reading ネイソリ


 


「……そろそろ離せ」
「お断わりだ」


 読書はいい。
 現実から逃避出来るポピュラーな手段だ。
 最も手軽なのは眠ってしまう事だが、それだと『怠けている』と認識されてしまう事がある。
 読書ならばそういう心配もなく、ついでに知識を手に入れることも出来るだろう。
 ……それが有用な物かどうかは、運次第だが。

 それを、邪魔する奴が居る。

 がっしと後ろから回り込んで俺を放さない腕。


「凄く邪魔だ」
「お前が構ってくれないからな」
「暇なだけだろう」
「バレたか」


 バレたも何も、隠す気が微塵もない様子にため息すら出ない。


「お前も本くらい読んだらどうだ」
「本か……」


 奴は俺の持つ本に目を落とす。
 読んでいる部分は丁度盛り上がりが最高潮に達している所で、早く続きが読みたかった。


「それ、犯人はハリーだぞ」


 ……ああ、よかった。

 本ばかり読んでいたら体が鈍ってしまう所だった。
 走るのもきっと悪くない。


 無理矢理考えを切り替えて、俺は拳を固く握った。




――――

怪人・構ってほしいおっさん。

この後同じ顔したおっさん達がトムとジェリーばりにおいかけっこをするのですが、全編カット。

080317


あきゅろす。
無料HPエムペ!