毒 U

 こんな状況下では抵抗も逃げることもできない。このまま自分は、正気ではない主に殺され、この世を去るのか? そう思った矢先だった。
 胸元に伸ばされた長い爪は、何を思ったのか青年が着込んだ黒の団服とワイシャツを勢いよく縦に引き裂く。
「──!」
 何をされているのか、何をしたいのか、相手の理解不能な行動に麗は更に眉を潜めた。
 露になった色白で引き締まった上半身を舐めるように眺めた流は、満足そうに手を引くと口を大きく開き、鋭い歯を覗かせながら笑った。
 これから一体、何が起きるのか?
 目を見張る麗の前で、黒い翼から伸ばされた長羽が胴を目掛けて迫ってきた時、青年は初めて、これが凌辱の至りつくせりだと気付いたのだった。
「ぁっ!」
 腹をなぞる濡れた羽の冷たい感触に、思わず上ずった声をあげてしまう。粘液を付着させ何度も往来するものに、詰めた息すら漏れてしまうが、情けないことにこの仕打ちに身悶え大声で鳴かされる羽目になったのは、それからもう間もなくのことだった。
 腹部力を入れてこの感触に耐えるが、身体を責める羽は何もこれだけではない。
 新たに伸ばされた無数の羽は、ヒタヒタと胴をなぞり不可解な液体を残しては皮膚を汚していく。
 腹だけを永遠となぞられるならばまだ耐えられたものの、そんなことがあり得るはずもない。脇腹や背中まで回り込んだそれは、スウッと羽先を立てて脇や横っ腹、背筋を責める。
「あ……やめっ!」
 ゾクゾクとした感覚が身体を支配すると共に、麗は身体を這う黒いものに目を釘付けにする。
 身体に塗りたくられている糸を引く透明な液は、明らかに流が背中から翼を生やした時に濡らしていたものではない。羽から新たに滲み出ているものだ。何のためのものなのか、全く検討もつかない液体に嫌悪感を感じるがそれも一瞬。
 ズルズルと這う羽が背中を回り首筋に伸ばされると、じんわりとした快感を紡ぎ出す。
「──んぁっ!」
 首筋は麗にとって感じやすい一部分。そこを責められてしまえば声が漏れてしまうのも仕方がない。しかし、この快楽を誘う仕打ちはまだ序の口だった。
「あぁっ──!」
 避けることも出来ず、衣服を掻き分けて伸ばされた羽に両乳首を擦られた麗は声の限りに叫んだ。ビリビリと凄まじい快感が身体中を駆け巡る。


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