drizzle ライ雷


 


 いつもへらへらとしているライコフが妙におとなしいので理由を聞くと、奴は黙って窓の外を指差した。

 一面に広がる、灰色の雲。
 傘をさすほどでも無いが目に見える程ではある――そんな曖昧な雨が降っている。

 彼はふっとため息を吐いて、不快そうに眉を寄せた。


「雨は嫌いだ。嫌な事しか思い出さない」
「例えば、何を?」
「恋人の死んだ日、とかな」


 例えを聞いたのは普段振り回されている奴への仕返しのつもりだったのだが、あっさり返ってきた答えに、こちらがどぎまぎしてしまう。
 奴はそれを見越して軽く笑った。
 やはり、少し寂しそうに。


「雷は好きなんだけどな。雨はダメだ。寂しくなる」
「……別に雨が殺した訳でもないだろ」
「割り切れたら苦労はしないさ」


 思い出なんてそんなものだ、と呟いた彼の唇は小さく震えていた。
 俺はそれを止める為に、顔を寄せる。


 悲しくて震えているのかと問うと、彼は違うと首を振った。
 寂しくて震えているのかと問うと、彼はそうだと頷いた。


 俺は苦い後悔を噛み締める。


「気を紛らわせるくらいなら、出来るが」
「……じゃあ、お願いする事にするよ」
「終わる頃には雨も止むだろう」



 音も無く、降り続く。



「土砂降りになってなきゃいいけどね」




――――

そういやヴォルギン戦雨降ってたなぁと思った。

雨は傘を持ち歩くのが面倒ですね。
技術の進歩に期待。

080412


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