苦しいはずなのに、こんなにも相手を求めるのはもちろん意中の人だからだろう。
口内をゆっくり堪能するアイザックの顔を見つめ、いまさらながらカインは頬を赤らめた。
「――っ」
そして、離れた唇に少しの寂しさを覚えながらも、今までうまくできなかった息継ぎをしようと慌てて呼吸を繰り返す。
「本当に、可愛いらしいお方でいらっしゃいますね」
喉を鳴らして笑うアイザックは、顔を近づけるとそのまま首筋に吸い付き始めた。石鹸で泡立てた手は、先ほど熱を放出したばかりの下半身に触れ、ゆっくり愛撫を再開する。
成すがままの青年も、これにはさすがに黙っておられず身動いで喘いだ。
「あぁっ――! アイザック、僕のはいいから、早く……!」
「我が君。そう焦らずとも今からゆっくりと」
黒髪の男はのんびり答えて金髪の青年を眺める。
眉根を寄せて悶える様は格別眺めが良かった。自分の背中に腕を回し、細い指先に力を込めて爪を立てられる痛みもまた良い。
未知数の力を所有し、本来は恐ろしい存在である彼が人らしい姿を見せる一面は珍しくなかったが、ここまで誰かに晒すことはなかっただろう。
「早く、して……」
尚も催促を続けるカインは、熱を帯びて潤んだ蒼眼を向ける。明らかに相手を誘惑している表情はアイザックに拒否の権利も与えない。
「仕方ないですね。では立っていただけますか? 私に背中を向けて……そう、そこに手をついて」
言われるがまま立ち上がったカインは、浴槽の縁に手をつくと尻を上げた。
全ては覚悟のうえでの行動だったはずだが、実際、丸裸で人に尻を向けるとなると言おうもない羞恥に顔が熱くなる。
「ね、早く……」
結局、可愛いらしい誘い文句は何一つ言えず、黙ってその時を待つだけのカインは、あらゆることを想定して瞼を閉じた。
「きっと、期待しているほど悦くはなれませよ?」
「……それでもいい」
男は息をつき、肌を這わせた指先で割れ目をなぞり、更に奥深くへ進入させる。
そして目的の場所を確認すると、躊躇いなく指を突き入れた。
「――!」
初めての感覚に、カインは声にならない苦鳴をあげる。
もちろん想像していたよりも不快な感じが襲い、言葉にならないのが本音だ。
「……ほら、好くないでしょう?」
「そんなの、まだわかんないでしょ」
強情っ張りな主人に苦笑を漏らしながらも、そう強気で来られると引き下がれないのもまた事実。
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