more ダス雷
「そんなに優しく触らないでくれ。俺は壊れ物じゃない」
でも、と紡ごうとした口を彼の細い手が塞ぐ。
彼は怒っている様な、寂しそうな、複雑な表情をしていた。
私の前で見せる表情としては、珍しい顔だ。
振り払わず、されるがまま。
彼の言葉を待つ。
少し俯いて、ゆっくりと手を離す。
「強く抱き締めて欲しい時だって、ある」
そんな風に私を見るな。
哀しそうに、嬉しそうに。
私を誘わないでくれ。
衝動のまま彼を押し倒し、腕を掴み、唇を貪る。
いつだって、思っていた。
壊してしまいたいと。
骨が軋むくらい強く抱き締めて、少しだけ身を退き彼と視線を絡ませる。
「満足か?」
彼は、首を振る。
苦しそうに、楽しそうに。
「まだ全然、足りない」
――――
デレてるのかこれ。
なあデレてるのか?
080429
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