snap ダス雷


 

 この痛みは、愛故か?



 いつも通りの鳥の声。
 いつも通りのコーヒーの香り。
 いつも通りの朝、の筈だった。


「ソリダス、どうかしたのか?」


 顔をしかめて腰に手を当てている彼は、いつも通りではない。
 腰というより背中と言った方が正しいだろうか。
 少し動くだけでも痛むらしく、眉間の皺が深くなる。
 彼はぎこちなく首を振った。


「……いや、なんでもない」
「腰痛か? 歳だな」


 ぎし、と空気が軋む音がした。
 冗談めかして言ったつもりだったのだが、何か嫌なスイッチを押してしまったらしい。
 ぎぎぎぎぎ、と彼は首を動かし俺を見る。

 ふっと溜息を吐いて、諦めたように言葉を零した。


「噛まれたんだ」
「……何に?」


 あ、と気付いた瞬間にフラッシュバックする昨夜の記憶。

 俺はひどく酔っていて。
 彼は俺を背負って運んでいて。
 広く温かい背中に、


 がりりと歯を立てた。



「……悪い」
「いや、構わない」


 今更ながらの自己嫌悪に襲われつつある俺の背中に、彼は優しく触れる。



「今夜は、私の番だからな」



 彼はふっと笑った後、俺の首筋に口付けた。




――――

半実話。
ダスが私。

酒は恐いと思った。
痛さ的な意味で。

080402


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