドにただ寝ているだけの生活等死んだも同然だと思っていた。
 普通の生活すらままならない現状に苛立ちつつも、どこか期待してしまう自分が居て。
 あいつが『馬鹿だな』と苦笑しながら部屋に入ってくる夢を見る。
 振り払っても振り払っても消えない愚かな妄想への抵抗を諦め、俺は台詞を考え始めた。
 あいつを迎えるための台詞を。


 しかし扉を開けて入ってきたのは、予想とはまったく違う人物だった。


「ソリダス?」
「……来たのが私で悪かったな」


 そんなに解りやすい顔をしていたのだろうか。
 内心慌てて表情を隠すと、ソリダスはふんとそっぽを向いた。


「ソリッドは来れない。風邪をやってな。全くお前といいあいつといい、何で同時に倒れるんだ」
「……誰も奴の話なんかしてない。それに俺は風邪じゃない」
「階段から落ちて足折るのも風邪引くのも体して変わらない。手間がかかると言う意味でな」


 言い返す言葉を探すが、見つからない。
 この男は苦手だ。
 まぁ、蛇の中に得意な奴など一人も居ないのだが。
 俺の沈黙に耐えかねたのか満足したかは知らないが、ソリダスは再び口を開いた。


「……奴から、言付けを預かっている」
「何だ?」
「全く、これは一種の嫌がらせだろう。私が何故ジャック以外にこんな台詞を……」


 何のことだと問い返す前にソリダスはこほんと咳をした。
 ふと真面目な顔になり、こちらを真っすぐに見つめる。


「『見舞いに行けなくて悪い。だけど』」


 俺だけ声帯が似なかったのは、何故だ?



『俺が行くまで、治るなよ』



 耳元で、あいつの声がした。





 後日マスクをして見舞いに来た馬鹿を問い詰めると、奴はへぇと感心したように唸った。
 ニヤニヤと笑う目が気に喰わなかったので頭を軽く殴り、訳を聞く。


「何がへぇだ馬鹿」
「いや……」



「意外とお節介なんだなと思ってな」




――――

やーいばーか。
私のばーか。

080507


あきゅろす。
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