テスラの弱い眼光と一瞬だけ目が合ったが、どちらともいわず視線を反らした。
「テメー等、気色悪いんだよ!」
吐き捨てるがごとく、そう言うしか頭が回らなかった。
それしか言ってやることが出来なかった。
雄が雄の服を引っ剥がして、身体と身体を結び付けるだなんてどうかしていてる。ここは、野郎しかいない刑務所じゃない。それなりに対象となる相手もいるはずだ。
「本当に、申し訳ありませんでした……」
泣きそうな声をあげるテスラをよそに、グリムジョーは踵を返していた。来た道を戻り、遠回りで自室に戻る予定だったが……
「おい、待てよグリムジョー」
ことの顛末を見ていただけの男が急にしゃしゃり出てくる。
「なんだよ?」
反りの合わない相手とは話もしたくなかったが、ノイトラだけは違った。何でも彼に背中を見せたら負けてしまう気がしていたのだ。それがたとえ、些細な言い合いだったとしても変わらない。
「テスラがせっかく謝ってんのにシカトかよ、え?」
だるそうに細い長身を動かすノイトラは、テスラを後ろに突き飛ばしながらニタリと笑う。
従属官の服を剥がし、あられもない姿にしておきながら、ノイトラのほうは髪の毛一本乱れていない。それがまた、グリムジョーには妙に気色悪く思えた。
「……いちいちうるせぇ奴」
何かと突っ掛かってくる相手に何と返答したらよいものか。互いによく似た性格だ。悪態罵倒しか吐けず、それでも相手を負かせられなかったら抜刀する。柄に伸ばした手の中で、ちりりと金属音が鳴った。
瞬間、一歩踏み出してグリムジョーは居合抜きを繰り出していた。
澄み渡る金属音と、方向性を失った刀に受け止められたのを悟ると、跳ね返されるより早く自ら退く。
見た目の形状も明らかに違うは武器は、刀と違いリーチがありすぎる。本気でやるならあれを振り回される前に自分が仕掛けなくてはいけない。
食いしばった歯からギリギリと音が漏れる。柄を握る手がじっとりと汗ばむ。
負けたくはないのだが、負かされる気配がたっぷり立ち込めている。
「どうした、こねぇのか?」
なかなか次のアクションがないグリムジョーに、ノイトラは厭味たらしく笑う。余裕の表情だ。
「……くそっ!」
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