cake ダス雷
華やいだ通りで、ふと立ち止まる。
そこは中でも特に賑わいを見せる店。
ピンクと赤、そして僅かな白に彩られた室内は、甘い香で満ちている。
そしてガラスのショーケースの中に整然と並ぶのは、魅力的な三角形。
ふわふわのスポンジに、純白のクリーム、深紅の苺のアクセント。
視界の端に捕らえた瞬間に思い浮かんだのは、最愛の息子の顔だった。
彼が甘党だとは思わないが、嫌いという話も聞かない。
買っていけば喜ぶだろう。
だが店内の客はほぼ女性であり、稀に居る男性も大概ペアの女性が居る。
こちらは一人。
男性、しかも初老の。
奇異の眼で見られ、肩身の狭い思いをするのはほぼ間違いない。
そろそろ立ち止まっているのも限界だ。
突き刺さる視線の量がじわじわと増えつつある。
決断の時だ。
私は意を決して、店の中へと足を踏み入れた。
「お帰り。なんだかげんなりしてるな?」
「……ジャック、土産だ」
「お、ケーキか。コーヒー煎れるよ」
「私はケーキはいい。コーヒーだけ貰おう」
「二つ有るのにか?」
「……今は見るだけで十分だ」
――――
苦悩するダス。
若者が沢山居る所には出来れば行きたくない。
本屋は別だけど。
080410
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